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殺すことと生かすこと~白夜行第10話

『白夜行』第10話、「開く過去の扉」

 「やめぇーーっ!」

笹垣と共に、こう叫びたくなる。

 「何で、こんな生き方しかできへんねん!」

弥生子や亮司や雪穂に、こう嘆きたくなる。

 「救われへんなぁ・・・」

礼子と共に、こう呟きたくなる。。

        

1週見逃してる間に、亮司は最後の一線を越えてしまった。それまでなら、

犯行時の年齢の問題や情状酌量や証拠不足もあって、自首しても死刑に

はならず、悪くとも15年くらいで一度は晴れて太陽の下を歩けただろう。

でも、成人後の今回の礼子殺しで、亮司はほぼ死刑確定。父殺し、都子暴

行、偽造カード、江利子強姦、松浦殺し、システム盗用、礼子殺し・・・。色々

考慮しても、もう極刑しかないだろう。自殺願望が芽生えてる亮司にとっては、

大した事じゃないんだろうか。。

雪穂はまだ死刑には値しないけど、心を通じ合う唯一の人が遠い世界に行

き始めたこと、第ニの母殺しに加担してしまったことで、結局倒れてしまった。

弥生子は、息子の度重なる殺人の罪を背負い込む形で、自殺した。いよいよ、

薄暗い白夜を行く物語にラストが近づいたようだ。

 「みんな、どんどんおらんようになってまうわ・・・」

笹垣は古賀の写真に向かってこう呟いた。あと何人、おらんようになってしまう

んだろうか。唐沢邸の庭に並ぶサボテンが、墓地の墓石のように見えてくる。

田舎の工場の煙突から立ち上る煙から、火葬場を連想してしまう。

結局、煙突=ダクト=細長く逃げ場のない穴からは、煙となって空に上るしか

ないんだろうか。。。

                   

あらすじは以下の通り。亮司(山田孝之)は、雪穂(綾瀬はるか)の育ての母・

礼子(八千草薫)を殺す。医療ミスを装っていたため、病院側の配慮で表ざた

にはならなかったが、関係者の話が篠塚(柏原崇)を通じて笹垣(武田鉄矢)

にまで伝わった。篠塚は自分の目で確かめたいと言って、元の夫・高宮(塩谷

瞬)の代わりとして唐沢家の葬儀を手伝う。

典子(西田尚美)から手に入れた青酸カリを持って部屋を飛び出してた亮司

は、必要分だけ取ったあと、残りの薬をもって典子の部屋に戻り、デートに

誘った。典子の田舎で、書きかけの小説の内容だと言いつつ、亮司は自分

の人生について話す。愛する人を気遣いつつ罪を重ねて来た幽霊は、誰に

も気付いてもらえない存在。ところがたった一人気付いた男がいたので、青

酸カリで殺すんだと言う。そこへ雪穂から様子を伝える電話。亮司は、笹垣

を殺して自分も死ぬことをほのめかす。一人ぼっちになっちゃう、と必死に

止める雪穂を無視して、亮司は電話を一方的に切断。その後、典子は亮司

に、「やっぱり殺さないんじゃないかなぁ、幽霊・・・涙出るほど嬉しいんじゃな

いの、その男に気付いてもらった幽霊はさぁ」と言う。それじゃ終わらなくなる

という亮司に、そんな結末で小説を無理に終わらせなくても今のままの亮司

を受け止めると典子は伝え、二人は抱き合う。しかし結局、亮司は翌朝笹垣

のアパートに向かった。

一方、大江図書館のHPの掲示板に書き込まれた「幽霊からの遺言」をプ

リントアウトした真文(余貴美子)は、亮司の母・弥生子(麻生祐美)に手渡す。

それをさらに笹垣の手に渡した後で、弥生子は自殺。図書館に出かけて名

刺を渡しておいた笹垣のもとには、真文から電話。そこで2人は、亮司と雪

穂の過去について深く語り合う。

その間に亮司は、笹垣の部屋に侵入。青酸カリの有毒ガスがトイレから部

屋に充満するように仕掛けた後、笹垣が持ち帰ってた母の遺影に気付いて

驚いた亮司は、自分たちのことを克明に書き記したノートを読みながら、典

子が言った通りに涙を流す。これだけ血と肉を費やして自分たちを追いかけ

た笹垣に、こんな殺し方をしてはいけないと、亮司はガス発生の仕組みを捨

て去り、部屋に戻った笹垣にハサミをふりかざして襲いかかった。

 「血と肉にまみれて殺したかった」。。。

               

今回は、殺すことと生かすことについて考えてみよう。まず簡単な事実を確

認しとくと、人はみな、他の生を殺すことで生きている。もちろん、ハサミで

人を刺すようなことはほとんどないけど、動植物を殺したことのない人はい

ないはずだ。微生物まで含めれば当たり前だけど、もっと普通の大きさの

生き物でも直接的に殺してるし、間接的には大量に殺してる。一部の人が

直接殺した動植物を多くの人が食卓で口にすることは、目をふさごうが食

物連鎖と言い訳しようが、間接的に殺してることには違いない。間接的な

ものへの想像力を働かせれば、実は自分が人間を殺してることにも気付く。

死刑を直接的に行うのは執行人、あるいは国家だけど、国家の主権は国

民にある。また、日本からの様々な援助を受けた米軍が世界のあちこち

で殺人を行っているのも、全くの事実だ。

こうして、事の良し悪しや内容の違いは別として、人はみな他の生を殺し続

けてる。ただ、殺すことは、生かすこととつながってることが多い。業者は家

畜を殺すことで、それを食べる人々を生かしてる。死刑執行人は度重なる

殺人の犯人を殺すことで、社会の人々を生かしてる。

                 

ドラマで考えると、亮司は、父を殺すことで雪穂を生かそうとしたし、松浦や

礼子を殺すことで自分たちを生かそうとした。雪穂は母を殺すことで自分た

ちを生かそうとした。そして今、亮司は、笹垣と自分を殺すことで雪穂を生

かそうとしてる。これらの殺人は、法的にも道徳的にも間違ってるけど、い

ずれも人を生かそうとしてるのは事実だ。ただ単に殺してる訳ではないし、

快楽殺人でもない。

殺すことで生かす姿勢は、亮司=幽霊の遺言にも表れてる。

 「どうか子どもたちに

  本当の罰は心と記憶に下されると伝えてください
 

  ・・・・・・どうか、親たちに伝えてください」

ここには、自分を殺すことを、子どもたちや親たちを生かすことにつなげよ

うとする意志が表れてる。こうゆう多少マトモな部分をわずかな手がかりに

して、亮司を自首に導くことはできないだろうか。元刑事や自分を殺すこと

よりも、自首して反省した後に死刑台に登る方が、雪穂はもちろん、子供

たちや親たちを生かすことにつながる。死刑までの数年間、自分を生かす

ことにもなる。それを、笹垣や真文や友彦は亮司に伝えれないんだろうか。

そして、同様のことを、篠塚は雪穂に伝えれないんだろうか。。。

           

予告での雪穂の台詞「死刑台まで歩いて行こう」が、そうゆうポジティブな意

味の言葉であって欲しいと願いつつ、最終回を見届けたいと思う。より死刑

に近づくように罪を重ねるんじゃなく、多くのものを生かすために自ら罰に身

をゆだねる。可能性は低いけど、友彦が自首するっていう来週のあらすじに

期待したい。制作スタッフには、フィクションとしての表面的な面白さよりも、

リアルな意味で水準の高い作品を目指して欲しいもんだ。。。

            

cf.愛がもたらす夜の太陽~白夜行第1話

   太陽の下を2人で歩くために~白夜行第2話

   良心と幸福の欠落を埋める愛~白夜行第3話

   薄明かりに共生する命の温かさ~白夜行第4話

   無条件の愛という困難~白夜行第5話

  父と母~白夜行第6話

  昼間の幽霊~白夜行第7話

   コントロール不能な欲望~白夜行第8話

   救われない生の終焉と存続~白夜行最終回

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コメント

罪状を考えると怖くなりますね!!今までの経過を知らなかったら、本当に極悪人ですね!!自首するくらいなら死んだ方がましだ!!って感じですよね!ハサミのキズは軽くて笹垣に逮捕されないかなぁ・・・。

投稿: お気楽 | 2006年3月17日 (金) 20時22分

殺す事は生かすことと繋がっている
って、このドラマのテーマですよね。
誰かの為に人を殺し生きていく。
このドラマでは歪んだ形になっていますが
生きていく上で確かにそういうサイクルに
なっていますよね。

投稿: あい | 2006年3月17日 (金) 22時20分

>お気楽さん

こんばんは♪
改めて考えると、とんでもない犯罪者です。
ただ、じっくりプロセスを見て行くと、極悪人ってわけ
じゃないし、普通の人と無縁の異常者って訳でもない。
だから、全くのフィクションにも関わらず、多くの人の
心を動かせるんでしょう。
笹垣はもう逮捕できない立場ですが、血まみれの亮司に
付き添って警察に行ったり、面会に行ったりすること
ならできるはずです。
第1話冒頭の、ハサミで血まみれの亮司、その真相に
注目。そもそも、あれは現実なのか、幻想なのか。。

投稿: テンメイ | 2006年3月17日 (金) 23時05分

>あいさん

こんばんは♪
殺すことと生かすことの結びつきを
深く考えると、ドラマはもちろん、
現実社会の見方にも変化が生じてきます。
殺人、自殺、死刑、戦争、食事、共生、
善悪、命の尊厳、原罪・・・etc
フィクションを通じて、その外部に広がる
巨大なリアリティにも目を向けたいと思ってます。

投稿: テンメイ | 2006年3月17日 (金) 23時22分

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