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救われない生の終焉と存続~白夜行最終回

(☆2015年12月28日追記: 特典映像の記事をアップ。

   ドラマ『白夜行』完全版DVD-BOX、オリジナル・エンディングの感想 )

 

(☆同年3月5日: 映画版の記事をアップ。

    抑制された上質の不運、倒錯した愛~映画『白夜行』レビュー )

 

 

          ☆          ☆          ☆

『白夜行』最終回、「白夜の果て」

 

素晴らしい! 見事に完成されたドラマだ♪ 心から拍手を送りたい。。

 

まるで第3話の記事みたいにこう書き始めると、「エッ・・?」とか「ハァ・・?」

とか、不満に思う人が少なからずいると思う。この結末は、かなり評価が分

かれそうだし、決して後味のいいものじゃないから。実際、リアルタイムで見

終わった直後は、「オイオイ、やってくれたなぁ・・」って感じだった。かすかに

期待してたものとは、全く逆の結末。最悪ってわけでもないけど、これじゃあ

救いようがない。。

 

ただ、前クールの『野ブタ』のラストもかなり違和感があったけど、その後、

原作を踏まえて再考するとそこそこ理解できた経験がある。今回はまだ原作

は読んでないけど、録画をじっくり見直しながら再考すると、それなりに納得

できたし涙さえ浮かんで来た。そう、これは救いようのない2つの生を描いた

作品なんだから、救いようのないラストになるのは、ある意味で自然なことだ。

必然じゃないけど、自然な流れの一つではあった。。

 

あらすじは以下の通り。亮司(山田孝之)笹垣(武田鉄矢)を刺したものの、

自分が青酸ガスを吸ってしまった事もあって結局殺せず、それどころか逃げ

去る前に笹垣に「便所に入るな」と忠告。その後は行方不明に。雪穂(綾瀬

はるか)は、亮司が最後に「いつか田舎に戻りたい」と言ってたのを思い出し

たこともあって、故郷にR&Y2号店を開くことに。「ねぇ、亮。私、返したかっ

たの。陽の当たる場所に、あの日の花を浮かべてあげたかった。あの日、

あなたがくれた夢を、諦めたくなかった。私を太陽だと言ってくれた、あの

言葉に応えたかった」。篠塚(柏原崇)は、花のような店を作るための、陽

の当たる場所を紹介することで、雪穂に接近。一方、すでに退職してる笹垣

あてに、友彦(小出恵介)が警察へ自首。亮司はカード偽造容疑で指名手配

される。

 

典子(西田尚美)は、秋吉(=亮司)との間に出来た子供を連れて笹垣のも

とへ。笹垣は母子の写真を弥生子(麻生祐美)の遺影の横に置き、亮司の

出現を待つ。篠塚は、ふとしたキッカケで、R&Yの赤黒い太陽の絵の下に、

白い切り絵の太陽が隠されてることに気付く。その切り絵が、開店記念の

指輪と同じデザインなのを証拠として雪穂に指摘し、篠塚は自首を勧めた

ものの、雪穂はその場では知らん顔。けれども帰宅後、もうウソの人生は

終わりにして2人で死刑台に向かうことを決意。

 

笹垣は、ふとしたキッカケで、唐沢邸のサボテンの下に隠された松浦(渡部

篤郎)の死体に気付き、警察の手配。自分は、R&Y2号店の近辺で、亮司

を探す。2005年12月24日、開店の日。亮司は、赤黒い太陽の切り絵を

通行人に配って笹垣をおびき出し、近くの林でハサミを突き刺して袋詰め。

ところが、笹垣は血まみれになりながらも、抜き取ったハサミで袋を切り裂

いて脱出、店の近くの歩道橋で亮司を発見。これまでの罪を全て、念仏で

も唱えるかのように数え上げた後、罪をつぐなって死刑台に登るよう説得。

しかし亮司は、笹垣の手にしたハサミを自分に突き刺した直後、歩道橋か

ら身を投げた。たまたま気付いた雪穂が近づくと、亮司は最後の力を振り

絞って、自分とは反対の明るい方向を指差しつつ「雪穂・・・行って・・・」

言う。雪穂は涙を浮かべてうなづき、亮司をおいて歩き去る。「明るい・・・

明るいよ・・・亮・・・」。

 

その後、警察で事情聴取を受けた雪穂は、嘘に嘘を重ねて自分の潔白を

主張、何とか切り抜けて自由の身に。とは言え、生きる屍になった雪穂は、

店をつぶして借金まみれになってしまい、警察に行くことも死ぬこともでき

ない。そして、2006年11月11日、2人が手をつないだ形の切り絵を前に、

笹垣と真文(余貴美子)は2人の話をする。その頃、雪穂は太陽の輝く公園

で、『風と共に去りぬ』の続編『スカーレット』を横に置いたまま、ベンチで亮

司と典子の(?)子供を手招き。太陽の指輪をした手で子供と手をつなぎ、

座ったまま力なくうつむいた。。。

 

 

このドラマの完成度の高さについては、それほど異論はないと思うけど、い

くつか具体的に確認しときたい。亮司が死ぬシーンを考えてみよう。ドラマの

初回の冒頭シーンを最終回で再現したわけで、幻想の可能性もあると思っ

てたけど、現実だった。舞台は、恐ろしく華美なブティックの前。雪穂の服も

派手だから、最初はクラブかと思ってたほど。でも、これは「パチモン」、嘘っ

ぱちで偽物の美しさを表してるわけだから、筋が通ってる。雪穂の白い服は、

よく見ると白い花がたくさん集まったデザインになってて、初回の「ドブに咲く

花」(亮司が作ったハスの花の切り絵)とリンクしている。この花は、見方に

よっては弔いの白菊のようにも見えて、同じデザインの指輪の台としても使

われてた。上が白で下が黒の衣装は、笹垣の「花の根っこはグロテスクな

もんや」って台詞を表現してる。

 

亮司がサンタの格好をしているのも巧みな演出。白夜のような薄暗い幸せ

をプレゼントするわけだし、衣装の白は、白夜と「雪」穂の白、衣装の赤は、

血と奇妙な絵の赤。さらに、偽りの姿で生きる姿も象徴してるし、雪穂の大

学にウルトラマンのコスチュームで潜入してたエピソードともつながってる。

亮司が死ぬのが、肌身離さず持ってたハサミを笹垣に突き刺す事で手放

してしまった直後なのも、そのハサミで自分を突き刺したのも、筋が通って

る。ハサミは、罪人としての生の道具であり象徴だから。雪穂が亮司をお

いて薄明かりの方へ歩いて行ったのは、少し前の亮司の「陽の当たる道

をプレゼントする」って台詞と整合的。さらに、物語の最初は、雪穂が(ベッ

ドで)死んだように横になってて、亮司が薄暗い道(ダクト)を進んでたけど、

最後は逆に、亮司が死んで横たわり、雪穂が薄暗い道を進んでいく。きれ

いなコントラストをなす形式美。このように、恐ろしく緻密な作りを随所で目

にすると、関係者一同に心から拍手を送らざるを得ない。。

 

続いて、今回の記事のタイトル、救われない生について。先に、救われる

の方を見ておこう。これは、篠塚と笹垣の台詞でほとんど尽きてる。

篠塚は雪穂に自首を勧めて言った。

 

 「オレな、あいつの遺言見た。後悔しか無かった。あいつはずっと、裁かれ

  たかったんじゃないのか。本気で桐原に人生返したいなら、あいつに真実

  を、言わせてやるべきじゃないのか。全部、お前の幸せのためにやったん

  だって、みんなの前で言わせてやれよ。お前はその全てを、認めてやるべ

  きじゃないのか」

 

また、笹垣は亮司に自首を勧めて言った。

 

  「お前には、子供がおる。その子供に、ちゃんと、13階段登る背中見せぇ。

   お前、自分とおんなじ子を作る気か。親信じられへん子作る気か。間違

   いだらけやったけど、お前が、精一杯やったんは、俺が知ってる。一人

   の人間幸せにするために、お前は精一杯やった。お前の子に、俺がちゃ

   んと言うたる」

 

こうした言葉に従って、自首してせめてもの罪をつぐなおうとするのが、救わ

れる生だ。実際、雪穂も篠塚と別れた後ではこう呟いてた。

 

   「ホントは知っていた。ずっと昔から。あなたが裁かれたがってたこと。

    勝手な夢を押し付けて、あなたをダクトの中に閉じ込めたのは私だ。

    明日、あなたが来たら言おう。太陽の下、手をつないで歩こう。死刑

    台まで歩いて行こう」

 

雪穂と真文が願ったように、亮司が普通に2号店に現れてくれれば、救われ

る可能性があった。ところが、亮司は笹垣を刺した後で自分も刺し、「雪穂

・・・行って・・・」と遠くを指さしてしまったので、雪穂も救われない生を歩み続

けることになってしまった。父親みたいに厳しい愛を注ぎ続けた笹垣がいた

からこそ、救われるチャンスが生まれたのに、笹垣がいたからこそ、そのチャ

ンスが奪われた。皮肉と言うか、不運と言うか、いずれにせよ、やはり救われ

ない生だ。

 

実は、2人には他にも救われる選択肢が一応あった。それは、笹垣が時々唱

えてた「歎異抄」(たんにしょう)にある、浄土真宗の「他力本願」「悪人正機」

の考えだ。・・・・・・救われるような事を自分で行う「善人」よりも、自分では行え

ない「悪人」の方が救われやすい。なぜなら悪人の方が、仏という「他力」にす

がって救われようとする思いが強いから・・・・・・。ところが、2人はこの宗教的

な救いの道も取れなかった。と言うのも、神を呪う雪穂が仏にひたすらすがる

はずもないし、2人にとってはお互いのみが絶対的存在=太陽だったから。

 

結局、亮司が選んだのは、救われない生の終焉。雪穂が選んだのは、救わ

れない生の存続。亮司は、自分に命がけの愛情を示してくれた笹垣に対して

「お返し」と言って、自分をハサミで刺して身を投げた。もちろん、そんな事が

お返しになるはずもなく、笹垣も「あほう! あほんだら!」と歩道橋の上から

叫んだんたけど、それこそが亮司の救いようのなさを示してる。幸せのはず

がない人生を幸せとして雪穂に贈り、お返しのはずがない行為をお返しとし

て笹垣に贈ったのだから。

 

一方、雪穂が選んだのは、救われない生の存続。亮司が命を捨ててまで与

えてくれた、白夜のような偽物の明るさの生を、今更捨てるのは「悪いから」、

無理やり存続させる。嘘だらけ、借金まみれ、生ける屍と化してまで、たった

一人で。篠塚が言うように、「人生を捧げた人間より、捧げられた人間の方

が辛いのかも知れない・・・何をしても幸せにならなきゃならない人生なんて、

生きること自体が罰みたいなもんだから・・・唐沢さんの場合、その幸せ

さえ、永久に失われてるんだから・・・」。

 

亮司はダクトのような人生を歩んだ後、工場の煙突から立ち上る煙のように

空に舞い、雪穂は薄暗い部屋のような状況のまま生き続ける。「R And Y」

には、たった一すじの本当の「RAY(光)」さえ、射すことはなかった。。

 

こうして、救われない生の終焉と存続を見届けた後、切なさややりきれなさと

共に考えざるを得ない。それじゃあ、自分の生は救われるものなのか。神に

せよ、仏にせよ、遥か遠い場所から見るのなら、似たようなものじゃないだろ

うか。いや、それどころか、自分は違うと思いたがる分だけ、あるいは気付

かない分だけ、余計に救われない存在じゃないのだろうか。。。

 

最後に一言。このドラマ、かなり色んな角度から見れそうだし、まだ触れてな

い細部もたくさんある。全体を通して再考する余地もあるし、ここまで全く参照

してない、原作と『風と共に去りぬ』についても、かなり興味がある。色々と個

人的に予定が入ってるけど、もし時間ができれば、『白夜行』についてあと1本

記事を追加するかも。(ちなみに『野ブタ』では2本追加)。興味のある方は、2

週間後くらいに再びアクセスして頂ければ、またやたら長くて理屈っぽい記事

に出会えるかも♪ 確率は半々かな。。それでは、今回はこの辺で。。(^^)/~~~

 

 

 

P.S.公式HPの武田鉄矢のインタビューで、笹垣に悪役とか憎悪とかいう表

    現が使われてる。ただ、それは金八先生よりは憎しみを持ってて、主人

    公に憎まれてて、視聴者の一部にも悪役扱いされかねないって意味に

    すぎない。厳しい善人が笹垣、優しい善人が真文。「すまんかった。あの

    日、お前を捕まえてやれんで、ホンマ、すまんかったのう」なんて言葉を、

    殺されかけた直後に言える人間が善人じゃないと言うのなら、仏と言う

    しかないだろう。。。

 

 

cf.愛がもたらす夜の太陽~白夜行第1話

   太陽の下を2人で歩くために~白夜行第2話

   良心と幸福の欠落を埋める愛~白夜行第3話

   薄明かりに共生する命の温かさ~白夜行第4話

   無条件の愛という困難~白夜行第5話

   父と母~白夜行第6話

   昼間の幽霊~白夜行第7話

   コントロール不能な欲望~白夜行第8話

   殺すことと生かすこと~白夜行第10話

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コメント

あのウルトラマンはやっぱり亮司だったんですね!!しかし雪穂は亮司が作った切り絵にこだわり、亮司はハサミにこだわりが、すごかったですね!!しかし雪穂は二人で自首するつもりだったんですかね?

投稿: お気楽 | 2006年3月25日 (土) 01時05分

>お気楽さん

毎度どうも♪ いい突っ込みですネ(^^)
「死刑台まで歩いて行こう」って台詞の全体と、
真文との会話、「もう終わりにしたいと思ってます」
「そうか、今日来るといいねぇ」から、最後に
自首に傾いたと解釈するのが一番自然だと思います。
皮肉なことに、そう思った瞬間に亮司は死んでしまい
ましたけど。。切ないですね。。

投稿: テンメイ | 2006年3月25日 (土) 01時53分

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