« パブロン飲んで距離稼ぎ・・ | トップページ | 断崖絶壁・・ »

夢と命~『タイヨウのうた』最終回

  夢の無い人生に、一体、何の意味があるんだろう・・・

         

前回、あと2回あればそれなりに上手くまとまるかもって感じの事を書いた。

裏返すと、あと1回じゃ無理ってこと。結果的には、やっぱり無理だったけど、

ギリギリ最低限の形を強引に作ったって感じ。拍手はしないけど、ブーイング

もしない。ドラマ全体だとかなり不満でも、最後のまとめ方だけならビミョー。。

   

命より夢を選んだ薫(沢尻エリカ)は、夢をかなえる直前に、愛する孝治(山

田孝之)に抱かれて息絶えた。本人にとっては本望だったとも言えるし、亡

くなった後にCDデビューも出来たので、ある意味ハッピーエンドだ。でも、個

人的にはいまいちスッキリしない終わり方だ。せめてエンディングを、もう少し

ハッキリ、まぶしい太陽を見上げる形にすればスタイリッシュだったのにな。

届かない夢の象徴としての、まぶし過ぎる太陽。そこからドラマがスタートした

んだし、死の瞬間にはスポットライトという太陽を映したんだから、最後もちゃ

んと映像の形式美を作ってくれなきゃ。。

   

実は前回、気になったことがあった。たまたまDVDが見つからないから確認

できないけど、最後の予告編でムーンチャイルドが歌うシーンが、昔のバンド

フェスティバルの映像になってたはずだ(公式サイトの予告スポットにはない)。

もし本当に最終回で歌うのなら、むしろ予告では映像を隠したいはずだし、わ

ざわざ昔の映像を使うのも不自然。まあ、そもそも出来の悪いドラマだから、

予告も出来が悪いだけなのかとシニカルに構えてたら、予告はちゃんと意味

があったわけね。

   

薫が死ぬのはドラマの最初から予想されたこと。今回だけ見ても、コンサート

前に5円玉アクセサリーが落ちたこと、美咲(佐藤めぐみ)への重い別れの挨

拶、家を出る時のドアの閉まり方と鐘の反響から、死ぬことはもう決定。病院

でゆっくり死ぬヒマはないはずだから、コンサート会場しかない。セリに向かう

足取りがやたら暗いなとは思ったけど、残りの放映時間的にも、「タイヨウのう

た」ってタイトルや主題から考えても、最後は歌うはず。

と思ってたのに、ステージのライトを下の暗い場所から見上げて、突然咳き込

んでおしまい。歌は孝治が1人でたたずむ海岸でのファンタジー。ま、なくはない

けど、ちょっとネ。。

   

この終わり方は、結局このドラマが何を中心に据えたかったかを示してる。薫

と孝治と病気とうた。これは『1リットル』よりは『世界の中心で、愛をさけぶ』に

似ている。サク(山田)亜紀(綾瀬はるか)と病気と陸上。タイヨウの最後の海

岸で孝治がビデオカメラで薫を思い出してたやや不自然なシーンも、セカチュー

を意識してた可能性がある。

    

ただ、このドラマはその同じパターンを抜け出すものを一応もってたはずだ。

歌の全面的な重視と、もう一つはバンド。このバンドがあるからこそ、パターン

化された暗い難病ものの枠を打ち破る明るさがあった。そして、それが最も上

手く機能した瞬間が、あのゴレンジャー登場だ。

ところが、この終わり方だとバンドがオマケになってしまう。実際、命より歌を

選ぶシーンも、死ぬシーンも、最後に歌うシーンも、すべて薫と孝治の2人きり

だ。それなら、セカチューみたいに徹底する方がマシだろう。これだと、雄太

(田中圭)、晴男(濱田岳)、隆介(川村陽介)が浮いてしまってて、最後に大学

や蕎麦屋の映像を取ってつけたように追加したくらいじゃ収まりがつかない。

さらに、バンド指導係だった修(竹中直人)なんて、蒸発したまま終わってしまっ

た。何じゃ、こりゃ!(by 優作)

   

結局、脚本の構成力が足りないのだ。だからこそ、麻美(松下奈緒)の描き

方もファースト・コンサートも中途半端だし、レイサ(原史奈)なんてさんざん不

要な悪役やらされたあげく、ポスターをうらめしそうに一瞥するだけで終わり。

そこそこ上手く描けてたのは工藤(要潤)くらいだろう。母親の由紀(黒田知

永子)と、父親の謙(勝村政信)もまずまずだけどね。。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

終わり方をめぐってあれこれ書いてたら時間が無くなった。もともと今日は、

ココログのシステムトラブルとPCトラブルとで2時間以上ムダにしたので、

残り時間は少ない。最後はやっぱり、本質的な話を書こう。

もちろん今回の本質は、夢と命をおいて他にはない。はその次くらいの

存在、夢と命のサポート役だった。

  

  「夢をかなえて死ぬのと、夢を持たないで生き続けること。

   どっちが正しいと思う?」

  「どっちが正しいとかじゃなくて、どっちが後悔しないかじゃないのかな」

歌声を捨ててまで手術を受けて生き延びるか、命を捨てて歌声を守るか。

手術の承諾書を前に、サインすべきかどうか悩む薫は、既に「私達」として

一体化してる孝治にたずねた。後悔を基準にした孝治の応答は、よくある

ものだけど、少なくともここでは、少し誤解を与えかねないミスリーディング

なものだと思う。

    

後悔をもとにするっていうのは、「あの時ああすれば良かった」というような、

過去へと遡る実現不可能な欲望をもとにするということだ。でも、ここはそう

じゃない。今この瞬間の実現可能な欲望を中心に意思決定すべきだという

ことだ。現在の私の欲望、あるいは私達の欲望。だからこそ、その後に続く

薫の台詞はこうだった。

  「私は歌いたい。歌いたい。ワガママかな?」

   

これに対して、孝治はかすかに首を振った。この辺りも山田孝之の演技は

実に上手い。この首の振り方は、これしかないのだ。ワガママを否定するっ

てことは、薫を直ちに死へと向かわせることだし、自分も薫との永遠の別れ

を覚悟するってことだし、自分より遥か以前から薫と共に生きて来たご両親

にも申し訳ないことだ。だから、力強く、あるいは明るく首を振るわけにはい

かない。ほとんど見逃すほどのかすかな首の振り方で否定してみせたのは

流石だ。話が逸れるけど、山田の細かい演技は他にも光ってた。その直後

のご両親への頭の下げ方、ロングスカート姿の薫を見た時の笑顔、頑張っ

てと麻美に声をかけられた時のうなづき方。すべて繊細さが光る仕草だった。

やはり山田は、若手男優の中だと突出した存在だ。。

     

話を元に戻すと、私達、つまり薫と孝治は結局夢を選び、両親も今までさん

ざん不自由させたことを詫びながら、その選択を受け入れた。よくあるパター

ンの流れで、少なくとも現代日本(あるいは先進諸国)においては、特に若者

の間では、共感を得やすいものだろう。

でも、特に最後辺りの薫の独白なんてのは、多少引っかかるものがある。

  「夢の無い人生に、一体、何の意味があるんだろう。

   愛する人のいない人生に、一体、何の幸せがあるんだろう・・・」

   

これは、誰に対して、どんなメッセージを伝えようとしてるんだろうか。XP患

者じゃなくても、今これを読んでる皆さんにたずねてみたい。夢ってあります

か? 愛する人がいますか? どちらも無ければ、意味も幸せもない人生

だと思いますか?

少なくとも私は、必ずしもそうとは思わない。輝きや温もりは誰でも欲しいもの

だ。でも、くすんでても冷えてても、命は命だ。ただ生きること、それ自体に命

の価値はある。人生の尊厳もある。これこそが基本命題だ。そのまま受け入

れるかどうかはともかく、少なくともこの次元まで遡って考えないと、難病患者

はもちろん、そうでない人々の生についての理解や考えは深まらないと思う。

したがって、上の薫の独白は、単に『タイヨウのうた』のヒロイン薫の素朴な実

感として、まずはとらえておくべきものだろう。。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最後に、少なからずの橘麻美『Wish』ファンと共に、今回の結果を悲しみたい。

フルコーラスは無理としても、あのバラバラに刻まれた僅かなカットは最悪。お

まけに、ポスターを見た時にはひょっとして10月21日にCD発売なんてサプラ

イズがあるんじゃないかと期待したのに、最後までアナウンスなし。これで、ほ

ぼCD化の可能性は消えたと言うべきだろう。正直言って、『タイヨウのうた』よ

り『Wish』の方が好きだ。ま、そうは言っても、松下奈緒よりKaoru Amane

の方が好きなんだけどね。。

    

書くことは他にもあるけど、もう時間切れ。

それではタイヨウ・ファンの皆さん、さようなら♪ See you later☆彡

       

cf.光を求めて輝き始めた歌声~『タイヨウのうた』第1話

   限られた時間だけが持つ価値~『タイヨウのうた』第2話

   小さな宇宙、大きな人間~『タイヨウのうた』第3話

   自分のために、誰かのために~『タイヨウのうた』第4話

   私から私達へのさらなる深化~『タイヨウのうた』第5話

   光の忘却、闇の過剰~『タイヨウのうた』第6話

   幹の不在、枝葉の衰弱~『タイヨウのうた』第8話

   輝く脇役、月夜の主役~『タイヨウのうた』第9話

|

« パブロン飲んで距離稼ぎ・・ | トップページ | 断崖絶壁・・ »

「映画・テレビ」カテゴリの記事

「芸能・アイドル」カテゴリの記事

コメント

はじめまして!
橘麻美とゆうか、松下奈緒さんのアルバムは10月に発売になりますよ!
私も最終回はちょっとイマイチな感じでした・・・。

投稿: 真由 | 2006年9月16日 (土) 21時52分

>真由さん

はじめまして。コメントありがとうございます♪
松下奈緒さんのピアニストとしての
オリジナルアルバム、「Dolce」ですね。
僕はやっぱり橘麻美の歌声で「wish」を聞きたいんですよ。
無いものねだりとはこの事か。
仕方ないから、録画のわずかな歌声と
instrumentalで我慢します。。

投稿: テンメイ | 2006年9月16日 (土) 22時13分

おはよう~!

終わったね。
実にあっさりと(苦笑)
いや、忙しかったので気がついたらどの番組も
最終回ってことに気が付いた。

>山田は、若手男優の中だと突出した存在だ。。

そうなのよ。自然だし、心の中を表現する仕草に
時々キュン。

言いたいことは山ほどあったけど、もういいや(笑)
来クールはドラマの本数を絞って、最後まで完走することを
目標にレビューするつもり♪

じゃ、また、どこかの記事でお会いしましょう(笑)

投稿: アンナ | 2006年9月17日 (日) 08時56分

>アンナちゃん

あ~、海辺の露天風呂は最高だった。
やっぱ、温泉は熱海だな。。♪
聞いてない?アッ、そう。
  
もういいやって、一杯言ってるじゃん!
まだ足りないの?
ダメダメ、ウチみたいに広くて温かい心をもたないと♪
そんな事じゃ、完走できないよ。

また、どこかじゃなくて、すぐ会いに行くよ。
一週間以内に、花束持って(^o^)

投稿: テンメイ | 2006年9月18日 (月) 22時55分

テンメイさん、こんにちは!

終わりましたねー!
いつも遅刻な女でスイマセン(苦笑)

>橘麻美『Wish』ファンと共に、今回の結果を悲しみたい

ファンではないですが、、
この曲は、もう一度聴きたかったですね!
裏切られましたー(苦笑)
薫の歌についても、散々妨害しておきながら
ステージ目前にして、歌わせないなんて、、、
意地悪としか思えません。
命を懸けた彼女が可哀相でしたね。
"タイヨウのうた"と云えるのかな?と。
もっと丁寧にドラマを作って欲しかったです。

ところで、今クールは少しでしたが(笑)
ありがとうございました!
10月期のドラマは予定されてますか?
ドラマ記事は時間が掛かって大変ですが
テンメイさんの記事は、興味深いので
お願いしたいところですが(おいおい、、、笑)

その時はよろしくお願いします!

投稿: ルル | 2006年9月19日 (火) 15時29分

>ルルさん

こんばんは♪ 毎度どうも<(_ _)>
記事を書いた後に思いつきましたが、
最後に薫が歌えなかったこと自体より、
そのシーンがイマイチ悲しくなかったことの
方が問題なのかも知れません。
夢半ばにして命が途絶えるってのは、
現実でもフィクションでも珍しくないですから、
あそこで泣ければそれほど問題なかったかも。。
   
いずれにせよ、誰が主犯なのかはともかく、
下手なストーリーでも最後まで僕らを
引きつけたキャストには拍手したいと思います。
特に、あの2人に。。
    
10月期はまだこれから考えますが、
月9と土9の初回はとりあえず見ようと思ってます。
記事に期待して頂いてるのはとてもありがたいんですが、
秋は仕事が一番忙しいシーズンなんですよ。
ドラマ記事は週1本書くのがせいぜいでしょう。
趣味が一致する幸運を期待しています。
こちらこそ、宜しく(^^♪

投稿: テンメイ | 2006年9月19日 (火) 22時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/123750/11919858

この記事へのトラックバック一覧です: 夢と命~『タイヨウのうた』最終回:

» タイヨウのうた 最終回〜絶唱〜 [アンナdiary]
実にあっさりと、終わってしまった(苦笑)涙のひとつも出ず。どうしてくれるんだ! こんな感動的なシーンなのに、涙が出ないなんて。。。あくびして涙は出たけど(苦笑) 最後は歌って終わって欲しかったなぁ。。。消化不良。 [続きを読む]

受信: 2006年9月17日 (日) 08時48分

» タイヨウのうた(終) [ドラ☆カフェ]
[続きを読む]

受信: 2006年9月19日 (火) 14時40分

« パブロン飲んで距離稼ぎ・・ | トップページ | 断崖絶壁・・ »