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過去への思いを胸に生きること~NHK『初恋の人を探したい』

(☆2012年7月3日追記: ドラマ『はつ恋』の記事をアップ。

       大人の女性がハマる恋愛ドラマ、NHK『はつ恋』♪ )

   

   

        ☆          ☆          ☆

初恋の相手って、誰だったかな。。そもそも、初恋って何なの?。。。

       

そんな思いをもったのは、朝日新聞TV欄の番組紹介「試写室」で、『にんげん

ドキュメント 初恋の人を探したい』を取り上げてるのを見た時だ。初めて付き

合ったコとか、初めてキスしたコならすぐ分かる。初めて相合傘をしたコとは、

今でもたまに連絡を取ってる♪ でも、初めて恋した相手と言われても、どれ

だっけと考え込んでしまうのだ。時間的にも内容的にもビミョーな問題。

候補者は少なくとも5人くらいいる。顔とかエピソードは全員思い浮かべられ

るけど、名前はそうは行かない。もし病気で余命わずかになったら、名前くら

い自分で調べてみようかな。実家の物置を探れば、何か出てくるだろう。業者

に頼むなんてのは、ちょっとあり得ない話だ。。

    

           ☆          ☆          ☆

さて、まったく個人的な前置きは短めにして、番組に移ろう。まず指摘したい

のは、「(株)初恋の人探します社」に依頼した3人の登場人物が、「初恋」とい

う言葉を使ってないことだ。内容的にも、初恋と呼べそうなのは1人だけだと

思う。残りの2人はむしろ、「昔の恋人」って感じだ。もちろん、『昔の恋人を

探したい』じゃ番組のタイトルとして弱いし、会社名に「初恋」と入ってるから、

NHKに文句をつけるつもりはない♪

    

実質45分の番組は、調査員の竜田和子さんを中心に全編が描かれている。

もともと、娘のあつ子さん(現・社長)が、大学時代に好意をよせた人を探した

いと思ったときに適当な調査会社が無かったのがキッカケで、19年前に2人

で設立したそうだ。それまでは専業主婦とのことだけど、72歳になってもテキ

パキと仕事する竜田さんを見ると、只者じゃないなと感心した。テレビだから

無理して頑張ってるって感じではなかった。足腰も50台と言ってもいいくらい

しっかりしてたな。過去20年分、4000冊の電話帳を武器に活躍する姿は、

まさしくスーパーおばちゃん♪ 依頼者とか聞き込み相手に対する心配りや

話術もお見事だった☆

    

これまでに12000件の依頼を受けたそうだけど、登場した依頼者は3人で、

すべて男性だ。これは、男性の依頼者の方が多いのか、それとも女性は恥

ずかしくて出演を拒否したのか、どちらなのかは分からない。まあ一般に、男

の方が昔の恋愛への執着が強いと言われるし、金銭的な問題もあるだろう。

    

ちなみに、着手金55000円、成功報酬50000円。リーズナブルな値段だと

思うけど、会社のHPを見ると、ちゃんと注意書きがあった。この料金は標準

であって、変わることもある。交通費、宿泊費などの実費は別。遠隔地への

調査は出張手当が必要。結局、トータルではかなりの出費を覚悟することに

なる。浮気調査や家出人調査は遥かに高額のようだ。

     

           ☆          ☆          ☆

さて、最初の依頼者は道家肇(どうけはじめ)さん、48歳。難病として有名な

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断を去年2月に受け、余命数年と告知され

た。そこで、中学の同級生の消息を知りたくなったとの事。幼い頃から病気が

ちで友達もいなかったのに、この少女は自分から気さくに話しかけてくれたそ

うだ。竜田さんは電話を1000件以上かけまくり、鹿児島にも出張。「桜島の

よく見える街が親子の実家」なんていう僅かな手がかりで探すもののダメ。

結局、同級生ルートをたどって、一応の情報を入手。数年前まで隣町にいて、

結婚して子供もいたけど、引っ越した後は消息不明。

    

これを聞いた道家さんの表情は、なかなか言葉にするのが難しいけど、嬉し

さと懐かしさと安心感とで感無量、とでも書くところか。道家さんは、幸せな家

庭生活を送ってることが分かっただけで十分だ、これからも頑張って生きる

糧になります、との事。そばに付き添う母親・延榮(のぶえ)さんの優しい表情

が印象的だった。。

           ☆          ☆          ☆

続いて、短めの登場は、美容師の金原弘晃さん、29歳。10年前の下積み時

代に恋人をひどい言葉で傷つけたとの事。去年、自分の店を持てたので、謝

罪と感謝を伝えたいし、元気でいるのを確認したいそうだ。残念ながら、親の

借金のために連絡が途絶えてて、仕方なく祖母に気持ちと携帯番号を教えて

待つことになった。

    

20歳前後ってのはまだまだ子供。金原さんじゃなくても、傷つけ合うのは日常

茶飯事だろう。私もひどく傷つけたことがあったけど、早めにちゃんと謝ったし、

こっちも強烈に傷つけられからお互い様。な~んて開き直ってるようじゃ、評判

悪いんだよね♪ いやいや、オレの方が悪かった。ゴメン<(_ _)> でも、調査して

まで謝りたいってのは、余程の事だったのかな。。。

           ☆          ☆          ☆

最後の登場は垂井義胤(よしたね)さん、82歳。戦争で離れ離れになった恋人

と戦後再会したものの、シベリア抑留とかで身も心も疲れ果て、仕事にもつけ

ないような状態。彼女を幸せにできないからと、別れを告げたそうだ。ところが

56年たった一昨年、姉の笑子さんが死の間際に1通の手紙を手渡した。恋人

が、仲良しだった笑子さんに、別れの際の思いをこめて託した手紙。そこには

美しい字と文章で、淋しさや悲しみが書きとめられていた。

    

これを読んだ垂井さんは強いショックと罪悪感を受け、逃げた自分は卑怯だっ

たと反省し、調査を依頼。別れた5年後に結婚して2人の子供がいたけど、24

年前に病気で死んだことが判明。ところが、それを伝えようとしたら垂井さんが

入院。竜田さんはわざと報告を遅らせて、元気になった所で報告。垂井さんの

表情は、これまた形容に困るもの。ショックだけど、これがオレの人生の決着。

幸せな人生で終わった決着を聞いた方がいい、との事だった。

     

          ☆          ☆          ☆

全体を振り返って一番思うのは、過去と向き合うことの難しさだ。ハッキリ言っ

て、プロに頼んで昔の恋人を探し出すなんてことは、必ずしもホメられた事では

ない。実際、竜田さんも、多数の依頼の中でどれを引き受けるのか、選別して

るそうだ。ストーカーとか悪意の手助けをするのは論外だし、できれば真剣な

思いを手助けしたいのは当然だろう。また、美容師の金原さんだけ時間が短

かったのは、おそらく視聴者の共感が得られにくいからじゃないだろうか。「い

つまでも昔の女の事でウジウジするな!」という反応も十分考えられるところ。

過去の過ちを謝るべきなのか、忘れるべきなのか。国家レベルの歴史問題

と違って、個別の人生経験の場合はビミョーな問題。そして、もっと一般的に、

自分の過去の人生とどう向き合うべきなのか、正直よく分からない。少なくと

も、後ろ向きがダメで前向きがイイなんていう平凡な固定観念には全く反対

だ。ここ数年の「自分史」制作ブームなんてのも、その辺を暗中模索する営

みの一つなんだろう。

            

一方、金原さんと違って、道家さんは余命数年の難病患者。垂井さんは戦争

の被害者。共感を得やすい人たちで、私も何とも言えない思いでジッと見てた。

残酷な運命に翻弄されると共に、死を間近に控えた人間。彼らが初恋の人、

あるいは昔の恋人を探そうとするのを笑う者はいないだろう。

      

ただ、調査報告を受けた2人の今後がかなり気になっている。番組では、気持

ちに区切りがついて良かったですね、とか、思い出の人の幸せな姿を胸に今

後も頑張って生きてください、とかいう感じの優しい扱いだったと思う。朝日の

「試写室」にも、「結果を知った依頼者の表情は一様に吹っ切れたように見え

る。初恋というフィルターを通して、自分自身の人生を再確認できるからだろ

うか」と書いてある(塩野浩子)。

       

でも、本人の前じゃないから、あえて言おう。ホントに吹っ切れたんですか。

決着つきましたか。私は違うと思う。数十年を隔てた思いに、業者の僅かな

報告で決着などつくはずがない。幸せに暮らしてたとか安らかな最後なんて

いう言葉が、竜田さんの優しい心配りだという事くらい、分からないはずない。

     

つまりそれは、単なる「一時的」決着なのだ。彼らはこれからの数年か数十年

の人生の中で、その一時的決着を新たな要素として加えて、相変わらず過去

と向き合い続けるだろう。もっと前向きに、なんて事は全く思わない。でも、願

わくば今後は、自分自身の心の中で、過去の恋愛を今後にどうつなげるのか

考えて頂きたい。過去と現在と未来の折り合いを、自分自身でつけて頂きたい。

    

もちろんこれは、むしろ私自身への言葉だろう。過去から未来へと流れ続け

る時間の波の上を、上手く漂い続けること。そのためには、海全体を見渡し

つつも、まずは今いる場所で溺れないことが大切だ。いつまで続くか分から

ない壮大な遠泳を、苦しみつつも楽しみたいと思ってる。。。

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コメント

こんばんは☆

テンメイさんのこの記事を読んでから、
またNHKの再放送をチェック!
20日の深夜だ!!って気を付けていたのに、
うっかり20日の夜からたまったビデオ(カレー)を見はじめてしまって。
あーーーん(涙)見たかった。。

テンメイさんの記事で内容はとてもよく分かったんだけど、
だから余計に映像が見たかった。
登場人物の表情とか・・・ね。

“調査報告を受けた2人の今後”
私も気になりました。
決着は付いたようには思えても、やはりそれは一時的なもので、
ふっきれるどころか、次は結果やその結果に至るまでを想像したり、
今まで以上に過去と向き合うことになってしまいそうな気がしました。

過去と現在と未来の折り合いをつけ、
過去から未来へと流れ続ける時間の波の上を、上手く漂い続けること。

私もそうありたいです。

投稿: まりこ | 2007年3月29日 (木) 00時44分

>まりこちゃん

オー、しばらく顔を見ないと思ったら、コメント2本連発!
おまけに、ドキュメンタリーに注目するとは、エライぞ♪
この記事、今でもアクセス来てるロングセラーなのに、
誰もコメントしないから淋しかったのよ。
やっぱり、いいコ、いいコ♪(#^.^#)

とホメたい所なんだけど、見なかったのか。ガクッ・・^^;
まあ、再放送のチェックしただけでも大したもの☆
深夜の再放送って、確かにウッカリ見逃すしね。。
でも、やっぱこれは映像で勝負する番組なのよ。
「報告を受けた2人」の表情がなかなか味わい深かった。。

現在から過去を振り返ったり見つめ直したりするのは
わりと簡単で、オレなんて特に大好きなんだけど、
それを未来につなげるのは難しい。
思い出は美しすぎて。。なんちゃって♪

ま、頑張って早く水泳をマスターしなきゃ!
そうすりゃ、トライアスロンも出れるしネ(^^)v

投稿: テンメイ | 2007年3月29日 (木) 14時39分

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