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樹木でなく網目のような進化~朝日新聞「拝啓ダーウィン様」

朝日新聞・朝刊科学面では、先週の火曜日(2009年4月7日)から4週連続で、

拝啓ダーウィン様」と題する特集記事の連載が始まっている。進化論の祖と言

われるチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin,1809-1882)の生誕200年を記

念して、これまでの進化論の進化を報告しようというわけだ。

          

初回の記事には、「生物は進化する──。それを思いついたのが、ダーウィンだ

と書かれている(この週の担当は佐藤久恵記者)。大まかな通説としては正しいけ

ど、学問的に言うならそう簡単な話ではない。たとえば手元にある『科学史技術史

事典』(弘文堂,1983)で「進化論」(evolution theory)の項目を見ると、代表的研

究者の1人である八杉龍一が次のように説明している。

          

   進化という言葉を用いて説明した最初の人物はH.スペンサー。生物学史

   上、最初の体系的進化論はラマルク。進化論確立の書物はダーウィンの

   『種の起源』(1859)。ダーウィンと独立に、同様の説を発表したのがウォレス。

              

もっと細かい記述もあるけれど、とりあえずメジャーな話としては、これだけ挙げ

ておけばいいだろう。もちろん、新聞記事における一般向けの説明でダーウィン

を特別扱いするのは、別に構わないと思う。

          

        ☆          ☆          ☆

さて、進化論というのは、『種の起源』から考えると150年、進化し続けて来たわ

けだ。この間、幾つかの重大な進展があった。メンデルの「遺伝の法則」発見。

突然変異の発見。進化論と遺伝の法則の統合。ワトソンとクリックによるDNAの

二重らせん構造発見。人間のDNAによる全遺伝情報(ヒトゲノムの塩基配列)

解読、等々。

        

今現在の一般的な理解を簡単にまとめるなら、「生物の小さな変化が積み重なっ

て、それらの中から環境に適応したものが自然選択され、世代を超えた進化が

生じる」ということになるだろう。これは私の言葉だけど、朝日の先週の記事にも

似た説明があった。

                           

「小さな変化」という部分の説明としてよく使われるのは、遺伝子の突然変異。元

の形を基準にして考えるなら、エラーというネガティヴな言葉も使えるだろう。ただ

し、そこからポジティヴな結果も生じるわけだ。ちなみに、進化論でいう「進化」に、

「進歩」のようなポジティヴな意味はないとよく言われるが、これはやや言いすぎ

だと思う。建前上はそうなってても、実際の生物学者の語り口を聞いていれば、

しばしばポジティヴなニュアンスが感じられることがある。

                 

とにかく、変異によって生物が細かく多様化し、そこから自然に適応したものだ

が残っていく。こうした進化の流れを図式化する場合、伝統的には「系統樹」と

090415a か「樹形図」と呼ばれるものが

 使われてきた。左図のようなも

 ので、誰でも一度はどこかで見

 たことがあるだろう。今現在、進

 化に関しては、高校の『生物Ⅱ』

 の教科書で扱うことになってるけ

 ど、そこにもこの種の図が掲載

 されてる可能性はある(未確認)。

           

           ☆          ☆          ☆

これに対して、昨日の第二弾記事では、別の図式が示唆されていた。見出しの

一つは、「『水平移動』で網目状に進化」。本文には、次のように書かれている

山本智之記者)。「親から子への遺伝(縦方向)だけでなく、異なる生物間(横の

方向)でも遺伝子が受け渡され、新しい生物ができる──。こうした遺伝子の『水

平移動』が、近年、次々と明らかになっている」。

          

具体的には、動物であるウミウシが、葉緑体の光合成を助ける遺伝子を、植物

である海草から取り込んだという話が本文にある。また別表には、水平移動の

他の例として、ミドリムシ類、ゾウリムシ、バクテリアなどの例が挙げられている。

            

これを読んだ私は、早速ウィキペディアをチェックしてみた。すると、水平移動の

代表と思われる「遺伝子の水平伝播」の話自体は、数十年前からあるようだ。た

だ、朝日の記事では、国立遺伝学研究所の五條堀孝・副所長が次のように語っ

ている。「水平移動はつい最近まで、例外的なできごとだと考えられていた。しか

し、実は生物進化の大きな原動力の一つだということが、わかりつつある」。

         

脚光を浴びつつある水平移動以外にも、ウィキの「系統樹」の項目を見ると、「

」という面白い話が書かれていた。複数の生物が一つにまとまって共生すると

いう進化があるらしいのだ。その一例として、元々は独立した生物だった葉緑体

やミトコンドリアが、一つの細胞内で共生するようになったと書かれている。

          

朝日の記事では、「水平移動」から、網目状の進化という話を出してるけど、「共

生」を合わせるならもっと分かりやすくなるだろう。そこで私は、網目という形をイ

090415b メージしやすくするために、極

 端な図を書いてみた。かつて

 フランスの哲学者ドゥルーズ&

 ガタリは、「ツリー」(樹木)に対

 して、「リゾーム」(根茎)という

 イメージを提示して、より自由

 で複雑なつながりを喚起した。

 今頃2人とも、天国で進化生物学

 の進化を見ながら、微笑んでいる

 かも知れない。。

                     

          ☆          ☆          ☆        

という訳で、今日の所はこの辺で。あと2回の連載が面白ければ、また記事を書

くかも知れない。とりあえず、この記事へのアクセス状況を確認してみよう。

ではまた。。☆彡

    

      

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.上の「網目」の図では、「水平移動」との区別を強調するために、「共生」

    上下方向(縦方向)への進化として描いているけど、横方向に描いてもお

    かしくないだろう。ただその場合、水平移動と違う表記にする必要がある。

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