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話題の電子書籍を無料体験~五木寛之『親鸞』上巻

偶然だけど、今この記事を書く前に「電子書籍 親鸞」でGoogle検索す

ると、日経の最新ニュース(20日夜)がヒット。講談社が、アップルの多

機能情報端末iPadの発売に合わせて、人気作家・京極夏彦の最新

ミステリー『死ねばいいのに』を電子書籍で刊行するそうだ。

                  

書籍は1700円なのに、iPadやPC向けは900円。配信開始から2週間

は700円の特価。携帯は「書籍の再現性」が低いという理由で全章500

円(1章100円)。端末を問わず、第1章は無料とのこと。まだ実験的な

試みとはいえ、安くて便利だから、急激に本の電子化の波が押し寄せて

来そうな予感がする。

    

実際、19日にはココログニュースでも、『もし高校野球の女子マネージャー

がドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(通称・もしドラ,ダイヤモンド社)

のiPhone向け電子書籍が好調だと伝えられてた。800円の電子データ

が僅か2週間で15000ダウンロード。商業的にも成功だろう。

         

私はそれほど新しもの好きではないけど、嫌いでもない。既に青空文庫

国立国会図書館、Googleブックスの無料電子書籍は利用してるので、

講談社が大々的に宣伝した無料の電子書籍も試してみることにした。そ

れが、五木寛之の長編『親鸞』(上)

          

昨年12月から上下巻で65万部発行のベストセラーで、今でも売れ続け

てるのに、上巻の全文を1ヶ月間無料でネット公開するという大胆な企画。

おまけに、朝日新聞の全面広告までカラーで出してたから、これだけで

も5000万円ほどかかってるはずだ。大手出版社と人気作家の意気込

みがうかがえる。ちなみに、五木自身が若者向けに発案したそうだ。

     

無料公開期間は5月12日~6月11日。既に1週間経過してるけど、ま

だ記事を書く意味はあるし、記事にせよ書籍にせよ、読者もいると思う。

そこで早速、「http://shin-ran.jp」 にアクセス。前半を中心に、上巻全

体を1時間半ほどで速読してみた。以下、この記事は電子書籍の内容

に触れることになる。ネタバレの度合いは低く抑えてるつもりだけど、ま

だ試してない方は、先に自分自身で体験した方がいいかも知れない。。

   

         ☆          ☆          ☆

まず、T-Time Crochet(ティータイム・クロッシェ)という閲覧ソフト

ダウンロード。と言っても、私が使ったブラウザ( IE 7 )だと、クリックす

れば勝手にプラグインとして組み込まれて、ほとんど手間入らずだった。

ただし、他のブラウザや環境でどうなのかまでは分からない。

     

本文はまず、普通に縦書きで表示されたけど、画面下のバーのボタン

をクリックするだけで、横書きにも出来る。五木寛之ではほとんど使わ

れそうにない機能だけど、別の書籍なら、人によっては有用だろう。デ

ジタルならではの技で、文字の拡大や白黒反転も可能。画面の右端を

クリックすると前に戻り、左端をクリックすれば先に進む。ただ個人的

には、カチカチとクリックするより、キーボードの矢印キーで「→」と「←」

を押す方が、滑らかで速く感じた。

                  

残念なのは、なぜかページ数を書いてないこと。本との最低限の区別

をつけたつもりだろうか。しばらく先に飛びたい時は、画面下のスクロー

ルバーを左右に動かすことになる。このバーはちょっと使い辛いし、どこ

にツマミがあるのかも見辛いから、今後改良すべきだろう。検索ができ

ないのも不便に感じた。あと、少なくとも有料の書籍の場合には、書き

込み機能も追加して欲しいもんだ。本の余白のメモみたいな感覚で。。

            

        ☆          ☆          ☆

一方、肝心の小説の内容について。私はここ最近、ほとんど小説を読ん

でないけど、昔は人並み以上にあれこれ読んでた。ただし、歴史小説は

苦手だし、恥ずかしながら五木寛之も全く読んだことはない(バイト先で

本人を見かけたことならある♪)。

      

でも、理数系・人文系を問わず、難しい話は大好きだから、親鸞につい

ても昔から興味があったし、3年前にはブログで記事も書いてる(植木

等『スーダラ節と親鸞『歎異抄』)。4年前の冬ドラマ『白夜行』(山田孝之

&綾瀬はるか)では、犯罪者カップルを追う刑事・笹垣(武田哲矢)が、

事あるごとに歎異抄の一節をつぶやいてたのが印象に残ってた。

     

浄土真宗の開祖・親鸞(1173-1262)は、幼くして出家。比叡山・延

暦寺で天台宗の修行を積んだ後、山を下り、法然の浄土宗の教えを深

めて、有名な悪人正機説に到達する。「善人なおもて往生をとぐ いわん

や悪人をや」。善人でさえ仏に救われる、まして悪人なら当然のこと。。

        

善人より悪人の方が救われると考えると、かなり奇妙な言葉だけど、こ

こでいう悪人とは、自力で修行して功徳を積むことのできない弱さを自覚

してる人のこと。この場合、阿弥陀仏の救済にすがるしかないから、悪

人こそが救済の真の対象だという悪人正機説は、意外に自然な発想だ。

ちなみに、「善人・・・」という言葉、実は師・法然のものらしいけど、親鸞

の方が重視してたということだろう。「絶対他力」。法然以上に、すべて

全く、阿弥陀仏にまかせる姿勢なわけだ。

               

この親鸞について、出家前の幼少時から比叡山を下りるまでを描いたの

が五木の『親鸞』上巻で、物語の大部分は想像(or創造)の産物。これが

かなりよく出来たストーリーなのだ☆ 正直、読む前にあちこちで賛辞を

聞いて、本当かなとかなり怪しんでたけど、予想以上に「面白いお話」だ。

      

思想を本格的に学ぶにはかなり物足りないだろうけど、親鸞入門として

は最適な「読み物」のような気さえする。ふりがなが多いし、一つ一つの

文も短くて簡単だから、小学校高学年からお年寄りまで、気軽に仏教的

物語を楽しめるだろう。決して「文学的」とか「芸術的」な作品ではないも

のの、五木が「大衆的」人気を保ってる理由がよく分かる気がした。

        

出家前(名前は忠範)から出家後(範宴)に至るまで、親鸞を一人の悩め

る人間として、生き生きと描いてるのに加えて、周囲の人物も魅力的。西

遊記(or 孫悟空)とか桃太郎のような面白ささえ感じる。京都で死人や

病人を扱いながらたくましく生きる河原坊浄寛。二重の意味で「法螺」(ほ

ら)吹きの雄弁家・法螺坊弁才。そして、『水戸黄門』の風車の弥七みた

いな、ツブテの弥七(石投げ攻撃の名手)。

           

さらに、幼い頃から世話をしてくれた犬丸や、最初の師・慈円も魅力的だ

し、若い男にとって最大の関門である「女」とか性の問題も、當麻御前(た

いまごぜん)との深くて重い「交わり」としてしっかり語られている。もちろ

ん、激しい修行や宗教的探求の記述も非常に具体的。法然はまだ少し

少ししか登場してないけど、下巻で本格的に登場するのだろう。

       

分かりやすくて面白い物語としての上手さも、ほんの三例だけ具体的に

示しとこう。小説のスタート、第一章は「人を殺す牛」。いきなり「競べ牛」

(くらべうし=闘牛)の話からスタートして、男の子の無邪気な好奇心とか

興奮を描きつつ、浄寛や弥七といった人物を観客として巧みに導入する。

       

さらに、実は「人を殺す牛」とは、親鸞そのものも暗示してるのだ。単に

「放埓」(=型破り)なものという意味ではなく、人間をあの世へと送り届

けるという意味でもある。力づくで往生させる型破りなもの凄い坊主とい

うことで、これほど親鸞という僧侶にふさわしい比喩もないだろう。文章

のテクニックとしても、まず「ほんとうにそれは起こるのだろうか?」と書

いておいて、しばらく先に「それ」が「命がけの闘牛」だと示したりする。で、

実際に、牛よりも親鸞自身の命が危なくなるわけだ。

          

別の例だと、第二章の最後では、折角知り合った三人の興味深い人物

が、実はとんでもない悪人なのではないかという親鸞の疑問で終わって

いる。この人達は死体泥棒と人殺しと詐欺師なんだろうかという、子ども

の胸がつまるような思い。当然、読み手としても真相が気になるわけだ。

           

さらに上巻ラストでは、親鸞に衝撃的な事件が起きる。下巻を読まずに

はいられないようなドラマチックな展開だし、上巻冒頭の重い逸話(河原)

がちゃんと伏線として機能していて、なるほどと感心させられる。

         

人をワクワク引き付ける、エンターテインメントの基本がしっかり守られ

てるのは、もともと新聞小説だからという事情もあるのだろう。毎日面白

くて、翌日の朝刊がまた楽しみになるように作られてるのだ。。

            

       ☆           ☆          ☆

今日は基本的にデジタル記事として書いてるだけだから、この程度に留

めておこう。もし余裕があれば、もっと内容に触れた記事をいずれ書くか

も知れないし、下巻も読むかも知れない。とりあえず、無料で今すぐ読め

るので、まだの方にはお勧めしとこう。宗教と思わず、一人の人間の波

乱万丈な物語として、気楽に触れて頂きたい。

      

できれば、ネットに肯定的な代表的論客の東浩紀にも、三島由紀夫賞に

輝く『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社)の第一章くらいは無料公開して

欲しいもんだ。内容的には五木と違い、大衆的でないからこそ、公開の

形態くらいは大衆的かつ先端的なものにしてもいいと思う。

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

           

     

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.5月23日朝のNHK『おはよう日本』で、「電子書籍で変わる出版

    を特集。五木の親鸞も紹介されたようで、Google検索を通じてウ

    チのこの記事に大量のアクセスが入って来た。やはりまだまだ、テ

    レビの影響は圧倒的だ。ただし、残念ながら多くの読者にとって、

    親鸞の公開サイトに向かうための通過点にすぎなかったようだ♪

         

    数は少ないけど、「9月」という検索ワードが入ってるということは、

    『親鸞』下巻の電子化が9月なのかも知れないけど、昼の時点で

    ネット上にそれらしき情報は見当たらない。。

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