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福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

先日、ヨウ素131換算値の記事で書いておいた通り、INESの英語原文

ネットでダウンロードしたので、今日一通り読んでみた。簡単な結論だけを

先に書くなら、やはり何とも微妙な基準であって、レベル7が妥当かどうか

は判断に迷う所だ。時間も無いし、内容解説と感想を簡単にまとめとこう。

      

 (☆6月4日追記: 日本時間で3日から、レベル8への格上げ情報が、ツ

             イッターで「拡散」してるようだ。INESのレベルは7ま

             でしか無いので、分の間はあり得ない。よって、「格

             上げ!」とか断定形の情報はデマ。ただし、将来の話

             として「格上げされるかも」と言うのなら、あり得ないと

             も言い切れない。

             ちなみに元ネタは、英文の「ENENEWS」の現地時間

             16時過ぎのニュースらしいが、一番最初がこれかどう

             か、確信は持てない。核技術者達がIAEAに働きかけ

             ている(urging)」という内容だ。)

       

まず、単純な事実確認について。経産省の原子力安全・保安院4月12

、「東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故・トラ

ブルに対するINES(国際原子力・放射線事象評価尺度)の適用について」

と題するpdfファイルを公開。冒頭、枠で囲んだ要約には、「・・・レベル7と

暫定評価・・・ただし、放射性物質の放出量は、同じレベルのチェルノブイリ

事故の1割程度」と書かれている。

   

3月18日の暫定評価・レベル5から一気に2段階上げられて、最悪のレ

ベルだと評価されたわけだが、まだ確定ではない。pdf の末尾には、こう

記されている。

    

   最終的なINES評価については、原因究明が行われ再発防止

   対策が確定した後、総合資源エネルギー調査会原子力安全・

   保安部会に設置されたINES評価小委員会(委員長:関村直人

   東京大学大学院工学系研究科教授)が専門的、技術的な立

   場から検討し、正式評価を行います。

     

ここで、疑問を感じるのは自然なことだろう。このpdfファイルでも、

ディアの報道でも、もっぱら放射性物質の放出量が問題とされていて、

その推測値は、レベル7の基準「とされてる」数万テラベクレル(=数万

兆ベクレル)の10倍にも達している。しかも、まだ放出は止まってない

のだから、最悪のレベル7は既に確定ではないのか 

    

単なる事務手続き上の問題で、最終評価を延期しただけなら、専門家

によるINES委員会が更に検討する必要はないはずだ。また、毎日新

聞HP(13日)やロイターHP(13日)は、レベル7という評価に疑問を示

す専門家の声を紹介している。

   

ということは、やはりINESというのは、単なる数値基準ではないはずだ。

そこで、英語の原文pdfファイル(ユーザーズマニュアル2008年版)を

自分で読んでみると、確かに微妙で繊細な内容だったのだ。以下、ポイ

ントだけ簡単に見て行こう。

     

          

         ☆          ☆          ☆

あらためて書いておくと、INESとは「 International Nuclear and 

110413

 radiological

 Event Scale」

 の略で、国際原子

 力(放射線)事象

 評価尺度、国際

 (事故)評価尺度

 などと訳されてい

 る。現在使われて

 るのは、「User’s

 Manual 2008

 Edition」(ユー

 ザーズ・マニュアル

 2008年版)だ。

          、

 1986年のチェ

 ルノブイリ事故を

受けて、90年に開発されたもので、関連「事象」(event)の安全上の意味

を、放射線の発生源と結びつけて、伝達・公表するために使われる。

       

IAEA(国際原子力機関)OECD(経済協力開発機構)が中心となってい

る尺度だから、原発を監視するというより、むしろ原発の利用のためのも

のだと考えた方がいいかも知れない。もとろん、利用するためには、安全

性が最重要なわけだ。

    

マニュアルは全体で206ページにものぼるものだが、福島原発のレベル

7という評価を考える際には、第2章まで、つまり29ページまで読めば十

だ。しかも、実質的に関係ない部分を飛ばせば、25ページ程度読め

ばいい。英語を母国語としない国への配慮からか、かなり分かりやすい

英文だから、単語はともかく、文法的には高校生でも一応読めるだろう。

全体の構成も非常にわかりやすく出来てる。

     

まず前置き目次があって、第1章全体の要約第2章「人と環境」

に関する基準の説明だ。これが第1の基準であって、要するに周囲への

影響から考えるもの。次に、第2の基準は、「施設における放射線バリア

と管理」(第3章)。要するに、原発の内部で実際に起きた問題に関する

ものだ。最後に第3の基準が、「深層防護」(第4~6章)。これは、実際

の問題が起きる以前の、安全設備に関するものだと考えればいい。ちな

みに最終・第7章は単なるフローチャート。評価手続きの図式的まとめだ。

        

110416

 レベル7から1

 まで、3つの基

 準ごとに非常に

 簡潔にまとめて

 1枚の表にした

 ものが左の「

 1」。左上の

ベル7とレベル6については、基準1「人と環境」しか説明がない。つまり、

福島原発のレベル7を考える際には、基準1だけで十分なのだ。そこで、

基準1の該当箇所だけ、コピー&ペーストしてみよう(参考までにレベル5

も入れておく)。

         

110416b_2

     

110416c

 上の箇所の文科省訳

 (ただし具体例を

 付記)が左で、INES

 のこの表だけは、以

 前から翻訳されてい

 る。元々、表はp.3

 で、その説明はp.2

 だから、最も基本的

 な説明だと考えられ

 るが、意外なことに、

 ここには放射性物質

 の放出量の数値(テ

ラベクレル単位)が書かれてないのだ。この文章の説明だけだと、福島が

レベル6か7かは何とも微妙だろう。

    

それに対して、例えば朝日新聞・12日夕刊1面の表では、テラベクレルの

数値基準が書き添えられていた。それは、少し後の第2章中に出てくる

話なのだ。そこで、第2章、つまり基準1の説明を見る必要があるが、その

前に一言、重要な指摘をしておこう。

    

p.1、つまり一番最初のページの第2段落に、INES開発の鍵となった考

が書いてある。それは、深刻な大事故となったチェルノブイリと、その他

の相対的に小さなトラブルとを分けるという発想なのだ。つまり、「そのトラ

ブルはチェルノブイリよりレベルが多少低い」と認定するための尺度。だか

らこそ、レベル7のチェルノブイリの上には、レベル8が無い。

        

と言うより、レベル6以下を定めるための尺度だったわけで、こうした尺度

設定の背景が、福島のレベル7宣言への(一部の)当惑を生んだ一因だろ

う。もし福島の評価がこのままなら、いずれ尺度が変更されて、チェルノブ

イリはレベル8になるのではないか。実際、ロイターは、そういった感覚に近

い海外専門家の言葉を伝えていた。その場合、福島は「最悪レベル」では

なくなるわけだ。。

       

        

        ☆          ☆          ☆

では最後に、放射性物質の放出量に関する第2章について。ここでようや

く、ヨウ素131換算値数万テラベクレル以上という、レベル7の基準値

「らしきもの」が示される。p.17だから、ちょっと遅い提示だが、斜体字で

強調されている。

   

ただし、この節には、一番最初から微妙な「脚注」が付けられている。「これ

らの基準は、放出量の早期の評価がおおよそのものでしかあり得ないよう

な事故に関するものである。このため、レベルの確定において正確な数値

を用いることは、不適切である」。

        

とはいえ、一貫した国際的解釈のために、一応目安として500テラ、5000

テラ、50000テラベクレルという数字を挙げてるのだが、では早期のおお

よそのものではない、正式な評価ではどうするのか、直接的には書かれて

ないのだ。

      

その辺りを最終的に補うべき記述が、実例を基本として作られた、仮想的な

の提示(p.28)だ。ところが、レベル7の例は当然、チェルノブイリを意識

した内容になっていて、放出量は540万テラベクレル以上となっている。数

万でも5万でもなく、その100倍の数値が唯一の例示なのだ。おまけに、数

値の前の事故説明には、核分裂反応を止めることが出来ずに、原子炉の

出力が通常の10倍に達しているとか、燃料が極端に高温となって火災

発生とか書かれている。福島原発は、そこまでには到達していない。

        

その一方、レベル6の例は、放出量が20500テラベクレルとなっている。

5000という目安からはかなり外れて、数万レベルに接近しているし、事故

内容の描写簡素で比較的穏やかだから、福島に当てはまらないと言う

ほどでもない

          

とりあえず、レベル7を説明する唯一の例は500万テラ以上、レベル6を

説明する唯一の例は2万テラほどだということは、ハッキリここで書いて

おこう。37万~63万と推測されている福島は、6と7の例の間だし、事故

内容の説明を見ても、やはりそんな感じなのだ。

      

   

        ☆          ☆          ☆

以上が、INESの実際の内容であって、これまで報道されている内容とは

かなり違っていることが分かると思う。もちろん、だからフクシマはレベル7

ではないとも言えないし、レベルの認定はそもそも、「社会的」「政治的」な

ものに過ぎないと考えることも可能だ。

          

ここで行った解説は、より限定された内容を示しているに過ぎない。つま

り、マニュアル自体に即して考えると、レベル7という暫定評価は必ずし

明らかではないということだ。おそらく、今後も議論は続くだろうし、私

も考え続けたいと思ってる。

     

とりあえず、今日の所はこの辺で。。☆彡

    

      

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by 定時降下物データ)

  体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学&生物学的半減期

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算式(by INES)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  被災地の被害が深刻とされる、「風評」の意味とは・・

  「想定外」という言葉の考察&リハビリラン2日目

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  原発事故はみんなが無責任、だけどね・・~東電社員の息子・ゆうだい君への応答

  被曝する全放射線量の計算方法 (自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  義務教育における放射線・放射能~中学校・理科の教科書&副読本

                 

                                  (計 4277文字)                              

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