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各個人が独自メディアとして議論すべき時~東浩紀&苅部直「論壇時評」(朝日新聞・3月)

(☆2012年2月25日追記: 最新記事をアップ。

   現在の中に過去を見ること

      ~高橋源一郎&小阪淳&菅原琢「論壇時評」(朝日新聞・2月) )

          

       

        ☆          ☆          ☆

去年の春、メインの担当者が東浩紀に代わったのを機に書き始めた、朝

日新聞『論壇時評』のレビュー。単なるメタ・レビュー(批評の批評)ではな

く、元の文章まで自分で目を通して、朝日の記事全体(時評+コラム+編

集部担当箇所)を上回る平均字数で1年間書き続けて来た。内容的には、

メタ・レビュー8割、レビュー2割くらいだろう。

                  

今回も含めて、終盤は色々な都合で遅れ気味になってしまったが、単なる

市民ブロガーとしては、地味に頑張って来たつもりだ。実際、1本目を書い

て以来、丸11ヶ月にわたってGoogleは、ウチの記事を各種検索のトップ

にランクし続けてくれた。出来れば、最初の2、3本ばかりではなく、各時点

での最新記事をトップに上げて欲しかったけれど、それは欲張りというもの

だろう。

          

もちろん、今この記事を読んでる方の80%ほどが東、10%ほどが苅部直

に興味を抱いてアクセスしたのだろうけど、ウチ自体にも既に多少の固定

読者の方はいらっしゃる。「最終回」は、当サイトの活動を前面に押し出して

みたい。

              

実際、それこそ今回の論壇時評にふさわしいスタイルなのだ。というのも、

東の時評のタイトルは、「大震災と言論人 自らメディア『になる』役割」。有

名・無名に関わらず、人々が自ら不特定多数に情報発信することについ

て書いてるわけだし、苅部の政治論・社会論も、本質的にはその路線なの

だ。単なる政治家の数合わせゲームではなく、それぞれ独自の大胆な言

葉を、真正面から向き合わせることの大切さについて語っているのだから。

       

         

          ☆          ☆          ☆

では、まず東の時評の流れに即して語るとしよう。冒頭、東はこう語る。

「この1年、じつに多くのできごとがあった。鳩山退陣、参院選、尖閣映像

流出、ウィキリークス、そして中東革命。まさに激動の1年だったと言え

る。しかしその最後の最後に、このような巨大な災厄が訪れるとだれが

予想したことだろう」。

            

そして、この大震災を機に、「言論のありかたもまた変えざるをえない」と

語る。それは、情報の受け手のネット・リテラシー(読み取り能力)につい

ても言えることだけど、ここでは「言論の『発信側』の変化に焦点を絞ろう」、

という流れに持って行こうとする。

    

まずこの時点で、少し(だけ)異なる意見を述べておこう。阪神・淡路大震

災も含めた過去の震災と比べると、今回の東日本大震災で、ネットが活

躍したのは間違いない。ただ、震災後の約1ヶ月をトータルで見た時、果

たしてネットがどの程度の割合で重要性を持っていたのだろうか。そこは

冷静に見極める必要がある。ツイッターはそれなりの独自情報を「拡散」し

てただろうが、テレビの生映像もいくらでもあったし、録画映像は圧倒的な

迫力を持っていた。

             

そもそも直後の数時間は、関東・東北では通話やメールも含めて携帯がつ

ながらなかったし、パソコンを見る余裕もなかなか無かったはずだ。実際、

当サイトのアクセス解析を見ると、直後の48時間は一気に減っている。5

年半以上、ブログを毎日更新し続けてる私自身も、直後の3時間はネット

どころではなかったし、一段落した後はテレビの衝撃敵映像に釘付けになっ

た。テレビを消した後は、「その後」に備えた予行演習もかねて、ラジオでN

HKを聞いてたし、翌朝は食い入るように新聞記事を読んでた。

           

一日平均でネットを数時間使い、検索も瞬間的に行ってる私でさえ、そうな

のだから、普通の人達の間でそれほどネットが活躍してるとは到底思えな

い。圧倒的にテレビ。後は新聞、ラジオ、口コミだっただろう。試しに、ビデ

オリサーチで直後の視聴率を調べてみると、やはりNHKニュースが圧倒的

に上位を占めて、20~30%の高い数字を稼いでるるわけだ。

             

私自身は、テレビはNHKと日テレ中心。ラジオはNHKがほとんどだったが、

あらためて思ったのは、旧メディアの代表であるラジオの底力だ。単三電

池2本で長時間使えるし、他の用事の邪魔にもならない。おまけに、NHK

総合テレビの番組を、テレビとラジオの双方で同時に聞くと、(私の環境で

は)ラジオの方が2秒前後も速いのだ。緊急時には2秒差は大きいと思う。

もちろん、語られる内容も語り口も落ち着いたもので、普段なら退屈に思わ

れるかも知れないが、震災発生直後の慌ただしい気持ちを柔らかく静めて

くれた。

                     

1年間通して、東が意図的にネットの価値を強調し続けたのは分かるし、そ

背景(ネットの軽視)も理解できるが、元々ネットを使ってる者としては、む

しろ震災を機に、従来のメディアの底力を感じ取るべきだと思う。また、例え

ば地方の高齢者なら、いまさら馴染みのないパソコンの使い方やネットの利

用法を学ぶよりは、ラジオと電池を用意する方が遥かに実用的だろう。どう

しても必要な時は、一部のネット使用者に頼めば、すぐに直接教えてくれる

はず。人間こそ、もっとも古くて価値あるメディアなのだ。

           

         ☆          ☆          ☆

以上は、情報の受け手=受信者の側の話だが、送り手=送信者に関して

は、私も東と似たような思いを持ってるし、実際の行動に反映させて来た。

つまり、「自らメディア『になる』役割」を果たして来たのだ。ネットを用いて、

素早く正確に、落ち着いた語り口で。

           

東が挙げている例は、基本的にメジャーな立場のものだ。ツイッターが、ホ

リエモン=堀江貴文、早野龍五、東大病院放射線治療チーム、森川嘉一

郎。それ以外の個人サイトが、岩上安身、佐々木俊尚。YouTubeが大前

研一。普通の論文が上田誠也(中央公論4月号)。

          

この内、私のブログと内容的に重なる東大病院放射線治療チームのツイー

トのまとめらしきブログ記事をチェックしてみたが、ウチにはウチの独自の

価値があることを改めて確認できた。だからこそ、震災記事だけで合計1万

人以上の読者が集まってるのだ。もちろん、有名人たちに比べると僅かな

数だが、あちこちにリンクも貼られているし、公的機関はもちろん、東京電

力を含めた電力会社や国会、研究機関からもアクセスが入ってる。

           

東大グループとウチが完全に重なる話題、たとえばベクレルからシーベルト

への変換といった話でも、東大が「正しい知識」を簡潔に伝えるのに対して、

ウチではそもそも姿勢が異なってる。「正しい知識」とされるものが実は幾

つかあって、微妙にズレていること。それぞれの根拠まで遡ると、同じ出典

の受け取り方が違うらしいこと。朝日新聞の報道の中でも、バラつきがある

こと。そういった事まで具体的に、情報源を明示しながら論じてるわけだ。

        

もちろん、だから結局よく分からないなどと、曖昧に結論づけてるわけでも

ない。いずれにせよ、公表されたデータを信頼するなら、福島県を除く地域

では「差し当たり動揺する必要はない」と示してるのだから。

           

その点は例えば、危険性を強調する今週の『週刊現代』を読んでみても、

少しも変わらない。語り手の肩書きに惑わされることなく、内容をよく読め

ば、さほど危険性が立証されてるわけではないのは明らかなことだ。もち

ろん、聞く耳はしっかり持った上でのことだが。実際、表紙と見出しからほ

ぼ内容やレベルが予想できる今回も、しっかりチェックしたわけだ。旧メ

ディアの雑誌に対しても、しっかり目線を向けている。

         

他に、当サイトの記事の独自性は、情報源の明示と共に、具体的な計算

の紹介にある。これは、理数系の心得がある人間にとっては簡単なこと

なのに、一般メディアでは見たことがないし、ネットでもなかなか見当たら

ないことだ。

         

通常、「長期間の蓄積」などと語られる放射線量に関して、ウチでは地域

別・原発からの距離別に年間総量をいち早く計算してみせたし、放射性

物質の蓄積を示す積分計算の過程も、半減期が複数種類ある場合の

計算も、答えだけでなく途中の式まで示してある。すべて、私が独自に計

算したものだ。

                

最後に、節電論争に関する記事でも、私の身近を含めて、あちこちで納得

して頂けたようだ。つまり、節電を呼び掛けるチェーンメールに対して、他

地域での節電は無意味だという論陣が張られた。この状況で私がきっち

り主張したことは、チェーンメールは感心しないし、関西や中部での節電

に「電力供給の」意味はないが、社会的な意味ならあるということだった。。

        

         ☆          ☆          ☆  

ともあれ、東の時評の主要部ラストにもあるように、「リアルタイムで変化

する現実に介入しリスクを取る役割」をはたす重要性は体感してるし、「

つに混沌としている広義の「論壇」状況も理解しているつもりだ。当サイ

トはもともとスポーツ系サイトだし、今でも決して言論系サイトというわけで

はない。けれども、国家の非常時にネットで発言する以上、それなりの

任感を持って役割を果たして行きたいと思ってる。ささやかながらも、独自

の内容を織り込んで、あくまで冷静な語り口で。

          

なお、時評来月から高橋源一郎が担当になるとのことだが、ウチで今

後も毎月書き続けるかどうかは分からない。とりあえず4月の時評は、「き

ちんと読む」つもりだ。書くかどうかは、時評の内容と個人的都合で決めた

いと思ってる。思ったより短かったが、1年間ネットのために語り続けた東

浩紀には、遠くから、お疲れさまと微笑んでおこう。偶然か必然か、東の

大きい写真も、最後にようやく微笑らしきものをたたえていた。。

     

      

cf.参考のため、当サイトの震災関連記事の内、主要な6本を挙げておく。

  最も読まれているのが4本目で、半月で3500人弱の読者を集めてる。

    

  中部・関西などの節電は「無意味」ではない~電力の総合的考察(情報源明示)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算

                              (by 定時降下物データ)

  体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学&生物学的半減期

        

           

          ☆          ☆          ☆

一方、今のメンバーの「論壇委員会」としては最後になるコラム、「あすを探

」について。苅部直が担当の政治部門で、タイトルは「大胆な構想力 政

治に必要」。         

     

苅部は、政治が専門の若き東大教授としては、顔つきが可愛らしいし、文

章もひとクセあって面白い。今回も、地震発生から少し時間が経って、週

刊誌の表紙には、東大・京大の合格者ランキングという文字が大きく掲げ

られるようになったと書いてる。苅部でなくても、「苦笑したい気分になって

くる」、何とも平和、牧歌的なお話で、社会状況の改善を示すエピソードと

して、ポジティブに考えるべき事なんだろう。

          

苅部の議論は、大きく分けると2つになる。まず前半は、批評家の大御所・

柄谷行人や、著名な政治学者・山口二郎の議論を援用しながら、震災を

機に、新しい市民社会を作り上げようという話だ。もちろん、東大教授らし

く、問題や語り口の単純化は巧妙に避けてるが、要するに、「グローバル

資本主義」「小さな政府」疑問を投げかけてるのだ。

            

後半は、国会のあり方の話になる。衆参の「ねじれ国会」による迷走を避け

るためにも、国会の内部(特に衆議院)で堂々と議論しあう重要性を論じて

るのだ。外部でひそかに交渉するのでもなく、短い国会期間で数合わせに

気を取られながらお茶を濁すのでもなく。。

             

          ☆          ☆          ☆

苅部の2つの主張は、どちらもあまりに大きな政治的問題で、とても小さ

なコラムで論じられるような内容ではないし、いくらでも反論があるだろう。

ただ、このコラムのポイントは、東日本大震災という戦後最大の非常事態

を契機に、政治のあり方、社会のあり方を根本的に考え直し、真正面から

語り合うべきだということなのだ。タイトルの「構想力」とは、個人のみなら

ず、集団で保持する機能のことを言う。

       

したがって、東の時評と同じく、結局は情報発信者の側が、すぐれた個別

のメディアへと成長して行くべきだと語っていることになる。ネットだろうが、

面と向かった国会の議論であろうが、主体性を持った個別メディアとしての

発信者が、じっくりと独自の主張を提示し合うべき時がやって来たのだろう。

                  

それは、あまりに唐突で悲劇的な到来だったが、現実となってしまった以

上、我々はそれを前提として、少しずつ前に進み続けるしかないわけだ。

たとえ、どれほど困難な道であろうとも、闇来たりなば、光遠からじ。

        

それでは、今回はこの辺で。。☆彡

     

          

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.東浩紀とネットが開く新たな言論空間~朝日新聞「論壇時評」 (4月)

  「新しい公共」と他者への理解~東浩紀「論壇時評」(朝日新聞・5月)

  理想を語り、現実を変えること~東浩紀「論壇時評」(朝日新聞・6月)

  政策の「事後的」評価としての選挙

              ~東浩紀&香山リカ「論壇時評」(朝日新聞・7月)

  建設的な哲学とネット共同体への「期待」

                    ~東浩紀「論壇時評」(朝日新聞・8月)

  よりどころの崩壊、新たに築く試み

             ~東浩紀&松井彰彦「論壇時評」(朝日新聞・9月)

  世論調査、ファスト政治、ポピュリズム

             ~東浩紀&福岡伸一「論壇時評」(朝日新聞・10月)

  中国の異質性、東アジアの同一性

             ~東浩紀&李鍾元「論壇時評」(朝日新聞・11月)

  情報公開の境界、資格付与の区切り

             ~東浩紀&松井彰彦「論壇時評」(朝日新聞・12月)

  新しい道具、使ってみるための条件

             ~東浩紀&松井彰彦「論壇時評」(朝日新聞・1月)

  つながりと祝祭、これからの革命と善意

             ~東浩紀&香山リカ「論壇時評」(朝日新聞・2月)

     

       

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  震災後、身の丈超えぬ「ことば」に希望

      ~高橋源一郎&小熊英二「論壇時評」(朝日新聞) (2011年4月)

  非正規の思考、その可能性と危険性

             ~高橋源一郎&濱野智史「論壇時評」(朝日新聞・5月)

  みんなで上を向いた先に真実はあるか

           ~高橋源一郎&平川秀幸「論壇時評」(朝日新聞・6月

  スローな民主主義と『スローなブギにしてくれ』

          ~高橋源一郎&森達也「論壇時評」(朝日新聞・7月)

  柔らかさ、面白さが無ければ伝わらないのか

          ~高橋源一郎&菅原琢「論壇時評」(朝日新聞・8月)

  人を指さす政治的行為のマナー

          ~高橋源一郎&酒井啓子「論壇時評」(朝日新聞・9月)

  希望の共同体を楽しく探るために

          ~高橋源一郎&小熊英二「論壇時評」(朝日新聞・10月)

  アート・ロック・ゲーム、多様な変革運動

      ~高橋源一郎&濱野智史&小阪淳「論壇時評」(朝日新聞・11月)

  どの常識をどう疑い、何に立ち向かうのか

      ~高橋源一郎&平川秀幸&小阪淳「論壇時評」(朝日新聞・12月)

  対称的な関係の中にある前進

      ~高橋源一郎&小阪淳&森達也「論壇時評」(朝日新聞・1月)  

  現在の中に過去を見ること

      ~高橋源一郎&小阪淳&菅原琢「論壇時評」(朝日新聞・2月)

      

                                (計 6084文字)

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