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放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

これから書く内容は、かなり前から準備が出来てたけど、数式の入力に時

間がかかるから、ずっと先延ばしにしてたものだ♪ 今、自転車その他に

時間をかけてるので、Wordで長い数式を入力して微調整する気にはなれ

ない。そこで、とりあえず手書きでアップしとこう。後で余裕が出来たら、ワー

ドで打ち直すかも知れない。

   

 (☆追記: さっそく翌日、Word 入力への変更を実施。)

         

大震災以降、ウチでは原発・放射線関連の記事を多数アップして来たけど、

まだ書けてない話も沢山ある。今日アップするのは、分かりやすくまとめるな

ら、放射性物質の半減期(物理学的)と質量に関する解説だ。主要な部分は、

何も見ずに自分で導いて解いたが、念のために色々とチェックはしてある。

         

110818b

 例えば、『現代物理学小事典』(講談社)、

 『第1種放射線取扱主任者試験 徹底研

 究』(オーム社)、『改訂版 高等学校 物

 理ⅠB (教科書)』(数研出版)だ。すべ

 て個人的な所有物なので、証拠として写

 真を小さく載せとこう。他にも、参考書と

 か英語版ウィキペディアとか見ている。

     

110818a

 放射線関連の話について、今現在まず理

 解しとくべき事は、ベクレルとシーベルト

 ろう。ウチでも早くから色々と書いてるけど、

 一般人にとっては、「ベクレル」の方がより

 奇妙な言葉=概念だと思う。

 

 ありがちな説明だと、放射能(=放射線を

出す性質)の単位ということになってるけど、実際にはもっと単純に、放射

性物質の量を示す目安として使われてる。それなら、どうして「kg」や「g」

といった質量(いわゆる重さ)の単位を使わないのだろうか。

    

110818c

  おそらくそれは、質量よりも放射能で表

  す方が実用的だからだろう。何 g ある

  のかという事より、どれだけの放射線

  を出すのか。これが問題だから、1秒

  に1回、放射性崩壊によって放射線を

  出す性質を1ベクレルと呼ぶわけだ。

  ちなみに、ベクレル(Becquerel)とは

  放射能の発見者とされるフランスの

  科学者の名前で、1903年、有名

なキュリー夫妻と共に、ノーベル物理学賞を受賞している。

    

             

         ☆           ☆          ☆

さて、半減期と質量とベクレルの関係だけなら、ほとんど「算数」のレベル

で済んでしまう。それだと、簡単過ぎて私も退屈だし、数学系の常連読者

の方々も、パスする人が多いだろう♪ ブロガーとして興味深いことに、数

学系の読者は、物理系の記事をパスすることが目立つのだ。アクセス解

析から、すぐに読みとれる。

   

そこで、以下ではまず、壊変定数(or 崩壊定数 : decay constant)と呼ば

れるものを用いて、微分方程式を導入して解く。次に、その解を、壊変定数

の代わりに半減期を用いて書き直し、最後に、与えられたベクレル数から、

元の放射性物質の質量を計算してみよう。

   

物理学史の正確な流れをまだチェック出来てないが、おそらく話の始まり

は、「放射性崩壊の法則」とか呼ばれるものだと思う。つまり、「放射性物質

の崩壊(=壊変)の速度は、その時に存在する物質量に比例する」というも

のだ。これは、ごく限られたデータから実験的に求めた法則だが、物理学で

はしばしば、そこから一般的な数式を仮定する。つまり、数学的な仮説を導

入して、その後の展開が上手くいけば、「仮説は実証された」と考えるわけだ。

       

110819b

     崩壊の法則から仮定した数式

     は左の通りで、微分を含んだ

     方程式だから、微分方程式

     呼ばれてる。は、時刻 t にお

ける原子数λ(ラムダ)が壊変定数だ。最初の式の左辺が、崩壊または

壊変の速度で、それが右辺と等しいのだから、その時の原子数Nに比例

することになる。λが比例定数の役割を果たしてるわけだ。二番目の式、

dN/dt = -λN」の方がよく見かける気がするので、以下ではこちら

を基準に解くが、マイナス記号は左辺か右辺のどちらかにあればよい。

     

 (☆補足 : ブリタニカ百科事典のサイトなどによると、この辺りの理論は、

        ラザフォードとソディが1902年から03年頃に築いたものらし

        い。後にそれぞれ、ノーベル化学賞を受賞している。)

         

これを、一昔前の高校の数学Ⅲレベルで、丁寧に解いてみよう。今現在は

微分方程式は教えてなくて、映画『ガリレオ 容疑者Xの献身』の天才数学

者(犯人)・石神(堤真二)も残念がってた(96年の高校3年生以降)。

   

N≦0の場合は、物理的に無意味なので、N>0という前提条件で、微分方

程式を解くと、下の通り。∫(インテグラル)記号を用いた不定積分では、t

からNへの置換積分を用いてある。大学レベルなら、「変数分離形」として、

ビミョーに異なる扱いをする所だ(結果は同じ)。ちなみに、「log e N」とは、

e≒2.718(ネイピア数)を何乗したらNになるかを表す数。Nの自然対数

と呼ばれるもので、「ln N」と略記することもある。

        

110819c

      

         

Nが t の式で表せたから、これでほぼ解けてる。あとは、初期条件と呼ばれ

110819d

     るものを用いて、右辺の

     ジャマな「e の c 乗」を

     消せばいい。t=0、つ

     まり「初期」の原子数

N₀ とすると、微分方程式の最終的な解、「N = N₀×(e の-λt 乗)」

決定する。

        

ここでNの半減期とすると、時刻Tにおいて、原子数NがN₀の半分に

110819a2

   なるのだから、

   λとTの関係は

   左の通り。

   λT= 0.693

    だから、λとT

   の一方が分かれ

ば、他方は簡単に求められる。

       

このλとTの関係式を用いて、前に書いた微分方程式の解からλを消し、

代わりにTを使うと、次の通り。最後の式、「N=N₀×(1/2 の t/T乗)

は、非常に有名で簡単なもので、高校1年の教科書にも太字で掲載され

てた(ただし両辺をN₀で割った形)。

         

110819e

      

        

          ☆           ☆          ☆

では最後に、ベクレルの値から、放射性物質の質量(グラム数)を求める

とにしよう。ここ最近、食品の内部被曝でよく話題になってるのがCs137

(セシウム137 ; 数字は「質量数」)で、数百Bq(ベクレル)とか数千Bqと

いった数字がよく出てるから、以下では、1000Bqのセシウム137の質

を求めてみる。

     

110819f

    ベクレル数とは、t=0

    (初期)における崩壊

    速度(or 速さ)だから、

    この記事の序盤に書い

                           た微分方程式で t = 0

の時を考えて、1000=λN₀ となる。

     

ここで、λ=0.693÷(半減期)。セシウム137の半減期は30年だから、

ベクレルの時間単位である「秒」に直して計算すると、

   λ= 0.693÷(30×365×24×3600)

   

また、初期の原子数N₀は、初期の質量 x (エックス)を用いて次のように

書ける。セシウム137がもし137gあれば、原子数は「1モル」、つまり

6.02×(10の23乗)個であることを用いた簡単な算数だ。6.02×

(10の23乗)というのはアボガドロ定数と呼ばれるもので、より簡単に

6.0とする場合もあるが、ここでは6.02で計算しておく。

      N₀ = ( x / 137)×6.02×(10の23乗)   

   

したがって結局、以下のように x (エックス)を計算できる。

   

110819g

   

は、3.11グラムの100億分の1♪ つまり、ものすごく微小な量であっ

て、いちいち飲食物の放射能を測定するのがいかに大変な作業なのか、

想像できるだろう。人間には見ることも触ることも出来ない、僅かな量が問

題なのだ。高価で高性能の計測器を使って、正確に測定する必要がある。

      

なお、放射性物質のベクレル数から質量を求める式を一般的に書くと、

次のようになる。「質量数」とは、物質の質量という意味ではなく、上のセ

シウム137なら137のこと。その核種(=原子核の種類)における、陽子

と中性子の個数の和だ。

          

   質量(g) = { ベクレル数×半減期(秒)×質量数 }

                   ÷( 0.693×6.02×10²³ )

   

逆に、質量からベクレル数を求める式は、以下の通り。

    

   ベクレル(Bq) = { 質量(g)×0.693×6.02×10²³ }

                      ÷ { 半減期(秒)×質量数 }

     

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

    

      

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学的・生物学的半減期

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  被災地の被害が深刻とされる、「風評」の意味とは・・

  「想定外」という言葉の考察&リハビリラン2日目

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  原発事故はみんなが無責任、だけどね・・

                    ~東電社員の息子・ゆうだい君への応答

  震災後の青空文庫で人気、寺田寅彦『津浪と人間』  

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  久々に涼しい1日&放射線量の「ホットスポット」など

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  津波の物理学~浅い海、水面波の波動方程式と速度

  放射性ラジウムその他と崩壊系列&37度微熱ラン

  義務教育における放射線・放射能~中学校・理科の教科書&副読本

            

                                   (計 3868文字)

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