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引き算の証明、負の数~ペアノの整数論(減算=減法)

最初におことわりしておくが、この記事は、数学者ペアノ(Peano)の自然

数論(特に足し算)をある程度理解してる方を対象とした内容になってる。

整数自然数にマイナスを付けて作った数だし、引き算(Subtraction)は

足し算(Addition)を前提としてるのだ。予備知識のない方は、先に次の記

事(特に後半の計算)に目を通しておくと分かりやすいと思う。

   

    「1+1=2はなぜか?~ペアノの自然数論(足し算)

    

2年2ヶ月前にアップした上の記事は、おかげ様で今に至るまでロングセ

ラー。特に、7月と12月、1月にアクセスが増えるのは、大学生の学期末

だからだろう。数学系と言うより、教育系と情報系の授業でたまに扱われ

てるようだ。

     

その後、関連記事も次々にアップ。それらも結構なアクセスを頂いてるの

に、ずっと書けないままだったのが、ペアノの引き算(減法=減算)の記事。

何度もチャレンジしたけど、足し算より遥かにまとめにくくて、挫折し続けて

た。厄介だと思う人は多いようで、手元の『現代数学小辞典』(講談社)で

引き算は省かれてるし、各国のウィキペディアを見ても、ペアノの引き算

説明は「ほとんど」ない。少なくとも、足し算や掛け算みたいな明解な説

明や具体的計算が見当たらないのだ。

     

例えば、日本語のウィキペディアの「減法」を見ると、最初の簡単な説明の

箇所で、「減法は・・・加法の逆演算として・・・加法に統合」と書いた直後に、

「たとえば自然数の間の減法は、整数への数の拡張により、数を引くこと

負の数を加えることが同一視されて、減法は加法の一部となる」と書か

れている。減法は加法の逆演算という考えと、加法の一部という考えの間

には、多少の隔たりがあるが、なぜか「たとえば」という接続詞で簡単に結

ばれてるのだ。少なくとも、ミスリーディングな(誤解を招く)接続だろう。

     

ウィキで、その下の「定義」の項目を読むと、具体的説明として次のよう

に書かれている。

  

   「例えば、2+3=5であるので  

     5-3=2, 5-2=3

   のような計算が成立する」

   

つまり、5-3=(3と足して5になる数)=2、ということで、ひき算を足し

算の逆演算とみなしている。そのこと自体は1つの「正しい」考えだが、

引き算を「負の数の足し算」とみなしてるわけではない。つまり、

   「5-3=5+(-3)=・・・」

と考えるわけではないのだ。

          

それに対して、この記事では後ほど、「負の数の足し算」として引き算を考

えることになる。その方が、逆演算を使うより単純明快だからなのだ。

     

       

         ☆          ☆          ☆

さて、実は数学者ペアノの引き算も、代表的論文の1つ、「数の概念につ

いて」を読む限り、足し算の逆演算として考えられている(cf.『ペアノ 数

の概念について』所収、共立出版)。しかし、逆演算だと、足し算の場合の

ようにスッキリした計算が出来ない

   

例えば、引き算の証明として、

   「3-2=1  (∵ 1+2=3)

とだけ書くと、答の「1」、つまり「2と足して3になる数」をどうやって見つけ

たのかが気になる。それをもし明らかと言うのなら、そもそもペアノ的な証

明など不要だし、足し算の明解な計算とバランスが取れてない。

    

実際、1+2=3の証明なら、隙の無い機械的計算で済むのだ。ポイント

だけ書くなら、次のようなものだった。これは前掲『小辞典』その他にある

書き方で、ペアノ自身の記号の使い方とは少し異なるが、本質的には同

じものだ。

    

   1+2=0´+0´´=(0´+0´)´=((0´+0)´)´=0´´´=3

     

スタートの自然数「0」と、次の数を表す記号「´(ダッシュ or プライム)」を

用いて、1を0´、2を0´´とし、簡単な2つの公式を用いるだけで、機械的

に3という答を導出できる。偶然見つけたり気付いたりすることなく、密かに

普通の日常的計算を援用することもなく、必然的アルゴリズムで計算でき

るのだ。

       

こうした計算を、引き算でも出来ないか。そう思って、今まで色々と試して

来たが、予想外に面倒だ。まず、自然数にマイナス記号をつけて負の整数

を作り、負の整数同士の関係や、負の整数と自然数との関係を決める。

その後、引き算「関連」の公式をなるべく少数、簡潔に導入して、すべての

引き算を証明したいわけだが、公式の最適な設定に悩むのだ。ペアノ自

の前掲論文では、逆演算の話も含めて少し一般論を語るだけで、具体

的な説明は「省くことにする」とだけ書かれてる。訳者の解説を見ても無い。

      

そこで、自分で試行錯誤した結果、とりあえず次のように考えるのが最善

だろうという、暫定的結論に到達した。なるべく、ペアノ自身の考えに即し

つつ、多少の変更を施してある。例えば「3-2」は、ペアノの定義だと

「3+(-2)」だが、ペアノの場合、これは「+」(加算)の逆演算を意味し

ており、負の数の足し算を意味してるわけではない。

     

以下では、「3-2」は「3+(-2)」と定義し、更にこれを「負の整数の足し

」として考える。そうすれば、現在の数学の考えにも近づくし、足し算の

感覚も応用できる。新たに引き算特有の公式を導入する必要もなく、逆

関数とか逆演算という、やや高級な概念を持ち出す必要もなく、「負の整

数」の扱いだけ決めておけばいいのだ。。

     

    

        ☆          ☆          ☆

まず、自然数全体にマイナスをつけて、全体として整数を作る。ペアノ自

は、0を別扱いしてるが、ここでは足し算記事との整合性も考慮し、

然数の中に0を含めておく。

   

すると、「・・・-3,-2,-1,-0,0,1,2,3・・・」という整数の集合が

形式的に出来上がる。ペアノ算術的には、整数は「・・・-0´´´,-0´´,

-0´,-0,0,0´,0´´,0´´´・・・」と定義される(本人の書き方ではな

い)。ただし、追加する最初の公式が必要となる。

   ③ : -0=0 

    

ちなみに、①と②aは、足し算の定義式をそのまま使うことにする。以前は

自然数だけを対象としていたが、以下では整数全体が対象となる。

   ① : m+0=m

  ②a : m+n´=(m+n)´

    

引き算の場合、②a式の両辺の「前の数」を考え、さらに左右を逆転する

ことで、次の式も導入する。

  ②b : m+n=(m+n´)-1

    

ここで、右辺の「-1」は、結果的に引き算とも考えられるが、基本的には

前の数へと対応づけ演算記号と定義しておく。「次の数」へと対応づ

ける記号が「´」だから、「前の数」の記号は「 ⁻´ 」(マイナス・ダッシュ)とし

たい所だが、あまりに特殊なので、代わりに色付けして「-1」としておこう。

形式的には、「m´-1=m」と定義すればいい。ちなみにペアノの論文で

は、「-1」に相当する記号は、単なる「-」(マイナス)である。いずれにせ

よ、「次の数」とか「前の数」への対応づけは右作用演算であって、二項演

算ではない

       

次に、形だけはペアノとほぼ同じ公式として、

   ④a : (-m´)´=-m 

   

を導入する。ペアノの論文だと、「-(a+1+1=-a」と書かれてるが、

ここでの「+1」は例の「´(ダッシュ)」、つまり次の数を示す記号なので、

④aのように書いたのだ。これは要するに、「-m´」の次の数が「-m」で

あることを示してる。例えば「-(2+1)」の次の数が「-2」ということで、

1ずつ等間隔に離散した整数の列、つまり数直線が完成する。ちなみに、

はここでは整数全体とする(ペアノでは1以上の自然数)。

      

④a式で、両辺の「前の数」を考え、左右を逆転させると、

   ④b : -m-1=-m´

      

左辺は基本的には、引き算と言うより「-mの前の数」を表している。例

えば、「(-2の前の数)=-(2の次の数)」ということだ(両辺とも-3)。

以下の証明で、分かりにくいのは④aと④bの使用だと思うので、この時

点であらかじめ納得しておいた方が楽だと思う。ではいよいよ、引き算を

証明する計算を具体的に示して行こう。

    

       

         ☆          ☆          ☆

[例題1: 3-2=1の証明] (プラス-プラス=プラスの型)

   

   3-2 = 3+(-2)       (引き算の定義)

       = 0´´´+(-0´´)   (自然数の定義)

       =(0´´´+(-0´´)´)-1      (∵ ②b) 

       =(0´´´+(-0´))-1       (∵ ④a)

       =((0´´´+(-0´)´)-1-1  (∵ ②b)

       =((0´´´+(-0))-1-1    (∵ ④a)

       =((0´´´+0)-1-1       (∵ ③)

       =(0´´´-1-1           (∵ ①)

       =0´´-1               (-1の定義)

       =0´                  (-1の定義)        

       =1                   (自然数の定義)

                         

   

[例題2: 1-2=-1の証明] (プラス-プラス=マイナスの型)

     

   1-2=1+(-2)      (引き算の定義)

      =0´+(-0´´)    (自然数の定義)

      =(0´+(-0´´)´)-1        (∵ ②b)

      =(0´+(-0´))-1         (∵ ④a)

      =((0´+(-0´)´)-1-1     (∵ ②b)

      =((0´+(-0))-1-1      (∵ ④a)

      =((0´+0)-1-1         (∵ ③)

      =(0´-1-1             (∵ ②)

      =0-1                  (-1の定義)

      =-0-1                (∵ ③)

      =-0´                  (∵ ④b)

      =-1                   (自然数の定義)             

     

     

[例題3: 1-(-2)=3の証明] (プラス-マイナス=プラスの型)

    

    1-(-2)=1+(-(-2))     (引き算の定義)

          =0´+(-(-0´´))   (自然数の定義)

          =0´+(-(-0´´)´)´    (∵ ④a)

          =0´+(-(-0´))´     (∵ ④a)

          =0´+((-(-0´)´)´)´  (∵ ④a)

          =0´+((-(-0) )´)´  (∵ ④a)

          =0´+((-0)´)´      (∵ ③)

          =0´+0´´          (∵ ③)

          =(0´+0´)´         (∵ ②a)

          =((0´+0)´)´        (∵ ②a)

          =0´´´             (∵ ①)

          =3               (自然数の定義)          

     

     

[例題4: -2-(-1)=-1の証明] (マイナス-マイナス=マイナスの型)

    

    -2-(-1)=-2+(-(-1))      (引き算の定義)

            =-0´´+(-(-0´))   (自然数の定義)

            =-0´´+(-(-0´)´)´  (∵ ④a)

            =-0´´+(-(-0))´   (∵ ④a)

            =-0´´+(-0)´      (∵ ③)

            =-0´´+0´         (∵ ③)

            =(-0´´+0)´       (∵ ②a)

            =(-0´´)´          (∵ ①)

            =-0´             (∵ ④a)

            =-1             (自然数の定義)

    

      

        ☆          ☆          ☆

以上を参考にすれば、他の型の引き算も証明できそうなことは想像でき

ると思うので、後は読者の方々にお任せしよう。非常に単純な操作だが、

カッコ、ダッシュ、マイナスが続くと計算ミスしやすい。ダッシュの代わりに

「+1」という右演算記号を使うのも一つの手だ。

         

最後は、引き算ではない、負の整数の足し算をやってみよう。「マイナス+

プラス」の計算は、交換法則を先に証明していれば、「プラス+マイナス」

に変形できるので、今までの引き算の話と同様になる。しかし、交換法則

の証明は、自然数の足し算だけでも面倒だったし、整数の足し算に関し

てはまだ行ってない。そこで、交換せず、そのまま足すことにする。

      

[例題5: -1+2=1の証明] (マイナス+プラス=プラスの型)

      

   -1+2=-0´+0´´       (自然数の定義)

        =(-0´+0´)´     (∵ ②a)

        =((-0´+0)´)´    (∵ ②a)

        =((-0´)´)´      (∵ ①)

        =(-0)´         (∵ ④a)

        =0´            (∵ ③)

        =1             (自然数の定義)

       

    

         ☆          ☆         ☆

ここまで来ると、ペアノの割り算ということになる。しかし、今度は有理

数(整数/整数)を相手にすることになるし、掛け算の逆演算だから、相

当面倒な話だろう。いつになるか分からないが、いずれは記事にまとめた

いと思ってる。その前に、中学校数学における引き算や負の数の扱いを

記事にするかも知れない。

   

とりあえず、2年以上迷い続けたペアノの引き算を再構成できたので、肩の

荷が下りた感じで満足だ♪ それでは、今夜はこの辺で。。☆彡

        

    

    

cf.1+1=2はなぜか?~ペアノの自然数論(足し算)

  「1×1=1」はなぜか?~ペアノの自然数論2(掛け算)

  集合論における自然数の表記と計算

  自然数に関するペアノの公理~論文『数の概念について』に即して

  0、1、「次の数」に関する哲学的考察~フレーゲ『算術の基礎』

  「1+1=2」はなぜか~小学1年生の算数の教科書

  引き算、足し引き連続、0(ゼロ)~小学1年生の算数2

  掛け算の導入、足し算・引き算との関係~小学校の算数3

  同じ数ずつ分ける計算、割り算(除法)~小学校の算数4

  原始リカーシヴ関数と足し算(加法)、掛け算(乗法)

            

                                 (計 4968文字)

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数学」カテゴリの記事

コメント

数年掛けて難産のようでしたが、スッキリしてますね。
任意の自然数 a に対して、a+ が自然数を与えるような右作用演算 + が存在する、これを崩さずに前の数(-m-1=m)を考えて、あくまでも右作用演算は二項演算ではないという主張し、1以上の自然数を整数全体にペアノ論を拡張した証明骨子ですね。

投稿: gauss | 2012年2月 7日 (火) 12時26分

> gauss さん
    
こんばんは。毎度どうもです♪
  
右作用演算と言う時の「右作用」とは、単に右側に
記号を書くってことだから、本質は1対1の写像。
もう少し広く言うと、1変数関数ってことですね。
   
結局、人間の頭は、一度に相手にする数が少ない方が
考えやすいように出来てるんでしょう。
脳科学的にどんな土台があるのか、興味が湧く所です。
       
計算システムはかなりスッキリさせたつもりですが、
足し算や掛け算よりはやっぱり複雑ですね。
   
面白いことに、「1+1=2はなぜか?」といった
検索アクセスは次々と入るのに、
「2-1=1はなぜか?」と問う人はほとんどいない。
それは、「逆演算にすぎないから」ではないと思ってます。
    
ちなみに、僕が逆演算に感じた違和感は、リカーシヴ関数や
計算可能性の議論と関わって来るようなので、
それもいずれ記事にしたいと思ってます。。

投稿: テンメイ | 2012年2月 8日 (水) 02時41分

すみませんが数学は得意ではないのですが、テンメイさんの説明でも依然モヤモヤする点が幾つかあります。

★モヤモヤ点
テンメイさんが "自然数全体にマイナスを付けて" 作った
「整数」と称する集合について、
この「整数」が数学の専門家たちが言う「整数」と
"厳密" に同一と見なせるのかどうかはっきりしない。
私を始めここの読者の多くが知りたい事は便宜的に作った
「整数」ではなくて我々がよく知る「整数」についてなので。

●モヤモヤ理由
まず理由を説明する前の準備として用語を定めさせて下さい。

ここでテンメイさんが作った「整数」と、
専門家たちが言う「整数」が"厳密"に同一かは
現時点で未証明なので、紛らわしさを防ぐ為に、
テンメイさんの「整数」を「テンメ整数」と呼ばせて下さい。
同様にテンメイさんによって示されたものを
「テンメ整数の公理」とします。

テンメイさんが自然数全体にマイナスを付けて作った数ですが、
この時点ではまだ「整数」の負数と言う事が出来ないので
「テンメ負数」とします。

「整数」の根拠となる公理を「整数の公理」と呼びます。
「整数」の根拠となる公理を示せ、というはご勘弁下さい。
数学は弱いので。
ですが数学者たちが公理もないまま「整数」を論じているとは
信じられないので、
この公理は存在するものとさせて下さい。

準備が長くなりましたが、ここからが理由です。
第一に、
「テンメ整数」と「整数」が厳密に同一という証明が
無いように見える事です。
テンメイさんは「ペアノ算術の減算」を「テンメ整数の公理」から
導き出そうとしているのだと最初は思っていました。

実際「テンメ整数の公理」から見事に「テンメ算術の減算」を
導き出されました。
しかし「テンメ算術の減算」と「整数の減算」がどう関係しているかは何も示されていません。

第二に、
「テンメ負数」はその定義からペアノシステムの
一つと言えると思います。
(ペアノシステムの用語はウィキペディアから拝借しました)
ウィキペディア「ペアノの公理」によると、
「自然数」に横棒を付けただけの「テンメ負数」は同型と言えます。

テンメイさんは一つの公理を作り、この公理と「自然数」と
「テンメ負数」から「テンメ整数」を作りました。
この公理(-0=0)を「テンメイ第一公理」と言う事にします。

私は、この「テンメイ第一公理」を根拠に作られた
「テンメ整数」が「整数」と厳密に同じ性質を持つのかどうかが
一番気になるのですが、
私にはどうしても同じ性質を持つ様には見えません。

なぜならペアノシステムは閉じたシステムです。
ペアノの公理とペアノ算術からは
自然数の集合N以外の数は生まれません。
つまり閉じています。

同様に「テンメ負数」のペアノシステムも
閉じているのではないですか?
「テンメ減算」は「ペアノ加算」の鏡写しで
本質的に同じものの様に見えます。
どちらも本質的には「後続」という手順を元にしています。
もしそうなら「テンメ負数」システムは閉じています。

元々2つの閉じたシステムが「テンメイ第一公理」によって
相互の間は開かれるのでしょうか?
言い換えると「テンメ負数」に「ペアノ加算」を適用すると
「自然数」を生じうるのでしょうか?
「自然数」に「テンメ減算」を適用すると
「テンメ負数」を生じうるのでしょうか?

ペアノシステムでは0より前に数はありません。
なのに何故その様な事が可能なのですか?
私にはペアノの公理から双方共0を跨ぐ事は出来ない様に思えます。

「テンメイ第一公理」は"-0=0"と言っていますが、
別々の2つ集合の1つの要素を取り上げて、
言葉でイコールと言った所でそれぞれが
「閉じている」事実は変わらず、
「テンメイ第一公理」は単なる言葉以外に
あまり意味はなさそうです。

結局、最初にテンメイさんが述べた
「負の数の足し算として引き算を考える」と言うのは
「テンメ整数」の中の話でした。
まぁ「整数」と「テンメ整数」は違うのだよ。
と言ってしまえばそれだけなんですが、
私を含め読者の皆さんが興味があるのは
「テンメ整数」の話ではなく「整数」の話なんです。

投稿: pengwyn | 2012年6月 5日 (火) 20時05分

> pengwyn さん
   
はじめまして。ペンギンさんですかね。
コメントどうもです。
今朝レスするつもりが、トラブルで数時間遅れとなりました。
     
「数学も含めて、あらゆる学問は、
根本的に考えるとモヤモヤするものです」。  
そう答えるのが、一番簡単かも知れませんが、
もう少し説明を試みましょう。
  
       
その前に、数学的内容とは直接関係ないことについて、
ブログの管理人&ライターとして応答しておきます。   
「私を始めここの読者の多くが」と書いてますが、
ペアノの足し算記事1本だけでも読者数は1万人近く。
もちろん読者には、私の直接の知り合いも含まれてます。
レベルも感覚も多様ですので、念のためご承知を。
人間の個性という難問は、学問にとっても本質的です。
    
      
さて、最初の「モヤモヤ点」から既に、色々と気になります。
「数学の専門家たちが言う『整数』」が何なのか書いてない
だけでなく、それが1つか複数かも書いてません。
「我々がよく知る『整数』」についても同様。
ちなみに、自然数全体にマイナスを付けるという操作は
ごくフツーのものであって、私の独創ではありません。
ウィキの『整数』の「素朴な説明」も、そうなってます。
マイナスを付けた後、逆元としての性質も加えたということ。
      
次に、公理という言葉は、実は数学でさほど使われてませんが、
根本的な命題という程度に柔らかく受け取りましょう。
「整数の公理」というのは、複数存在するのであって、
たとえばペアノ自身の公理と『解析入門Ⅰ』(東京大学出版会)
の複雑な設定とでは、少なくとも表面的にまったく異なるし、
それらが同等だという証明も書かれてません(可能でしょうが)。
     
有名な数学者・高木貞治の『新式算術講義』(博文館)も
かなり外見が違ってます(国会図書館でネット閲覧可能)。
もちろん、「我々がよく知る『整数』」との同等性も、
どれにも書かれてません。
     
必要なら、まずそれらの読み手が自分で考えればいいこと。
ペアノもデデキントも省略だらけです。
       
さらに、「テンメ負数」がペアノシステムの一つと書いてますが、
私の作り方はペアノシステムではありません。
ペアノシステムで作った自然数にマイナスを付けただけ。
もちろん、数学者ペアノと同じ負の数の作り方だからといって、
ウィキの言う「ペアノシステム」とは言えません。
    
テンメ負数を、自然数とは別のペアノシステムとして新たに
構成しなおすことは一応可能ですが(-0→-1→-2→・・・)、
この場合、普通の自然数0、1、2・・との関係が問題になります。
無関係なら、両者は記号の見た目が違うだけで全く同等。
関係づけるなら、2つのシステムが混在or重複してしまう。
だからごく一般に、負の数はマイナスをつけて作るのです。
     
したがって、2つの閉じたシステムなどありません。
元々あった1つの閉じたシステムと、そこから作った負の数と、
それらをつなぐ「公理」によって、整数という
大きなシステムが出来上がっただけのこと。
この大きなシステムの中に、元の閉じたシステムが含まれるのです。
イメージ的には、物差しの絵を1本、黒色でキレイに書いた後、
それを赤インクでコピーして、横につなげる感じ。
私が苦労したのは、そのつなぐ「公理」の選び方と、
それによる具体的証明です。
     
       
なお、普通の人が習う整数は、中1の教科書の整数でしょう。
手元の『楽しさひろがる数学1』(啓林舘,2009)では、
「0より3小さい数」を「-3」と定義してます。
「3小さい」という説明は、3度低いという温度の話だけで導入。
その後、右に伸びる0以上の数直線を、左側に対称形に伸ばして、
後はその数直線の図と「右」「左」で説明してます。
加法、減法も、右や左への移動で説明。
ちなみに、いずれ別記事を書こうとは思ってます。
       
こうして図形的に作った整数は、テンメ整数と「同等」。
集合の元も、加法・減法の性質も同じです。
もちろん、構成法が違うから、それぞれにおける
証明の仕方は違いますけどね。
          
   
最後に、遥かに根本的なことを一つ。
数学に限らず学問とは、全体的には、完全かつ無矛盾で明確な
体系1つで作られてるのではありません。
実用的にある程度以上それに近い体系がいくつか存在して、
証明はさておき、その間の整合性もそこそこあると思われる。
そして、ぼやけた部分は、多くの場合、あるいは
多くの人にとっては、全く気にならない。
    
テンメ負数やテンメ整数に満足できないのなら、
自分が満足できるものを探し出すか、自分で作ればいいのです。
人によって感覚も違うし、用途も違うのだから。
同じ入試問題でも、参考書によって解答が違うのと少し似てます。
    
私自身は差し当たり満足してるし、これに相当する
具体的説明を見たことはありません。
後ほど改良する可能性はありますけどね。
           
それでは、この辺で。。

投稿: テンメイ | 2012年6月 7日 (木) 11時25分

どうも丁寧な御返事ありがとうございます。
書いた後につまらない質問をしてしまったかなぁ…と思って
スルーされても仕方ないかと思っていたので。

せっかく丁寧に御説明頂いたのに、
私の頭ではちょっと難しいかも知れません。
すみません。
突き詰めて考えるとモヤモヤするのは当然という事ですかね?

私のモヤモヤはそこまで深い意味ではないかも。
多分モヤモヤしたのは私の頭のデキが根本原因でしょう。
「数学の専門家たちが言う『整数』」が何なのか
書きたかったのですが、私の頭では無理でした。

「整数の公理が一つじゃない」というのは私には衝撃的でした。
(公理という言葉が数学的で無いのはすみません、
原始命題というべき?)

もちろん形式的に異なるものが幾つもあるのは知っていました。
少なくとも集合論を使ってるのと、そうでないのはありますし。

だたそうした違いは言い換えであり、どの公理も
数学的な何らかの手順で同一のものに変換出来るのだろう
と思っていました。
それらが同等だという証明が本に書かれなくても、
筆者が同等と"知って"使っているのだと思い込んでいました。

これについて深い洞察はありません。突っ込まないで下さい^^;
整数論を一つに決めてなら、
二人の数学者が整数について論じるとき
どの「整数」について話し合うかを決めておかないと
齟齬が起こり得るんですね。

ま、明示しない時にはどのバージョンにするかは
暗黙の決まり事はあるのでしょうけど。

整数が複数なら有理数も複数だし、複素数も複数だし。
線形代数もどの「整数」バージョンの線形代数か
決めておかないと細かい点で
違いが起こり得るという事ですよね?

勿論私が仕事ので使う程度の線形代数で
違いが問題になるとは思いませんけど
数学者は大変かなと。

なんかそんな素朴な考えで、少なくとも整数については
数学界で1つに統一されてるのだと。
少なくとも専門家の間では統一されているので、
テンメイさんが2つ目の整数を今更作ろうとしているのが
奇異に見えてしまいました。

もちろんそれが「普通の」整数の言い換えかも知れない
可能性はあった訳ですが、
その言い換えが可能な事を証明する必要はあるな、と思いました。


しかし!!「普通の」整数なんてものは無いのですね!
であれば、テンメイさんが独自の整数公理を作るのも
ちっともおかしな事ではありません。

複数あるならモヤモヤしても仕方ないですね。
仮に明快な答えを手に入れたとしても、それは複数ある中の
たった一つの整数論での答えに過ぎないんですし。

うーん…そう考えると数学を知りたいというモチベーションが
急低下してしまいました(-_-;)

不完全性定理なんてのがあるけど、そういうのは私の様な
一般ピーポーは一生掛かっても理解はおろか
触れる機会すら無いから、不完全でも
自分のモチベーションには関係無いと
たかをくくってましたが、
まさか整数論すら統一されていないとは…
数学ってそんなもんなんですかね?

投稿: pengwyn | 2012年6月 7日 (木) 19時35分

> pengwyn さん
  
再びコメントどうもです。
   
「つまらない質問」ではなく、中身のある質問ですが、
レスの仕方は正直、迷いました。
私自身は、質問内容についてあまりモヤモヤしてないし、
軽く受け流そうかとも思ったけど、わりと丁寧に
応答したのは、お名前がキュートだからです♪
   
     
整数の公理に限らず、学問の根本は決して
確固たるものではありません。
根拠も絶対的ではないし、解釈の余地も大きいし、
代案・対案もあります。
   
「根本が1つに見える」ことはあるかも知れないけど、
それは外見だけか、根本の手前のことに過ぎないから。
以前、記事も軽めに書いてますが、物理学における根本も
非常に不可解な話になってます。力、質量、長さ・・etc。
  
ただ、ほとんどの人はその謎に気付かないし、気にもとめない。
それは、知性の問題でもあるし、実用性の問題でもあります。
深く考えなくても、確固たる唯一のものがなくても、
我々はさほど困らないわけです。
たとえ「1+1=2」に疑問があっても、
1万円の本と1万円の服を買えば、2万円払う。
それで社会は十分円滑に動きます。
あるいは、「1kg+1kg=2kg」と書けば
小学校のテストで○印を付けてもらえる。   
   
      
どの考えに基づくのか、「決めておかないと細かい点で
違いが起こり得るという事ですよね?」というご質問について。
適切な答は、「起こり得るけど、滅多に起きない」でしょう。
   
そもそも数学者も科学者も、自分の専門分野で先に行くことを
考えるのが普通で、全体の根本なんてものは考えない。
物理学も経済学も、数学的証明なしに数学の成果を使うし、
それでいいと考えられてるわけです。
数学でさえ、厳密な証明より簡単な使い方が重視される時代と
いう話は、ε-δ論法の記事でも書きました。
    
突っ込んだ話をすると、根本が複数あるからといって、
モヤモヤするとは限りません。
たとえば、2つしか無いのなら、片方理解するだけで
半分に到達するのだから、十分明晰でしょう。
ところが、「多数」とか「無数」とまでは言わないものの、
2つ、3つでは収まらないわけです。
現実の状態としても、可能性としても。
   
  
私も、単なる数学好き少年だった頃は、完全な体系を夢見て、
ほぼ完全に理解してる数学者もいるのだろうと思ってました。
しかし、明らかにそうではありません。
数学も論理法則を使いますが、その論理法則でさえ
かなりの揺らぎがありますからね。
体系的にも、個別の法則の扱いにおいてもそう。
「証明」とは何か、という話を考え出しても「底なし沼」です。
     
とはいえ、様々な学問の中で、数学と論理学の精密さは
飛び抜けたものだし、独特の美しさ、深遠さもあります。
理想的な唯一最高の完成品を学ぶのではなく、
現在の様々な考えを知り、それを自分なりに
少しでも押し広げようとすること。
この面白さが分かるかどうかがポイントでしょう。
「底なし沼」を、逆に透き通った青空と感じられるかどうか。
      
学問とは、「学」び、「問」い続けること。
問うのは、自分であり、われわれ人間なのです。
限りある存在である人間が、無限の世界を夢見つつ、
世代を越えて少しずつ、みんなで歩み続けて行く。
私は素晴らしい営みだと思いますよ。
それでは。。

投稿: テンメイ | 2012年6月10日 (日) 00時46分

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