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パニック障害&発作、広場恐怖の診断基準~DSM-Ⅳ-TR

連休後半の前夜、本降りの雨。ランニングは出来ないし、時間もないから、

気分的には簡単な理数系記事を書きたい所なんだけど、それよりもっと

ご無沙汰気味になってる、精神医学系の記事をサラッと書くことにしよう。

    

いわゆる心の病、つまり精神疾患を大きく分けた時、もっとも患者数が多

くて関心も高いのが、うつ病を中心とする気分障害だ。2008年の患者

調査(中分類)での総患者数は100万人強(104万人)。それに続くのが

統合失調症(旧・精神分裂病)など比較的重い病で、80万人。そして3番

目が、神経症的な病で、60万人弱(59万人)。ちなみにこれらは、調査

日における推計数であって、1年間の患者数ならもっと増えることになる。

           

上の3番目、代表的な3分類の中で一番少ないとも言えるが、統計上の

正式名称は「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」で、

1年前に記事を書いた有名なPTSD(外傷後ストレス障害)も、ここに入っ

てる。ただし、この名前での患者数は僅か3000人とされてるから、有名

なわりに患者は少ないのかも知れない。PTSDと類似して、もっと広範囲

の患者を含む「適応障害」の患者でも、4万人強だ。

       

それに対して、神経症的な障害の内、目立って多いのは「全般性不安障

害」で、66000人。次がわりと有名な「パニック障害」の56000人だ。今

日はこのパニック障害について、毎度お馴染みの世界標準マニュアルを

元にまとめてみよう。米国精神医学会が2000年に出版したもので、参考

にした邦訳は『DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 新訂

版』(医学書院)だ。ちなみに訳者代表には、雅子さまの主治医としてお馴

染み、大野裕という名前も入ってる。

       

     

         ☆          ☆          ☆

厚生労働省の患者調査では、WHO(世界保健機関)によるICD-10(第

10回・国際疾病分類)が使われてるが、基本的な分類の仕方については

DSMとそれほど違わないようだ。

     

DSMでは、第5章・統合失調症及び他の精神病性障害、第6章・気分障

害に続いて、第7章が不安障害となってる。この大分類の中で、一番最初

に置かれてる「障害」がパニック障害(Panic Disorder)だが、実はその

前に、障害ではないけど重要な基本概念として、パニック発作と広場恐怖

の2つが説明されてるのだ。      

     

パニック発作(Panic Attack)の診断基準は以下の通り(ほぼ原文)。い

つもの大前提として、これは専門家向けの基準であって、素人判断は危

なので、自己責任の上、単なる参考に留めて頂きたい。その点、悪し

からずご了承を。。

        

      

  強い恐怖または不快を感じるはっきり他と区別できる期間で、以下

  の症状の4つ以上が突然発現し、10分以内に頂点に達する。

  (1) 動悸、心悸亢進、心拍数の増加

  (2) 発汗

  (3) 身震い、震え

  (4) 息切れ感、息苦しさ

  (5) 窒息感

  (6) 胸痛、胸部の不快感

  (7) 嘔気、腹部の不快感

  (8) めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ

  (9) 現実感消失、離人症状(自分自身から離れている)

 (10) コントロールを失うことや、気が狂うことに対する恐怖

 (11) 死ぬことに対する恐怖

 (12) 異常感覚(感覚麻痺、うずき感)

 (13) 冷感、熱感

   

     

パニック発作というものは、直接見たことも体験したこともないが、この基

準から推測する限り、医療系などのテレビドラマで見たものと同様なんだ

ろう。専門家の医療監修を受けてるのだから、当然だし、同じ人間という

存在がパニックになる状態に、それほど大きな違いはないと思う。

              

パニック発作は、3種類に細分されてる。まず、予期しない(きっかけのな

い)もの、次に、状況依存性の(きっかけのある)もの。そして最後に、それ

ら2つの中間というか、やや後者よりの分類で、状況準備性のもの。これ

は例えば、運転中や運転後に「起こりやすい」発作、「起こることもある」発

作のことを言うとのことだ。。

   

     

          ☆          ☆          ☆

繰り返すが、パニック発作というのは障害の分類そのものではなく、障害

の重要な要素である。パニック発作と関わる障害としては、PTSD、強迫

性障害、社会恐怖などもあるが、中心的な「パニック障害」の基準を示す

には、パニック発作と並ぶもう一つの重要な症状、「広場恐怖」(Agora-

phobia)の診断基準についても見ておく必要がある。

   

広場恐怖とは、以下のA、B、2つを満たし、他の疾患による説明ではうま

く行かないものを言う。長いので、要約して引用しよう。

    

  A  逃げられない(または逃げたら恥をかく)ような場所や、パニック

     が起きた時に助けが得られないような状況への不安。例えば、

     混雑の中、橋の上、バス・列車・自動車での移動など。

   

  B  その状況が回避されているか、パニックを必死に耐え忍んでいる

     か、同伴者が必要である。  

        

  

上のB基準は、Aに続く2つ目というより、Aを診断しやすく言い換えた補足

だろう。本来、Aの「不安」が恐怖のレベルでハッキリ満たされてれば、Bも

当然満たされるはずだ。強い不安があれば、回避するか耐え忍ぶか、同

伴者の支えを得るのは当たり前だろう。 

      

    

          ☆          ☆          ☆

では最後に、パニック障害の診断基準について。パニック発作は必要条件

であって、さらに広場恐怖があるかないかで2種類に分けてある。解説文を

読み、常識的に考えると、おそらく広場恐怖を伴う方が普通だろうが、順番

としては、伴わない方が先になってる。以下、要約してみよう。

   

  「広場恐怖を伴わないパニック障害」

   

  A  (1)と(2)の両方を満たす。

     (1) 予期しないパニック発作が繰り返し起こる。

     (2) 発作の後、1ヶ月間以上、以下の(a)~(c)の1つ以上が続い

        たことがある。

        (a) さらなる発作の心配

        (b) 発作やその結果の意味についての心配

           (心臓発作を起こす、気が狂う、など)

        (c) 発作と関連した行動の大きな変化

  B  広場恐怖が存在しない。

  C  パニック発作は薬や一般身体疾患によるものではない。

  D  他の疾患では上手く説明されない。

    

   

  「広場恐怖を伴うパニック障害」

  

  「・・・伴わないパニック障害」の基準Bだけを、「広場恐怖が存在する」

  へと変更。他は同じ。

    

    

          ☆          ☆          ☆

注目すべきは、上の(b)。つまり「意味」についての心配であって、患者は

しばしば、色々と考えるようだ。男女比は、広場恐怖を伴うものが1:3、伴

わないものが1:2。圧倒的に女性の方が多い。

   

生涯有病率は1~2%程度だが、臨床症例中の有病率は数十%で、かな

り高い。特に循環器系の患者で目立つらしいのは、心臓発作や呼吸の乱

れに対する心配と関連するからだろう。循環器系の薬物との関連もあるの

かも知れない。パニック障害は、他の不安障害、あるいは、うつ病(大うつ

病性障害)との合併も多いようだ。なお、典型的な発症時期は30歳前後で、

遺伝もかなり関わってるらしい。

         

治療には、薬物療法や精神療法が用いられる。薬物としては、抗うつ薬

(SSRI、SNRI、三環系)、抗不安薬(ベンゾジアゼピン)。精神療法として

は、暴露療法(状況にさらす訓練)、認知行動療法(適切な考え方や行動

を学習する)が有効とされる。治療法に関してだけは、医師向けのオンラ

インのメルク・マニュアル(Merck Manuals)を参照したが、このマニュ

アルもDSMの基準に即したものだ。

          

あくまで、医療機関における医師の診察を受けるのが基本だということを

再び明記して、それでは今日は、この辺で。。☆彡

    

    

  

cf. PTSD(外傷後ストレス障害)の診断基準~DSM-Ⅳ-TR

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   うつ病の診断基準と抗うつ薬~NHK『ためしてガッテン』

   うつ病の診断基準2~気分変調性障害

   うつ病の血液診断と遺伝子変化

   うつ病の診断基準3~双極Ⅰ型障害(躁うつ病)

   うつ病の診断基準4~双極Ⅱ型障害(軽い躁うつ病)

   新型うつ病の一つ、非定型うつ病について

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   心理療法を無料で全国民に~朝日新聞「欧州の安心 イギリス」

   大胆かつ繊細な試論~香山リカ『雅子さまと「新型うつ」』

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   統合失調症の診断基準、統計、および歴史的経緯

            

                                 (計 3335文字)

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コメント

11番を除いて全部当てはまる
広場恐怖は凄いありますけど・・・
カメのコンサートに行く日は2~3日前から行きたくなくなり
当日はもうめちゃめちゃ、気分が悪くて、手の指から痺れてくるし
頭からその事が離れなく、もう怖くて怖くて。
でも行くんです。行きたくて・・・
      
食欲も全くなくなり。姉に迷惑かけながら会場にフラフラと半分意識なく。
で、ここからが全く自分でも理解できませんが、始まったら
平気できゃ~きゃ~騒いで、コンサート終わったらま全く正常になってお腹も減って食べれるようになる。
でも気候も凄く精神を左右するんです。
朝、気分が悪いと必ず雨です。なんなんでしょうね。
昨日も1日中、寝込んでいました。でも夜中は元気なんです。
今日は朝早くカメちゃんが映画初主役が決まってもう嬉しくて
友人とお祭りメールとか電話ではしゃいじゃって。
近頃冷静に考えると、私の場合、多分80%は治っていて
あとの20%は思い込みだと思います。
でもテンメイさまの13ヶ条の12は当てはまるから怖いです。

投稿: みに子 | 2012年5月 3日 (木) 22時11分

> みに子さん
   
こんばんは

他が全部当てはまるのに11番だけ除くってことは、
命に関わるものではないからですかね。
    
メルクマニュアルに、
「通常10分以内にピークに達し、その後数分以内には
消失し、医師もほとんど観察できないほどになる。
・・・医学的には危険ではない」
と書いてました。
心臓も脳も大丈夫なのかな。心は別として。。
    
それにしても、コンサート前後でそんなに変わるんですか!
キャーキャー騒いで、終わったら放心状態になるのかと
思ったら、バクバク食べまくってるわけね♪
ま、その前に食べてないから、いい事だけど。
    
食べるとか、寝るとか、人間にとってすごく大切☆
食欲が湧いて、よく眠れるっていうのは、
持久系スポーツの大きな長所だと思ってます。
コンサートや舞台より、安上がりだし、
時と場合も自分で自由に選べるし
   
だから、みに子さんもウォーキングですよ♪
聞き飽きた? あっ、そう
   

気候って言うか、天候でしょ♪
僕も時々書いてるけど、雨降りの前には体調や
テンションが下がることが多いですね
降ってる最中もそうだけど、その前とか始めのうち。
   
ま、雨は実際に生活の邪魔だし、気分の問題も
大きいと思うけど、最大のポイントは気圧でしょ。
気圧が高い状態から低くなっていく時が一番ダメ。
世の中の景気と似てるかも。経済状況が悪くなった
後より、悪くなっていく過程の方が、不安に感じる。
  
あと、個人的には湿度が高いのがダメ。
これは、高くなっていく途中って言うより、
高くなった状態が不快です。
   
僕も、昼より夜中の方が元気だなぁ。色々と
静かだし、人も光も少なくて落ち着く。
あと、夜中だと頑張らなくていいような気がしますね。
みんな、寝てるか遊んでる時間帯だから。
   

亀梨の映画って、『ベム』かと思ったら文学作品☆
ずいぶん難しい役を引き受けたなぁ。勇者かも♪
ま、ベムもまさかの成功になったし、
映画『俺俺』も成功するといいですね。
原作内容からして、ヒットはしなくても大丈夫のはず。
それより、観客による映画の評価ですね。
特に、プロに認めてもらえば、次の仕事につながる。
   
で、最後にちょっとポジティブな話を書いてますね
80%は治ってて、20%は思い込み。

ほんじゃ、もう大丈夫でしょ
パニック発作や広場恐怖が心配なら、自宅のPCで
出来る単純な仕事でも始めてみたら如何?
「仕事」がプレッシャーなら、まずアート(芸術)系とか。
     
自分で努力して、社会に認められる。
その事によって、自分でも自分を認められるようになる。
ちょっとしんどいけど、副作用のない健全な薬でしょう。
みんな、いつも飲んでます。無料どころか、お金もらって。
   
社会も広場も、そんなに怖いものじゃないですよ
ではまた。。

投稿: テンメイ | 2012年5月 5日 (土) 03時22分

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