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波で留まったビーチファミリー~『もう一度君に、プロポーズ』最終回

4年前のこの時期、人気ドラマ『ラスト・フレンズ』の最終回について、ウチで

は「共生を選んだビーチボーイズ」と題する独自のレビューをアップした。

『ラスト・フレンズ』のラストが意外にも、『ビーチボーイズ』の本編ラストへの

オマージュ(敬意を込めた模倣)だと気付いたからだ。SP編のラストとも似

てるし、そもそもドラマのタイトルが似てる。

 

両者の類似については今さら繰り返さないが、決定的な相違点に関する部

分だけは再掲しとこう。『もう一度君に、プロポーズ』最終回を読み解くため

に、重要な事だからだ。

 

    「これほど似てる2つのドラマ。主要メンバー間に性的関係が成立

     してない点も共通なんだけど、1点だけ決定的に違ってる部分が

     ある。それは『共生』と『自立』の違いだ。ラスフレは、最後に男、

     『男』、女、幼女の4人がハウスで共生する。ところがビーチボー

     イズでは、主役の男2人が完全に自立。民宿には脇役の女(稲

     森)と子供(女子高生=広末)だけが残るのだ」。。

 

ちなみにカッコ付きの「男」とは、性同一性障害の少し手前、「性別違和症

候群」と診断された瑠可(ルカ=上野樹理)で、女はサッカー界のプリンス・

香川に熱烈なTV告白を受けた長澤まさみが演じる美知留(ミチル)。生物

学的には女性であるこの2人が、夫婦のように子供・瑠美(ルミ: 美知留と

宗佑の子)を育てつつ、本物の男(瑛太)とも共生することを決定したのが

『ラスフレ』の最後。

 

その家は、『ビーチボーイズ』ラストで、広海(反町隆史)と海都(竹野内豊)

が離れることを決意した民宿・ダイヤモンドヘッドに似てたのだ。文脈的に

も、外観的にも。。    

 

 

         ☆          ☆          ☆

ここで、ラスフレで共生する疑似ファミリーのメンバーの名前に注目してみ

よう。瑠可、美知留、瑠美。興味深いことに、すべて「留」という漢字が含ま

れてる。それは、彼ら(or 彼女たち)が共生状態に「留まる」ことを示すと

共に、瑠可が男性と女性の間に留まったことをも示してる。

 

一方、『もう一度君に』の主人公の一人、波留(ハル=竹野内豊)も、「波

に留まる」という名前になってるのだ。と言っても、波に留まるのは物理的

に不可能だし、波留は「美青年」にも関わらずサーフィンをやってない(一

部読者向けサービス♪)。 物語的にも、むしろ「波で留まった」と言うべき

だろう。波を受けてビーチに留まって家族を築いたのが、エンディングの美

しいシーン、6年後の宮本ファミリーなのだ。

 

実はあれに似たシーンが、『ビーチボーイズ』のラストと冒頭にもあった。そ

れは、南の島のビーチで楽しげに暮らす現地人ファミリーの映像だ。ここか

ら海を渡って民宿へ届いたボトルレター(瓶詰めの手紙)と共に、主人公2

人が登場し、主人公2人が旅立った後に、民宿から南の島へとボトルレター

の返信が行われる。

 

素晴らしく綺麗なドラマ構成だが、あの場合、ビーチのファミリーとはあくま

で幻想的なもの。ファンタジックな理想郷だった。ところが『もう一度君に』

では、現実の幸せとして描かれてる。もはや、第9話で激しく押し寄せてた

白い波は静まり、穏やかにキラキラと太陽の光を反射するばかりなのだ。

3人のそばには、みんなで乗れるようサイドカーを付けたバイク、Z1Rがた

たずむ。お弁当は当然おにぎり&サンドイッチ、両方一度に食べるだろう♪

 

あの微笑ましいハッピーエンド。私にはまるで、様々な「波=いばら(トゲ)」

が強すぎて、大海原への航海を断念したかのようにも見えた。これは『ビー

チボーイズ』との時代の差(15年)、主人公の年代の差を表すと共に、脚

本家の違いも表してる。

 

『ビーチ』は実力派・岡田惠和が「男」の世界を前面に出したせいで、視聴率

23.7%のわりには女性ウケが良くない。その点はおそらく、亀梨和也『神

の雫』の低迷にも関係してるだろうと、第6話で書いておいた。一方、『もう一

度』には、女性脚本家が2人も加わってるのだ。

 

子供の話がいきなり前面に出たのは、山上ちはるが単独で担当した第4話

だし、確か最終回もエンドロールに、桐野世樹への協力者として武井彩とい

う名前もあったと思う(なぜかTBS番組表とウィキペディアには書かれてない)。

第5話ではちゃんと名前が載ってるし、第9話でも協力者になってたという未

確認情報もある、女性脚本家だ。。

 

 

         ☆          ☆          ☆

私は『もう一度』第9話のレビューで、「父の死」から「海への旅立ち」に向か

う流れだという解釈を示しておいた。そこでいう「海」には、大きく分けて2

つの意味がある。1つは、危険も伴う未知の広大な世界。もう一つは、女

性とか母という意味だ。『ビーチ』では前者の意味で海へと旅立ったが、『も

う一度』では前者の意味が薄れ、後者の意味が前面に押し出されてる。

 

波留はこれから、父親としても修理工場の社長としても、新たな人生の海

に乗り出すわけだが、父親になるのはフツーのことだし、修理工場はずっ

と勤めて来た会社で、現・社長家族とも社員とも仲良しだ。家族も幸せそ

うだから、一般的な感覚で考えて、荒波にもまれる感じは少ない。もちろん、

本編もSPも全く先の見えないまま終わる、『ビーチ』の「航海」とも大幅に

違ってるわけだ。

 

一方、女性とか母に向かう流れは、非常にハッキリ表れてた。実母・西園

晶子(朝加真由美)とは親子の固くて熱い絆を取り戻したし、離婚寸前だっ

た可南子(和久井映見)は、「もう一度、プロポーズ」したことで再び妻にな

り、新たな命の母にもなった。

 

その一方、編集でカットされたのか脚本通りなのか、第7話から予告されて

た『ハーメルンの笛吹き男』の朗読会は映らないまま。こうしてみると、やは

り『笛吹き男』の物語は、可南子の子ども願望と波留への半ば無意識的な

不満を表してた形になる。

 

だからこそ、子作りの問題をはぐらかせた過去について、波留が謝罪した

後では、無意味になったのだ。笛吹き男=「カラフルさん」が可南子から無

意味に遠ざけてた「大勢の小さな子供たち」(精神分析的な象徴表現)は、

いまや可南子のもとに集まり、一人の身近な子どもへと結実する。ささやか

ながら幸せな家族生活も実現し、女性的にはめでたしめでたしと言った所

か。今後も、可南子の母(真野響子)が語ってたように、「家族」というもの

の力を信じて、ゆっくり歩み続けるのだろう。第1話で夢見てた「広い世界」

の「奇跡」など、もはや必要ではない。

 

波留は教会で、「もう一度君に、プロポーズ」する。「小さな幸せに気づける

可南子が俺は好きだ」、「平凡な幸せを・・・この先もずっと」、「俺の妻でい

てくれないか」。これだけでもう、彼女にとっては理想郷。その意味で「可南

子」とは、「南」の島のユートピアを「可」能にする女「子」、を表す名前なん

だろう。。

 

 

          ☆          ☆          ☆

それにしても、私が男だからなのか、多少の違和感も残ってる。結果的に

非常に大きなポイントになった、子作りに協力しない夫の問題。これは、現

実社会でどの程度の問題なのか。

 

国立社会保障・人口問題研究所による最新の出生動向基本調査(実施は

2010、発表は2011、第14回)には、「理想の子ども数を持たない理由」

の統計が示されてる(夫婦が対象,複数回答)。圧倒的な第1位、60%の

妻が挙げた理由は「お金がかかりすぎるから」。「夫が望まないから」とい

う理由は、僅か7%に過ぎない(端数は四捨五入、以下同様)。

 

もちろん、「夫が望まない場合もちゃんとある」とか、「だからこそ余計、波

留の罪は重い」といった説明も出来なくはないが、波留は基本的にすごく

いい人の扱いだし、はぐらかした記録が残る日記も僅か1日だったはず。

心因性の記憶喪失の原因としては弱いだろう。カップルを迷わせる「蛙の

ゴム靴」にも対応してない。

 

それは、メンタル・クリニックの使い方の弱さにもつながってるわけで、実は

第4話以降で軌道修正が生じてしまったと考えた方がスッキリする。結局、

日記を読むことで記憶に似たものは取り戻したものの、肝心の記憶喪失

そのものは治らないまま、曖昧に終わったのだ。

 

それに対して、波留が小さな幸せを育む大人になのは、統計的にも裏付け

られる。6月12日の朝日新聞オピニオン欄でも話題になってたが、「新入

社員の意識調査」(2012春、日本生産性本部)によると、「今の会社に一

生勤めようと思っている」割合は60%。『ビーチボーイズ』が作られた97

年には、僅か27%だったことを考えると、事の良し悪しはさておき、職場

に関する保守性が非常に高まってることが分かる。

 

新入社員以外も含めた、「日本の会社員7500人の意識調査」(2005、

社会経済生産性本部)でも、「現在の仕事」や「今の組織」を50%の人が

肯定。これが現代の日本社会なのだ。。

 

 

         ☆          ☆          ☆

週間字数制限2万字が迫って来たので、そろそろ締めくくりに向かおう。今

回、全体的に見て、思ったよりは良く出来てたし、十分満足したのも確か。

過去に散りばめて来た要素(実母、鳩時計=母子の絆、折り紙の船=子

どもへの愛、桜の木の下のベンチ=2人の原点、海&ビーチ、サイドカー

=第1話の夢)も、最小限ではあっても、桐野世樹らしく丁寧に拾ってた。

 

残念なのは、朗読会や春(ハル)の桜はともかく、「眠り姫」=「いばら姫」

南子を目覚めさせるはずのキスが無かったこと。まあ結局、目覚めなかっ

たわけだし、教会で居眠りから目覚めただけでも満足すべきかも(笑)。オ

ンエア中、私はテレビの前でニッコリ微笑んでた。そう来たか。。可南子が、

バイクで探し回った波留に、携帯で連絡くれればとか突っ込んだのも笑え

た♪ レトロな脚本を書いた桐野の自分突っ込みだろう。

 

脇役にも触れとくと、ドラマ史上空前の善良なる恋敵、一哉(袴田吉彦)は、

裕樹(山本裕典)とひそかに仲良さそうにしてたから、一部の女性たちの想

像を膨らませてくれたはず♪ 桂(倉科カナ)は若い男性社員をキープしな

がら、波留の隙を窺うのだろう。コラコラ。

 

ある意味、もっとも広い海に乗り出したのは、もっとも地味で保守的に見え

た志乃(市川由衣)。携帯かスマホの裕樹の名前をあっさり削除した後は、

女友達と合コンに出かけて、あの外見ならすぐお持ち帰り♪ あのタイプ

は根強い需要があるから、合コンだと激戦になる。それに、志乃の後ろ髪

は長いが、女という存在に後ろ髪はないのだ。

 

視聴率は10%超の最高と予想しとこう。スタッフ&キャストの皆さん、レト

ロ=モダンとも言うべき良質の大人のドラマを、どうもありがとう。

それでは、この辺で。。☆彡

 

                                 (計 4288文字)

 

☆以下、25日分の追記リンク 

 

cf. 「眠れる森の美女」ではなく「いばら姫」

                  ~『もう一度君に、プロポーズ』第1話

   いばら姫としての波留(竹野内豊)~『もう一度君に、プロポーズ』第2話

   本気になったら時間なんて関係ない~『もう一度君に、プロポーズ』第3話

   退屈な作品とはどのようなものか~『もう一度君に、プロポーズ』第4話

   『もう一度君に、プロポーズ』第5話、軽~い感想♪

   意外とマトモな25km走♪&『もう一度君に、プロポーズ』第6話

   宮沢賢治『蛙のゴム靴』と、『もう一度君に、プロポーズ』第7話

   『ハーメルンの笛吹き男』と『もう一度君に、プロポーズ』第8話

   父の死、海への旅立ち

          ~『ビーチボーイズ』と『もう一度君に、プロポーズ』第9話

 

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   竹野内豊主演ドラマ、視聴率の推移&『流れ星』第6話

 

 

 

P.S. 最終回視聴率はまさかの過去最低、7.9%に終わった。理由につ

     いては、次の記事で推測しておいた。。

       なぜ『もう一度君に』最終回は最低視聴率7.9%に沈んだのか

 

P.S.2 2年後の秋、2014年10月16日、写真週刊誌『FRIDAY』のスクー

      プを受けて、竹野内豊と倉科カナが交際宣言した。このドラマでの出

      会いがキッカケとの事。。      

 

                                (累計 4805文字)

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このドラマをこよなく愛する皆様なら・・・ラスト・シーンで第一回のあのシーンを思い出したことでしょう。 くも膜下出血で倒れ、緊急手術に向かう可南子と波留の・・・ある意味、別れの会話です。 「サイドカーもいいかもしれないな・・・」 「なにそれ・・・」 「二人でバイクもいいけど・・・サイドカーもいいかな・... [続きを読む]

受信: 2012年6月23日 (土) 22時50分

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