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文科省が10都県で確認、ストロンチウム(Sr)90の実効線量係数など

いわゆる放射能、正確には放射性物質の中で、話題になるのはほとんど

ヨウ素131( I 131)とセシウム134、137(Cs134、137)であって、ス

トロンチウム90(Sr90)については、反原発の朝日新聞でさえ少ししか報

道してない。その理由は、一言でまとめるなら、量や濃度が少な過ぎる(と

されてる)からだ。

     

ただし、放射性セシウムに対して一定の割合(例えば数%)で確認されると

いう話は前から分かってたことだし、福島県と宮城県では既に昨年6月に確

認されている。「文部科学省による、プルトニウム、ストロンチウムの核種分

析の結果について」と題するpdfファイルの報告を信用するなら、問題ない

量に留まってる。

       

だから、周辺の県や東京都でもごく僅かに確認されるのは自然なことであっ

て、今回(7月24日)の文科省の発表は決して大きなニュースとは言えない。

実際、ネットでの確認によると、原発推進派の読売や産経はもちろん、反原

発の毎日や東京新聞でさえ、(今の所は)小さな扱いのようだ。

   

ところが今日、7月25日の朝日新聞・朝刊を見ると、1面トップで大きく報道

されてる。「10都県でストロンチウム」、「原発事故 福島・宮城以外で初」。

この大見出しの少し左側、「リード」(前置き的説明)の最後に、小さい活字

で、「38面=『影響まずない』」と書かれてる。実際、38面(第二社会面)の

記事では、人間にも環境にもまず問題ないだろうという、複数の専門家の

意見が掲載されてる。ちなみに、1面は石塚広志記者、38面は大岩ゆり

記者と岡崎明子記者の署名記事だ。

       

問題ないのなら、これほど大きく報じる必要もないだろうと思うが、甲状腺

被曝記事の時と同様、書いてることに「間違いはない」。おまけに今回は、

さほどミスリーディングな(=誤解を招きやすい)内容でもないから、当サ

イトとしても特に批判するつもりもない。ただ、気になる方も少なくないだろ

うし、この機会にストロンチウム90の話をまとめとくのもいいだろう。

        

    

         ☆          ☆          ☆

朝日が、国内での観測値のグラフの中で書いてる「ストロンチウム90の特

徴」は、次の4つだ。「食品に移行しやすい」、「人体では骨にたまりやすい」、

「体内で半分になる半減期は約50年」(末尾P.S.参照)、「水に溶け、土

の中で移動しやすい」。これだけ読むと、かなり恐く感じるかも知れないが、

要するに量の問題であって、放射能や放射線の量が少なければまず大丈

夫なわけだ。

       

その量を考える際に、一番簡単でよく使われるのが、シーベルト(Sv)とい

う単位で表される被曝線量。特に、全身の線量をまとめた実効線量だ。身

体の外側からの「外部被曝」に関しては、ガンマ(γ)線ではなくベータ(β)

線を放出するという点が気になるものの、量が少ないし、ガンマ線よりも

遮られやすいから、まず問題はないと思われる。

    

それに対して、内部被曝は一応、考えてみる価値はあるだろう。「もし」骨

に溜まって大きなダメージを与える「のであれば」、全身の実効線量も当

然大きくなるはずだ。この実効線量を計算するには、体内に取り込んだ

放射能の量(単位はベクレル=Bq)に、実効線量係数をかければよい。

     

実際は小さい実効線量になるので、骨のダメージもさほど大きくないこと

になる。この大まかな逆算には、仮に骨以外の「等価線量」(器官・組織

単位の被曝量)がゼロとして、骨だけの等価線量の最大値を求めればよ

い。骨髄の組織荷重係数が0.12、骨表面だと0.01だから、すべて骨

の表面と仮定して、実効線量を0.01で割れば(つまり100倍すれば)、

骨の等価線量の最大値を求められる。実際にはそれ以下ということだ。

       

    

          ☆          ☆          ☆

ICRP(国際放射線防護委員会)による、ストロンチウム(Sr)90とセシウム

(Cs)134、137の実効線量係数を比較してみよう。以下は、成人の場合

で、単位はμSv/Bq (マイクロシーベルト・パー・ベクレル)。つまり、1ベ

クレルで何マイクロシーベルトになるかを表す係数だ。吸入摂取(吸うこと)

と経口摂取(食べて飲み込む)とで異なるのは、いつもの通り。

          

            吸入摂取    経口摂取

   Sr 90     0.030      0.028  (μSv/Bq)

   Cs134    0.0096     0.019

   Cs137    0.0067     0.013

     

これを見ると、経口摂取、つまり食べ物に関しては、ストロンチウムはセシ

ウムの1.5倍~2倍程度の係数だと分かる。ただし、放射能の量(ベクレ

ルの値)はストロンチウムの方が遥かに少ないから、係数と掛け算して求

める実効線量では、ストロンチウムはセシウムよりかなり小さくなる。吸入

摂取、つまり呼吸の場合、セシウムの3~5倍の係数だが、同じく掛け算

によって小さな実効線量になる(朝日はCs137の4~5倍と説明)。

        

この係数、ストロンチウム90の場合、「チタン酸ストロンチウム」と「チタン

酸ストロンチウム以外の化合物」に分けて書いてることも時々あるが、多

くの場合、後者で代表させてある。という事は、前者は例外的なのだろう。

一応書き添えておくと、前者の吸入摂取の係数は0.077、経口摂取の

係数は0.0027だ。

      

また、食品に含まれる放射能の基準値で、ストロンチウムという名前は

一見出てないが、実はセシウムの基準値を決める時、一定の割合でス

トロンチウムも含まれてると想定してある。無視してるとか、隠してるとい

う話ではないので、念のため。反原発の朝日新聞でさえ、以前からその

点は報じてた。

     

なお、幼児や子供に対する影響については、年齢によって細かく異なる。

あまり細かく考えると分かりにくいし、数値の信頼性も下がると思うが、Sr

90の経口摂取の場合だけ一応、年齢別に書いておこう。「摂取時の年齢」

で分けてあるので念のため。70歳になるまでの合計(預託線量)を求める

係数だ。成人と比べるとかなり多いが、これはあくまで係数であって、掛け

合わせる放射能の量が少ないから、まず心配いらないだろう。      

     

    3ヶ月    1年    5歳    10歳    15歳

   0.23   0.073  0.047  0.060   0.080 (μSv/Bq)

    

   

          ☆          ☆          ☆

最後に、確認されたストロンチウムの量について。発表されたのは、1ヶ月

ごとに屋外の容器に降下して溜まった塵(ちり)に含まれる量。2010年4

月~2011年12月まで、47都道府県で測定。文科省のpdfファイルです

べて確認できる。「都道府県別環境放射能水準調査(月間降下物)におけ

るストロンチウム90の分析結果について」という、長いタイトルの文書だ。

10都県とは、茨城、群馬、山形、栃木、埼玉、東京、岩手、神奈川、千葉、

秋田。もちろんこれ以外に、福島と宮城も判明している。

      

1平方メートルあたりの降下量が最も多かったのは、茨城県(ひたちなか市)

の去年3月、6.0ベクレル。東京都(新宿区)の最大値も去年3月、0.89

ベクレル。ちなみに茨城の最新のデータは去年11月で、0.13Bq、東京

はND(Not Detectable=検出不可能、つまり検出限界である0.07Bq

程度未満)。どちらも、去年12月分はまだ「分析中」となってる。

  

元のpdfファイルでは、単位はMBq/km²、つまり、1平方キロメートルあ

たりのメガベクレル数だが、1Mbq=100万Bq、1km²=100万m²だか

ら、結局100万という部分は消し合って、Bq/m²になる。つまり、1平方

メートルあたりのベクレル数になるわけだ。

     

なお、セシウム(134&137)と比べると、ストロンチウムの放射能の量は

1/1000~1/10000程度。おまけに、原発事故と無関係に、以前から

核実験の影響で、1平方mあたり数千ベクレル(=数キロベクレル)のスト

ロンチウムが堆積してるそうだから、茨城県でさえ、事故によるストロンチ

ウムはさほど影響ないと考えられる。極端に放射能の値が高い、いわゆる

「マイクロスポット」に非常に長くいるなどといった不運がない限りは。

        

もちろんこれは陸上の話であって、海の魚における生物濃縮の影響など

は、一応、別問題だ。海洋汚染でもおそらく、セシウムの方が遥かに問題

だろうが、実際に測定して確かめる必要はあると思う。ちなみに同じく昨日、

汚染水からストロンチウムその他を吸着除去する装置を、東電が発表し

た。9月上旬までに福島第一原発に設置、試運転を始めるとのことだ。。

      

   

         ☆          ☆          ☆

おわりに、結局自分がどれだけ、原発由来のストロンチウムで被曝するの

か知りたい方は、ある程度なら計算可能だ。つまり、飲食に関しては、セシ

ウムの量の数%程度、何なら多めに10%と見ておけば十分だろう。量が

分かれば、経口摂取の実効線量係数を掛けることで、被曝線量を求めら

れる。

   

呼吸による吸入については、まずお住まいの都道府県のデータを去年3月

分から足し算して、1平方メートルあたりの全ベクレル数を求める。そして、

自分がどのくらいの面積(m²)の分を吸い込んだか、非常に大まかに多め

に想像して、吸入した全ベクレル数を計算。さらに吸入摂取の実効線量係

数を掛けることで、被曝線量を求められる。

           

もちろん、経口摂取と吸入摂取の合計が、内部被ばくのすべての線量だ。

皮膚からの「経皮摂取」は話題になってないので、念のため。

     

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

     

   

  

P.S. ストロンチウム90の「体内で半分になる半減期」が約50年だと

     朝日は書いてるが、これはいわゆる「生物学的半減期」であっ

     て、体内からの排泄のスピードを示すものである。一方、単純

     な物理的半減期は約29年だから、両者を考え合わせた実効

     半減期は次のように計算される。「和分の積」、つまり、2つの

     期間の和(足し算)で、その積(掛け算)を割ればよい。

        

       (50×29)÷(50+29)=1450÷79≒18(年)

     

     つまり、ストロンチウム90の実効半減期は約18年だ。計算式

     の理由についても、去年の記事で数学的に説明しておいた。

        体内摂取した物質の放射線量の計算

                       ~物理学的&生物学的半減期

   

   

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推計(全国、年代・経路別)

  確率的影響と確定的影響~放射線被曝の二分法の再考

  湖や海、水浴場における放射線(外部&内部被曝)の計算

              

                                  (計 4683文字)      

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