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原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(2)

1週間前にアップした前回の記事に引き続き、今夜も高校物理の原子核と

放射線の問題を解いてみる。使うテキストは引き続き、数研出版教科書

改訂版 高等学校 物理ⅠB』だ。今回は第5編「電子と原子」演習問題

(p.289~291)の中にある、原子核・放射線関連の問題を4つ解説する。

       

では、最初の問題から。

    

 A.3  α線、β線、γ線について、次の問いに答えよ。

      (1) 電離作用の大きい順にならべよ。

      (2) 物質透過能力の大きい順にならべよ。

      (3) 電離作用の大小と透過能力の大小との間には、何か関係

          があるだろうか。あるとすれば、それはどのような関係か。

          また、その理由についても述べよ。

        

 解答  (1) α線、β線、γ線  

      (2) γ線、β線、α線

      (3) 両者には関係がある。それは、逆順の関係。つまり、電離

         作用が大きいほど、透過能力は小さい。電離作用が強いと、

         相手の原子内の電子をはじく力が強く、電子に与えるエネル

         ギーも大きい。だから、はじく電子から受ける反作用も強いし、

         自らが失うエネルギーも大きい。よって透過能力は小さくなる。

    

     

(1)と(2)は単なる基礎知識の問題で、教科書の本文に説明がある。よっ

て、(3)がポイントだ。エネルギーのやり取りだけで答えることも出来るが、

α線とβ線は粒子だから、衝突の際の力と反作用についても書いておく方

が分かりやすいだろう。(3)の解答は教科書に書いてないが、これで正解

のはずだ。     

   

             

         ☆           ☆          ☆

続いて、次ページの上から二番目の問題。

     

 A.5  「235 92 U」は、α崩壊をx〔回〕、β崩壊をy〔回〕行って、最

      終的には安定なある原子核になる。

      (1) 最終的に安定な原子核は、次のうちのどれか。

         ① 「208 82 Pb」 ② 「209 83 Bi」 

         ③ 「206 82 Pb」 ④ 「207 82 Pb」      

      (2) x と y はそれぞれいくらか。

     

 解答  (1) 質量数に注目すればよい。α崩壊では4ずつ減少し、

         β崩壊では変化しない。元のウランの質量数は 4n+3

         (4で割って3余る自然数)だから、崩壊後の質量数も同

         じタイプとなる。選択肢の中で、4で割って3余る質量数

         を持つ原子核はただ一つ、④である(207=4×51+3)。 

                                      答 ④

    

       (2) α崩壊では質量数が4、原子番号が2減る。また、β崩

          壊では、質量数は変わらず、原子番号が1増える。

          (1)より、崩壊後は「207 82 Pb」だから、

          (質量数)= 235-4x= 207 ・・・・・・①

          (原子番号)= 92-2x+y = 82 ・・・・・・②

          ①より、x=7。②に代入して、y=4。  

                                答 x=7, y=4

       

   

原発の核燃料となるウランについて、核分裂ではなく、自然な放射性崩壊

を問う問題である。「アクチニウム系列」という名で呼ばれる、ウランから鉛

への崩壊系列だが、最初のアルファ崩壊の半減期だけで7億年にもなるの

で、ほとんど生じない崩壊と考えていい。(2)は、x だけ先に出してもよいが、

一応、定石として、連立方程式の形にしておいた。なお、「Bi」はビスマスの

原子記号。

    

   

           ☆          ☆          ☆

それでは、3問目。

        

 A.6  「225 88 Ra」は、半減期14日でβ崩壊をしてAc(アクチニ

      ウム)という元素に変わる。ある時刻に、「225 88 Ra」が16g

      あったとする。

      (1) Acの質量数および原子番号はそれぞれいくらか。

      (2) 「225 88 Ra」が4.0gになるのは何日後か。

      (3) 56日後には、「225 88 Ra」は何gになるか。

    

 解答  (1) 質量数225、原子番号89 

       (2) 16gが4.0gになるということは、1/4になること。つまり、

         1/2への半減が2回生じることである。かかる日数は、

          14(日)×2 = 28(日)   

                                    答 28日後

     (3) 56(日)=14(日)×4。よって56日後には半減が4回生じる。

         (1/2)⁴= 1/16    16(g)×(1/16) = 1(g)

                                    答 1.0g

    

   

ラジウムの半減期の基本問題で、半減期が過ぎる度に半分(1/2)になっ

て行くことが理解できてれば、暗算ですぐ解ける問題である。(3)の答は、

1gとしても○(マル)だと思うが、問題文から、有効数字は2ケタと考えて、

1.0gとした方がいいだろう。実際、問題の最後に添えた正解は1.0gと

なってる。

    

      

          ☆          ☆          ☆

最後に、4問目。

   

 A.7  高速の中性子は「238 92 U」に吸収されやすく、連鎖反応が

      妨げられるので、天然ウランを用いる原子炉では、中性子

      速する必要がある。

      中性子が質量数Aの原子核と一直線上で完全弾性衝突をすると

      き、衝突後の運動エネルギーは、衝突前の運動エネルギーの何

      倍になるか。

      また、ウランのような重い原子核に当てる場合と、重水素(水素の

      同位体で質量数2)のような軽い原子核に当てる場合とでは、中性

      子はどちらが大きく減速されるか。    

      

 解答  中性子の質量を1とすれば、質量数Aの原子核の質量はほぼAと

      なる。中性子の衝突前の速度を v、衝突後を v´ とし、原子核の

      衝突後の速度をVとすれば、

       運動量保存則より、 1v = 1v´+AV ・・・・・・①

       はね返り係数の式より、 (V-v´)/(0-v) = -1 

                    ∴  V-v´= v ・・・・・・②

      ②より、 V = v+v´

      ①に代入してVを消すと、 v = v´+A(v+v´)

      ∴ v´=(1-A)v / (1+A)

      ∴ (衝突後の中性子の運動エネルギー)

                =(1/2)(1-A)²v² /(1+A)²

                =(1/2)(A-1)²v² /(A+1)²

      一方、(衝突前の中性子の運動エネルギー)

                =(1/2)v²

      よって、衝突後は衝突前の、(A-1)² /(A+1)² 倍 

                              (最初の問いの答)

      

      これより、中性子が大きく減速されるのは、(A-1)/(A+1)が

      を小さい時である。変形すると、 1-{2/(A+1)}。よって、A

      が小さい場合、つまり、軽い原子核に当てる場合の方が、中性子

      は大きく減速される。

                               (第二の問いの答)

        

    

最初の答はもちろん、(1-A)² / (1+A)² と書いてもいいのだが、常に

A≧1であり、また、この文脈だと普通は A≧2だから、(A-1)²/(A+1)²

と書く方がスマートで分かりやすいだろう。実際、教科書の問題末尾にも、

そう書かれてる。

                        

次の問いは、数学的に厳密に説明するなら、分数関数のグラフや微分を用

いる所だが、この物理の問題であれば、上の解答の説明で十分のはずだ。

実際の原子炉でも、A=2の重水素を用いた重水が、代表的な減速材の1

つとなってる。重水で減速する原子炉が重水炉。これに対して、軽水(普通

の水)で減速するのが軽水炉だ。ウィキペディアによると、軽水炉が世界で

80%以上のシェアで、日本の商用原発はすべて軽水炉らしい。。     

     

なお、次回の記事は半月以内にアップしたいと思ってる。ではまた。。☆彡

       

   

            

cf. 原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(1)

   原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(3)

   原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(4)

   原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(5)

   

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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   放射性ラジウムその他と崩壊系列&37度微熱ラン

             

                                  (計 2895文字)

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