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卒業式ソングの新定番、「旅立ちの日に」~朝日・うたの旅人(最終回)

先日、「テンメイ回想録」シリーズの第9回として、小学校時代の「春」につい

て記事を書いた。大きく見ると、新たな出会いの時期として扱ってるわけだ

が、春は別れ、旅立ちの時期でもある。特にそれが鮮明なのは、小・中学

校、高校、大学などの卒業式、あるいは「3年生を送る会」の類だろう。

    

青春の大切な思い出ともなる、その卒業式などで、祝辞や答辞、卒業証書

などより印象的なのは、卒業アルバムに加えて、音楽だと思う。歌、あるい

はBGMなど。私の場合、高校の卒業式の一番最後で、メロディだけの「マ

イ・ウェイ」に合わせて式場(体育館)を出た時のことはよく覚えてる。友達

も、「あそこだけ何回もやりたかった」とか言ってた。まあ、その気になれば、

人生で20回くらいは可能だろうが♪

     

一方、自分が歌った曲が何だったか、校歌は覚えてるが、もう一つは曖昧

だ。校歌以外は無かったかも知れないけど、歌ったとすれば、J-POPの

ヒット曲ではなく、「蛍の光」か「仰げば尊し」だった気がする。おそらく、かな

りの人が同じだと思うが、実はここ10年ほど、人気の順位に大きな変化が

生じてるらしい。2004年2月、フジ『EZ!TV』の卒業式ソング特集の際、

全国の小中高300校に電話で尋ねると、過半数は「旅立ちの日に」と回答。

         

ディレクターの三嶋良典も全く知らなかったので、苦労して調べて、13分

ほどの特集へと編集。その作業中、近くを通りかかった20代のスタッフが

足を止めて、「これ歌いました。この曲を聴くとつらいことも乗り越えられる

気がする」とうるんだ目で話したとのこと。

         

その後、テレビの影響で知名度は飛躍的に上昇。原点である中学には歌

碑が建ち、秩父市内の公園には「旅立ちの丘」まで出来たそうだ。

   

    

          ☆          ☆          ☆

という訳で、朝日新聞・朝刊、土曜別刷beの大型企画「うたの旅人」の最終

回は、自らの企画の旅立ちにも、「旅立ちの日に」を選択することになった。

取材記者、つまり旅人は、文・大庭牧子、写真・西田裕樹。記事の旅先は

そのまま、埼玉県秩父市。非常に女性的、感性的な文章で、かなり甘口で

はあるが、企画のラストにふさわしいし、曲にも合ってたと思う。

          

残念ながら、週間字数制限2万字が迫ってるので、ごく簡単に感想その他

をまとめとく。まずは、知らない方も多いと思うので、動画を1本お勧めしと

こう。著作権的にややビミョーな部分もあるが、単なる閲覧なら容認されて

るし、内容的には定番的なものだと思う。さて、印象は如何だろうか。。

         

     YouTube 「旅立ちの日に」

    

    

           ☆          ☆          ☆

この曲の特徴の一つは、アマチュアの先生2人が、自分の中学の「送る会」

のために作った所だろう。当時まだ20代の女性音楽教師・坂本(現・高橋)

浩美の依頼を受けて、秩父市立影森中学校校長の小嶋登が一晩で作詞。

「すごくいい!」と思った坂本が音楽室に駆け込み、ピアノで僅か15分ほど

でメロディーをつけたそうだ。さらに坂本は自分で録音テープを作って教職

員に配り、ひそかに練習。送る会で、先生たちの合唱で(?)披露。1番だ

けは小嶋校長が独唱。

         

     (ここまで1256文字。今週は計19922文字。以下、翌週分♪)

       

これで役目を終えたはずの曲だったが、坂本が聖徳大准教授・松井孝夫

に依頼して、混声3部に編曲。松井の勧めで、楽譜と録音テープを雑誌『教

育音楽』(音楽之友社)に送り、雑誌の付録に楽譜を掲載。じわじわと全国

に浸透して、同誌アンケートで上位の常連に。その頃、フジテレビの目に留

まって、人気が加速したようだ。同じ時期くらいに1位を獲得したのは、そ

のおかげかも。

       

学校現場の他に、芹洋子、トワ・エ・モワ、ダークダックス、秋川雅史らの

プロ歌手もカバー。06年には、NTT東日本のCMでSMAPも歌ったとの

こと。調べてみると、CM以外でもSMAPはあちこちで歌ってるようだけど、

ここにリンクを貼るのはどうかと思うので、皆さんにお任せってことで。      

      

        

          ☆          ☆          ☆

朝日の記事の写真は、まず影森中の合唱風景を大きく掲載。これもいい

が、ホーッと思ったのは、旅立ちの丘の写真だ。まるで1年前、「美青年」

が旅する深夜番組『ルート66』で映ってた、「ナメック星」みたいな迫力が

ある♪ ここ、いいね☆ 秩父市の瓦屋根の街並みも、昭和レトロでOK。

    

で、本題の曲だけど、リンクを付けた動画でイントロを聴いた時は、オッ・・

と引き込まれたものの、メロディーラインやサビについては正直、ピンと来

なかった。例えば、「仰げば尊し」ラストの高揚感と比べると、かなりの違い

を感じる。「今こそ わかれめ いざ さらば」。。♫    

  

ただ、「仰げば尊し」は、文語調が古いのは当たり前として、題名と1番の

最初が、今の時代に全く合ってない。教師は仰ぐものでも尊いものでもなく、

遥か下の存在になってるのが実情だ。歌を指導する教師としても、気恥ず

かしく思うだろう。2番の途中、「身をたて 名をあげ」も、時代遅れの感が

強い(親孝行という解釈にせよ)。

           

一方、「蛍の光」は定番すぎるし、卒業とは別に、年末のイメージ(紅白歌

合戦など)も強い。そもそも蛍の光や窓の雪を手助けに、手紙文を読んだ

り夜の家庭学習をする者など、今や一人もいないし、過去にも僅かだろう♪

     

その点、「旅立ちの日に」の歌詞は、一見フツーに見えるけど、よく読むと

若者向けのものになってる。「白い光」、「遥かな空の果て」、「限り無く青い

空」、「自由を駆ける鳥」、「勇気」、「希望の風」、「ひろい大空」、「夢」、「未

来信じて」、「弾む若い力信じて」。。

    

綺麗でポジティブな言葉をつないだ中に、自分の過去や友への強い思い

はあるが、教師への感謝や立身出世の「非民主的」な話は一言も入って

ない。勉強や校舎・校庭、家庭のことも、闘争的な言葉も無い。当時57歳

の校長先生、しっかり時代を把握して、繊細な取捨選択で作詞したようだ。

      

    

          ☆          ☆          ☆

私は正直、これが広まった背景には、教師の世界の政治力学があると想

像してるが、とりあえずは可能性の指摘に留めとこう。それよりも、かつて

の定番だった「仰げば尊し」の歴史を、いずれ調べてみたい気がする。どの

ように作られ、どう拡がって、なぜ人気が下火になったのか。歌詞がわかり

にくいということなら、授業1コマ、プリント1枚で十分説明できるはずだ。今

「こそ」別れ「め」(已然形)の係り結びなど、小学生には教えなくてもいい。

           

1884年の発表から130年だから、下火になるのは自然だが、おそらく、

「文部省唱歌」という特徴も影響してると思う。文部省のものより、現場の教

師のもの、さらに出来れば、生徒自身のもの。上の巨大な存在より、下の

小さな存在の集団。それが、教育界における「現代思想」なのだし、昨今の

別の社会状況とも重なってる。朝日新聞というメディアの本質とも重なって

るのだ。

     

実は、ウィキペディアを読むと、作者不詳だった「仰げば尊し」の英語の原

曲らしきものが2年前に発見されたらしい(「Song for the Close of

School」)。元の歌詞には、教師から受けた恩への感謝など、入ってない。

神と友と校舎への思いがほとんどだ。また、日本語の「身を立て 名をあ

げ」にも、立身出世ではなく親孝行のことだという説があるようだ。

            

ともあれ、曲に関わったみんなの熱い思いは伝わって来たし、「うたの旅人」

の最終回にふさわしい、爽やかな記事だったと思う。この企画、知らない曲

の時は読み飛ばしたけど、知ってる曲の時はじっくり読んで、楽しんでた。

2週間前の「ヨイトマケの唄」も良かった。担当記者の皆さん、お疲れさま♪

        

   

          ☆          ☆          ☆

なお、「歌声の響く学校にしよう」と頑張ってた校長は、曲を作った直後に

定年で、その後、家族に曲の話をすることもなく、2年前に他界。一方、女

性教師はその後、特別支援学校に転勤。今シーズンもまた別の曲で練習

して、みんなで歌ったらしい。たまたま取材の日が、学年最後の授業で歌っ

た直後で、「みんな泣きそうになって・・・・・・最高でした」。

      

おそらく、取材した女性記者の目もうるんだことだろう。熱くて、真剣で、い

いね♪ それでは、今日はこの辺で。。☆彡

   

    

     

P.S. オリコンが08年2月に調査した結果を発見(発表は3月6日)。中・

     高校生、専門・大学生、20代社会人、30代、40代の男女、各100

     人、合計1000人のモニターにネットでアンケート。卒業式で歌った

     ことがある歌を複数回答した結果をまとめると、なるほどと納得でき

     るものになってた。仮に小学生と50代以上を全て加えても、総合1

     位と2位は同じだろう。。

             

        総合 1位 仰げば尊し

            2位 蛍の光

            3位 旅立ちの日に

       

          中・高校生のみ 1位 旅立ちの日に

                     2位 仰げば尊し

                     3位 蛍の光

      

                 (翌週分 2232文字 ; 合計 3488文字)

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