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嵐・大野智が主人公の小説、『追跡者』(by阿部和重)

2014年の元日(1月1日)、朝日新聞の広告特集「ARASHI NOVELS

 まっさらな始まりの日 ── 五つの書き下ろしショートストーリー ──」

(8ページの全面広告)が掲載されて、もうすぐ丸3ヶ月♪ 

       

かなり時間が経ってしまったが、新年度の4月に入る前に、最後の1本の

レビューをアップしよう。嵐のリーダー、大野智を主人公として、実力派の

人気作家・阿部和重が書いた短編小説、『追跡者』だ。最上段には「ANO

THER STORY of OHNO」(大野のもう一つのストーリー)、小説の下

には「INSPIRED by SATOSHI OHNO」(大野智からインスパイアー

=触発された)と記してある。

   

ちなみに今までの4本のレビューは、ここでの執筆順に下の通り。元の広告

特集では、二宮が最初で、他は同順だった。

        

  嵐・櫻井翔が主人公の小説、『フェニックスのリア王』(by平野啓一郎)

  嵐・二宮和也が主人公の小説、『Eの874』(by伊坂幸太郎)

  嵐・松潤が主人公の小説、『僕たちは、抱きあったことさえ』(by川上未映子)

  嵐・相葉雅紀が主人公の小説、『僕は駿馬』(by山崎ナオコーラ)       

    

    

          ☆          ☆          ☆

ところで、そもそも私は単なる男性の総合マニアック・ブロガーであって、今

までジャニーズ・ドラマの記事は結構書いてるものの、嵐の記事は書いたこ

とが無い。だから、ウチの常連読者さん達がこんな疑問を持つかも知れな

い。「今頃こんな記事書いて、読む人いるの?」。答えは次の通りだ。「アク

セスする人は少なくない。読む人の割合は別として」(笑)。

        

これは、今回扱う小説のタイトル通り、「追跡者」の問題なのだ。「嵐 小説」

といった検索フレーズでいらっしゃる方々の多くは、何を追跡してるのか♪

      

それがようやく見えて来たのは、2月に入ってのこと。1ヶ月も経ったのに、

なぜ新聞広告の小説のレビューにアクセスが途絶えないのか、自分で検索。

つまり、私自身も追跡者になって調べて、初めて理解できた。なるほど、嵐

についての創作小説がネットに溢れて、大人気なのか。。

    

内容の見当は大体ついたから、試しにいくつか読んでみると、思った通りだっ

た。ある意味、途方もなく凄い内容、まさに「嵐」(笑)。私はそれ以上、追跡す

る気にならなかったけど、気になった方はお試しあれ。何なら、人気作品ラン

キングのタイトルを読むだけでも興味深いと思う。引用は差し控える。

          

その種の非日常的世界は、やはり女性に巨大な魅力を放つらしい。実際、

私の周辺の女性にも、追跡者がいらっしゃるのだ。カミングアウトしてる人

だけでも、少なからず。。♪

     

    

          ☆          ☆          ☆

そうしたネット上の小説と、今回扱う阿部和重の小説は、凄いものを扱って

るという意味では共通。しかし、凄いものの内容や語り方に、凄い違いがあ

るのだ♪  

    

ネットに溢れる創作小説、ドラマの二次創作などは、文体も物語も非常に

簡単で、誰でもすぐに読み流せる。ある意味、大ベストセラーの『もしドラ

を更に極端にしたような作り。だから、特に細かく分割された作品なら、ペー

ジビュー(アクセスされるページ数)を稼げることになる。

    

ノーマル、BL(ボーイズ・ラブ)、SMなど、恋愛も含めて性的なものが中心

で、短い言葉をやり取りする会話が多い。行動や情景の描写も、生々しい

ほど具体的でシンプル。

        

   

          ☆          ☆          ☆

それに対して、知的なプロの技巧派である阿部和重の小説は、全く違って

る。『追跡者』というタイトルから始めて、「何を追跡するの?」と興味を抱か

せた後、なかなかそれを明示しない。冒頭の文を引用してみよう。

   

   「怪物を追いかけるのが、彼の仕事だ。この一五年間、

    智はずっとそれをやってきた。

  

凄いものを「怪物」と表現してるのは、彼が敬愛するマニアックな映画・文芸

評論家、蓮實重彦(はすみしげひこ、元・東京大学総長)の影響だろう。蓮實

がサッカーについて、本当に凄いものを語る場合、例えば「動物的な獰猛さ

といった表現になってた。ちなみに阿部は日本映画学校の卒業生だ。

                

それはさておき、阿部が怪物と呼ぶものが何なのか、早い人なら6行くらい

で何となくイメージ出来るだろうが、遅い人なら30行読んでも分からないと

思う。わざと書いてないわけで、これまた蓮實的な言葉を使うなら、読者を

「宙吊り」にしてるのだ。多義性や意図的な曖昧さ、あるいは間(ま)は、アー

ト=芸術の特徴でもある。凡庸な意味への束縛からの解放と言ってもいい。

      

ストームチェイサー(storm chaser : 嵐の追跡者)という英語でさえ、小説

の中盤でようやく登場。それまでは、トルネードハンター(tornado hunter:

竜巻や嵐の狩人)としか書いてないから、特に年少の女性には分かりにくい

だろう。要するに、主人公の「智」が追跡するのは、物語的には、自然現象の

嵐なのだ。

     

もちろん、直接的に性的な話は入ってないし、会話さえ全く無い。その代わ

りにあるのは、気象学の話や学問的・芸術的な追求=追跡、災害対策など。

男同士の熱い友情なら登場するけど、BLとは程遠い硬派な書き方になっ

てる。だからと言って、難しい物語でもないけど、よく読むと非常にテクニカ

ルな形式になってるのだ。

    

    

         ☆          ☆          ☆

例えば、誰が追跡者で、何を追跡するのか。表面的には、智や、最後に彼

が結成する災害調査エキスパート・チーム「嵐」が追跡者で、自然現象の嵐

140328a

 を追跡する。

   

 左はウィキメディ

 アで公開されてる

 竜巻の写真で、パ

 ブリックドメイン

 (公的所有物)だ

 から著作権の心配

 はない。

         

一方、もちろん別の意味も重なってる。追跡者は大野智というタレントで、彼

がリーダーとして「この一五年間」追跡してるのが「嵐」というジャニーズ・グ

ループのあり方。そうとも読めるわけだ。小説のラストは、次のような文になっ

てた。

      

    「一五年のキャリアを積んだ今、智は五人の新チームを結成した。

     その名は、嵐という。

    

   

          ☆          ☆          ☆

この程度なら、どこにでもある意味の二重性だが、阿部の場合は遥かにヒネっ

てある。そもそも、主人公の智が最初に魅かれたのは、トルネードハンター。

140328b3

 だから、ジャニー

 ズの嵐ファンとい

 う追跡者が嵐を

 追跡してるとも読

 める。

  

 そこから更に、嵐

 のリーダーが追跡

者となって、嵐ファンという追跡者を追跡してるとも読める。複雑な入れ子状、

重層的な構造になってるのだ。

             

140328c

 ちなみに上と左も、

 ウィキメディアで

 公開されてるパブ

 リックドメイン(公

 的所有)の写真で、

 まさに嵐の追跡者

 をとらえたもの。

   

かなり危険な仕事をアグレッシブに行うから、智はデアデビル(向こう見ずな

悪魔 ; 映画のタイトルにもなってる)とか、魔王と呼ばれるのだ。今ならつい、

明日、ママがいない』の魔王(三上博史)を思い出す所♪

    

       

          ☆          ☆          ☆

そして更に終盤、遠回しに重ね合わせてあるのが、3・11の東日本大震災

という追跡対象。追跡者はジャニーズも含めて、支援者全体と言える。終盤

の次の文章で確認しておこう。智の友人であり、研究仲間でもある白井が被

災する話だ。

    

   「年々災害不安が高まるなか、観測史上最大級の怪物が日本を

    襲う。白井は志願し、怪物が荒れ狂う最中の被災地に向かった。

    そこで彼は、地域住民への状況報告と避難勧告をかねて、自治

    体の職員とまわっていたところ、全身を電柱に叩きつけられてし

    まったのだ。

     

繊細で微妙な距離感を保ちつつ、福島第一原発事故や放射線被爆の問題

も匂わせてる。白井は、現場作業員も含めて、各種の職業的な支援者の象

徴。電柱に叩きつけられるとは、数百mSv(ミリシーベルト)の重い被爆など

を暗示するものだ。

      

だからと言って、反原発や脱原発という政治的態度・主張を前面に押し出し

てるわけではない。言葉として登場するのは、対策とか調査のみ。この辺り

も流石、ベテラン=大人の実力者なのだ。。

    

    

          ☆          ☆          ☆

5本の小説全体で考えても、非常に上手い作りになってる。自然現象として

の「嵐」を扱ってるのは、最初の二宮和也の小説『Eの874』(by伊坂幸太郎)

と、最後の阿部の『追跡者』。嵐で始まり、嵐で終わる。

    

ただし、二宮の小説の冒頭は「風が吹いたら桶屋が儲かる」という軽くて古

い話だったが、阿部のラストは、災害調査の新チーム・嵐の結成という、重

くて新しい話。そもそもの広告特集のタイトルは、「まっさらな始まりの日」で、

その下にあったのは5人のメンバーの真剣な表情の写真。

   

作家の技量か、この広告特集の編集者の技量か、よく分からないけど、何

ともキレイに全体の形式がまとまってるのだ。3本目(松潤)と4本目(相葉)

を女性作家の繊細でしなやかな物語にしてる所も上手い。ちなみに3本目

の作家、川上未映子は、阿部和重の妻。この2人の作品の間に1本だけ挟

んでる辺りも、細かい配慮の行き届いた構成だと思う。

    

    

         ☆          ☆          ☆ 

最後に、小説に対する大野智の感想を引用しとこう。特集全体の最後のペー

ジで、5人の会話の一部分として書かれてるものだ(前半1回、後半1回)。

        

    『追跡者』の智のように、ひとつのテーマを生涯追いかけていく

    生き方はかっこいい。自分ならどこまでできるかなと考えた。

    ただ、リスクを冒しても前に踏み出す、みたいな部分は似てる

    けど、僕は間違ってても面白ければ「まあいいか」と思うほう

    だから、そこはすごく違う(笑)。

   

    嵐のなかでの僕は、いつも他の4人を後ろから見ていて、もし

    誰か間違ったことをしたらリーダーとしてひとこと言おうとは思っ

    ているけど、誰も間違わないから言う機会がない(笑)。阿部和

    重さんの描く智はこれから先頭に立ってチームをどんどん引っ

    張っていきそうな気がするから、その点、僕とはずいぶん違うリー

    ダーになるんだろうな。

   

   

         ☆          ☆          ☆

このリーダー像の違いは、状況と世代を表すものだろう。嵐は明るいタレン

トで、大野は33歳。一方、小説の智は災害の研究者で、阿部は45歳だ。

    

なお、大野のページの下段広告は、彼を起用した森永製菓の「BAKE

creamy」(ベイク・クリーミー)。全体の最後の下段広告は、5人を起用した

日立のエコ家電だった。

      

この企画と内容は、ファンでない男の私が読んでも良かったので、もし来年

の元日とかに続編が掲載されたら、また記事を書くかも知れない。可能性は

低いだろうけど、どの小説も続きを書けるような形で終わってるし、5人の対

談の最後で、櫻井も「主人公たちのこの先をもっと知りたい・・・」と語ってた。

     

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

            

                                    (計 4216字)

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