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啓蒙やツイッターと異なる関係性、小池昌代『石を愛でる人』~2015センター試験・国語

(☆20年1月19日追記最後のセンター記事アップ。

妻、隣人、そして自分・・戦争をはさむ死の影のレール

~原民喜の小説『翳』(2020年センター))

   

         ☆          ☆          ☆

 

今年は時間も字数もきびしく制限されてるが、恒例のセンター試験記事をご

 

く簡単に書いとこう。小説と言うより、エッセイに近い私小説と言うべきか。 

 

池昌代の『石を愛(め)でる人』、読みやすくて面白い作品で、私が受験生な

 

ら、会場で何度も笑って注意されてたかも知れない。題名だけでも「石フェチ

 

かよ!」と笑えるほど。

 

 

 

ただし、ツイッター検索で「センター 国語」と入力してみると、多くは1番の評

 

論問題でツイートしてる感じだ。佐々木敦『未知との遭遇』。こちらも、有名な

 

映画の「パクリ」タイトルとか、若者が好きそうなtwitter、質問サイト(教えて!

 

goo、Yahoo!知恵袋など)に触れてる点とか、受験生にとってはかなり取り

 

組みやすい文章だと思う。複数の予備校の難易度評価も、「易化」で一致。

 

 

 

佐々木は「啓蒙」、つまり知らない人に知ってる内容を教えることについて、そ

 

の意義は認めながらも、違う道の方を重視する。「それとは異なる次元にある、

 

未知なるものへの好奇心/関心/興味を刺激することの方をやはりしたい」。

 

つまり、「既知の伝達」より「未知との遭遇」を選ぶわけだ。コピペやパクリより、

 

フロンティア(新天地)、アドベンチャー(冒険)、クリエーション(創造)。

 

 

 

ただし、それが有効に機能するには、読者の側が既にある程度、啓蒙されて

 

リテラシー(読み書き能力)を持ってる必要があるし、語り手の自分がそれを

 

推し量りながら刺激する必要もある。だから問題文の最後は、慎重で控えめ

 

な言葉になるわけだ。「そこが難しい所であるわけですが」。

 

 

 

いずれにせよ、かなり疲れる人間関係、コミュニケーションであって、そもそも

 

佐々木の文章自体が、非常に啓蒙的な内容。にも関わらず、その点の自己反

 

省、自己批判は、(問題文の中では)見当たらない。

 

 

 

まさにそんな時、国語の次の問題文、2番の文章が心に優しく響くのだ。

 

 

 

  「人間関係の疲労とは、行き交う言葉をめぐる疲労である。だから、

 

   言葉を持たない石のような冷やかさが、その冷たいあたたかさが、

 

   とりわけ身にしみる日々があるのだ」。

 

 

 

 

 

         ☆          ☆          ☆

 

さて、この小池のエッセイ小説。ネット情報(Weblio辞書)で出典を調べると、

 

2004年の『感光生活』(筑摩書房)が最初らしい。さらにウィキペディアを見

 

ると、もともと詩人だった小池の、初期の短編集に収録されたものだ。

 

 

 

子どもの頃から石が好きだった小池が、テレビ局の山形さんと知り合い、い

 

きなり「『アイセキカ』友の会に入会しましたよ」と告げられる。たまたま奥さん

 

を病気でなくした頃だったから、「愛惜家」と思ってしまったのは無理もない。

 

私も、「愛石家」という単語は初めて耳にした。

 

 

 

しかし言われてみれば、私が子どもの頃も、日常的に石と触れあってたのだ。

 

小池と同じく、道に小石があれば蹴ってたし、海や川に石を投げて遊んでた

 

し、袋に入れて小石を沢山持ち帰ったことさえあった。高校の修学旅行では、

 

観光地の河原の大きめの石をみんなで持ち上げて、記念写真まで撮ってる。

 

筋トレ用と言うより、体育会系のノリをアピールする小道具になってた。

 

 

 

 

 

          ☆          ☆          ☆

 

この「石」とはもちろん、石ころでもあるし、山形さんに対する面白い比喩でも

 

ある。「石頭」という言葉からも分かるように、石みたいだと言われて喜ぶ人は

 

ほとんどいないだろう。しかし、愛石家の山形さんにとっては最高の褒め言葉、

 

愛情表現のはず。

 

 

 

最初は小池も、あまりいいイメージは持ってなかったらしい。テレビやインタ

 

ビューというものは、「希薄で一時的・図式的なもの」だし、テレビの魅力につ

 

いて「自信を持って決めつける」山形さんの「ずうずうしさ」も気になる。

 

 

 

けれど、石の品評会に無理やり誘われて、仕方なくOKすると、まず雨がお膳

 

立てしてくれた。まるで海や川原のように、渇いた石に湿った魅力を与えてく

 

れる。自分一人の頭上だけを華やかに囲む、傘も好きなのだ。

 

 

 

そして、会場となってる表参道の小さなアトリエに入ると、「水石」という言葉と

 

も遭遇する。庭石のように大きくはなく、片手で持てる小さな石のこと。その後、

 

山形さんが出品した真っ黒な楕円形の石と、「滋賀県瀬田川・山形寛」という

 

プレートを見てると、真っ黒に日焼けした山形さんが、なぜか汗に濡れた顔で

 

登場。キレイに、石と山形さんとが重なり合うわけだ。

 

 

 

 

 

         ☆          ☆          ☆

 

「何かが何かを少しずつひっぱっている」。漠然としたまま、彼が私を惹き付け

 

るし、運命や偶然が2人を引っ張る。そして、僅かな言葉だけを交わして、洋

 

風の居酒屋へ。「石も人も。ころがり、ぶつかりあって、わかりあうしかない」。

 

 

 

そして、熟年の男女の奇妙な恋愛がどうなるのか、読者に期待させたまま、

 

ポイントを語らずに物語が終了。この小説自体が、センター試験という河原で

 

拾った水石のようなものだろう。私もまた、小池と同じく、「石を愛でる人」だ。

 

 

 

心地良い湿り気と冷やかさ、距離感を味わいつつ、今年のセンター国語とは

 

この辺でお別れ。控えめな「感光」の明るさと共に、それでは。。☆彡

 

 

 

 

 

 

 

P.S. 佐々木のツイッターでは、「クソリプ」(くだらないリプライ)に関する

 

     批判的文章として扱われてることについて、不満をつぶやいてた♪

 

     確かに、例えばGIGAZINEも、クソリプと「パクツイ」(パクリのツイー

 

     ト)を記事タイトルに入れてる。

 

     小池は今の所、フェイスブックでセンター採用の報告をしてるだけ。

 

 

 

 

 

cf. データ分析(四分位数、箱ひげ図、相関係数)

 

                    ~2015センター試験・数学ⅠA・第3問

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

 

   昭和初期の女性ランニング小説、岡本かの子『快走』~2014センター

 

   幻想的な私小説、牧野信一『地球儀』~2013センター試験・国語

 

   鷲田清一の住宅&身体論「身ぶりの消失」~2011センター試験・国語

 

 

 

              (元記事 2126字; 追記 345字; 計 2471字)

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