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韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(Parasite、寄生蟲、キセンチュン)、言葉の意味とあらすじ

1つのものがこれほど世界中で絶賛されるケースはなかなか記憶にない。ある意味、ノーベル賞より大きな扱いになってる気もする。少なくとも、オリンピックの金メダルよりは遥かに大きな扱いだ。

     

フランスのカンヌ映画祭2019パルムドール(最高賞)に続いて、米国アカデミー賞2020作品賞にも輝いた、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。日本の公式タイトルは格差社会を意識してそう書かれてるが、元の韓国語でも、カンヌ映画祭のフランス語でも、アカデミー賞の英語でも、「半地下の家族」という副題は付いてない。

  

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韓国語は、ハングル文字(上図はハングル版ウィキペディア)ではなく漢字で書くと「寄生蟲」のようで、日本人にとってもすぐ意味が分かるが、発音(特に最初の音がキかギか)は意外と難しいらしい。ただ、検索すると「キセンチュン」が多数派(3文字との対応は、キ・セン・チュン)。「ギセンチュン」は少数派だった。

   

   

    ☆     ☆     ☆  

寄生虫とは何か? 各種の辞書や辞典の解説を一覧すると、普通は他の動物の体内にこっそりひそんで依存生活を送る小さな虫(内部寄生虫)で、嫌われ者かつ低評価の存在。ポスターの右下や公式サイトを見ても、細くてグルグル渦巻いた不気味な寄生虫のデザインが入ってる(ハングル文字のアレンジ)。ポスターは英語版ウィキメディアより

   

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そうした負のイメージを多少和らげてたのが、以前日本で少し流行った「パラサイト・シングル」という言葉だ。親と同居したまま暮らす独身者で、生活ぶりはそれほど悪くもない。隠れてるという意味合いも少なめ。

         

むしろ恵まれた余裕ある生活にもなって、親もそれを望んでる場合もあるから、どこが悪いのかというようなプチ論争も見かけた覚えがある。「共依存」か、あるいは、仲良し親子の合理的生活か。。

  

  

     ☆     ☆     ☆

一方、「半地下」の韓国語は「パンジハ」のようだから、これも日本語の漢字の発音に似たもの。意味や語の成り立ちも、「半」「地下」の合成語のようで、既に多数の報道があるように、韓国の格差社会の下層部にある住居の形を指してる。ただし、映画の副題には付いてない。

   

下は朝日新聞デジタルの写真の引用(撮影・清水大輔)。つい最近のソウルの風景。日当たりや騒音の問題があると書いてるけど、別の記事を読むと、実は極端な質素さがちょっとしたトレンド(流行)みたいにもなってるそうだ。つまり、必ずしもマイナス、ネガティブとは限らない。安くてデザイン的にちょっと変わった建築・生活様式といった感じか。

           

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私の田舎の情景を思い出すと、線路の脇の下側に並んでた家がちょっと近いと思う。たまに電車が通る時はうるさくて、普通の住宅街とはハッキリ隔てられてたけど、差別や蔑視は目立たなかった気がする。電車はたまにしか通らないし、ある意味、川沿いや崖下よりは作りや保安がしっかりしてて安全だろう。むしろ、海のすぐそばの我が家とかの方が危険とも言える。

   

   

     ☆     ☆     ☆

さて、この映画は韓国での公開より先に、カンヌで世界初上映されてるから、まずはフランス語で見ておこう。下は今現在(20年2月13日)のカンヌ映画祭公式サイト・仏語版より

  

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 Parasite : la Palme d'or 2019 triomphe aux Oscars 2020!

 (パラサイト:2019年のパルムドール受賞作が、2020年のオスカー(アカデミー賞)でも大勝利をあげた。)

   

  

    ☆     ☆     ☆

フランス語でも綴りは英語と同じ「parasite」だが、発音は「パラジット」で、意味は英語や日本語より広い。

  

英語だと、寄生虫とか居候という名詞の意味に限定される。要するに日本語と同じだ。ところがフランス語だと、形容詞(余計な、邪魔な)や動詞(寄生する)にもなるし、名詞でも雑音・ノイズという意味も入って来る。まさにウチの田舎の線路下の住居。

      

ということは、英語や日本語、そしておそらく韓国語よりも、フランス語の方が意味や用法が豊かで受け入れやすい単語だろう。そのことが、カンヌでの満場一致の最高評価を陰で支えた可能性はある。大体、日本語のタイトルでも「寄生虫」という露骨でネガティブな言葉は使ってないわけだ。

  

ちなみに英語版ウィクショナリーで、語源古代ギリシャ語まで遡ると、「パラ」が「そばで」、「サイト」が「食べる」。つまり、パラサイトの語源は、近くで食べるという意味。そこから、身近な他人の食卓で食べる人、寄生虫、という流れで意味が変化したようだ。

   

語源を直接的に考えると、害をなすという悪い意味は入ってない。自分のそばで食べ物を得るだけ。それが2000年の歴史を経て、ネガティブな意味が強まった末に、今回の映画ではウソや盗み、殺人とつながってる。

     

    

     ☆     ☆     ☆

ここで、既に誰でも知ってそうなあらすじ(ストーリー、プロット)を、ごく簡単にまとめ直してみよう。一番短くまとめると、こんな感じになる。一応、 公式PR動画のラストでは「ネタバレ厳禁」とされてるので、ご注意あれ♪

   

半地下の貧乏家族・キム家が、金持ちのパク家に寄生。すると、大邸宅には前からこっそり寄生してた夫妻がいたから、ドタバタの末に殺し合いになった。最後は、キム家の主人だけが、同じ邸宅で別の家族に寄生。息子たちは、いつか上の世界に登ってみんなで暮らすことを夢見る。。

   

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貧乏なキム一家が、夫・ギテク、妻・チュンスク、息子・ギウ、娘・ギジョン。

金持ちのパク一家は、夫・ドンイク、妻・ヨンギョ、娘・ダヘ、息子・ダソン。

先に寄生してた夫妻は、夫・グンセ、妻(家政婦)・ムングァン。

    

上で私が「ドタバタの末に」と7文字で済ませた箇所は、日本語ウィキペディアだと非常に細かく書いてある。「先が読めない」とかいう宣伝文句が消し飛ぶほど。フランス語版ウィキもかなり細かいが、英語版ウィキはわりと簡潔にまとめてた。

   

   

     ☆     ☆     ☆

個人的には、脚本も映像も、先日レビューした『万引き家族』の方が好みだ。前年(2018年)のカンヌ映画祭パルムドール受賞作で、是枝裕和監督の作品。

   

アジアの貧困や複雑な家庭問題を描いてる点も、殺人が絡む点も、少しだけセクシャルな萌え要素が入ってるのも、『パラサイト』と同じ。しかし、圧倒的に静かで穏やかな作品だった。激しい争いの描写や格差のコントラスト(対比)の強調も控えめ。

   

いずれにせよ、最近の文化の世界や評価が、多様性や格差というものを非常に重視してるのは間違いない。そして欧米では特に、攻撃的な姿勢や表現、活動が好まれる傾向がある(日本は逆に抑制的・同調的)。

  

おそらく、下から上への非常に激しいアプローチをコメディとして扱ったところが、欧米での絶賛につながったんだろう。日本では、カンヌとアカデミー賞の影響で評価が急上昇、一般化した感もある。この世界的流れが、特に日本社会で現実的にどう影響して来るのか。今後の社会全体の動きにも広く注目してみたい。

   

以前、半分ほど見た韓国ドラマ『冬のソナタ』も激しい展開だったなと振り返りつつ、今日はそろそろこの辺で。。☆彡

   

      (計 2888字)

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