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「SNSのデマ拡散でトイレットペーパー買い占め」とかいう善意のフェイクニュース~日経新聞・東京大学による批判

ある情報が真実か偽物か、それを調べるファクトチェック(事実確認)というものは、わりと簡単なことだ。信頼性の高そうな複数の情報を探し出して、照らし合わせて、冷静に検討するだけ。ほとんど合ってなければ、「おそらく偽物、フェイクニュース」とか判断できる。

   

しかし、「ある偽情報のせいで、ある事が起きた」という主張の真偽は、はるかに調べにくい。

   

その「ある事」は、無数の物事の影響を受けるわけだし、その内の「ある偽情報」が主として影響したと示すのは非常に困難だ。一般に、原因と結果の関係(=因果関係)を示すのは難しいが、特に人間社会での因果関係を示すことには特別な難しさがある。

   

  

    ☆     ☆     ☆

さて、当サイトでは10日前、買いだめ行為の合理性を示すゲーム理論の記事で、次のように疑問を提示しておいた。ちょっと長いが、再掲しとこう。

 

 ─── トイレットペーパーの「買い占め」が話題になったのは、先月(2020年2月)の末からのこと。この時は、デマに扇動されてしまった浅はかで醜い行為として、メディアでもSNSでも強く批判された。

 しかし、あれが本当にごく一部の明らかなデマによって引き起こされた現象なのか、因果関係を示す説得的な証明を見たことはない。私自身も、メディア報道があるまでデマとされてる虚偽の情報を知らなかった。ただ、その問題はとりあえずおいとこう。

    

それより大切でハッキリした事実は、いまだに首都圏(の一部)ではトイレットペーパーが品薄だということ。「不足するというのはデマです。在庫は十分あるので落ち着いてください」とか繰り返し報道された後、私がたまたま店頭で見つけるまで3週間かかった。犯人扱いされたデマなど、すぐに消し去られたにも関わらず。

  

実は、あの時の報道自体も、根拠が薄くて実害をもたらすデマに少し似たものではなかったのか? むしろ市民としては、デマも報道も相手にせず、明らかに品薄の商品を素早く探し回って手に入れる方が合理的だったのではないか? それを問いかける検証報道は見たことがなかった。 ───

   

   

    ☆     ☆     ☆

私が上のように批判したトイレットペーパー・デマ買い占め問題について、日経新聞HPが斬新な分析・考察を示したのは1日ちょっと前。4月5日の夕方のことだ。

  

ただ、それを見る前に、他のメディアが実際どう報道して来たのか、具体例を確認しておこう。あまりに多いので、ごく一部に留めておく。

  

まず、ファクトチェックの重要性を度々主張して来たはずの朝日新聞。20年2月29日・朝刊より。

  

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「デマ拡散 在庫は十分なのに ──」。この記事は今でもネットで読める。ちなみに朝日には、これより強い断定的表現の記事も複数あった。この本文では、「品薄を招いているようだ」とだけやや控えめに書いてある。

  

続いて、読売新聞HP、2月29日の記事。こちらも、今でも閲覧可能

  

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最後に、最新の雑誌サイト記事より。『SPA』で昨日(4月6日)アップされたもので、特定の個人的ツイートの内容まで挙げて、法律的な罪を論じてる。ただ、実は根拠がないという自覚があるからか、本文では「トイレットペーパー不足による騒動を招いたのは、デマ情報をネットに流した職員だと多くの人は考えている」という書き方で責任回避してるのだ。

   

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     ☆    ☆    ☆

では、日経新聞HPの記事を見てみよう。──「デマ退治」が不安増幅 買い占め騒動ツイッター分析──。日本経済新聞、東京大学・鳥海不二夫准教授、データ分析会社・ホットリンクが共同で行った分析。

  

3月6日の朝刊・紙面でも1面トップと5面で大きく扱われてたから、スクープ記事扱いだ。もともと高く評価されてたシリーズ「データの世紀」の最新記事で、今回の執筆記者は不明だが、担当者8人の名前を明記。

    

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一行目が結論だ。「デマを打ち負かそうとする投稿の急増が、意図せぬ形で逆に社会を混乱させていた」。

    

ツイッターの状況を内容や転載(リツイート)まで含めて全て調べた上で、全国のスーパーの販売状況データと照らし合わせる。さらに、実際に買いだめした人へのネット調査も実施。

  

すると、そもそも元のデマ扱いされたツイートはほとんど拡散してないことが判明。それに対して、デマを否定するツイートやメディア報道は大量に拡散。それに連動するようにして、トイレットペーパーの販売が急増。そして、そもそも買い溜めした人の9割以上が「供給に問題がない」と知ってたのだ。

  

200407f

  

   

     ☆     ☆     ☆

もし、この日経記事の分析が正しいのなら、品薄状況を深刻化したのはむしろ、デマを批判して注意を呼び掛けた「善意の」フェイクニュースということになる。悪意はないが間違ってるインフォメーションの拡散がもたらしたパンデミック。大量の情報に感染してしまう「インフォデミック」の典型例。

      

もちろん、この分析も完全ではないので、私はあまり強く正しさを主張するつもりはない。そもそも、記事の元の生データ、1次資料も確認してないのだから(公開されてない)。

     

ただ、情報の洪水の中で、事件の犯人捜しをするのなら、この程度の追求やメディアリテラシーは必要なのだ。逆に、不特定多数のSNSならともかく、マスメディアが調査なしに犯人を語るのなら、それが不確かな推測(というより想像)に過ぎないことを十分わきまえて明示する必要がある。

  

200407e

      

ともあれ、やはり日経が誇る「データの世紀」シリーズ記事は毎回、目を通す必要があるなと再確認させられた。世間的常識を覆す調査に称賛を贈りつつ、今日はそろそろこの辺で。。☆彡

   

      (計 2282字)

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