大隅良典教授のノーベル医学生理学賞2016、受賞理由(英語原文と和訳)

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今年もまた、日本人がノーベル賞を受賞した。しかも今回は単独受賞

だから、自然科学系だと1987年の利根川進教授以来、29年ぶりの

快挙☆ 名前が1人だけだから、輝きが一際目立ってる。

  

そこで、いつものように、英語の公式HPからコピペ&翻訳させて頂こう。

世界レベルの公的発表でもあるし、著作権の問題は生じないと考える。

     

下は、細胞内で自分自身の要素を食べる「自食作用」(オートファジー)

のメカニズム。左から右へと、まず膜で包んで袋にして、他のもの(リソ

ソーム)と融合して自食するプロセスを単純化して描いてる。

      

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      ☆        ☆        ☆

では、プレス・リリースの最初から和訳して行こう。基本的には直訳に近い

ので、堅苦しい日本語だが、英語原文との対応関係は分かりやすいはず。

          

2つの固有名詞(ノーベル会議、カロリンスカ研究所 or 医科大)

には、スウェーデン語が使われてる箇所もある。文字化け防止のため、

アクセント記号は省略。複数形は、訳した所と無視した所がある。人名

の漢字は「大隅」が正しくて、「大隈」は誤字なので、要注意。

            

161005c

   

Nobelforsamlingen

The Nobel Assembly at Karolinska 

Institutet

      

Press Release

 2016・10・03

   

ノーベル会議

カロリンスカ研究所・ノーベル会議

  

プレス・リリース

2016年10月3日

  

The Nobel Assembly at Karolinska 

Institutet has today decided to 

award the 2016 Nobel Prize in 

Phisiology or Medicine

   to

Yoshinori Ohsumi

for his discoveries of mechanisms

for autophagy

  

カロリンスカ研究所のノーベル会議は今日、2016年

のノーベル生理学・医学賞を、ヨシノリ・オオスミ(大隅

良典氏)に贈ることを決定した。

オートファジーの様々なメカニズムを彼が発見した

ことに対して。

    

   

      ☆        ☆        ☆

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Summary

This year’s Nobel Laureate

discoverd and elucidated mechanisms

underlying “autophagy”,a  fundamental

process for degrading and recycling

cellular components.

          

要旨

今年のノーベル賞受賞者は、細胞の要素を分解して

リサイクルする基本的なプロセスである、「オートファジー」

の下にあるメカニズムを発見し、解明した。

   

  

The word “autophagy” originates from 

the Greek words “auto-”,meaning

“self”,and “phagein”,meaning “to eat”.

Thus,autophagy denotes “self eating”.

   

「オートファジー」という単語は、ギリシャ語で自分を

意味する「オート」と、食べることを意味する「ファゲ

イン」に由来する。よって、オートファジーは自分を

食べることを示す。

  

This concept emerged during the 

1960’s,when researchers first

observed that cell could destroy

its own contents by enclosing it

in membranes,forming sack-like

vesicles that were transported to

a recycling compartment,called

the “lysosome”,for degradation.

   

この概念は1960年代を通じて登場した。当時、研究者

達は、細胞が自らの中身を破壊しうることを初めて観察

していた。中身を膜で包み、袋のような小胞(液胞)を形

成し、「リソソーム」と呼ばれる分解器官へと運ぶ。

   

  

       ☆        ☆        ☆

Difficulties in studying the

phenomenon meant that little was

known until,in a series of brilliant

experiments in the early 1990’s,

Yoshinori Ohsumi used baker’s

yeast to identify genes essential

for autophasy.

   

その現象の研究における数々の困難によって、1990

年代初頭の輝かしい実験の数々までは、ほとんどの事

が分からないままであった。この頃、大隅良典氏がパン

酵母を使い、オートファジーにとって本質的な遺伝子を

発見したのだ。

         

He then went on to elucidate the

underlying mechanisms for autophagy

in yeast and showed that similar

sophisticated machinery is used

in our cells.

           

彼はさらに、酵母のオートファジーの下にあるメカニズムを

解明し、より洗練された同種の仕組みが我々の細胞で使わ

れていることも示した。

   

   

       ☆        ☆        ☆

Ohsumi’s discoveries led to a new

paradigm in our understanding of

how the cell recycles its content.

   

大隅氏の諸発見は、細胞がどのように中身をリサイクル

するのか、我々が理解する際の新たなパラダイム(枠組み)

をもたらした。

   

His discoveries opened the path to 

understanding the fundamental

importance of autophagy in many

phisiological processes,such as

in the adaptation to starvation or

response to infection.

   

彼の諸発見は、多数の生理学的プロセスにおけるオート

ファジーの根本的重要性の理解へと、道を切り開いた。

例えば、飢餓への適応、あるいは、感染への反応。

  

Mutations in autophagy genes can

cause disease,and the autophagic

process is involved in several

conditions including cancer and

neurological disease.

        

オートファジー遺伝子における突然変異は、病気を

引き起こすことがある。また、オートファジーのプロセ

スは、ガンや神経学的病気も含め、いくつかなの条件

に含まれている。

    

    

       ☆        ☆        ☆      

ちなみに、オートファジー。洗濯機でお馴染みの「ファジー」と似て

るとか言われたこともあるそうだが、あれは「fuzzy」で、英語の綴り

も発音もハッキリ違ってる。

    

とにかく、同じ日本人として、本当に嬉しいし、誇らしい。

それでは今日はこの辺で。。☆彡

   

   

    

cf. 大村智教授のノーベル医学生理学賞2015、

      受賞理由(英語原文と和訳)&休養ジョグ

    

                       (計 2839字)

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人や昆虫の痛み、命の長短~『昼顔』第8話

  紗和  知らなかった。顔見るのがこんなに辛いなんて。。

 

  北野  ・・・・・・昆虫は、痛みを感じる痛覚が無いって言われてるんだ。

       生き物が痛みを感じるのは、危機を察知して、

       出来るだけ命を長らえるため。

       でも昆虫は、痛みを感じる必要がないぐらい命が短いから。

       そうゆう説がある。

       悲しい時や、辛い時は、人間は長い命をもらったから。

       僕はそう考える。

 

  (本棚越しに、手を握り合う2人。そこに突然、近寄る影・・・)

 

  乃里子  じれったいなぁ! もたもたしてないで、さっさと抱き合ったら!!

 

 

          ☆          ☆          ☆

ガクガク、ブルブル。。(笑) 話題のデング熱より怖いかも。もし、「このドラ

マを20字でまとめなさい」という問題が出たら、私は、

   「女は超~コワイ、男はちょっとカワイイ。」

と答える。

 

もちろん、「超」と「ちょっと」、「コワイ」と「カワイイ」、言葉の音まで合わせた

対比であって、男の先生だと二重丸をくれるはずだが、女の先生だとバツさ

れるだろう♪

 

とにかく、男と女はかけ離れた性、互いに「他者」「他人」なわけだが、お互い

の痛みをある程度以上、理解することくらいは可能だろう(多分)。あの無愛

想な画家・加藤(北村一輝)さえ、他人(ひと)の気持ちや痛みは分かるらしい。

 

だからこそ、紗和(上戸彩)や淵上(萩原智也)の願いもさり気なく聞いて、わ

ざわざ長い髪を切ってまで、滝川(木下ほうか)に真正面から話をしようとす

る。「申し訳ありません。でも、利佳子(吉瀬美智子)は私が幸せにします」と

か、言うつもりだったんだろう。ま、別れた妻の乱入で、まだ実現してないけど。

 

今回はまた興味深い科学ネタも登場したし、視聴率も15.6%までアップ。前

回、記事をサボったことだし、まともなレビューを書きたい所だけど、残念なが

ら個人的に、信州遠征の直前で大変なのだ。ごく簡単に、マニアックな感想を

書くに留めよう。

 

 

         ☆          ☆          ☆

北野の説の根拠というか、元ネタや関連記事をネットで検索すると、直ちに

感じ取れる事がある。学問的にも定説が無く、論争や拡散がある、という事

だ。せいぜい、「生物学者の間だと、少なくとも一部の昆虫には痛覚らしき

ものがある、という考えが有力」といった所だろう。

 

最近のわりと注目すべき記事だと、『カラパイア』という情報エンタテイメント系

サイトがすぐにヒットする。

 

   「昆虫が痛みを感じない理由は寿命の短さにあった?(米研究)

    http://karapaia.livedoor.biz/archives/52148842.html

 

この去年12月の記事は、「knowledgeNuts」という海外サイトの次の記事を

翻訳したものだ(2013年11月)。

 

   Insects Don’t Feel Pain  (昆虫は痛みを感じない

   http://knowledgenuts.com/2013/11/23/insects-dont-feel-pain/

 

この記事は確かに面白いし、それなりに科学的な内容にはなってるが、信頼

性については微妙な所。きちんとした学術論文のタイトルやリンクさえ付いて

ないのが、その一つの証拠だ。本来なら例えば、次のスタンフォード大の英語 

論文などを出典・参照文献として挙げるべきだった。

 

   Nociceptive Neurons Protect Drosophila Larvae 

                from Parasitoid Wasps

   (侵害受容ニューロンは、ショウジョウバエを寄生バチから守る

 

 

簡単に言うと、ハエの痛覚みたいなものが敵の回避に役立ってるという話で、

「昆虫は痛みを感じない」という説への異論・反論の類だ。時間が無いので、

これ以上は調べないが、信頼できる科学記事なら、こうした論文やデータな

どが挙げられてるわけだ。。

 

 

          ☆          ☆          ☆

まあでも、よくある言い回しを使うなら、「ハエじゃないからハッキリした事は分

からない」といった感じだろう。では、我々がハエだったら、ハエに痛みがある

かどうか分かるのか? そう問いかけると、哲学的・認識論的な難問になる。

いわゆる、他我認識、他者の心を知ることの難しさに直面するのだ。

 

とりあえず無意識は別とすると、私は、私自身の痛みは分かる(つもりになっ

てる)。では、他人の痛みが分かるのかというと、普通は、「相手の言葉や表

情、行動などから類推して、自分の痛みを相手へと埋め込む」などと考える

わけだ。

 

相手が泣いてたら、自分が泣いてる時の悲しさを味わってると想像する(単な

る表情の類似なら、鏡で自分を見る必要あり)。いわゆる感情移入説で、反論・

疑問の類は昔から色々あるけど、これを「上回る」代案を見たことは無い。

 

感情移入には、3つの条件が必要となる。相手が素直に反応を示すこと。ま

た、それを読み取れること。さらに、自分自身が対応する感情を持ってること。

 

すると、ペットの犬や猫くらいなら、その痛みを分かることが出来るけど、昆

虫だと難しいから、「昆虫に痛みは無い」と考えたくなるのは一応理解できる。

実際、バッタは足がもげてもポーカーフェースのままだった気がするのだ。

植物の痛みを想像するのも難しいし、生物以外、物体の痛みだとさらに難し

い。。

 

 

         ☆          ☆          ☆

ドラマに戻ると、横取り&家出によって、もはや遊びとはいえない不倫に入り

込んだ加藤と利佳子も、捨てられた夫や娘2人の痛みはよく分かる。それは

自分の痛みではないけど、人間は他人の痛みも減らそうとする高等生物で

あって、何とか人間としての誠意を示そうとしてたわけだ。

 

紗和と北野も、妻・乃里子(伊藤歩)の痛みはよく分かるからこそ、永遠の別れ

に向かおうとする。しかし、その痛さは紗和にとって、想像を遥かに上回るもの

だったし、いきなり乃里子に直接的な痛みも与えられてしまった。生まれて初め

ての、頬への平手打ち。嫉妬心に燃える、強烈なビンタ。

 

こうなると、紗和としても、自分の痛みの方が大切になるし、反射的に反発し

てしまうのは自然なこと。こんな女に負けられない! そもそも、最終回が第

11回とするとまだ3回も残ってるから、永遠の別れだと番組的にも困るのだ♪

 

 

        ☆          ☆          ☆  

北野に言わせると、痛みは長い命を保つため。確かにそう考えると、痛みに

も非常に大切な生の意味があることになって、耐えやすくなるかも知れない。

 

ただ、ここで注意すべきは、「痛みは危機を避けるため」とは言ってないこと。

つまり、危機を察知しても、それを避けない選択こそ、人間の人間たる所以

(ゆえん)だろう。

 

なぜ避けないのか。それは、もし避けると、より大きな危機に直面するから、

と言ってもいい。でも、危機よりも快楽の方が大きいからと考える方が分かり

やすいはず。特に、性欲を持て余す人妻不倫ドラマでは♪ そもそも、「痛い

のがイイ」場合さえあるらしい(笑)。コラコラ!

 

というわけで、利佳子と加藤は食事中にも濃厚な不倫キスをむさぼり合うし、

来週以降、紗和と北野先生も背徳的性愛の快感をむさぼり合うはずだ。そ

うしないと、楽しみにしてた視聴者が心の痛みを感じて、ドラマを回避する。

すると視聴率が下がって、フジテレビのスタッフが痛みを味わうことになって

しまうのだ♪

 

それよりは、エロチック路線に向かう方が正解だろう。上戸や吉瀬の夫の痛

みは、気にしなくていいと思う。と言うより、彼らも倒錯した悦びを味わえるチャ

ンスなのだ。「ウチの可愛い妻が、他の男とあんな凄い事を。。♡」(笑)

 

 

        ☆          ☆          ☆     

ちなみに、例の盲導犬を刺した犯人も、犬や飼い主の痛みより自分の倒錯し

た快楽を優先したのだろうが、これは社会的に全く許されない。逮捕されるよ

り、自首した方が、痛みが少ないだろう。本人にとっても、犬や飼い主の方な

どにとっても。

 

他者に痛みを与えた者には必ず、それ相応の罰がくだされるのだ。もう時間

が来たので、今日はあっさりこの辺で。。☆彡

 

 

 

cf. 僅かな自転車連発&人妻不倫のぞき見♪(『昼顔』第3話)

   豪州電車救出劇&人妻悪女不倫♪(『昼顔』第4話)&僅少自転車

   続・氷水挑戦&人妻悪女開花(『昼顔』第5話)&パンク回避走行

   人妻不倫中断~『昼顔』第6話、軽~い感想♪

   嫉妬と窃盗~『昼顔』第9話&ジョギング2日目

   夢か現実か、人妻蝶のピクニック~『昼顔』第10話

   人妻蝶の炎、新たな束縛の快楽へ~『昼顔』最終回

   ドラマ『昼顔』ノベライズ本、別の結末のあらすじ&感想♪

 

                                  (計 3367字)

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魚・貝・海藻など、水産物の放射能(セシウム)について

個人的に今、極端に時間がない状況だが、魚などの放射線・放射能につい

て、簡単に現状をまとめとこう。陸の除染も大変な問題だが、海・湖・川は

さらに除染しにくいし、まだしばらく放射性物質(セシウムなど)が流れ込み

そうなので、長い目で注意し続ける必要がある。そうした点は、たとえば朝

日新聞7月5日の朝刊・科学面でも書かれていた(「広がる湖沼のセシウム

汚染」、「福島・茨城の霞ヶ浦」)。

     

魚の汚染は、福島第一原発事故の当初から、特別な関心を持たれている

気がする。その理由はいくつかあるが、ポイントは次の4つだろう。

      

   ① 陸の家畜や野菜などと違って、一匹ずつの個体を把握しきれない。

   ② 広範囲を自由に移動する。

   ③ 海の深さによって異なり、表層より底の方が汚染され続けてる。

   ④ より小さい魚を、より大きな魚が食べる連鎖の中で、

      放射能濃度の「生物濃縮」が起きる。

   

   

          ☆          ☆          ☆       

この内、まず④について簡単に補足しておくと、「セシウムを取り込んだ魚

をより大きな魚が食べて行く内に、セシウムの濃度が上がって行く」という

ような説明は、単なるイメージに過ぎない(ちなみに連鎖のスタートは魚で

はなくプランクトンやゴカイなど)。

         

数学的に考えれば、順々により大きな魚が食べて行くと、一匹あたりのセ

シウムの重さ(質量)は増えるかも知れないが、一匹あたりの魚の体重の

類も増えるから、割り算して求める濃度(セシウム÷体重など)が増すとは

限らないのだ。

             

割り算以外にも、時間的変化が問題となる。食物連鎖の間に時間が経過

するから、その間に生物は少しずつセシウムを体外に排出するし、物理的

半減期(Cs137が約30年、Cs134が約2年)にしたがって、セシウム自

体も徐々に減って行く。

           

とはいえ、8月4日の朝日新聞・朝刊記事「今さら聞けない 魚とセシウム」

(別刷be)にも書いてあったように、実際の研究で、生物濃縮と関連する事

実が確認されてるようだ。つまり、食物連鎖の上位にいる大型魚の方が汚

染が長引きやすいという、大まかな統計的事実だ。。

      

    

          ☆          ☆          ☆

一方、③については、朝日の記事が調査データをグラフにしてた。表層の魚

(シラス、コウナゴなど)は、時間と共に濃度が低下。既にほとんどは、今年

4月からの国の新基準値(1kgあたり放射性セシウム合計100ベクレル)を

下回っている。それに対して、底層の魚(マコガレイ、イシガレイなど)では、

濃度が横ばいで、汚染が長期化してること分かるし、新基準を超える魚も多

いようだ。

      

より詳しいデータをネットで探してみると、まず2011年3月24日~2012

年3月末までのまとめは、農林水産省HPの「水産物の種類毎の放射性物

質の検査結果について」というページにある。そこでは、稚魚、浮魚(うきう

お=表層~中層)、底魚(そこうおorていぎょ)、貝・甲殻類、海藻、淡水魚、

水産加工品(シラス干し、乾のりなど)に分類して、詳細なデータを示してあ

る(下図参照)。先日、過去最大の濃度で話題になったアイナメは、もちろ

ん底魚だ。

       

120824b2

      

今年4月以降のデータについても、水産庁HPの「水産物の放射性物質の

調査結果について」というページで更新され続けてる。データ全体に目を通

すと、濃度の大半は数百Bq/kg(ベクレル・パー・キログラム)以下で、特

に基準値100Bq/kgを下回るものが多い。つまり今現在、一部の汚染

が問題となってるからといって、水産物全体を避けなければならないような

状況ではないのだ。もちろん、避けたい人が避けるのは自由だし、あまり

検査されてない部分(魚の頭部など)を避けるのは賢明かも知れないが。

   

    

         ☆          ☆          ☆

試しに、今回もまた、具体的な放射線量の計算を行ってみよう。基準値ギ

リギリ、100Bq/kgの水産物を1日平均200g(=0.2kg)食べたとす

ると、1日あたり20Bq。1年(=365日)で7300Bq。大まかに、Cs137

とCs134が半々と考えれば、経口摂取(口から取り入れる場合)の実効

線量係数は、0.013と0.019の中間。つまり、0.016μSv/Bq。

  

   ∴ 実効線量=0.016×7300

           ≒100μSv (マイクロ・シーベルト)

           ≒0.1mSv (ミリ・シーベルト)

         

これは大人の場合だが、子どもでもこの数倍程度。そもそも、極端に多く

の放射能を摂取するケースを想定してるのだから、他の内部被曝や外部

被曝を加味しても、十分な余裕がある。実効線量の計算については、これ

までも度々具体的に書いて来たが、最近だと先日の海水浴場の記事が参

考になると思う。ストロンチウムの扱いについても、そこで書いておいた。

なお、放射性ヨウ素については、半減期が短いし放出が止まってるので、

現在は問題とされてない。

      

    

          ☆          ☆          ☆

そして最後に、東日本の漁業の現状を考えるべきだろう。福島県ではいま

だに、沿岸漁業や底びき網漁業は全面自粛(ミズダコなどの試験操業やサ

ンプル調査は別)。茨城県でもかなりの自粛に加えて、出荷停止も行われ

ている。宮城県はわりと普通のようだが、一部で自粛や出荷停止がある。

それらの情報は、先ほどの水産庁HPで分かりやすく図示されてるわけだ。

    

魚を食べる、食べないとか言う前に、われわれ日本人全体が、もっと福島

近辺の漁業や海などの状況を知るべきだろう。それは別に、漁業への配

慮のためだけではなく、われわれ自身の食生活、ライフスタイルに関わる

問題なのだから。

    

なお、エラの塩類細胞などから体外へ排出することによる、セシウムの生

物学的半減期は、海水魚が19~84日、淡水魚が50~340日。淡水魚

の方が、セシウムの排出に時間がかかる傾向があるそうだ。単なるイメー

ジ的には逆のような気もするので、意外感があった。

     

もう時間が無くなったので、今日はこの辺で。。☆彡 

    

    

     

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推計(全国、年代・経路別)

  確率的影響と確定的影響~放射線被曝の二分法の再考

  文科省が10都県で確認、ストロンチウム(Sr)90の実効線量係数など

  湖や海、水浴場における放射線(外部&内部被曝)の計算

  福島第一原発の汚染水、現状の定量的なまとめ(13年・夏)

      

                                  (計 3037文字)

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確率的影響と確定的影響~放射線被曝の二分法の再考

「放射線の生物学的影響には二種類の型がある。線量の増加にほぼ比例

して発生確率も増加するのが「確率的影響」。それに対して、ある境界値

(しきい値)を超える線量で発生し、線量に応じて発生頻度が急増するのが

確定的影響である」。。

    

こういった説明はあちこちにあり、私もちろん3・11の少し後には一応読ん

でたが、今までどうもしっくり来てなかった。それが今夜になってようやく、あ

る程度しっくり来るようになったのだ。世間的な話題としてはやや「流行」遅

れかも知れないが、原発事故の放射線・放射能との闘いは何十年も続い

て行くし、医療などの低線量被曝の問題もある(数mSv~数十mSv程度)。

そこで以下、現在の私の理解と考えを簡単にまとめとこう。

          

    

          ☆          ☆          ☆

まず、もともと国立の代表的研究機関である放射線医学総合研究所(放

医研)のpdfファイル(島田義也「低線量被ばくの影響に関する知見」,

2010)から、一部コピー&ペーストさせて頂こう。普段、こういった無断

の二次利用はやらないが、事態と時期を考えると、個人サイトに対して

著作権を主張される恐れはまず無いと考える。実際、「¥300」と記され

てるにも関わらず、医療情報サイト「inNavi」で全文が無料カラー公開さ

れてるのだ。

            

120621a

    

右端に、確定的影響と確率的影響の区別があり、左端には「身体的影

響」と「遺伝的影響」の区別がある。身体的影響という言い方だと、ある

意味すべてそうだが、「本人の」身体への影響を意味してるわけだ。そ

れに対して、「子孫の」身体への影響が遺伝的影響だ。

      

これを見ると、よく話題になる身体的影響であるガン・白血病や、特に女

性にとって気になりそうな遺伝的影響は、いずれも確率的影響だと分か

120621b

 る。あちこちに

 似たグラフがあ

 るが、ここでは

 文科省委託事業

 である「緊急被

 ばく医療研修の

 ホームページ」

 からコピペさせ

て頂こう。おそらく、ICRP(国際放射線防護委員会)の1990年勧告(Publ.

60)のグラフを翻訳したものだと思う。これは要するに、当サイトで以前、

低線量被曝とラジウム温泉に関する記事を書いた時に話題にした、「LNT

仮説」を示すものだ。  

      

LNT、すなわち、Linear-Non-Threshold。普通、「直線しきい値なし」

と訳すテクニカル・タームで、原点から伸びる直線が、線量と確率の比例

120621d_2

  (の仮説)を表してる。ちな

  みに、前述のpdfファイルに

  あった左図だと原点を通っ

  てないが、それは「医療」の

  放射線量だけを考えてるか

  らだ。

        

 それに対して前に挙げたグ

ラフでは、平時に浴びる自然放射線の量まで考慮してるから、線量がゼロ

の時には確率はゼロ、自然発生率さえ下回っている。容認できるレベルが

自然発生率より低いということは、要するに、現実的には容認できるレベル

など無いことを示してるのだ。この辺り、しばしば曖昧にされたり、説明を

省略される点なので、ここで注意を促しとこう。。

         

   

         ☆          ☆          ☆

一方、相対的にあまり話題になってないのが確定的影響(deterministic

effect)だ。これは確率的影響(stochastic effect)とペアになる対立概念

(=対概念)で、境界となる線量(しきい値:threshold)を超えると発生が確

120621c

 定するというよ

 り、その線量以

 下だと無しが確

 定する影響といっ

 た方が「近い」。

 ちなみに左のグ

 ラフは、上と同

 じ引用先による

 ものだ。しきい

線量を超えると「確率」が急増するのであって、発生が確定するのではない。

       

ここで、反原発とか反放射能の立場でなくても気になるのが、しきい線量

以下では影響なしという点。普通に考えれば、影響ゼロではなく、非常に

確率が小さいというだけではないか、という疑問が生じて来る。

        

これについては、「ある意味、その通りかも知れない」、というのが一番納

得できる正確な回答だろう。実際、英語版ウィキペディアには、すべて確率

的影響だという考えもあることが紹介されている。所詮、事例的にも人数

的にもあまり多くない患者データによる仮説だし、非常に確率が小さい出

来事なら気にしなくてもいいわけだ。実際、我々は、飛行機や自動車なら

ともかく、電車に乗ってる時に事故死の心配などしてないだろう。電車はま

だ心配だという人でも、エスカレーターで死ぬ心配まではしてないはずだ。

      

同様に、放射線防護においても、影響発生の確率が非常に低い線量なら、

特別な対策を省略してもいいわけだ。防護の基本は「ALARA」の原則。つ

まり、「As Low As Reasonably Achivable」、「合理的に達成できる

範囲でなるべく影響を低く」することだから、非常に低い確率の影響の場合

は無視して防護しない方が合理的だ。実際、自然放射線に対する防護な

ど、特には行われてない。          

         

    

          ☆          ☆          ☆

一方、確定的影響について、もう少し技術的で精密な議論をするなら、「影

響」というものの意味を明確にする必要がある。そもそも、分子レベル、細

胞レベルの影響はすべて確率的であって、運悪く放射線に直撃されるかど

うかという話なのだ。

     

しかし、人間の生体にとって、僅かな分子や細胞の被害・死亡は、機能的

に問題ないし、再生・修復機能もある。線量がある値以下だと、僅かな被

害しか生じない(という確率が非常に高い)から、臓器や組織レベルの機

能的影響はゼロと考えてよいのだ。

       

なお、確定的影響のしきい値はかなり高い(100mSv以上)し、基本的に

短時間での被曝を想定してるので、現場作業に携わる職業人以外はほと

んど気にしなくていいものが多い。だから、ガンなどと比べて話題にならな

いわけだ。

       

以下では、その中でもしきい値が低くて、少しは気になる程度のものを挙げ

とこう。元の線量データの単位はグレイ(Gy)だが、これは普通の人には馴

染みがない物理学的概念なので、下ではよく話題になるβ(ベータ)線・γ

(ガンマ)線の実効線量(mSv)で表しておく。出典は、書き方の分かりやす

い本として『第1種放射線取扱主任者試験 徹底研究』(Ohmsha,2007)

を用いた。ICRPの2007年の発表を前記pdfファイルで確認しても、ほぼ

同様だった。

    

   (急性障害)

   一時的不妊   男性 150mSv ; 女性 650mSv

   リンパ球減少  250mSv

   嘔吐       500mSv

   

   (晩発障害)

   胎内被ばくによる胚死亡 100mSv

   奇形             150mSv

   精神発達遅滞       200mSv

   発育遅延          500mSv     

     

   

         ☆          ☆          ☆

最後に、上述の資格本の例題で扱われてる知識を、補足として羅列しよう。

  

   ◎確定的影響は、短期の被曝だけでなく、長期の被曝でも起こり得る。

   ◎確定的影響の重さ(=重篤度)は、単位時間当たりの線量(=線量率)

    が下がると低くなる。つまり、ジワジワ浴びた場合は症状が軽い。

    ちなみにグラフで表す時は、縦軸が影響の重さ、横軸が線量率(ま

    たは線量)で、右上がりになる。

   ◎しきい線量は、胎児や幼児では低い。つまり、より少ない線量で影

    響が発生する。

    

   ◎確率的影響の発生頻度(つまり確率)は、線量率が下がると低くなる。

    つまり、ジワジワ浴びた場合は確率が低い。

   ◎確率的影響には、急性死やガンによる死亡などを除いた「寿命短縮」

    は含まれない。つまり、被曝による「老化の促進」は認められてない。

    

なお、「確率的」と訳されてる「stochastic」は、統計的確率と関わることを表

す一般的単語だが、「stochastic effect」だと放射線の影響を表すのが普

通のようだ。では、今日はこの辺で。。☆彡

   

    

      

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学的・生物学的半減期

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  久々に涼しい1日&放射線量の「ホットスポット」など

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

  津波の物理学~浅い海、水面波の波動方程式と速度

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推計(全国、年代・経路別)

  義務教育における放射線・放射能~中学校・理科の教科書&副読本

  文科省が10都県で確認、ストロンチウム(Sr)90の実効線量係数など

  湖や海、水浴場における放射線(外部&内部被曝)の計算

  福島第一原発の汚染水、現状の定量的なまとめ(13年・夏)

     

                                  (計 3838文字)

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福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

12月27日の林野庁農林水産省・外局)発表によると、森林総合研究所

名古屋大学の協力で、スギの雄花とその内部の花粉に含まれる放射性

セシウムの濃度の調査を実施。とりあえず、福島県内の調査結果を、中間

報告としてまとめた。正式な結果は2月上旬に発表の予定。今回の試算

果の数字で判断するなら、ほとんど気にする必要のない被曝量にすぎない。

       

スギの花粉に含まれる放射能(セシウム)の濃度を、雄花の濃度と比べる

と、ほぼ同程度だったので、試算には雄花の濃度(乾燥重量1kgあたり何

ベクレルか)を使用。まだ雄花は閉じてることもあって、花粉を直接調べる

より雄花を使った方が簡単なのだろう。

     

セシウム(Cs)による内部被曝の計算は、基本的にはいつもの通り。つまり、

Cs137Cs134のそれぞれについて、

   

   吸引する放射能の量(Bq)×吸引摂取の実効線量係数(μSv/Bq)

   

で計算して、最後に足し合わせる。ちなみにカッコ内は単位で、「Bq」は

ベクレル。「μSv」はマイクロ・シーベルト、つまりシーベルトの100万分

の1。この種の科学的計算では、単位が重要だ。

          

吸引するのでなく、口から飲み込んだ場合は、係数の値が多少下がるか

ら、被曝量は減ることになる。よって、被曝量が多くなる吸引の方が問題

だ。吸引で安全なら、飲み込んでも安全という理屈になる。正確には、飲

み込むと言うより、摂取すると言うべきだろう。。

      

      

         ☆          ☆          ☆

(1) ではまず、Cs137の吸引(または吸入)による内部被曝の計算。

1時間当たりの値(μSv/時)を求めるために、先ほどの式を少し書き直すと、

   

1時間に吸引する放射能の量(Bq/時)×係数0.039(μSv/Bq) ・・・① 

     

この実効線量係数0.039は、林野庁が用いてる成人の値で、子供(3~

7歳)の場合は2倍程度、乳幼児(3ヶ月~2歳)の場合は3倍程度になる

(放射線医学総合研究所より)。

     

①式の左半分、放射能の量は、吸い込む空気に含まれる花粉に注目して

計算する。以下、林野庁HPの該当pdfファイルに示された値を使用。もち

ろん(?)、式までは書いてくれてないから、この記事で解説してるわけだ。

         

1時間に吸引する放射能の量(Bq/時)

  =空気の濃度(Bq/m³)×1時間の呼吸量(m³/時)

  ={空気中の花粉の濃度(個/m³)×花粉の重量(kg/個)

    ×花粉のセシウム濃度(Bq/kg)}×1日の呼吸量の1/24(m³/時)

  ={2207×(12÷1000÷1000000000)×145000}

                            ×(22.2÷24) ・・・②

     

②式を①式の左側に代入して計算した答は、約0.000139(μSv/時)。   

     

   

(2) 全く同様の考えで、Cs134による内部被曝は次の式で求められる。

   {2207×(12÷1000÷1000000000)×108000}

                   ×(22.2÷24)×(係数0.020)

   ≒0.000053(μSv/時)

      

       

(3) したがって、2種類のセシウムによる内部被曝量の総和

      0.000139+0.000053=0.000192(μSv/時) ・・・答

                                     (計算終了)

       

     

            

        ☆          ☆          ☆

林野庁の発表には、2種類のセシウムの量を合わせた約25万ベクレルと

いう値もあるが、これはCs137の14万5000と、Cs134の10万8000

を単純に足し合わせたもので、時々見かける省略表現だ。両者は係数が

違うから、正確には上のように別々に計算する。

    

ちなみに答の0.000192μSv/時という値は、実は成人の最大値。つ

まり、も厳しいデータを用いた計算結果であって、実際にはこれよりか

なり低い値になると思われる。

        

この最大値でさえ、現在の空間線量(約0.05μSv/時以上)と比べても、

200分の1にすぎない。年間(24×365=8760時間)で計算しても、内

部被曝の総量は約1.68μSv。つまり、0.00168mSv(ミリ・シーベルト)

であって、最も厳しい年間基準値1mSvと比べても遥かに低い子供で2

倍、乳幼児で3倍の内部被曝としても、まず問題はない。     

     

では花粉による「外部」被曝はどうか。真面目に計算するなら、標準理論

基づく面倒な積分計算になってしまう。ただ、内部被曝でさえ余裕十分なの

だから、気にする必要はほとんど無い。万が一、ほんの少し問題のある量

になった場合でも、普通の空間線量の値に反映されるはずだから、そちら

をチェックしてれば大丈夫だ。

                

したがって、林野庁の情報とICRP(国際放射線防護委員会)の標準的理

論を信用するなら、何の問題もない。信用しないのなら、互角以上の代案

を示すべきだが、仮に100倍に見積もるとしても、基準値まで余裕がある。

おまけに、来年花粉の量普通で、今年よりは少なめとのこと。花粉症

の人には、総合的にひとまず朗報だろう。

                   

春以降、ずいぶん沢山の放射線記事を書いて来たが、今年はこれで終了

する。正確な計算と根拠に基づいて、冷静に判断することを心がけて来た

つもりだ。来年は、明るい光の訪れに期待したい♪ ではまた。。☆彡

          

       

      

P.S. 2012年2月2日の朝日新聞・朝刊「ニュースがわからん!」では、

     「スギ花粉と放射能」と題して簡単に解説。今春はヒノキも含めて

     花粉が少なめで、東北では1~4割減関東では3~4割減と予

     想されていた。

           

            

cf. 被曝する年間放射線量すべての計算方法

                  (自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

   ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

   WHO(世界保健機関)による被曝線量の推定(全国、年代・経路別)

   義務教育における放射線・放射能~中学校・理科の教科書&副読本

                   

                               (計 2297文字)

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体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学&生物学的半減期

(☆7月14日追記: セシウム汚染牛肉をめぐる関連記事をアップ。

 セシウム牛肉、食後1年間での被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期) )

    

   

         ☆          ☆          ☆

忙しくて時間がとれない中、久々に放射線関連の記事をアップしてみよう。

簡潔にまとめたものだけど、今現在ネット上に(ほとんど)見当たらないマ

ニアックな内容にはなってると思う。

          

東京電力・福島原発の事故が、いずれ何とか収まるとしても、放射線の問

題はその後も長く残るだろう。ヨウ素はすぐ消えるとしても、セシウムやプ

ルトニウムは延々と放射線を出し続ける。放射性物質や放射線への関心

も、当然続くだろう。

             

放射性物質や、それが含まれる野菜・水が、どれだけの放射線を出すの

か。その放射する能力(=狭義の放射能)を示す単位がベクレル。また、

我々が体重1kg当たりで吸収する放射線量を表す単位がグレイ。さらに、

その線量がどのくらい人体に実害を与えるかを考慮した「実効線量」の単

位がシーベルトだ。これら3つは、以前の記事でわりと詳しく書いてる。

     

人々の関心は当然、何をどれだけ摂取したら危ないのかという問題に向

かうことになるわけだが、理数系の話が好きな人間にとっては、何ベクレ

ル摂取すると何シーベルトになるか、という話が気になる。

         

この換算は、一般には「実効線量係数」(effective dose coefficient)という

ものを掛ければいいと言われてる。例えば、ヨウ素131の経口摂取なら

ベクレル×0.022=マイクロシーベルト。これも、既に前の記事に書いて

ることだ。係数の一覧表は、例えば「緊急被ばく医療研修のホームページ」

にある。

        

☆追記: 4月5日の朝日・朝刊は係数0.016を採用。詳しくは、下の記

       事のP.S.3、4、5を参照。

       シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について )

            

ただ、この係数が、放射性物質の種類や摂取方法によって違うのはいい

としても、それほど厳密なものではないという点は語られることが少ない。

ICRP(国際放射線防護委員会: International Commission on Radiological

Protection)が1996年に示した報告書(Publ.72)の数値が出回ってる

が、あれは一つの参考に過ぎないのだ。そもそも医学・生理学が絡む複

雑な問題だし、実験も観察も非常にしにくいことなのだから。

            

早い話、長期間の人体実験を大勢の被験者で行うことなど不可能だ。考

えれば明らかなことだし、実際、帝京大学の「複合災害救援の基本的考

え方と放射線被曝防護」と題するpdfファイルでも、人体への影響を計算

する困難さが強調されている。もちろんウチでも、最初からハッキリ書いて

たことだ。

           

とはいえ、ベクレルからシーベルトを求める際の長い理論的プロセスには、

数学的に明快な部分も一応ある。それは、半減期と放射線量に関わる部

分だ。以下では、その点について、数式計算でハッキリさせておこう。 

         

            

        ☆          ☆          ☆

まず、高校1年・物理の教科書レベルからスタートする。

    

  放射性物質(ヨウ素131,セシウム137など)のベクレルの値

           = 1秒間に崩壊する原子核の数

           ≒ 1秒間に出る放射線(β線、γ線など)の量

   

「≒」は近似を表す記号で、本当は比例だから「∝」と書くべきだけど、等号

「=」に似た「≒」で書く方が分かりやすいだろう。上の式から、もしベクレル

の値が変わらないならば、「(ベクレル)×(秒数)≒(放射線量)」だ。

           

しかし実際には、ベクレルの値(≒放射能の強さ≒放射性物質の量)は、

半減期」の時間が経つごとに、1/2になって行く。つまり、ベクレルは時

間tの関数だから、B(t)と書くことにしよう。すると最初(つまりt=0)のベク

レル数は、B(0)と書ける。さらに半減期をTと書けば、t=1Tの時に1/2、

t=2Tの時に(1/2)の2乗になるから、以下同様に考えれば、以下の式

が成立する。と言うより、これが半減期Tの定義式だ。

110402e

    
時間tにしたがって刻々と変わるB(t)に、非常に短い時間を掛け合わせたも

のを、長い時間にわたって合計すれば、全体の放射線量(とみなせるもの)

が求められる。x 年後までの全放射線量をR(x)と書けば、50年後(=157

6800000秒後)までの全放射線量R(50)は、次の「定積分」で表される。

   

110402g

     

難しく見えるが、実は計算のレベルも答えも高校3年の教科書レベルだ。

計算結果は下の通り。莫大な秒数は関係ない。中央の「=」は、本当は

「≒」だが、誤差はほとんど無視できるから等号「=」にしてある。

    

110402h

       

つまり、B(0)T / log2 が答。したがって、半減期Tに比例する。ちなみ

に分母のlog2は、約0.693。分子の半減期 T は秒で表した数字だか

ら、かなり大きい数。半減期の短いヨウ素131でさえ約8日間だから、約

70万秒。セシウムなら約30年だから、遥かに大きい数字だ。ただし、人

体への影響を考えてシーベルトの値を求める時に、数字は一気に小さく

なる。そこの計算部分は、まだブラックボックスだけど、もはや数式計算

のように明快な話が出来なくなるレベル、人間的な話なのだ。。

     

           

         ☆          ☆          ☆

私自身の興味は、実はこの先の僅かな部分にあった。ここからは、物理

の高1教科書レベルを少しはみ出す話だが、数学的には高1の教科書レ

ベル。ただし、考えたことが一度もなかったから面白かったのだ。半減期

2種類ある場合を考えてみよう。

             

現在の日本社会も含めて、普通に話題とされるのは物理学的な半減期だ。

つまり、原子核の崩壊による半減期。ヨウ素が8日、セシウムが30年といっ

た数字はすっかりお馴染みだろう。一方、生物の体内に取り込んだ放射性

物質がどうなるかという点も少しだけ話題になってるが、計算式を見ること

はない。それどころか、朝日・読売・毎日新聞のサイトで検索する限り、生

物学的(な)半減期といった言葉は見当たらない。

           

体内に摂取された放射性物質は、少しずつ体外に排出されて減って行く。そ

のプロセスで半減する期間が生物学的半減期だ。いま、物理学的半減期

T₁生物学的半減期T₂とすると、   

110402a

     

ここで、右辺を指数法則にしたがって変形すると、
 

110402b

    

一方、トータルの半減期というものを想定して単にと書くなら、一番最初

の式と同じだが、少しだけ書き方を変えて、

110402c

         

上の2式の右辺、1/2の右肩部分を見比べれば、2種類の半減期の組合

せに関する公式が導ける。同じ意味の式が、日本語版ウィキペディアの「被

曝」や、英語版ウィキ「Half-life」にも、結果だけ掲載されている。要するに

私は、それらの式を見て、導き方を考えたのだ。 

110402d

         

ちなみに、原子力資料情報室によると、ヨウ素131の生物学的半減期

ヨウ素129と同じのようで、甲状腺で120日、その他の組織で12日。一

方、セシウム137の生物学的半減期は曖昧な書き方だったので、英語版

ウィキペディアで調べると、数ヶ月らしい。大まかな値だけど、一応の参考

にはなるだろう。プルトニウムも数ヶ月となってるが、別の場所には200年

なんて凄い数字が出てたから、とりあえず保留しとこう。論争中なのかも。。

      

         

         ☆          ☆          ☆

上のような理数系の考察は、目先の生活の指針にはならないが、理解や

安心感の手助けにはなる。訳の分からないまま、メディアが出して来る多

様な情報に惑わされるよりは、少しでも理解できた方がマシだろう。少なく

とも、私自身はモヤモヤが少し晴れた気がする。

      

原発や放射線に関しては、引き続き注目し続けるので、またしばらく後で

記事を追加するかも知れない。とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡

    

    

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算

                              (by 定時降下物データ)

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算式(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  原発事故はみんなが無責任、だけどね・・~東電社員の息子・ゆうだい君への応答

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

  被曝する全放射線量の計算方法 (自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  セシウム牛肉、食後1年間での被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  確率的影響と確定的影響~放射線被曝の二分法の再考

  義務教育における放射線・放射能~中学校・理科の教科書&副読本

           

                                  (計 3550文字)

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鳩はルームランナーを歩く時、首を振らない♪

(29日) RUN 16km,1時間18分21秒,心拍145

ニコリ作のパズル、「推理」か「スクエアカット」の難易度5が載ってないかな

と思って、朝日新聞・朝刊(10月30日)の別刷・beを開くと、どちらも載って

なくて、迷路と数独と漢字の3点セット。そこで、右側のページに目を移すと、

ののちゃんのDo科学」シリーズで面白い話が載ってた。「ハトはなぜ首を

振って歩くの?」。

     

主たる答は、大見出しになってる。「景色の揺れを止めるためよ」。首を振る

と揺れが止まる。この逆説的(=矛盾的)な効果の説明を、記事から再構成

すると、次のようになる。

   

   ──人間と違って、鳩は目玉が動かせないから、歩く時に景色が流れ

   ないようにするために、一歩ごとに頭を動かす。まず首を前に突き出し

   て、その後、脚を蹴って身体が前に動くのに合わせて、首を後ろに縮

   めていく。そうすれば、頭の位置は前後に揺れない。限界まで縮めた

   ら、また頭を前に突き出して、動作を繰り返す──。

        

なるほど。ごもっともな話だけど、「論より証拠」。上の説明の証拠はもっと

面白かった☆ 鳩をルームランナー(=ランニングマシン=トレッドミル)の

上で歩かせる「実験が昔あった」。すると何と、ハトは首を振らなかったとの

事。ルームランナーだと、ベルトが流れても景色は流れないから、首を振る

必要がないという論法だ。

        

この昔の実験というのは、ネットでサラッと検索した限りだと、日テレ系の教

養パラエティ『所さんの目がテン!』が最初のような気がする。2005年1月

9日の放送で、鳩ではなくニワトリで説明されたらしい。これを見た日本の科

学者が、鳩でも実験したんじゃないかな。実際、日本のウィキペディアには

この説明が簡単に載ってるけど、一般にもっと詳しい英語版ウィキには、

の説明が載ってないのだ。ちなみに、ニワトリを自転車のカゴに乗せてゆっ

くり走ると、自分が歩いてないのに首を振るというお話。見てみたいね♪

      

          ☆          ☆          ☆ 

これを読んですぐ思い付いたのは、バレエ・ダンサーのスピン頭を前方に

固定したまま、限界まで身体だけ回転させて、その後クルッと頭を1回転

せる。要するに、ハトなら前後の直線運動、バレエは回転運動ってだけの

違いだろう。。

     

・・・と思ったら、実は似て非なるもののようだ。ネットで発見した信頼できる

情報は、2008年1月17日の「ののちゃん」。タイトルは「フィギュア選手は

目が回らないの?」。フィギュアスケートのスピンは、氷上でもジャンプでも、

バレエより遥かに高速だから、頭をしばらく固定してクルッと回す余裕などな

い。それでも、才能と訓練で目が回らなくなるそうだ。

   

という事は、遥かに遅いバレエの回転でも、頭を回す必要はないはずだ。

あれは科学的に説明されるべき運動というより、長年の伝統とか文化のよ

うなものなんだろう。観客のいる側に顔を固定するって意味もありそうだ。

    

なお、鳩が首を振る理由は、他にもあるらしい。バランスを取るためとか、

地面のエサを探すとか。サギやカモの仲間だと、エサを探す時だけ首を振

る鳥も見つかってるそうだ。取材協力者は、東京大学・樋口広芳教授、沖

縄県立博物館・藤田祐樹氏。。

      

          ☆          ☆         ☆

一方、昨夜の走りについて。土曜(=今日)が台風で雨だと分かってたし、

日曜もどうなるか分からないから、最低でも12kmは走ろうと思って、渋々

と夜の公園へスタート。相変わらず、寝不足と疲れのピークなんだけど、ちょ

うど12度くらいの気温が心地良くて、公園内も落ち着いた雰囲気。序盤で

すぐ、16kmに頭を切り替えて、のんびりと鼻呼吸で走り終えた。脚の痛み

も僅かだし、疲労蓄積もそれほど無い♪

       

トータルでは1km4分54秒ペース。うん、心拍もほぼ80%の145で低いし、

ちょうどいいんじゃないかな。これで今日はお休みして、明日のんびりハーフ

21.1kmを走り抜けば、今月の走行距離のノルマは達成。ただ、昨夜から

の寒さで、ノドがかなり腫れてしまった。風邪の半歩手前で踏ん張ってたの

に、ほとんど風邪の初期症状って感じ。鼻も詰まり気味だし、明日そんなに

走れるかどうか、全く自信はない。ま、ダメなら仕方ないから、10km程度の

鼻呼吸ジョギングでお茶を濁すとしよう。

           

私は行けなかったけど、土曜久々に本格的な同窓会があった。あいにく

の台風&雨の中、みんな盛り上がったかな♪ って言うか、まだこの時間だ

と現在進行形かもね。多分、4次会の真っ最中だろう。幹事さん達、どうも

お疲れさま。ではまた。。☆彡

     

  往路(2.45km)   13分18秒  平均心拍124          

  1周(2.14km)    11分03秒        136       

  2周             10分43秒        142  

  3周            10分37秒        147

  4周             10分21秒        151

  5周            10分08秒        156

  6周(0.4km)        1分52秒         156

  復路              10分19秒        157     

計 16km  1時間18分21秒  心拍145(79%) 最大167(ゴール時)

                                  (計 2006文字)

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「手助け」(help)とは何か~チンパンジーの研究をめぐって

朝日新聞の10月15日夕刊に、「チンバンジーもお手伝い」という見出

しの興味深い記事が掲載された。小見出しは「要求ある時だけですが

・・・」。記事冒頭はこうなっている。「見返りがなくても、相手が要求すれ

ば手助けをすることを、京都大霊長類研究所などのチームが明らかに

した。14日付米科学誌(電子版)に発表した」。

                  

執筆者の瀬川茂子は、睡眠中に脳が「復習」するという記事をこの夏に

書いた時も出典を明記してなくて、ネットで探し当てるのに5分ほどかかっ

た覚えがある。ただ、今回は1分も経たない内に、元の論文を探し当てる

ことができた。

               

PLoS(Public Library of Science=科学の公開図書館)というプロジェク

トが発行している電子版の科学誌「PLoS ONE」に掲載された英語論

文で、タイトルは「Chimpanzees Help Each Other upon Request」(チンパ

ンジーは要求に応じて互いに手助けする)。執筆は Shinya Yamamoto

山本真也、霊長類研究所、現在は東大)、Tatyana Humle(京大・野生

動物研究センター)、Masayuki Tanaka(田中正之、同)。

               

          ☆          ☆          ☆

新聞では小さい囲み記事だったが、元の論文は流石に長くて詳細なも

のだから、素人が読むのはなかなか大変だ。とはいえ、基本的に科学

論文というのは分かりやすくシンプルに書いてあるから、人文系の論文

よりは遥かにラクとも言える。新聞記事の要約(or 超訳)に合わせて

だけ簡単にまとめるなら、以下のようになるだろう。

           

     チンパンジーのペアを一頭ずつ2つの部屋に入れ、一方に

     は手の届かない場所にジュースを、他方にはステッキを置

     いた。部屋の間には、穴の開いた透明な仕切りがあるだけ

     なので、お互いの様子はよく見える。ジュースが欲しいチン

     パンジーが、飲むための道具としてステッキを要求する仕草

     をすると、もう一方のチンバンジーは、見返りがないのにス

     テッキを手渡すことが多かった。ただし、要求がない時に自

     発的にステッキを手渡すことはまれだった。。

                         

ちなみに、ここで朝日の記事は、「3ペアでステッキが渡った130回中、

98回が相手の要求に応じた行動だった」と書いてるが、実際にはこの

数字は「実験2」だけのもので、6ペアで行った実験1が別にある。

       

また、なぜか元の論文の図(Table 2)では、少し違う数字が書かれてい

て、普通に計算すると122回中の95回になってしまう。本文(98回では

なく75.4%と書かれてる)が違うのか、あるいは図が違うのか。細かい

話だけど、著者らにおたずねしたいものだ。レフェリー(査読者)もいる

はずなのに、うっかり見逃したのだろうか。。

         

        ☆          ☆          ☆

さて、そんな細かい指摘よりも遥かに重要なのは、手助け(help)とか、

利他行動(他者の利益となるような行動:altruism)という言葉の意味だ。

               

論文でも朝日の記事でも、執筆者の考えには当然、人間との比較があ

る。手助けとか協力という、社会的で人間的な行動の進化を研究してる

訳で、この実験からは、手助けされる側の要求が重要な要素だという結

論が差し当たり出る。また、霊長類研究所のHPにはこう書いてある。

           

     利他行動の進化を考えたとき、この「要求に応じた手助け」

     は効率的な戦略と言える。相手の手助けをしても、それが

     「おせっかい」になってしまっては意味がない。その点、「要

     求に応じた手助け」は必ず相手の役に立つので無駄になる

     ことがない。ヒトでみられる助け合い社会も、このような利他

     行動を出発点として発展してきたのではないだろうか。

              

HPの方の推測は、この実験だけで考えるなら、単なる想像に過ぎない。

説得力を持たせるには少なくとも、無駄に終わったおせっかいの観察が

必要になるが、この実験ではそもそもおせっかいがほとんどないし、設

定からして無駄に終わるはずもないのだ。

          

それはともかく、HPより論文の方に目を移そう。そこには、相手の要求

に応じてステッキを渡すチンパンジーの様子を示す写真が添付されてい

る。私がチンパンジーを見慣れてないせいもあるだろうが、笑ってしまう

ほど素っ気ない渡し方で、「手助け」というより、要求がうるさいから仕方

なく手渡してるだけのようにも見えてしまった。

                   

もちろん、熟練の研究者から見れば、渋々渡す素振りとは全く違うのか

も知れない。でも、ここで一つ、たとえ話をしてみよう。いま仮に、私が一

人で弁当を食べているとする。食べ終わった私が、割り箸をごみ箱に捨

てようとすると、ちょうど友人がやって来て、手を差し出して要求するの

で、何の気なしに割り箸を渡す。すると、友人がその割り箸で背中をポリ

ポリかき始めて、気持ち良さそうな表情になった。この時、私が割り箸を

渡した行為は、「手助け」と言えるのだろうか。。

                 

もちろん、結果的に相手にとって、手助けにはなっている。だが、その際

の私にとっては、手助けというより単に何気なく簡単な要求に応じただけ

だ。ここに、時間と主観の問題が浮上してくる。また、私が手助けしたと

言うためには、例えば友人の「背中がかゆいからその割り箸を貸して」と

いう言葉とか、それを聞いた後の私の笑顔が必要だろう。あるいは、私

の内心を書きとめた記録とか。

                                  

ところが、このチンパンジーの実験では、相手との明確な言語的コミュ

ニケーションもなければ、手渡す側の理解や親切心を示す証拠もない

実際、論文の最終的結論部分にも、相手の欲望に対するチンパンジー

の理解が不完全だから、自発的な手助けがほとんど無いのかも知れな

いと書いてあるのだ。これでは、私の割り箸渡しと同様、チンバンジー

ステッキ渡しも手助け以前の段階ではないだろうか。。

            

       ☆          ☆          ☆

見方を広げて一般化するなら、これは要するに、連続と非連続の問題、

あるいは同一性と相違性の問題だ。チンパンジーのステッキ渡しと、人

間が本当に相手を思いやって行う手助けとの間の、連続と不連続、あ

るいは同一性と相違性をどう考えるのか。

                 

チンパンジー研究者に限らず、生物学者はしばしば連続性を強調する。

昔と今、動物と人間。ただ、いかなる2つのものも全く同じではないし、

我々は今生きてる人間なのだから、昔の祖先との違いや、現在の動物

との違いを強調したい気持ちも自然に湧いてくる。

            

もちろん、こうした研究自体は非常に興味深い仕事であって、だからこ

そ私も、今回に限らず以前から、それなりにチェックはしてるわけだ。で

も、実はかなり前に、今回と似たような疑問も感じていた。記憶が定かで

ないが、霊長類研究所が「報酬に応じた仕事」のようなものに関する研

究を発表した時、「報酬」という言葉の使い方に違和感があったのだ。

人間の報酬と、果たして同じ種類のものだろうか、という疑問だ。

              

一般に、生物学者や脳科学者が「報酬」という言葉を使う時、意味が広

がり過ぎてると感じることが少なくない。広い意味で擬人法ともいうべき

用語法は、「自然科学」を「自然に対する人間的解釈学」へと変形する

可能性がある。変形にせよ、拡大解釈にせよ、必ずしもマイナスとは言

えないが、プラスともニュートラルとも言えない。その辺り、第一線で活躍

する科学者には、一段と慎重な配慮を持って頂きたいと思うのだ。

             

なお、他には「自発的な」手助けと「要求に応じた」手助けとの違いの見

分け方が、素人としては少し気になった。あと、見返りは本当にまったく

無かったのかどうか。その一方、数値データからの結論の出し方は流石

にしっかりしてるように見える。少なくとも、先日再検討した、一般相対性

理論の検証実験の時の曖昧さと比べると、説得的なものだろう。

     

ところで、この「PLoS ONE」という科学誌にはトラックバック機能まで付

いてるから、試しにTBを送ってみよう。現在コメントもTBもゼロの論文だ

けど、10月14日の公開以降、4日で1200人以上の訪問者がいるよう

だから、TBをクリックする方も数十人くらいはいらっしゃるかも知れない。

          

091018   

  

  

  

  

     

         

ちなみに先日の脳の睡眠復習の記事は、「Slashdot」(スラッシュドット)

というコンピューター系の掲示板に紹介されて、数百人の訪問者を集め

ている。それと比べて、PLoSはどうなのか。試しにこの記事で実験して

みよう。英語論文に日本語のブログ記事をTBするのは無理があるか。

                              

まあ、何事も実証する姿勢は重要だろう♪ ではまた。。☆彡

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