『小保方晴子日記』の感想13~単行本&婦人公論インタビュー

102周年の伝統を持つ雑誌『婦人公論』(中央公論新社)の「小保方

晴子日記」については、過去12本の記事を書いてるし、別にコネタ

記事も1本ある。

 

 初回 第2回 3回 4回 5回 6回

 7回 8回 9回 10回 11回 12回

 パブロン飲んで低心拍スロージョグ&仏陀の馬の名前とか♪

 

単行本出版以降、かなりアクセスは増加。ただ、雑誌の連載は既に

(とりあえず)終了、大幅に加筆された単行本も発売されたので、

当サイトではこの記事がラストとなる。もちろん、いずれ日記の続編

(2016年10月11日~)が発表されれば話は別。

 

 

      ☆        ☆       ☆

あらためてごく簡単に私の見方をまとめとくと、まず「叩かれ」過ぎ。

批判は当然としても、その量と質があまりに過剰だ。

 

世の中で、科学や研究の「不正の類」など、他にいくらでもある中で、

若手研究者のSTAP細胞研究だけがなぜあれほど叩かれたのか。

なぜ、彼女の自宅のドアが記者に叩かれ続けたのか。そして、なぜ

優秀な恩師が自ら命を絶つことになったのか。論文内容や書き方、

評価、研究態度だけでは全く説明がつかない不条理だ。

 

今年(2018年)1月、iPS細胞に関する研究不正が明らかになって、

ノーベル賞・山中伸弥教授も頭を下げて謝罪。つい先日、正式処分も

受けてるが、ほとんど話題になってない。昨年末のNHKスペシャル

『東大研究不正』も話題にならず。実績ある東大教授にも関わらず。

 

この不均衡、不平等、アンバランスは一体何なのか。考える余地は

まだ十分ある。 メディアや科学界に関しても、一般社会に関しても。

 

 

     ☆       ☆       ☆

一方、彼女の研究能力はさておき、非凡な文才はこの『日記』で

明らかになった。

 

ベストセラー『あの日』だけ読むと、かなりライターなどの手が加わった

のではないかという思いもあったけど、『あの日』の執筆過程も『日記』

に詳しく書かれてる。博士論文の修正&却下の過程についても同様。

 

もちろん単なる読者には、それらがどの程度、真実を表してるのか

ハッキリしない。ただ、非常に細かくて具体的な記述が一日も休まず

書かれてるのを見ると、文才や記憶力・記録力は認めざるを得ない

だろう。精神的・身体的に文字が書けない状況でも、記号や絵で

手がかりを残して、後から再現したとのこと。

 

単行本によると、小説にもチャレンジしてる(or してた)らしい。ただ、

むしろ「ノンフィクション」と呼ばれるジャンルのフィクション(創作物)

の方が向いてるかも。

 

ちなみに小保方さんが「ピーチ姫」と呼ぶ毎日新聞の女性記者・須田

桃子が『捏造の科学者』で獲得した、大宅壮一賞もノンフィクション

部門(第46回)。

 

選考委員は、佐藤優、片山杜秀、梯久美子とされる。佐藤は、今後の

ノンフィクションの模範で商売になる書き方だと絶賛。非常に彼らしい

評価だろう。要するに、ノンフィクションはフィクション、作り話でいいと

いう事だ。ある程度までなら、「捏造のノンフィクション作家」などと

叩かれることもない♪ 

 

テレビのノンフィクション番組も大同小異だ。簡単で面白くしないと、

大勢に見てもらえないし、SNSで拡散してもらえない。

 

 

      ☆       ☆       ☆

さて、本題の『小保方晴子日記』について。細かい話だけど、単行本

の日付けが3通りもある。本の奥付では3月25日発行、会社紹介

は3月22日(初版刊行日)、そしてamazonでは

3月20日(発売日)。

 

公式には25日となってるのは、連載分の日記の最終日が3月24日

だからかも。もちろん、年は18年と16年で違うけど。似たような事は

ページの番号にもある。公式には304ページとされてるのに、本は

300ページで終わってるのだ。綺麗にキリ番で終わらせたのかも。

 

いずれにせよ、今日でほぼ2週間経過で、ウチの近所の小さな書店

だと、平積みの6冊前後が数日で売り切れてた。

 

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2018年4月3日現在、アマゾンの販売ページでも売り切れ状態。

ただし、レビューは僅か7件しかない。平均で4.8という非常に高い

評価とはいえ、静かな反応で、これ自体もスタップ騒動の本質を表す

ものだろう。2年前の『あの日』は現在、858件(平均4.2)なのだ。

 

 

      ☆       ☆       ☆

本の帯や出版社の紹介だと、「650日間」を綴る日記とされてた

から、早速計算♪ 確かにピッタリ合ってた。

 

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 2014年 1日のみ (12月31日)

 2015年 365日

 2016年 284日 (10月10日まで)   

  合計  650日

 

うるう年の16年の計算はこうなる。

 31+29+31+30+31

  +30+31+31+30+10=284

 

個々の日記の文章は、雑誌と単行本でそれほど違ってない気がする

けど、本人によると単行本の方が制約が少なくて正確らしい。構成

(章立て)は大幅に変わってて、単行本だと、2014年12月・15年

1月から2016年10月まで、月単位でまとめられてる。見出しも雑誌

連載とは大幅に違ってた。

 

 

      ☆       ☆       ☆

完全な書き下ろし部分だけでも、300ページ中、100ページもある

から、3分の1。おそらく、文字数で7万字ほどだと思う。全力で1日

2万字ほど書けるらしい執筆力は流石だ。当然、元々の日記を書き

写すだけでは済まない。

 

ちなみに私の最高記録は、徹夜で入力し続けて、13000字ほど。

食事とトイレ以外、休憩なしだった。このブログだと1万字くらいか。

 

『あの日』の場合、編集者や複数のライター、自分の複数の弁護士、

講談社の法律顧問などから、何十回も書き直し要請やアドバイスが

入ったようだから、『日記』でも色々と配慮したんだろう。

 

ただし、日記が(ほとんど)本人自身の手で書かれた文章だという

点は間違いないと思う。身近な親族や関係者の話が匿名で色々と

書かれてるし、ネガティブな思いも包み隠さずそのまま記してある。

担当医師、看護師、大学の教官、理研などの知人、メディア、編集者、

出版社。国家権力への不満のようなものもある。

 

現在の(?)担当医師デル先生や、理研の(?)気まぐれ先生とか、

読んで苦笑してるはず。筆者自身や関係者にとっていい事かどうか

微妙だけど、読み手にとっては興味深い。『日記』の中央公論新社

に対する不満を、『あの日』の講談社に相談する話まで載ってた。

カットも「書き換え」もしなかった中央公論新社は、いいね。

 

 

      ☆       ☆       ☆

書き下ろし部分の主な内容は、瀬戸内寂聴との対談と後日談、

小説執筆、海外からの研究職の話(次々に破談)、研究用のHP

「STAP HOPE PAGE」作成(攻撃が多いとのこと)、

そして最後は、安全な場所への転居(引っ越しではない感じ)。

 

長くなって来たから、最後は『婦人公論』の単行本PRインタビュー

の話に移ろう。2018年4月10日号(3月27日発売)の表紙

でも、公式サイトでも、大きな扱いになってる。

 

タイトルは、「今日を生きることに もう迷いは ありません」。

 

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     ☆       ☆       ☆ 

ネットの評判だと、話の中身よりグラビア写真ばかりが騒がれてる。

単行本の最後のページにも、白黒で小さく篠山紀信撮影の写真が

載ってたけど、雑誌では大きなカラー写真。有名タレントみたいな

扱いでちょっと驚いた。

 

美人になったとかいう感想が多くて、私もそう思うけど、第一印象は、

意外と肌が荒れてないなというものだ。日記の連載を読んでると、

皮膚が荒れたとか美容の話が多かったのに、全然問題なし。担当

したメイクさん(レイナ)の実力なのか、あるいは皮膚科のコンビニ

店長先生のおかげなのか♪

 

洋服はグッチとか言われてるけど、私が気に入ったのは髪型だ。

下は、公式サイトの試し読み部分の写真(縮小して引用)。右上から

分けてサラッと流したヘアスタイルが、お嬢様っぽくて上品。

 

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他にもう1枚、赤い洋服に白いリボンの写真もあって、単行本の

小さな写真はさらに別の洋服かも。たぶん出版社側が用意した

ものだろう。瀬戸内との対談の時の白いドレスは、自分で購入

した高価なもので、友人に「らしくない」と突っ込まれたらしい♪

それでも着たのだから、自分ではすごく気に入ったということか。

 

 

     ☆       ☆       ☆

話の主な内容は、『日記』では醜い部分も飾らずさらけ出したこと、

STAP細胞についての考えは全く変わらないし、将来も楽観してる

こと、『更級日記』とか参考にしたことなど。自分で描いたチューリップ

2本の絵も挿入されてる。

 

今は安全な場所に移って、普通の生活を楽しめるようになってる

そうで、実験もしたいけど、何より社会貢献したいらしい。そんなに

お堅い発想じゃなくて、普通にナチュラルに活躍すればいいと思う。

ランナーの1人としては、マラソン・デビューにも期待♪ 芸能界と

比べて怖くないし、努力も報われやすい。

 

山中教授のランニング仲間に入れてもらうのは流石に無理としても、

ありのままの頑張る姿を見せるのには、マラソンが分かりやすい。

もちろん、研究職への復帰ができれば最高で、英語好きの彼女

なら海外でも活躍できるはず。

 

規則で禁止されてないのなら、書き直して落とされた博士論文をHP

で公開するのもいいと思う。とにかく、まだ34歳の若さ。マラソンの

序盤で「コケちゃいました」谷口選手みたいなものだから、中盤以降

で盛り返せばOK! 『しくじり先生』特番出演の道もアリ。

 

小説の発表にも期待しつつ、それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

             (計 3768字)

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ブラッドベリ『霧笛』(Fog Horn)~ゴジラの原作映画の原案小説

日本を代表する怪獣映画『ゴジラ』に、原作のような米国映画がある

らしいと知ったのは、もう1年近く前、2017年の春頃だったと思う。

サブカルチャー本を流し読みしてたら、ゴジラ人気に軽く突っ込む

感じで一言書かれてたのだ。

 

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その1953年の特撮映画は、

 『The Beast from 20,000 Fathoms』。

原題の英語をほぼ直訳すると、「海底2万尋(ひろ)から来た獣」。

上の劇場公開用ポスターは、英語版ウィキペディアより。カラーに

なってるけど、映画はモノクロ(白黒)。

 

「尋」(ひろ、じん)とは水深などに使う長さの単位で、約1.8m。

「海里」(約1.8km)と似た数字だから紛らわしいけど、1000倍

近くも違う別の単位だ。

 

20000尋とは海底36000mということで、要するに、全く未知の

深さを表してる。現実の深海だと、有名なマリアナ海溝(グアムの西)

でさえ、水深11000mほどだ。

 

 

     ☆       ☆       ☆

54年12月に日本で公開された時の邦題は、『原子怪獣現わる』。

「原子」と「原始」の意味を重ねた、上手いタイトルだと思う。ストーリー

にも合ってるし、直前の11月には最初の『ゴジラ』が公開されてた。

どちらも、原子力を用いた爆弾(ゴジラは水爆)の影響で目覚めて、

人間を襲う巨大怪獣なのだ。

 

ちなみに当時まだ、原子力の平和利用(発電)はほとんど開発されて

ない時期で、原子と言えば原子爆弾。未知の特殊で凄惨な破壊力

を表してる。水爆は開発されたばかりで、米軍による54年3月の

ビキニ環礁実験では、第五福竜丸の被曝事故が発生した。

 

日本語ウィキを見るとゴジラの制作段階の仮題は『海底二万哩

(マイル)から来た大怪獣』とされてる(出典の明記なし)。

 

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明らかに直前の米国映画の原題を真似したものだが、これが事実

なら単位を1000倍間違えたのかも♪ 二万マイルだと32000km

だから、地球の直径(13000km弱)を超えて突き抜けてしまう。

 

下のポスターは日本語ウィキより。怪獣の造形や撮影は、ゴジラの

方が遥かに上。特撮担当・円谷英二の才能と造形スタッフらの共同

作業のおかげか。

 

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      ☆       ☆       ☆

さて、前置きが長くなったが、ゴジラの原作映画に近い米国映画の

原案小説が、米国のSF作家レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)

の小説『霧笛』(Fog Horn)なのだ。

 

これは後のタイトルで、1951年に発表された時のタイトルは、

「The Beast from 20,000 Fathoms」。

これがそのまま映画のタイトルに転用されたらしい。

☆追記: この記事末尾のP.S.で補足した。)

 

日本語ウィキは「原作」と書いてるが、物語的にはあまり似てない。

英語版ウィキを読むと、もともと直接的関係は無かったようで、小説

は後から加わった原案の1つのようだ。タイトルを除くと、目立つ関連

は1つだけ。怪獣が夜の灯台を襲うシーン。

 

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上はウィキメディアより。予告動画からのキャプチャー画像。ゴジラ

と比べるとスラッと痩せた体型で、巨大トカゲのように見える。体長

30m(+尻尾9m)。ゴジラ(初期は身長50m)より小さいけど、

代表的な恐竜ティラノサウルス(10m強)と比べると3倍の大きさ。

 

 

     ☆       ☆       ☆

というわけで、ようやくゴジラの源流となってる小説の話に入れる。

下は、短編集『The Golden Apples of the Sun』。

英語版ウィキより。『霧笛』はこの本の巻頭に収められてる。

 

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『霧笛』の英語原文は、なぜか堂々とpdfファイルで公開されて

検索するとトップに出る。子ども向けの教材みたいな扱いだから、

元の英文と違うのかも知れないけど、大体は合ってそうだ。

 

発表から70年近いとはいえ、作者の死亡は6年前の2012年。

著作権の扱いは不明だけど、英語の文献で珍しくない黙認という

ことか。外国のことでもあるし、ありがたく読ませて頂いた。

 

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      ☆       ☆       ☆

まず、小説のあらすじをまとめとこう。ネタバレなのでご注意あれ。

 

 主人公ジョニー(Johnny)は、先輩マクダン(McDunn)と

 2人で、へき地の淋しい灯台を守ってる。5年前に建造されて

 以来、霧でライトが見えにくい夜でも、霧笛で船に合図してる。

 

 マクダンがそろそろまた来そうだと話した時、全長30mくらいの

 恐竜が現れる。霧笛の音が自分の叫び声に似てるから、灯台を

 自分の仲間だと誤解したようだ。

 

 その時、マクダンが試しに霧笛のスイッチを切ってしまう。すると、

 恐竜は怒りと苦悩の目で灯台の塔に突進。あわててスイッチを

 入れたけど間に合わず、恐竜は塔を破壊する。2人はギリギリ

 で下に降りて、命拾いした。後には、淋しげで悲しげな泣き声

 が響き渡る。まるで、霧笛のように。

 

 翌日は晴れて、恐竜も朝には消えた。マクダンは救助隊に、

 強烈な波で灯台が壊れたとだけ説明。1年後には新しい灯台

 ができたが、既にジョニーは別の仕事についてた。残った

 マクダンによると、怪物は二度と戻って来なかった。。

 

 

      ☆       ☆       ☆

いかにも文学的な、哀愁ただよう筋書きと終わり方で、映画とは

全く違ってる。ブラッドベリの恐竜好きの影響もあって、小説の恐竜

は愛と畏怖の対象だけど、映画の怪獣は恐怖の対象だ。

 

映画では、核実験で目覚めた怪獣が人間を襲った後、人間の

放射能ライフル弾によって倒されて、火炎に包まれて死ぬのだ。

映像的に見栄えがするし、核開発競争や戦争への皮肉や批判

にもなってる。

 

小説に戻ると、マクダンが霧笛のスイッチを切る直前、どうなるかを

予言するような台詞がある。

 

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 “That's life for you,” said McDunn. “Someone

  always waiting for someone who never comes

  home. Always someone loving some thing more

  than that thing loves them. And after a while

  you want to destroy whatever that thing is,

  so it can hurt you no more.”

 

 「俺たちの人生と同じさ」、マクダンは語った。

 「人はいつも、決して戻って来ない人を待ってる。いつも

 人は、自分が愛される以上に、相手を愛してしまう。

 だからやがて、相手が何であっても破壊したくなるんだ。

 これ以上、自分が傷つけられないように」。

 

 

人間に運命づけられてる過剰な愛の反転としての、憎悪と攻撃。

程度や頻度はともかく、誰でも思い当たることだろう。元の愛が

自己愛なら、壊す相手は自分自身になる。

 

ちなみにこれとは別に、もっと原初的な攻撃性というものを仮定

する考えもある。ただ、憎悪や攻撃の主たる要素は、要するに

不満や不快だろう。どうにもならない不快なものを破壊するのは、

不快の減少でもあり、快楽の増加でもあるのだ。。

 

 

      ☆        ☆        ☆

なお、この作品も含む短編集の邦訳が、新潮文庫になってる。

下はamazonの中古本。恐竜愛に満ち溢れてる。だからこそ、

あり得ない存在は恐竜じゃなくて人間の方だという、マクダンの

説明もあった。恐竜の方が先だし、人間の歴史より長く生きてる。

まあ、人間も恐竜だけど♪

 

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伊藤典夫の翻訳は、ちょっと古くて硬いのを除くと滑らかだ。でも

やっぱり出来れば英語で味わう方がいい。例えば物語の印象深い

箇所で比較してみよう。

 

 「塔はなくなり、光が消えてしまったのだ。百万年の歳月を

 こえて自分を呼んでいたものが、いなくなってしまったのだ

 

 “The tower was gone. The light was gone.

  The thing that had called it across a million

  years was gone.”

 

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元の英文では、3重の変化をすべて「gone」という単語で

統一してるのだ。go(行く)の過去分詞。ところが邦訳だと、3つとも

違う日本語に訳し分けられてる。日本語としての自然さを重視。

 

私が訳すなら、むしろ原文のこだわりに即して、

 「塔は消え、光が消え・・・、呼んでいたものが、消えて

とする所だ。これでも、去って行ったというニュアンスは出せてない。

外国文学の翻訳は難しいのだ。AI翻訳もまだ当分は苦戦するはず。

 

残念ながらブログで音は表現できないから、最後は灯台のライトの

写真で終わりとしよう。150年の歴史を誇るカリフォルニアのピジョン

ポイント灯台。ウィキメディアより。映画に似てるからロケ地かも。

 

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

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P.S. IMDb(インターネット・ムービー・データベース)

  のトリビアに、出典なしで、小説と映画の関係が書かれてる。

  早速、根拠を検索してみると、ブラッドベリ自身の事情説明

  Google ブックスで発見できた

  『Conversation with Ray Bradbury』。

 

  映画スタッフが小説からアイデアを「借用」した後、不思議な

  交流を通じて、映画用に権利を買い取りたいという電報が

  届いたとのこと。ブラッドベリ自身は映画には関わってない

  と主張してる(1972年のインタビュー)。映画スタッフの

  言い分までは調べてない。

 

             (計 3733字)

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ラブドールとドブ川のぬいぐるみ、人形と交わす契り~又吉直樹「いつか見る風景」最終回(朝日be)

ちょうど1年間で終了か。いい企画で文章も面白かったから、残念だ。

又吉も冷めてるだろうね。自分自身の文章の評価はこんなもんかと。

 

大きな話題になった芥川賞『火花』(文芸春秋)は、単行本(1296円)

だけで250万部、文庫(626円)も合わせると300万部に達してる

らしい。出版不況が進む中、社会現象といっていい大ヒットで、ドラマ

や映画もすぐ出来た。

 

ところが月1回のこのコラム(朝日新聞・別刷be)に関するツイートは、

初回から気の毒なくらい少なかった。最後となる今回(18年3月3日)

は、珍しく30人ほどつぶやいてるけど、それはラブドールの話だから

だろうし、つぶやきの多くは朝日のツイートの拡散。印税と知名度は

稼いでるけど、私が彼なら淋しいと思う。『火花』の冒頭みたいに。

 

ちなみにウチでは、過去3回記事を書いてる。4月、7月、11月。

当然アクセスは少ないけど、「きっちり読んで評価してる人間もいる

から頑張って!」という応援メッセージだ♪

 

cf. 横浜競馬場の「老いた3人の賢者」

     ~又吉直樹のいつか見る風景(朝日be)

  なにも書けない孤独な夜を・・

    ~又吉直樹 in 旧江戸川乱歩邸(朝日be)

  又吉直樹『火花』、吉祥寺の安アパートで思うこと

    ~『いつか見る風景』(朝日be)

 

 

      ☆        ☆        ☆

まず、朝日新聞デジタルから写真を引用させて頂こう。撮影は

時津剛。紙面だと白黒で、左右が少しカットされてるけど、HPでは

カラーで横幅も広がってる。

 

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知る人ぞ知るオリエント工業のラブドール自体も精巧だけど、この

写真の加工も精巧。少なくとも構図的に、紙面で左右をカットした

のは感心しない。又吉のそばで一番ハッキリ写ってる右端のラブ

ドールと、見やすい左端の薄い横顔が、消えてしまってたから。

 

又吉は、「ラブドール」自体の直接的な描写を意図的に避けてる。

最後に少しあるだけで、そこまでは延々と「ドール」(人形)の思い出

を語ってるのだ。最初は「ラブ」を感じなかったけど、やがて感じる

ようになった・・という流れで。

 

 

      ☆        ☆        ☆

紙面での見出しというか、サブタイトルは、

 「それと契りを交わしている僕は

  やがて声を聴くかもしれない」

 

まず幼い頃(小学校入学以前)は、人形ごっこする同世代の子供達

について行けなかったらしい。人形を戦わせる男の子にも、赤ちゃん

人形の母親になり切って泣き声を聴きとる女の子にも。

 

 「おそらく、その行為を信じることができなかったからだと思う」。

 

人形ごっこというのは、意外と高度な遊びだと思う。というのも、子供

でさえ、人形が単なるオモチャだという事くらい分かってる。その上で、

人形を、オモチャ以上の存在、人間とか怪獣、超人として扱うわけだ。

役者・監督・脚本家を1人でこなすようなものだろう。報酬ゼロなのに、

本気になって。

 

私の場合、人形を使った怪獣ごっこ、ロボット遊びもやってたと思う

けど、それより自分自身がヒーローや怪獣になりきる遊びの方が

遥かに好きだった。

 

人形だと小さ過ぎるし、自己愛・ナルシシズムの強さもあるけど、

自分自身の姿(特に顔)は見えにくいということもある。だから、何かと

幻想的に同一化しやすいのだ。

 

 

      ☆        ☆        ☆

又吉は数年後、小学二年生の時に、ドブ川でぬいぐるみを拾って

「ドブ太郎」と名づける。「世界的に有名な」キャラクターとか名前

だと書いてるから、くまのプーさんだろうか。ミッキーやムーミンでは

ない気がする。

 

又吉はドブ太郎と会話を交わしてないし、声が聞こえたとも書いて

ない。ただ、愛着(ラブ)を抱いて可愛がってたから、その人形は

「ラブドール」と言える。だから、既にその時、又吉はラブドールと

契りを交わすことができるようになってたのだ。

 

「契りを交わす」という古風な言い回しは、この文脈での自然な意味

だと、「男女が肉体関係をもつ」ことを指す。もちろんオリエント工業

の高級ラブドールを意識して言葉を選んでるわけだけど、「愛の

対象と身体的関係をもつ」と考えれば、ドブ太郎でもおかしくない。

 

大人になってから、新幹線の三人用の席で窓側に座ってると、中央

に座ってた老人が人形と会話してたらしい。老人は、通路側の女性

には「なんだ、貴様!」と怒鳴ってたのに、又吉がトイレに行く時は

人形に対するように優しく対応してくれた。

 

それはそれで、私ならちょっと怖い気もする♪ 怒鳴られる方が気楽

かも。まあでも、人形と契りを交わせる者同士、老人は雰囲気を感じ

取って、仲間扱いしてくれたのかも知れない。通路側の女性は納得

いかない表情をしてたそうだ(笑)。

 

 

     ☆        ☆        ☆

最後に、上野にあるラブドールのショールームについて。想像を

超える外見と触り心地に驚いた後、こう締めくくる。

 

 知識や観念を捨てて越えなければならないはずの境界が

 極めて薄い。その存在感たるや、声が聴こえるかもしれない

 と思った。

 

ロボットやアンドロイドの世界だと、「不気味の谷」という概念がある。

かなり人間に似たレベルの物には不気味さを感じるのに、その境界

を越えるレベルまで突き抜けた物だと、不気味さが薄らいで行くとか

いうお話だ。

 

又吉にとって、オリエント工業のラブドールは、不気味の谷を越えた

レベルだったのかも。数億円の印税があれば、最高級の女の子を

買い揃えることも可能。価格は50万円~70万円くらいだ。

 

ただ、声が聴こえてしまうとアブナイかも♪ 幻聴は、統合失調症の

典型的な症状だから。まだ、「契りを交わす」方が健全だろう(笑)。

ラブドール自体は声が出ないし、口を使えないとのこと。

 

なお、公式サイトのショールーム紹介だと、意外と広いし明るく健全な

世界にも見える。私も見学して記事を書きたいけど、電話予約して

店員に案内されるのはちょっと敷居が高いかな。まあ、高級品の

展示販売だからそんなもんか。網タイツのバニーガール、いいね♪

「声」を聞いてみたくなる(笑)。

 

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      ☆        ☆        ☆ 

ここで思い出したのは、同じく朝日の連載コラムで、本谷有希子

の「間違う日々」。18年2月19日のサブタイトルは、

 “「声」に耳を澄ませても”。

 

知り合いの女性には、野菜や洋服の声が聴こえるらしい(爆)。自分

に語りかけてくれた物を買うようだ。

 

私なら多少、距離を取ってしまいそうな女性だけど、本谷は絶賛。

むしろ、声が聴こえない自分は凡人であって、恥ずかしくて惨めな

気持ちになるらしい。案外、その女性の家には、男性版ラブドール

があって会話してるのかも♪

 

ちなみに、リリー・フランキーがオリエント工業の顧客なのは有名な

お話。ジャニーズの律儀な「美青年」が遊びに行った時、ラブドール

に丁寧に挨拶したというエピソードもある。彼も声が聴こえたのか♪

 

マニアとして有名な、みうらじゅんも所有者で、リリーと居酒屋で

Wデートしたら、

 「お通しは出なかったけど、席のチャージ料は取られた」(爆)。

ドリンクや料理はどうしたのかね。

 

とにかく1年間、又吉の取材エッセイは楽しく読ませて頂いた。

感謝&拍手しながら、今日はそろそろこの辺で。。☆彡

 

            (計 2877字)

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井上荒野「キュウリいろいろ」2~長編小説『キャベツ炒めに捧ぐ』全体を読んで

ふと考えてみると、私は物心ついて以来、ごく身近な人のお葬式以外

で泣いたことはない(と思う)。大人の男性なら、普通かも知れない。

でも、この長編小説を読んでる間はずっと、目の奥で涙がにじんでた

気がする。全編がたまらなく切ない。哀しくて、愛しいのだ。

 

文学の名作とか傑作というより、上質の連載コラムをまとめたような

小説。大人の女性の心に沁みそうな、一般向けの佳作だろう。私は

ほとんど料理をしない男性だし、本来なら読む機会は無かったけど、

2018年センター試験・国語で出題されたので、運良く遭遇できた。

 

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センターの記事は例年通り、すぐにアップしてある。

 

 自転車というキュウリに乗って、馬よりゆったりと♪

  ~井上荒野『キュウリいろいろ』(2018センター試験・国語)

 

しかし去年に引き続き、今年もあらためて作品全体の感想をまとめる

ことにしよう。以下、ネタバレになるのでご注意あれ。ちなみに去年の

記事2本は次の通りで、地味にアクセスが続いてる。おそらく高校生・

受験生以外も多いと思う。

 

 「春」の純粋さと郷愁が誘う涙、野上弥生子『秋の一日』

   ~2017センター試験・国語

 野上弥生子『秋の一日』2

     ~センター試験の省略箇所も含めた全文を読んで

 

 

     ☆        ☆        ☆          

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さて、井上荒野『キャベツ炒めに捧ぐ』(角川春樹事務所)は、初出が

角川PR誌『ランティエ』、2010年1月号~11月号。加筆・訂正後の

単行本が2011年(上の画像)。装画・あずみ虫、装幀・大久保明子。

 

文庫本は2014年(下の画像)。装画・高井雅子、装幀・藤田知子、

表紙イラストレーション・門坂流(出版の数ヶ月前に他界してるはず

だが詳細不明)。

 

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内容をそのまま可愛いイラストにまとめたのが上で、色鮮やかな

デザインにしたのが下ということか。文庫本は小さいし、数が非常に

多いので、単行本よりハッキリした目立つデザインが多い感がある。

 

毎月11ヶ月間の連載だから11章の構成。「章」とは書かれてないし、

番号も付いてないけど、センター試験直後の作者のツイッターに、

“「キュウリいろいろ」は・・章タイトルで・・長編の一部”と書かれてた。

全体は次の通り。番号は私が順に付けただけなので、念のため。

 

1.新米  2.ひろうす  3.桃素麺  4.芋版のあとに

5.あさりフライ  6.豆ごはん  7.ふきのとう  8.キャベツ炒め

9.トウモロコシ  10.キュウリいろいろ  11.穴子と鰻

 

ほぼ全ての章タイトルが、それぞれ1つの食べ物を表してるのに、

最終章だけ2つの食べ物になってるのには、隠された意味がある

(後述)。各章を単独で読んでも、それなりに楽しめるとは思うけど、

やはり基本的には長編小説だった。テレビ番組にたとえると、1話

完結の連続ドラマに近い。

 

 

     ☆        ☆        ☆

先日のセンター試験記事の時点では、私は第10章の半分くらい

しか読んでなかったわけだが、主張のポイント2つは合ってるのが

確認できた。

 

つまり、問題文で「自転車」が「キュウリ」を表してたように、食べ物が

その章の中心的なものの象徴、比喩になってる。あるいは、両者が

強く結び付いてる。また、個人と家族の物語であると同時に、恋愛や

「性」の物語にもなってるのだ。

 

逆に、長編を読んで初めて分かったのは、試験問題の主人公である

郁子(いくこ)が、必ずしも全体の主人公ではないこと。

 

主要人物は小さな総菜屋「ここ屋」で仲良く働く3人の女性で、郁子

(予想通り60代半ば)、江子(こうこ、オーナー、冒頭61歳)、麻津子

(まつこ、冒頭60歳)。かなり高齢だけど、内容的にはアラフォー

(40歳前後)でも不思議はない。この3人が順に各章の中心となる。

 

1.郁子  2.江子  3.麻津子  4.郁子  5.江子

6.麻津子  7.郁子  8.江子  9.麻津子

10.郁子  11.江子&麻津子

 

全体を読んでる間も、私は郁子が主人公だろうと思い込んでたけど、

最終章の最重要人物は麻津子だし、ラストは江子のエピソードで

終了。長編全体のタイトルに使われてる「キャベツ炒め」が最も強く

関連するのも江子だし、単行本の帯に引用されてる文章は江子の

元夫である白山(しろやま)の描写だ。

 

というわけで、郁子1人を主人公と考えるのは難しい。郁子&江子

と考えることは可能だけど、やはり3人が主人公だろう。話の語り手

も、その時々で交替してるのだ。

 

江子(こうこ)が「来る」、麻津子が「待つ」、郁子が「行く」。これに

アイドル的、ジャニーズ的な若い男の子「進」(すすむ、米屋の新米

=しんまい)を合わせると、みんな移動を表す名前ということになる。

 

郁子だけは、「逝く」という意味も強く感じられるだろう。彼女だけが

毎日、死(息子と夫)と向き合って生きてるし、最年長でアルコール

中毒(キッチンドリンカー)気味だから、自分の死にも一番近いのだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆

続いて、主人公の思いや記憶と料理について、一人ずつ見てみよう。

 

まず、「きゃははは」と陽気に笑う江子。身内の若い女性と浮気して

離婚&再婚した元夫への未練を断ち切れない彼女にとって、彼が

作ってくれてた美味しいがんもどきは特別な料理。京都出身の彼は

「ひろうす」と呼んでた(2章)。

 

別れを切り出された時に食べ続けたのが、あさりフライ(5章)。この

章の冒頭、あさりにナイフを差し込んで貝柱を断ち切る描写がある。

そして章末には、元夫の悲し過ぎる嘘をこっそり確認して、自分の

未練を断ち切ることにする。

 

そのために、今度は彼女自身が哀しいウソをつく(8章)。すっごい

年下の彼(=進)と結婚することになった。彼の得意料理はキャベツ

炒め。元夫の白山は半信半疑だったけど、自分への特別な思いが

まだ残ってるのは感じたはず。というのも、キャベツ炒めは彼らが

昔結婚した日の夜、江子に作ってあげた思い出の料理だから。

 

 

      ☆        ☆        ☆

次に、2歳年下で幼馴染のダーリン・旬が別の女性と結婚して、すぐ

離婚。ずっと微妙な関係を延々と続けてる、麻津子。

 

母が亡くなった直後、母の思い出の失敗作「桃素麺(ソーメン)」を、

旬にプレゼントする。母に向けてた複雑な思いを、旬へと移し変える

(転移させる)ように(3章)。

 

その後、2人のお花見で、さや付きの豆をむいて別ゆでして作った

豆ごはんを食べながら、いきなり「なんで結婚したの」と問い詰める。

その直前、麻津子が「豆はやっぱ未通子(おぼこ)」と言って、江子が

「いやあねえ」とからかったから、花見の豆は「処女」麻津子の象徴だ。

逆に、普通の炊き込み豆ごはんは妻の象徴で、嫉妬の対象(6章)。

 

旬は、麻津子でない女性と結婚した理由がトウモロコシだと告白。

八重歯のせいで屋台のトウモロコシを食べられない麻津子を見て、

そんな女性を丸ごと引き受けるのが怖くなったらしい(9章)。

 

今は麻津子も八重歯を抜いて、トウモロコシを丸かじりできる。旬も

流石に大人の器が出来てきた。あれからもう、40年近く経ってる。

今夜こそ、お互いに丸かじりしよう。まだ少しかじっただけだから。。

 

 

      ☆        ☆        ☆

最後に、郁子は総菜屋のバイトとして「新米」(第1章)。お米屋さん

の新米である進を見て、死んだ息子と重ね合わせる。

 

続いて、喪中なのに届いた年賀状を見ると、「鹿島郁子」という同姓

同名の他人へのものが混ざってた。届けに行くと、去年亡くなった

とのことなので、渡さずに帰宅。亡き夫との思い出が詰まってる芋版

をまた作って、差出人への年賀状を作って自宅に飾る。自分は元気

ですと書いて、彼岸からのメッセージに答えるように(4章)。

 

その後、去年亡くなった夫・俊介の妹から2年ぶりにふきのとうが

送られて来たので、進の車で信州旅行。義妹の案内でふきのとう

の採取場所を見て、俊介が「君みたいな景色だ」と言ったのを思い

出す(7章)。

 

夏の緑と、冬の雪の白がまざった状態。それは、俊介に対する郁子

の接し方でもあった。仲が悪いわけではないが、心の底では俊介を

憎んでる。風邪を悪化させた息子を見て、すぐ病院に連れて行こう

としたのに、俊介はまだ大丈夫だと言ったから。あなたのせいで息子

の草(そう)は死んでしまったのよ。

 

しかし、前のセンター試験記事で書いたように、過去の写真を見ると

実は自分と夫は思ったより仲良く暮らしてたようだ。自分の心象風景

が暗すぎた事に気づかせてくれたのが、夫の同窓生が乗せてくれた

自転車。それは、お盆にキュウリの馬でやって来る仏様みたいな、

懐かしくて大切な訪れだった。

 

さらに、亡き息子・草と進が似てるというのも、自分の思い込みに

過ぎないことに気づく。私は自分だけの内省的世界に浸り続けて

来たようだ。真実と向き合おう。そして前に「進」み出そう。。(10章)

 

 

      ☆        ☆        ☆

長編の最後、第11章については、あえて書かないことにする。

麻津子も江子も、それぞれの道で新たな一歩を踏み出すのだ。

 

なお、前の記事の終盤に、私は一言こう書き添えてた。

 

 「キュウリという細長い野菜には、男性的な意味合いもあるが、

  ここではもう触れないことにしよう」。

 

これが単なる考え過ぎでないことは、長編を読み始めてすぐに推測

できたし、後半を読む内に確信できた。60代前半の女性3人は、性

の露骨な話でキャーキャー楽しくはしゃいでるのだ。まるで女子高生

みたいなノリで。

 

おまけに、最終章のタイトルだけ、「穴子と鰻」の組合せ。鰻とは、

麻津子の彼氏である旬が、男性的なスタミナをつけるために用意

した食材。それと穴子が組み合わされて、最後のエピソード(省略)

を考えると、「女と男」というセクシャルな意味があるのは明らかだ。

もちろん、それだけとは言わないが、無視できない遊び心でもある。

 

その直前、10章の始めに、郁子はキュウリをかじる。キュウリ=夫

=夫の友人の自転車、とつながって、最後に郁子は、鰻を買う。その

鰻が最終章で文字通りの「男性性」の象徴になってるのだ。江子なら

「キャハハハ」と笑う所だろう。

 

 

      ☆        ☆        ☆

ベテラン女性作家が性とか恋愛を描くと、例えばこのような語り口

になるのか。あらためて男女の違いに驚きつつ、この簡単なレビュー

を終わりとしよう。

 

なお、井上荒野は直木賞受賞作家だが、今年の芥川賞を獲得した

若竹千佐子(63歳)は、受賞作『おらおらでひとりいぐも』について、

青春小説とは対極の玄冬小説だと語ってるらしい。それなら井上

の『キャベツ炒めに捧ぐ』は、玄冬青春小説とでも言うべきかも。

 

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

                (計 4170字)

       (追記 55字 ; 合計 4225字)

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慢心=警護(security)は人間の最大の敵(『マクベス』第3幕)~『BG~身辺警護人~』第1話

面白かった☆ 保険勧誘のおばちゃん(濱田マリ)と、マラソン大会の

スタートで無駄に猛ダッシュするエキストラの方々が(笑)。そこか!

 

荒川市民マラソンを何度も走ってる市民ランナーとしては、荒川の

支流で開催されてた第18回隅田川都民マラソンを温かく見守ってた

のだ。観客が16000人には見えないなとか思いつつ♪ コラコラ!

 

いや、真面目な話、久々に文学的な教養を感じるドラマを見た気が

する。単なるコネタの羅列じゃない、奥深い教養。シェイクスピアの

使い方もあまりに凝ってたから、「細かすぎて伝わらない」状況に

なってるほど♪ 英語の原文を知ってたんだろうね。

 

流石は立命館大学・文学部卒の脚本家、井上由美子のオリジナル

作品だ。『人妻』・・じゃなくて『昼顔』も『同窓会』もよく出来てた。

『まっしろ』は初回の途中で真っ白になってリタイアしたけど(笑)。

 

設定や台詞(セリフ)のあちこち(特に終盤)に、自衛隊とか安保の

香りがしてたけど、とりあえず『テレビ朝日』らしいかもと指摘する

だけにしとこう。政治や防衛は、軽く匂わせるだけにした方がいい。

官と民、拳銃(武器)と丸腰の対立も、微妙なお話なのだ。。

 

 

     ☆       ☆        ☆

さて、キムタク=木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』。今回の

ストーリーのポイントは、何度も強調してたシェイクスピアの台詞、

慢心は人間の最大の敵だ』。女子アナ政治家の追っかけ記者、

『週刊時論』の犬飼(勝地涼)が昔、愛を込めて贈ってた言葉。

 

過信してはいけない、うぬぼれてはいけないとか、自分だけは安全

で正常の範囲内だと思ってしまう「正常性バイアス」に注意せよとか、

普通の意味だけなら、文字映像付きであれほど繰返すはずはない。

 

別の意味が裏側で何重にも重なってるからこそ、繰り返してたのだ。

例えば「警護は人間の最大の敵だ」とか♪ シェークスピア四大悲劇

の1つ、『マクベス』の原文をウィキソースで確認してみよう。

 

400年前、1606年頃の戯曲、第三幕(Act Ⅲ)・第五場

(SCENE Ⅴ)のラスト。魔女の親分みたいな存在が、主人公

マクベスを追い詰める計略を話してるシーンだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆    

 He shall spurn fate,

 scorn death,

 彼は運命を蹴飛ばし、死を馬鹿にして、

 

 and bear his hopes ’bove

 wisdom,grace,and fear:

 智恵や神の恵み、そして恐れをも上回る

 望みを抱くだろう。

 

 And you all know,

 security is mortals’

 chiefest enemy.

 もう、お分かりだよね。

 安心は人間の最大の敵なんだよ。

 

 

     ☆        ☆        ☆

もうお分かりだよね(笑)。そう。「慢心」と訳されてた言葉は、元の

英語だと「security」(セキュリティ)なのだ。

 

この言葉は、直前の「fear」(恐れ)を受けてのもの。恐れを忘れて

安心しきってる状態こそ、最も危ないと言ってるのだ。マクベスという

人間をそそのかそうとしてる自分たちにとっては、シメシメと笑う状況。

「慢心」(おごりたかぶること)と訳すのは、誤訳ではないけど、多少

ズレてるし、含蓄が足りない。

 

今回のドラマだと、若い沢口(間宮祥太朗)が「安心」しきってた。

それに対して、元・自衛官の高梨(斎藤工)は「慢心」に近い。人妻

との不倫に没頭してるからだろう♪ 『昼顔』か!

 

一方、島崎章(木村拓哉)の場合は、6年前にボルト(=ネジ)が

絡む大きなミス(?)をして、「警護」という仕事を恐れてる。その意味

では、「警護は自分という人間の最大の敵だ」という事になる。最終回

辺りでは、「身辺警護人の誰かが最大の敵」になるかも知れない。

 

さらに、原文の「人間」は、「mortal」(死すべき運命の存在)と

いう単語になってる。だから、「警護は死の最大の敵だ」、つまり、

警護は生の最大の味方だ」という意味にもなる。

 

こう考えて来ると、この『マクベス』の台詞を多用した井上の実力

がよく分かるだろう。大学の文学部で鍛えた英語の解釈力が発揮

されてるのだと想像する。

 

島崎が高梨に、「怖くない人と組むの、怖い」と言ってたのも、安心

より恐れが大切だということ。1行の名言だけでなく、『マクベス』の

直前の文脈も理解してるからこそ書ける台詞だろう。

 

なお、国立国会図書館デジタルコレクションで公開中の坪内逍遥

の訳(1923年)だと、「油断は人間の大敵だらう」となってた。慢心

と訳すより正確。著作権は消滅済み。

 

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      ☆        ☆        ☆

一方、島崎がランニングや斜め懸垂する時、上に着てたスウェット

(パーカー)のロゴも上手かった。実在するブランドの名前で、

「CARPE DIEM」(カルペ・ディエム)。

 

ブラジリアン柔術道場のショップだから、ポルトガル語かと思ったら、

ラテン語だった。古代ローマの詩人ホラティウス(Horatius)

の有名な文より。

 

 carpe diem,

 今、この日をしっかりつかめ、

 

quam minimum credula postero

 そして、先のことはほとんど信用するな。

 

まさに、いつ死ぬか分からないボディガードにぴったしの言葉だろう。

まして、島崎は過去に大きなトラウマ(傷)を抱えてるらしいのだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆

最後に、「用心棒」というものの使い方。「敵から身を護るために

用心する棒」が最初に出たのは、冒頭の警備員シーンだった。

 

通行止めに突入しようとする車を止める横棒は、用心棒の一種♪

自分が車にひかれないように誘導する、光る棒も用心棒。だから

こそ、最後も警備員シーンで終わってた。ちなみに立原愛子(石田

ゆり子)が出てるキリン・ファイアのコーヒーCMでも警備員が登場。

案外、ドラマの予告のタイアップかも♪

 

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個人的にふと思い出したのは、私の田舎の実家。そういえば寝る前、

両開きの扉の下に、太くて長い棒を差し込んで開かないようにしてた。

あのつっかえ棒も用心棒だったのか。鍵はついてなかったけど(笑)。

不用心だろ!

 

まだ書くべき事が沢山あるけど、マクベスでかなり時間を取られた

ことだし、今回は短めのレビューで済ませとこう。たぶん今後、ドラマ

と関係ない出典探しの検索も稼げるはず♪ セコッ!

 

いや、SNS全盛時代、ブログには「安心」してる余裕はない。常に、

ツイッターとかに書いてないマニアックな解説を書かないと、消える

ことになる。ブロガーは「用心坊」でないと生き残れないのだ♪

 

まあ、生き残る必要があるかどうかはさておき(笑)。生き物はみな、

mortal、やがて死すべき運命の存在だから。。

 

 

      ☆        ☆        ☆

とにかく、キャラが立ってる登場人物ばかりで、今後の展開も楽しみ。

ヒーロー役が多いキムタクが、素うどんみたいな自然体だったのも

好感触。若い犯人に苦戦する姿も新鮮でリアルだった。年を重ねると

肉体は衰えるから、知恵と経験で補うしかない。

 

今回なら、壊れたベンチの板を使えることまで計算ずみ。転んでも

タダでは起きない。あの細長い板ももちろん、用心棒なのだ。女性

BG・まゆ(菜々緒)の細い脚も、悪者を蹴る用心棒♪ 無理やりか!

美女の周りに男だらけだから、用心・棒。まだ言うか!

 

警視庁SP・落合(江口洋介)と村田(上川隆也)もカッコ良かったなと

思いつつ、それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

P.S. 初回の視聴率は15.7%となった(ビデオリサーチ調べ、

   関東地区)。まずまずだから、安心せずに水準を警護すべき♪

 

 

cf.窮屈からの自由、オーダーメイドのフットガード

     ~『BG~身辺警護人~』第2話

 緊縛かのん、谷底へのバンジージャンプ~第3話

 ウェディング・イブ、涙は夜更け過ぎに雪へと・・♪~第4話

 捨てるな!、新たなマイウェイへの出発~第5話

 安全が一番と言いつつ、危険に向かう人間~第6話

 誤差あり!、お互いのズレを埋める謝罪と行動~第7話

 無駄死にさせてはいけません!、人も組織も~第8話

 他にもあった、大切なもの~最終回

 

       ・・・・・・・・・・

  奇跡のリターンがもたらす輝き~『ロングバケーション』第1話

  夢見る息子vs現実を見る父~『華麗なる一族』第1話

  『華麗なる一族』最終回、ドラマと原作の比較

  キムタクは素うどんかたぬきで♪~『CHANGE』第1話

  脳科学コメディーの綱渡り~『MR.BRAIN』第1話    

  国際映画ドラマというチャレンジ~『月の恋人』第1話

  キムタク=木村拓哉主演ドラマ、視聴率の推移&『月の恋人』第4話   

  鉄の悲劇から、犬の感動物語へ~『南極大陸』第1話

  Jumpin’ Jack Flash、あやつり人形の閃き

      ~『Priceless』第1話

  制作費70分の1、SF映画に挑戦するドラマ~『安堂ロイド』第1話

  LIE STOPS HERE(嘘=夢はここにある)

      ~『HERO 2』最終回

  人生崩壊の原作から、復活ヒーローのドラマへ~『アイムホーム』第1話

  切ってつないで治す、心の穴、頭の影~『A LIFE~愛しき人~』第1話

 

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、軽~い感想♪

  『宮本武蔵』ドラマ第二夜と原作小説(by吉川英治)、感想と比較   

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・

  木村拓哉の『全力坂 完全版』、アスリートにもお勧め☆

  SMAP×SMAP『いま僕たちに何ができるだろう』、軽~い感想♪

  『スマスマ』通常最終回、タモリのモロッコ「マラケシュ」♪&休養ジョグ

  『SMAP×SMAP』(スマスマ)最終回、

     スタッフとFAXのお花畑でさよなら・・「じゃないよな」♪

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

  SMAP『世界に一つだけの花』、オンリーワンという歌詞の意味ほか

  『さんま&SMAP 美女と野獣2015』、45分だけ見た感想♪

 

                 (計 3730字)

       (追記 207字 ; 合計 3937字)

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自転車というキュウリに乗って、馬よりゆったりと♪~井上荒野『キュウリいろいろ』(2018センター試験・国語)

(☆18年1月22日の追記: 続編記事を新たにアップした。

  井上荒野「キュウリいろいろ」2

   ~長編小説『キャベツ炒めに捧ぐ』全体を読んで )

 

 

      ☆        ☆        ☆

今年(2018年)の大学入試センター試験・初日の問題が公開された

のは、夜21時半ごろ。河合塾その他で確認した。

 

寝不足だから、問題を読むだけで寝るつもりだったが、いい小説だと

感心したから、簡単な感想と解説だけサラッと書いとこう。レビュー

とか批評というほどのものではない、3000字の記事だ。

 

ちなみに当サイトでは、2011年と13年~17年にセンター試験・

国語の記事をアップして来たから、これで6年連続、7本目になる。

この記事の末尾に一覧あり。他に数学の記事もある。

 

例年、国語の問題については大量のツイートが流れてお祭り状態

になるけど、今年は数だけ多くて、内容的に盛り上がってなかった。

去年までと違ってフツーだったというような感想が大多数。その中で、

一部の受験生は、いい小説だなと素直に感動してた。

 

実は私も、居眠り気分で小説を一読した直後、「何、これ?」と思って

しまった。「さっぱり分からない」(by ガリレオ福山)。そこで文字通り、

この小説は何だったかな?と思って、先頭のページに戻った途端、

一気に視界が明るく開けた。あっ、題名は『キュウリいろいろ』か!

なるほど。「実に素晴らしい」♪

 

ガリレオ湯川が書きなぐる物理学の数式の代わりに、日本語の題名で

一気に謎が解けた。今年の第1問(評論)、有元典文・岡部大介の

『デザインド・リアリティ──集合的達成の心理学』を踏まえて言うなら、

小説のタイトルが読み方や解釈をデザインしてくれてたのだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆

もちろん、書き手のデザインが、読み手にそのまま受け入れられる

とは限らない。授業において、「後でテストをする」と言われた学生

なら、フツーはちょっと気合いを入れて暗記・理解しようとするだろう。

 

ただ、『キュウリいろいろ』を読んだ高校生・浪人生達が、自転車とか

電話・手紙とか電車とか、いろいろなキュウリを探そうとするかどうか

はビミョーな所。そもそも、お盆のキュウリという古い慣習を知らない

受験生が多そうだからこそ、文末の注1で説明してくれてたわけだ。

 

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実際、当日の深夜の時点で「キュウリいろいろ 自転車」のツイッター

検索をかけると、1つもヒットしない。「キュウリ 自転車」でも、関係

ないつぶやきが2つヒットしただけだった。

 

 

     ☆        ☆        ☆

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ところが、作者・井上荒野(あれの)のツイッターを見ると、センター

試験のつぶやきの僅か1時間前に、クロスバイク(街乗り用スポーツ

自転車)で転倒した話が書かれてるのだ。私のこのブログ自体が、

クロスバイク日誌からスタートしてるので、すぐに気づいた。

 

自転車の比喩に気づいてもらえなかったという事を暗示してるのか

と本人にたずねれば、否定するはず。ただ、単なる偶然なら恐るべき

シンクロニシティ(同時性=共時性)。いずれにせよ、恐るべき存在に

「戦(おのの)きながら」、さらに記事を書き進めよう♪

 

ちなみに問1(イ)の意味の答が5番なのは、「おびえ」という説明が

ポイント。2番の「驚いてうろたえ」とかだと、意味がちょっと弱いのだ。

 

なお、問題作成者がキュウリ=馬=自転車という関係、イメージの

連鎖を理解してるのは明らかだろう。問題文はキュウリの馬から

始まって、自転車に乗るシーンで終わってる。おまけに、「キュウリ」

という言葉は冒頭で本物の野菜を指した後、使われてないのだから。

 

 

     ☆        ☆        ☆

一応、あらすじを超簡単にまとめておこう。35年前に息子の草(そう)

を亡くし、去年には夫・俊介も亡くした郁子(いくこ or ゆうこ)。60代

半ばくらいの女性らしい。昔なら「未亡人」と言われたと思うけど、

最近はこの言葉を聞かなくなってる。

 

ちなみに著者は今現在56歳だから、自分の人生をそのまま描写

した私小説ではない。

 

はじめて一人きりで迎えたお盆。郁子は楊枝をキュウリに刺して、

2頭の馬を作り、息子と夫の写真の前に置く。お盆に仏様2人が

馬に乗って、速く来てくれますように・・との願いを込めて。ただ、

今年は仏様がゆっくり帰るための牛は作ってない。帰らずそのまま、

自分のそばにいて欲しいから。

 

そんな時、たまたま同級生から、名簿用に夫の写真が欲しいと依頼

を受ける。おそらく最初は手紙で、次に電話で話したのだろうと思う。

郁子は直接、写真を持って行くと告げて、関係ない写真まで色々と

見てる内に、ようやく気付く。実は私たち夫婦も、哀しみに沈んでた

わけじゃなく、笑顔で仲良く暮らしてたのだ。少なくとも表面的には。

 

夫の実家があった辺りで、相手に待ち合わせ。白髪の上品な男性・

白井さんは自転車で、2人乗りさせてくれた。夫の母校まで行くと、

かつて聞かされてた高校時代の様子を思い出して、目の前の現在

の風景と重なって幻のように見えた。夫の過去は、無意識の内に

自分の心の中へと保存されてたようだ。。

 

 

     ☆        ☆        ☆

さて、「キュウリ」を「いろいろ」探す問題が出題されてたら、受験生も

当然、自転車とか、お盆に訪れた手紙や電話を挙げてただろう。

 

その意味では、出題者のデザインが物足りない感もある。小説という

対象とそれに向き合う読者に、「異なる秩序を与える」企画・構成が

あっても良かった。まあでも、できるだけ客観的な問題と解答を作る

ためには仕方なかったのかも知れない。

 

自転車について言うなら、夫の記憶を呼び戻してくれたと同時に、

ひょっとすると新たな夫を連れて来てくれたのかも知れない。2人で

夫について語る内に、より親密になっても不思議はない。キュウリに

乗った夫を待ってると、自転車に乗った上品な男性に遭遇。まるで

恋愛小説みたいな出会いだろう♪

 

ただし、年齢と状況もあるので、スピードはゆったりと。馬の速度は

時速40kmくらいだけど、高齢者・・と言うより60代の自転車2人乗り

なら、時速10km以下だろう。新しい人生の最後の訪れなら、その

くらいのスピードでちょうどいいのだ。

 

 

      ☆        ☆        ☆

依頼の手紙や電話というものも、そのおかげで素早く夫に「再会」

できたのだから、「キュウリ」と言っていい。

 

他には、高尾山駅に向かう京王線だろうか、郁子が席を譲られて

古い記憶が甦った電車もキュウリ。譲ってくれた人もキュウリだし、

共学になってる夫の母校でハードルの練習をしてた女生徒の姿も

キュウリと言える。そのおかげで、男子校時代の夫が女子校の生徒

と交換日記をつける姿も思い起こせたのだから。

 

なお、キュウリという細長い野菜には、男性的な意味合いもあるが、

ここではもう触れないことにしよう。また記事が長くなって来たし、既に

今週は15000字制限を超えてしまった。

 

 

     ☆        ☆        ☆

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この小説が短編集『キャベツ炒めに捧ぐ』(角川春樹事務所

2011)に収録されてるのは国立国会図書館で確認できたが、まだ

初出の年や雑誌は確認できてない。題材は古いけど、普遍性の

ある新しい小説なのは確かだろう。

 

(☆追記: 初出は角川PR誌『ランティエ』2010年1~11月。

      加筆・訂正して単行本出版。)

 

今週は15588字で終了。今日はそろそろこの辺で。。☆彡

 

 

 

P.S. 問題文には、“小説「キュウリいろいろ」”と書いてたが、

   作者はツイッターでこう書いてた

   “「キュウリいろいろ」は小説のタイトルではなく章タイトルで、

    「キャベツ炒めに捧ぐ」という長編の一部です。”

   なお、“「キャベツいろいろ」って間違えている人がいる”との事♪

 

 

cf.「春」の純粋さと郷愁が誘う涙、野上弥生子『秋の一日』

              ~2017センター試験・国語

 キャラ化されない戦後の人々、佐多稲子『三等車』~16センター

 啓蒙やツイッターと異なる関係性、小池昌代『石を愛でる人』

       ~15センター国語

 昭和初期の女性ランニング小説、岡本かの子『快走』~14センター

 幻想的な私小説、牧野信一『地球儀』~13センター・国語

 鷲田清一の住宅&身体論「身ぶりの消失」~11センター・国語

 

             (計 3183字)

    (追記 114字 ; 合計 3297字)

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カラスを襲うイカ(烏賊)、漢字語源の出典・中国語原文と日本語訳(『南越志』、本草綱目の引用)

年末の忙しい時に限って、どうでもいいコネタにハマってしまう♪

またマーフィーの法則か! いや、マニアの哀しい性(さが)なのだ。

 

細かすぎて伝わらない雑学だけど、私自身はかなり面白かったし、

日本中で100人くらいは興味を持ってくれるだろう♪ 少なっ!

 

「烏賊(いか)」という読みにくくて変な漢字の由来。日本語で簡単に

説明してるサイトは多いけど、マイナーな古書『南越志』の中国語

原文まで示してるサイトは現在Google検索で一つも見当たらない。

 

私も探し回って、諦めかけた時にようやく原文を発見。小市民の

ささやかな幸せを味わったのであった♪ 小さっ。。

 

 

      ☆        ☆       ☆

これは記事なので、そもそも私がなぜ烏賊(イカ)に惹かれたか、

事情を説明しとこう。

 

直接のキッカケは、珍しく1年半も聴き続けてるNHK英語講座

『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』に登場したからだ。下は、

キッコーマンの美味しいお醤油で味付けした写真を借用♪

 

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落語編の英会話が流れた後、ナビゲーターの肘井美佳が、お祭り

の楽しみは「grilled squid」(イカ焼き)だと話したから、

「スクウィッド」という発音と綴りが気になって検索。

 

その時、「烏賊」という漢字が目に入ったから、これは調べなきゃ

イカんと思ってすぐ検索。中国の古書が出典だという話はあちこち

に書かれてて、その内の少なくとも1つは信頼できそうだったけど、

残念ながら原文までは引用してない。そうなるとマニアは反射的に

中国語の検索を始めてしまうのだ♪

 

他の理由としては、私もイカを食べるのが好きだし、高校陸上部

時代の最大のライバルのことは「イカ」と呼んでる♪ 実名とキャラ

がイカに似た奴なのだ(笑)。どうゆうキャラだよ!

 

 

     ☆        ☆        ☆

では、いよいよ本題。「烏賊」(イカ)という漢字の説明が載ってる

という中国の古書『南越志』は、まだ直接的には発見できてない。

例えば、『旧唐書』志・地理の一部分のことかと思って、中国語の

ウィキソースを確認したけど、ページ内検索でも出て来ないのだ。

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諦めかけた時ようやく発見したのは、大阪府立大学『人文学論集』

第27集(2009年)の表紙のことば(表紙の裏かも)。

 

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たぶん編集者の遊び心だろうけど、誰なのかは書いてない。イカの

墨の話をする前のツカミとして、「烏賊」の由来を「『本草綱目』所引

の『南越志』」と書いてたから、私が中国語ウィキソースで探し出した

のだ。執筆者の半数以上が中国人の研究者みたいだし、信頼して

いいと思う。

 

 

      ☆        ☆        ☆

それでは『本草綱目』烏賊魚の項目の原文と、大阪府大の翻訳

比較対照してみよう。端末の環境によっては、漢字が文字化けする

かも知れないので悪しからず。自動翻訳はGoogleもエキサイトも

Weblioも役に立たなかった。

 

 其性嗜烏,  イカは烏を食べるのが好きで、

 每自浮水上,  いつも水の上にぽっかり浮かんでいる。  

 飛烏見之,以為死而啄之,  

      烏はイカが死んで浮かんでいると思い、

      それを啄(ついば)もうとするところを、

 乃卷取入水而食之,  

    巻き付いて水の中に引きずりこんで食べてしまうので、

 因名烏賊,言為烏之賊害也  烏の賊と名づけた。

 

 

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大阪府大は「これはかなり、あやしい」と論評してたけど、真偽は

さておき、流石は表意文字の漢字。素人の日本人が読んでも、

ある程度は意味が分かる所が、いいね♪

 

以前、新幹線で隣に座った中国人女性と漢字の筆談を楽しんだ

のを思い出した。お互い、大体のコミュニケーションは出来てた

気がする。富士山を見て、「富士」とか書いてた。これは繁体字も

簡体字も同じらしい。

 

 

      ☆        ☆        ☆              

なお、大阪府大の表紙のことばが言いたかったのは、イカの墨は

消えると言われてるけど論集はリポジトリ(データ貯蔵庫)に載せ

られるから「消えることはない」、ということ。

 

確かに、デジタル・データはイカの墨より長持ちするけど、消える

ことはあるし、読めなくなることもある。メディアの種類や品質、保存

状態にもよるけど、DVDで数十年、HDDで10年程度とされるから、

書き換えによる再保存が必要なのだ。

 

データも油断してるとジカン(時間)という名のイカに襲われるので、

注意しなければイカン! こんなまとめで、イイカ♪ 本仮屋なら、

ユイカ。ICカードなら、西瓜(笑)。

 

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東宝映画にはイカ怪獣・ゲゾラなんてものもいるわけね。いイカお

(いい顔)してる♪ 大映のガメラ・・じゃなくてカメーバを襲撃中。

「亀賊」か! それでは、今日のところはこの辺で。。☆彡

 

              (計 1881字)

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作家・本谷有希子のコラム「間違う日々」、笑える♪(朝日新聞)

昨日の記事で、まさかの時間と字数を費やしてしまったから、今日

はもう軽~い記事で済ませよう。

 

朝日新聞ネタの連発になるけど、本谷有希子のコラム「間違う日々」

は面白い♪ 漫画家・伊藤理佐の緩いコラム「オトナになった女子

たちへ」と共に、いつも楽しみだ。・・とか言いつつ、いつも読んでる

わけでもなかったりする(笑)

 

 

      ☆        ☆        ☆    

本谷のコラムは月曜の朝刊・文芸欄に連載中。かなり前からたまに

読んでたはずだけど、名前までは覚えてなかった。最初に思い切り

ウケて名前を覚えたのは、17年9月18日。タイトルは、

 “「しない」ことを「やって」いた”。

一部、引用しよう♪

 

  別に用があるわけではないのにスマホを弄(いじ)くってしまう。

 この事態に危機感を覚えた私は、画期的なアプリを教えて

 もらった。なんでもスマホを触らないでいるぶんだけ、画面上

 に植えた苗木が、立派な大木に成長するという。木を集めて

 森も作れる。

  私は夢中になった。・・・・・・人からスマホを借りる機会は

 みるみる増えた。・・・・・・これでは何の意味もないことに、

 ようやく気がついたのである。

  私は周りの人々に、木を育ててくれないかと懇願した。

 

 

ここで私は爆笑!☆ まず、他人のスマホを借りるのが軽いオチ

で、その無意味さに気づいた直後、周りの人に木を育ててもらうと

いうのが本当のオチだ♪

 

 

       ☆        ☆        ☆  

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ちなみにこのアプリ、検索すると「FOREST」(森)という名前で、

240円という強気の価格。カテゴリが「仕事効率化」というのが

また笑える。販売元はShaokan Pi、アプリ評価は高い。iPad

でAppStoreを検索すると、最初出なかったけど、iPhone用

のアプリを探したら出て来た。そうゆう仕組みだったのか (^^ゞ

 

なお、コラムのタイトルは、二重の読み方が可能。普通に読むと、

 スマホを「しない」ことを「やって」いた

 

ただ、下のヒネった読み方の方が話の本質を突いてる♪

 スマホ断食を「しない」ことを(ウッカリ)「やって」いた

 

他にも断食ソフトは色々あるようだけど、そもそもスマホを止める

ためにスマホアプリを使うという発想自体がギャグだろう。

 

 

     ☆        ☆        ☆

で、この本谷有希子。私は昨日まで、「ほんたに」と読んでたけど、

もとやゆきこ」と読むらしい・・・とか書いとけば、「ほんたにゆきこ」

の検索アクセスを3つくらい稼げるかも♪ 少なっ! ほんじゃあ、

「本谷有紀子」っていう変換ミスも入れとこうか(笑)。コラコラ!

 

ウィキペディアによると、鶴屋南北戯曲賞(2007年)、岸田國士

戯曲賞(2009)、野間文芸新人賞(2011)、大江健三郎賞

(2013)、三島由紀夫賞(2014)、芥川龍之介賞(2016)。

 

凄い受賞歴なのに、全く知らなかった私も凄いかも♪ 自慢か!

もう38歳だけど、童顔で可愛いアラフォー。演出家、女優、声優も

こなして、女の子の母親でもあるわけね。スーパーウーマンか。

これだけ華やかに目立つ活躍してると、大変な部分もあるかも。

 

 

     ☆        ☆        ☆

続いて、2週間前(17年12月4日)のコラム、

 “「閉」ボタン、押し続ける”。

 

  信じられない話を聞いてしまった。エレベーターの「開」ボタン 

 を押すと本当に延長するが、「閉」ボタンはただの暇つぶしに 

 飾りとして付いているだけだという話だ。 

  ・・・・・・これまで繰り返してきた無駄に、私は気が遠くなり 

 かけた。そして「もう二度と押すものか」と心に決めたその翌日、 

 私は未練がましく・・・・・・指を伸ばさずにいられないのである。

 

 

これは私も意表を突かれたから早速調べてみると、ニューヨーク・

タイムズが1年前に書いた話のようだ

 

 「閉じるボタンを押すと気持ち良くなるかも知れないが、

 少しも早くならないだろう」。

 

171220b  

 

少なくとも、昔の日本のエレベーターでは、閉じるボタンに意味は

あった。実際、押して遊ぶ感心しない子供もいたわけだ(誰?♪)。

ただ、最近は確かに、押してもすぐ閉じない気はしてた。

 

そこで念のため、日本エレベーター協会HPもチェックしてみたけど、

そんな話は書いてない。当たり前か♪ どなたかお暇な方、電話で

厳しく問い合わせて、結果を発表して頂きたい。ボタン工事談合事件

に発展するかも。リニア工事か!

 

 

      ☆        ☆        ☆

あぁ、もう時間だから、12月18日の「募金の瞬間 心の声が」に

ついては、ちょっと引用するだけに留めよう。

 

 いっそ「親切する気持ち良さを売ります」と募金箱に書いて

 くれれば、後ろめたさも薄れるのに。   

 

まあ、大活躍で印税が余ってるだろうから、「親切する気持ち良さ」

をたっぷり買って頂きたい。親切しない気持ち悪さをタダで買う人々

のためにも♪

 

嫉妬する後ろめたさをタダで買いつつ、それではまた明日。。☆彡

 

              (計 1940字)

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ドラマ原案、イプセンの戯曲『民衆の敵』のあらすじ&英語・ノルウェー語原文

今季(17年・秋)は珍しく、2つも連続ドラマを見始めたが、どちらも

すぐ、記事を書く気がしなくなった。過去12年間で初めてのこと。

『陸王』は単純だし、『民衆の敵』は脚本のバランスがビミョー。共に、

萌え要素はゼロ♪

 

とはいえ、私は一応ランナーだし、月曜の夜は気が緩む時だから、

どちらのドラマも大部分は流し見し続けてる。全く見なかったのは、

『陸王』が1回で、『民衆』は2回くらいか。

 

 

     ☆        ☆        ☆

『民衆』の最近のストーリーは妙に暗くて重いものに変質して来たな

と思ってたら、朝日新聞の寸評が目に留まった。朝日は普通、フジ

月9には冷たい反応かほとんど無視なのだが、今回は意外なほど

好意的にプッシュしてる。記者でなくライターだからか(和田静香)。

 

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コラム名は「TVがぶり寄り」、タイトルは、「民衆の真の敵とは?」。

 

 ・・・回を重ねるにつれ、見る側が試されるすごいドラマだなぁ

 と感じている。・・・ドラマは後半にきてガラリと変わる。・・・

 主人公は、社会を替えるには権力こそが大切で・・・市長選に

 立候補、当選する。当然、操り人形にしたい派閥に利用され、

 信頼は失墜して孤立する。

 

  ドラマのタイトルは、腐敗を正そうとした男性が民衆に敵の

 烙印を押される、イプセンが19世紀に書いた政治が大罪の

 戯曲と同じ。

 

全く知らなかった私は意表を突かれて、直ちに戯曲(演劇の台本)の

英語原文と英語版ウィキペディアをチェック。真っ直ぐな正論過ぎて、

私の趣味ではないけど、ちょっと興味深かったのも事実だから簡単に

まとめとこう。

 

 

      ☆        ☆        ☆

第8話の視聴率(関東地区、ビデオリサーチ)が5.3%で、最低記録

を更新したと伝えられた今日、ネットで「民衆の敵 原作」を検索すると、

かなりの数のサイトがヒットする。

 

しかし、原作というほどの関連でもないので、むしろ「原案」というべき

だろう。ただし、公式サイトのイントロダクションを見ると、イプセンの

戯曲には触れてなかった。題名だけ借用した、オリジナル脚本だと

言いたいわけか。

 

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上は元のノルウェー語の原書で、中央に著者の名前(HENRIK

IBSEN:ヘンリック・イプセン)、一番下には1882年と書いてある。

インターネット・アーカイブで公開中、著作権は消滅済みのはず。

 

題名の『EN FOLKEFIENDE』をGoogle翻訳

すると、「AN ENEMY OF PEOPLE」。つまり、

「民衆の、1人の敵」。

 

1つを表す不定冠詞が付いてるので、「民衆という敵」と解釈する

のは難しそうだ。要するに、主人公のことで、戯曲ならストックマン

(男性医師)。ドラマなら、佐藤智子(篠原涼子)。

 

ちなみに、原題を語順までそのまま直訳すると、

「AN PEOPLEENEMY」(民衆・敵)だから、専門

レベルだと、いくつかの解釈が可能なのかも。。

 

 

      ☆        ☆        ☆

それでは、英語版ウィキのあらすじ(5部構成)をまとめてみよう。

主人公以外の登場人物の名前を入れると、逆に分かりにくいだろう

から、省略する。

 

 第1幕 ストックマン夫妻の自宅の夕食会に、兄弟でもある市長、

     新聞編集者が集まる。街の温泉(健康浴場)が汚染されてる

     という噂について話してる時、噂を裏付ける手紙が届く。

     編集者は新聞記事を書くことに同意。ストックマンは、自分

     が街の救世主だと信じる。

 

 第2幕 ストックマンの家で、編集者との連帯関係が深まる。編集者

     としては、汚染問題を街の政治腐敗をあばく出発点にしたい。

     そこへ市長が来訪。街の破壊につながるわがままで、大きな

     視野を持ってないから、もっと穏やかな方法を勧める。しかし

     ストックマンが拒否したので、市長は、彼と家族に悲惨な結果

     が生じるだろうと言う。

 

 第3幕 新聞社では議論の末、行政の闇の暴露はマイナスの効果

     が大き過ぎて疑問だと、態度変更。ストックマンは、それなら

     自分一人で戦おうと決意。街の集会を開いて情報を広めよう

     と考える。彼の妻はリスクを感じつつも、彼のそばに寄り添う。

 

 第4幕 ストックマンは集会で、汚染情報や、街のリーダーの腐敗、

     街全体の堕落について語る。街の人々は侮辱されたと感じ、

     怒りの声が響き渡る。やがてストックマンは「民衆の敵」という

     烙印を押され、街から追放される。

 

 第5幕 家の窓は割られ、娘は学校から追放される。浴場ビジネス

    の利権を獲得した義父からもアドバイスされたが、ストックマン

    は無視。正しい事を行うのに必要なのであれば、「民衆の敵」と

    しての役割を引き受けようと決心する。

 

 

       ☆        ☆        ☆

あらすじを見た所で、ポイントとなる箇所だけ、英語の原文で読んで

みよう。ここでは、電子図書館グーテンベルクを利用した

 

まず、ストックマンの告発に民衆が激怒する場面。第4幕の終盤。

日本語訳は一番下のみ。

 

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 The whole crowd(shouting).

  Yes,yes! He is an

  enemy of the people!

  He hates his country!

  He hates his own people!

 

 群衆全体(叫びながら)

   そうだ、そうだ! 彼は民衆の敵だ!

   彼は自分の国を憎んでる!

   彼は自分の国の民衆を憎んでる!

 

 

ちなみに、ノルウェー語原文は次の通り。単語も文法も英語に

ちょっと似てるので、雰囲気は感じ取れる。

 

 「Han er en folkefiende!

彼は である 一人の 民衆の敵

 

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      ☆        ☆        ☆

最後に、戯曲のラスト。翻訳は中盤から。

 

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 Dr.Stockmann. 

  Yes.(Gathers them round him, 

  and says confidentially:) 

  It is this,let me tell you ─ 

  that the strongest man in the 

  world is he who stands most 

  alone.

 

 Mrs.Stockmann 

  (smiling and shaking her head)

  Oh,Thomas,Thomas!

  

 Petra (encouragingly,as she 

  grasps her father’s hands). 

  Father!

 

 

 ストックマン 

  それは、こうゆう事だよ。 

  世界で最も強い男とは、ほとんど一人で立ってる男なんだ。

 

 ストックマン夫人 

  (笑いながら、頭を振って) 

  あぁ、トーマス、トーマス!

  

 ペトラ

  (父の手を握って、激励しつつ) 

  お父さん!

 

 

ノルウェー語のポイント(世界で最も強い男・・・)は、

 den staerkeste mand i verden,

det er han,som star mest alene.

 

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      ☆        ☆        ☆

最後の最後は、女性2人の愛情溢れる言葉で締めくくってる。

悲劇か喜劇かはともかく、古き良き時代のヒーロー物語。

 

現代日本だと、ドラマでも現実でもあり得ないだろう。むしろ、身近な

女性2人に冷たく非難されて、思い切り凹んで淋しい終了とか♪

 

実は元の戯曲も、真面目な正論というより、シニカル(皮肉)な笑い

を誘うコメディのような気がする。

 

ともあれ、ノルウェー語が意外と読みやすいのを確認したところで、

今日はそろそろこの辺で。。☆彡

 

               (計 2872字)

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又吉直樹『火花』、吉祥寺の安アパートで思うこと~『いつか見る風景』(朝日be)

お笑い芸人・又吉直樹の大ベストセラー小説『火花』は、発行部数

300万部とか言われる。芥川賞受賞後の第二作『劇場』も、初版

だけで30万部(その後は不明)。

 

ただ、こうした数字の大部分は単なる流行現象であって、一瞬の火花

とまでは言わないにせよ、「作家」又吉の評価とは違ってると思う。

 

というのも、『火花』の舞台について本人が語ったエッセイが、17年

11月4日の朝日新聞・別刷beに掲載されたのに、全くと言っていい

ほど話題になってないからだ。

 

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バズるとかトレンドとは、かけ離れた反応になってる。今をときめく人気

俳優をキャスティングした映画『火花』も、11月23日公開予定なのに。。

 

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      ☆        ☆        ☆

丸1日近く経った時点で、コラム名と著者名を入れてツイッター検索を

かけると、わずか7つしかツイートがヒットしない。しかも、リツイートを

除いて検索してるはずなのに、朝日新聞関連の同じツイートが4つ

も入ってるから、実質的にはたった3、4人しかつぶやいてない。

 

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爆発的に売れた後でさえ、こんな状況だから、売れる前の淋しさや

悔しさ、自己嫌悪は悲惨だったはず。まあ、だからこそ悲惨な様子を

描いた小説が審査員の目に留まって、出版界のプッシュが成功した

とも言えるから、人生は皮肉なものだと思う。

 

ちなみに私自身は又吉の文章を評価してるから、既に2回、連載に

ついて記事を書いてる。ただ、他の記事と比べても、アクセス数が

少なめなのは事実。「インスタ映え」しないからか♪ 文章だろ!

 

cf. 横浜競馬場の「老いた3人の賢者」

     ~又吉直樹のいつか見る風景(朝日be)

  なにも書けない孤独な夜を・・

    ~又吉直樹 in 旧江戸川乱歩邸(朝日be)

 

 

      ☆        ☆        ☆

さて、月1回の長めの連載コラム、「又吉直樹の いつか見る風景」。

今回の「風景」は、吉祥寺(東京都武蔵野市)。

 

都内でも人気の街だけど、私はちょっと苦手で、数回しか行ったことが

ない。又吉の描写を引用してみよう。

 

 吉祥寺は魅力的な街だ。デパートや飲食店が立ち並ぶ

 エリアのすぐ近くに井の頭公園があって、街と自然が 

 共存している。普段から学生がたくさんいて、休日には 

 家族連れや若者で溢れかえる。流行に敏感な店も多いし、 

 この地に根を張った実力派の喫茶店や書店もある。

 

 

私の第一印象は、ゴチャゴチャして分かりにくいなという感じだった

(失礼♪)。井の頭公園も、池の形からして分かりにくいし、実際、池の

底を探るとゴミだらけだったというニュースもあった。もちろん今行けば、

そうした共存とか混沌の魅力を味わえると思うけど、何事も第一印象

の影響力は大きい。

 

自然と足が遠のいて、居心地のいい渋谷あたりに行くことが増えた。

あるいは、大都会の新宿、夜遊びの六本木、大人の街の銀座とか。

どこも、一つのイメージでつかみやすくて、スッキリしてる気がした。。

 

 

     ☆        ☆        ☆

又吉自身は、私とは別の意味で、吉祥寺に屈折した思いを持ってた

らしい。昭和とか昔の話ではなく、ほんの数年前のことだ。

 

 夕暮れ時に学生や会社員とすれ違うとき、なぜか後ろめたさ

 があった。喫茶店に行く時は小銭を数えて扉を開いた。眩しい 

 吉祥寺の風景は、何者でもない自分の存在を際立たせた。

 

 

実は人気者になった今でも、彼の基本的な感覚はあんまし変わって

ないだろうと想像する。まあでも、売れない時代、恵まれない境遇

だと、一段と身に沁みるものはあっただろう。

 

とはいえ、だからこそ貴重な体験も可能になるし、笑いのネタも手に

入る。お笑い芸人・又吉は、単に暗い生活を暗く思い出してるのでは

ない。エッセイの冒頭、風呂なし、トイレ・水道共用、築六十五年の

安アパートのことも、ヒネったオチで笑い飛ばしてる。

 

 その頃、不動産屋の前を通るたびに、他に安くて良いアパートは

 ないかと店頭に貼り出された物件情報を眺めることが多かった。

 たまに吉祥寺駅から徒歩十分圏内で家賃二万円台の物件が

 あって、自分が住んでいるアパート以外にも格安の物件がある

 のだなと驚かされることがあったが、写真をよく観察すると、それ

 は必ず綺麗な雰囲気で撮影された自分のアパートだった。 

 

 

      ☆        ☆        ☆

そうした情景は、私にとって、「いつか見た風景」だ。高校卒業後、

田舎から首都圏に出て来た時、アパートは自分で選んだものじゃ

なく、機械的に紹介されて決まった物件だった。

 

ハッキリ言ってボロくて、見た目も名前もさえないけど、最初だから

こんなものかと、逆に闘志を燃やすキッカケにもなった。街自体が

おそろしく地味だったけど、それもまた18歳の少年にとってはいい

刺激になったのだ。今に見てろよって感じで、文字通り、青い春♪

 

又吉は、「安いからなのかアパートの住民は変わった人が多かった

と書いてる。より正確には、「すごく安いから」と言うべきかも。

 

エアコンが無くて開けっ放しの窓から見えた部屋の中には、「世界征服」

と書かれた大きな紙(笑)。実話なんだから、本人が名誉棄損で又吉を

訴えれば、億単位で稼いだ印税の一部が手に入るかも♪

 

あるいは、お経を唱えながら歩いているおじさんを見て、変わった人

だなと思ってたら、そのまま自分と同じアパートに入ったとか(笑)。

駅前で、猫の絵が描かれた旗を自転車にくくりつけて、ギターを弾き

ながら猫語で歌うおじさんとか♪

 

 

      ☆        ☆        ☆

そうそう。私の最初のアパートにも、変わった人が多かった。部屋に、

「世界征服」とちょっと似た言葉を大きく書いた紙を貼ってる、可愛い

少年とか(笑)。自分か!

 

LGBTらしき方々を初めて身近で見たのも、このアパート。聞き取る

のが困難な日本語を初めて聞いたのも、ここだった。皆さん、今どう

してるのかね。そのアパートは既に無くなってるらしいけど、街の様子

はあんまし変わってない気がする。何しろ、首都圏なのに全く話題に

ならない街なのだ♪

 

その後、私はわりのいいアルバイトを始めて、収入がかなり増えた

こともあって、住みやすい街に引っ越した。その時初めて、街の格差

というものを思い知らされたのだ。家賃は遥かに高くても、圧倒的に

住みやすい。何しろ、街を歩いてていきなり因縁をつけられることが

なくなったから(笑)。普通だろ!

 

・・・って感じの回想録を書き始めたら長くなるから、今日はそろそろ

終わりにしよう。今週は計15328字で終了。制限オーバーだけど、

削るのが面倒だからスルーしとこう♪ ではまた来週。。☆彡

 

               (計 2610字)

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