宇宙が収縮する時、時間の矢は逆転する~ホーキング博士が訂正した間違い(英語原文)

今日(2018年3月22日)の朝日新聞・朝刊に掲載されたホーキング

博士の「まちがい」の話を読んで、ちょっと前に読んだ気がするな・・

と思ったので、ネット検索。3月14日の朝日新聞デジタルに、ほぼ

同じような内容の追悼記事が掲載されてた

 

見出しは、デジタルが

 「宇宙観変えたホーキング博士 ノーベル賞と無縁の理由は

紙面だと、

 「共感呼んだ 希代の科学者」。

 

執筆はどちらも、朝日の元・科学医療部長、尾関章。やはりネット

の方が、拡散を呼ぶ見出しだろう。

 

最近、先にネットに出した記事を後で紙面に載せることが増えてる

けど、これは極端な時間差だ。本来なら紙面が先で、HPが後だから、

「時間の逆転」が起きてることになる♪

 

 

      ☆       ☆       ☆

その「時間の逆転」こそ、朝日の記事がこだわったコネタだった。

1985年に京都大学で講演した頃は、博士はまだ何とか声を出せた

ようで、付き添いの青年が言い直す形で聴衆に語りかけた。題名は、

「時間の矢」。過去から未来に向かう時間の流れの一方向性のことだ。

 

朝日によると、博士は、

 “カップが割れる映像を逆回しで見せ、膨張中の宇宙がいずれ

 収縮に転じれば、「熱力学的な時間の向きは逆転する」と語った

 

ところが88年の世界的ベストセラー『A Brief History of

Time』(時間の短い歴史、邦訳「ホーキング、宇宙を語る」)

で自分の間違いを認めて訂正。ついでに、自分は訂正したけど、

間違いを訂正しない科学者もいる、というような批判まで載せてた。

 

朝日は「失敗を逆手にとるちゃっかりぶりに愛すべき人柄が見て

とれる」と好意的に伝えてるけど、愛せない読者もいるだろう♪ 正論

とはいえ、日本人なら自分の立場もわきまえて差し控えるのが普通。

 

ちなみに、天才の追悼記事が非常に温かい絶賛になるのも日本の

特徴だ。海外のニュースでは、夫婦や家族のスキャンダルのような

ものまで詳しく報じられてた。まあ、私も日本人だから、ここに書く

のは差し控えとこう。。

 

 

     ☆       ☆       ☆

前置きはこのくらいにして、本題のホーキングの間違いについて。

私は本を買ってるけど見つからないから、ネットで検索。邦訳の該当

箇所は発見できてないけど、英文なら発見できた。

 

最も役に立つのが、コロラド大学のpdfファイル。著作権の処理が

怪しいけど、米国社会ではあまり気にしないのかも。今回に限らず、

しばしば微妙なファイルが堂々と公開されてるのだ。先日の記事に

使ったブラッドベリの短編小説『霧笛』も同様。

 

ホーキング自身の文章を見る前に、非常に大まかな前提知識を、

ネットで拾った図で確認しとこう。『Gravitation』(重力)

というタイトルの有名な本にあるそうで、その本もさらに他の出典

から引用してるような気もする。ありそうで無い、わかりやすい図だ。

 

180322a_2

 

上図の左端が、宇宙の始まりの大爆発ビッグ・バン(Big Bang)。

左から2番目が、現在の宇宙。まだ膨張中。

3番目は、膨張と収縮の転換点。最も膨張した未来の宇宙。

最後に右端が、ビッグ・クランチ(Big Crunch)。宇宙が収縮、

時間の終わりとされる。

 

 

      ☆       ☆       ☆

あくまで一つの考えであって、最近あまり聞かなくなってるから、

少数派なのかも。ただ、物理学的モデルとしては左右対称で美しい。

 

なお、宇宙が膨張するとか収縮するとかいう話は、例えば星の距離

の変化に着目する。下は英語版ウィキペディア、「Ultimate

fate of the universe」(宇宙の最終的運命)より。

 

180322e

 

右下の点線のモデルの場合、横軸(時間軸)で右側に進むと、縦軸

(銀河の平均距離)でゼロになる。つまり、1点に収縮するということ。 

物質の密度や暗黒エネルギーの密度の想定に応じて、複数のモデル

や理論が考えられる。

 

 

      ☆       ☆       ☆

では、ホーキング自身の説明を読んでみよう。英文をコピペした

後、私が簡単に超訳する♪ 正確な直訳とは程遠いので念のため。

 

180322b

 

 まず私は、宇宙が収縮する段階だと、膨張する段階における

 時間の流れが逆転すると考えた。人々は生まれる前に死んで、

 そこから徐々に若返るのだ。

 

 

180322c

 

 私は最初、無境界条件(宇宙に時間的な端は無いという条件)が、

 時間の逆転を意味すると考えた。しかし、同僚の1人が、必ずしも

 時間の逆転は要求されてないと指摘してくれた。さらに、学生の

 一人が、僅かに複雑なモデルを考えるだけで、収縮は膨張と

 大きく異なるものになることを発見した。

 

 私は間違ってた。収縮期でも、ブラックホールでも、時間の矢は

 逆転しないだろう。

 

 

180322d

 

 自分の間違いに気づいた時、どうすべきか。決して間違いを

 認めない人々もいる(エディントンなど)。しかし私は、間違い

 を印刷物で認める方がいいと思う。良い例がアインシュタイン

 で、彼は宇宙定数を導入したことについて、生涯で最大の誤り

 だと呼んだのだ。

 

 

      ☆       ☆       ☆    

ちなみに、この箇所における説明だけだと、「時間の矢は逆転しない」

という説明にはなってない。単に、「逆転すると考える必要はない」と

いうことだ。

 

もちろん、必要がないなら奇妙な考えを主張すべきではない、とか

いう大前提があるのかも知れない。いずれにせよ、宇宙論における

時間の逆転は我々が経験できるものではないから、科学的な面白話

の類ではある。

 

逆に、心理や思考、創作においては、日常的に時間は逆転可能だ。

実際、ホーキングに限らず、時間の逆転という話は時々あるし、読者

や聞き手もイメージできるのだ。映像をスローで巻き戻してもいい。

 

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

               (計 2293字)

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『頭脳王2018』計算解説2~ブラックホールの直径&小平奈緒選手の山手線一周タイム

日本テレビ『頭脳王2018』の放送終了直後、昨日0時過ぎに、

第一弾記事をアップした。

 

 日テレ『頭脳王2018』決勝戦の計算解説

 ~大声怪獣の体長、100回転ロボットのジャンプの高さ

 

今日は第二弾として、ブラックホール問題と山手線問題の

解き方を具体的に説明してみよう。

 

テレビ番組ではほとんど答だけになってるけど、ここでは途中

の式や考え方も示してある。スマホの場合は、画面を横向き

にした方が見やすいかも知れない。

 

 

     ☆        ☆        ☆

ではまず、準決勝のブラックホール問題。東大・京大の天才

たち4人がチャレンジ。正解は東大医学部の「神(かみ)脳」・

河野玄斗のみだった。今年の出演者の中では飛び抜けてた

から、優勝はもっともだ。

 

ただ、数理系の問題は全て、テレビのクイズ番組のレベル。

計算や暗記の速さ、正確さが問われるけど、考え込む難問

はない。

 

一応、今年一番解きにくかったのはブラックホール問題だと

思う。高校物理の教科書レベルの知識が必要だし、高校や

大学受験ではあまり出ないタイプの問題だった。

 

大学以上の物理学だと、「シュワルツシルト半径」とか

「シュヴァルツシルト半径」として有名で、公式も簡単だ。

万有引力定数G、星の質量M、光速cを使って、

 

 (半径) R = 2GM / c²

 

以下では、上の公式は使わず、普通に計算する。まず

複雑な条件の画面を示しておこう。非営利の個人ブログ

の記事における、出典を明示した限定的引用なので、

著作権法の許容範囲だと考える。

 

180204b

 

 

    ☆        ☆        ☆

ブラックホールの半径の定義は、要するに、いくらスピード

を上げても重力によって引き戻されてしまう範囲という

意味だ。光速でさえ脱出できないから、あらゆるものが

脱出できない。では、計算していこう。

 

(重力源となる星の質量)

 M = 太陽の質量の210億倍

  =(1.99×10³⁰)×(210×10⁸)

  =1.99×21×10³⁹

 

中心からR(m)離れた所で、質量N(kg)の物体を

光速c(m/s)で放つ時、

 

 (運動エネルギー) = Nc² / 2 

 

 (位置エネルギー)

  = -(万有引力定数G)×(星の質量)

     ×(物体の質量N) / R

  = -GN×(星の質量) / R

 

ちなみに位置エネルギーがマイナスなのは、半径が

中心から伸びていく向き(つまり外向き)とは逆に、

中心へと引きつけるからだ。

 

上の2つのエネルギーの総和がゼロだから、

 

 Nc²/2-GN×(星の質量)/R=0

 ∴ Nc²/2 = GN×(星の質量)/R

 

Nはゼロでないから、両辺をNで割って整理すると

 R=2G×(星の質量)/c²  ・・・(これが公式)

  =2×(6.67×10⁻¹¹)×(1.99×21×10³⁹)

       / (3×10⁸)²

  =13.34×13.93×10¹² / 3

  =1.858262×10¹⁴ / 3

 

 ∴ (直径)=2R

      =3.716524×10¹⁴ / 3

      =1.238・・・×10¹⁴ (m)

      ≒1.24×10¹¹ (km) ・・・答

 

 

割り算するのはなるべく遅らせて、四捨五入は最後

に行う。最後の有効数字が3桁だから、もし途中で

小数を省略する時は4ケタ以上書く。

 

 

    ☆        ☆        ☆

続いて、スピードスケートの小平奈緒選手が世界記録

ペースで山手線を一周すると、何分何秒かかるか?

「不可能!」とか答える人は、クイズには向かない♪

 

180204a

 

1000mで1分12秒09だから、

1kmで72.09秒。

 

∴ (山手線一周34.5kmのタイム)

    =72.09×34.5

    =2487.105 (秒)

    =41分27.105秒

    ≒41分27.11秒 ・・・答

 

 

時間がないので、今日はこの2問にしとこう。数日先に、

もう第三弾記事を書くかも知れないけど、後はほとんど

去年と同じような問題だったから、去年の記事だけでも

十分のような気もしてる。下のリンクを参照。

 

今週は合計14182字で終了となった。

ではまた来週。。☆彡

 

 

 

cf.『頭脳王2016』、太陽にスマッシュしたシャトルが届く時間

          &立方体の体積の解説

 『頭脳王2016』問題・解説2~大谷のホームランの

       飛距離、数列8パズル、ジグソー不足ピース

 『頭脳王2016』問題・解説3

   ~立体三目並べの先手必勝法&テレビの対局内容

 

   ・・・・・・・・・・

 頭脳王2018、1次予選・謎解き問題の解き方&短距離ラン

 『頭脳王 2017』実力テスト「謎解きクイズ」、問題と考え方

 『頭脳王2016』1次予選クイズの問題、解き方、感想

 

             (計 1792字)

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日テレ『頭脳王2018』決勝戦の計算解説~大声スーパー怪獣の体長、100回転ロボットのジャンプの高さ

☆翌日の追記: 第二弾の記事も別にアップした。

 『頭脳王2018』計算解説2

  ~ブラックホールの直径&小平奈緒選手の山手線一周タイム )

 

 

    ☆        ☆        ☆

去年・・じゃなくて一昨年の『頭脳王2016』に続いて、さきほど放映

が終了した日本テレビ『頭脳王2018』決勝戦の計算と解説をアップ

する。スマホで読む場合は、画面を横にした方がいいかも知れない。

ちなみに『頭脳王2017』は謎解きクイズだけで、本戦開催はなし。

 

ではまず、問題の条件の画面を静止画キャプチャーさせて頂こう。

非営利の個人サイトの記事における限定的引用なので、著作権法

の許容範囲と考える。

 

180203a

 

映画『ジュラシック・パーク』を遥かに上回るスーパー怪獣の

「声」が、東京から自由の女神まで届く時、体長は何mになるか?

 

正確に出題するなら、最低で何mあればよいか、ということだ。

「体長」と「身長」の違いとか、「音」と「声」の違いも気にしては

いけない♪ 物理的性質も深く考えず、計算問題だと考える。

ただし、上手く計算しないと三乗根が出て来るから、間違えて

しまうだろう。

 

 

      ☆        ☆        ☆

まず、音は声量に比例し、声量は肺活量に比例し、肺活量は

体重に比例し、体重は身長の3乗に比例する、という条件。

要するに、音は身長の3乗に比例するということだ。

一方、音は距離の2乗に反比例する。

 

身長の単位はm、距離の単位はkmとしてよい。どちらかに

合わせる方が普通だが、クイズでは時間のムダになる。

音の単位デシベルも不要だから無視。

 

条件より   

 60 = (総合的な比例定数)×1.7³ / 0.1²

 

また、怪獣の体長をX(m)とすると、

 60 = (総合的な比例定数)×X³ / 11059.2²

 

上の「総合的な」という言葉は無くてもいいけど、

4つの比例定数と1つの反比例の定数を合算

して1つにまとめたという意味だ。

 

上の2式の左辺は同じだから、右辺を見比べると、

 1.7³ / 0.1² = X³ / 11059.2²

 ∴ 11059.2²/0.1² = X³/1.7³

 ∴ (X/1.7)³=(110592)² ・・・①

 

このまま計算してもいいけど、

110592の素因数分解を使うと、

 110592 = (2の12乗)×3³

 

①の右辺に代入して、  

 (X/1.7)³ = {(2の12乗)×3³}²

        = (2の24乗)×3⁶

        = {(2の8乗)×3²}³

 

当然、Xは実数だから、

 X/1.7=(2の8乗)×3²

      =2304

 ∴ X=2304×1.7

    =3916.8 (m) ・・・答

 

 

もちろん、この程度の体長だと、東京からニューヨークの

自由の女神まで声を届かせるのは無理♪

 

とはいえ、めでたく東大医学部の神(かみ)脳、河野玄斗

が優勝。ルックスも甘いイケメンで、神の人気になるかも♪

 

 

     ☆        ☆        ☆

一方、その少し前に出たのが、100回転ジャンプできる

スーパーロボットのジャンプの高さを求める問題。

 

180203b

 

こちらの方が文章も計算も簡単だが、京大の井上良は疲れ

とプレッシャーのせいか、2つとも大きく間違えてた。

 

4回転で0.7秒なら、100回転だと

 0.7×100/4=0.7×25=17.5秒

 

上昇の時間と落下の時間は半々と考えて、

 落下時間=17.5/2

      =35/4 (秒)

 

よって、これだけの時間で自由落下する時の

落下距離を求めればよい。小数ではなく分数

で表しとくのが計算のコツ。

 

落体の法則の一番簡単な公式を利用すると

 

 (落下距離)=(1/2)gt²

      =4.9×(35/4)²

      =4.9×1225/16

      =375.156・・・

 

四捨五入して小数第1位まで求めると、

  375.2 (m) ・・・答

 

 

     ☆        ☆        ☆

もちろん、上のロボットが自由落下で着地すると、

リンクの氷が割れて大騒ぎになるはず♪

 

明日、追加で別記事もアップする予定。既に理数系の計算

問題はすべて解いた。立体三目並べは去年と同じルール

だったから、下のリンクから去年の記事に飛ぶと、先手

必勝法の説明がある。立方体の総体積もジグソーも去年

の記事を参照。

 

とりあえず今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

P.S. 18年3月4日、日テレ『行列のできる法律相談所』に

    河野玄斗が出演したようで、この記事にもかなりアクセスが

    入ってた。ツイッター検索をかけると、ほとんどの反応は肩書

    とルックスを絶賛するものになってた。

 

 

cf. 『頭脳王2016』、太陽にスマッシュしたシャトルが届く時間

          &立方体の体積の解説

  『頭脳王2016』問題・解説2~大谷のホームランの

       飛距離、数列8パズル、ジグソー不足ピース

  『頭脳王2016』問題・解説3

   ~立体三目並べの先手必勝法&テレビの対局内容

 

    ・・・・・・・・・・

  頭脳王2018、1次予選・謎解き問題の解き方&短距離ラン

  『頭脳王 2017』実力テスト「謎解きクイズ」、問題と考え方

  『頭脳王2016』1次予選クイズの問題、解き方、感想

 

             (計 1869字)

     (追記 102字 ; 合計 1971字)

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気体の状態方程式、熱気球、ピストンと仕事~物理の問題と解き方8

問題文を書き写すのが面倒で、なかなか進まない『物理重要問題

集』シリーズ、第8弾。何と4ヶ月も間が空いてしまったが、今回も

数研出版が集めた過去の大学入試問題を解説してみよう。

 

今回、ずいぶん間が空いたのは、この単元の内容がどうもピンと

来ないからだ。熱気球の上昇と下降、ピストン運動、断熱膨張など、

何の値が固定されてて何が変化するのか、どうやって変化させてる

のか、自分で実験したこともないし問題文でも説明が不十分。まあ、

それが自分で想像できるのも物理の実力ということか。

 

これまでの7本は次の通り。他にも物理カテゴリーの記事は色々あ

るし、数学カテゴリーには多数の記事がある。相変わらずアクセス

は地味に続いてるので、受験生その他の需要はあるようだ。

 

 等加速度直線運動、放物線、モンキー・ハンティング~物理1

 運動の法則、浮力、物体の連結と分離~物理2

 動滑車、摩擦力(静止・動)、バネの弾性力~物理3

 等速円運動、円すい振り子、万有引力と人工衛星~物理4

 単振動、ばね振り子、水平ばね2本~物理5

 物体の衝突、運動量保存法則、はねかえり係数~物理6

 温度と熱量、熱容量、比熱~物理7

 

今回は第8章、気体分子の運動(p.48~)のA問題から3問。化学

に近い分野でもあるので、私自身も含め、化学があまり好きでない

人は苦手意識を持ちやすいと思う。

 

いつものように、式や説明は私が書いたもの。読みやすさと入力

環境のため、小文字を大文字に変えたり、添え字を小文字に変え

たりしてるが、言葉遣いは元のままだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆

 76 (気体定数の計算) 関西学院大

 

 1molの理想気体は、標準状態でその体積は22.4Lと

 なる。この事実から気体定数を〔J/mol・K〕の単位で

 導け。有効数字は2桁まで計算せよ。1atmでは一端を

 封じた長さ約1mのガラス管に水銀を満たし、そのガラス

 菅を水銀の入った容器に、開口部を下にして鉛直に

 立てると、ガラス管の上部に空間を生じる。ガラス管内

 の水銀面は水銀容器の水銀面からの距離、すなわち

 水銀柱の高さは76cmである事を利用せよ。また水銀

 の比重は13.6であり、重力の加速度を9.8m/s²

 とせよ。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 (解答)

 (大気圧)=(ガラス管内の水銀の重さがもたらす圧力)

      =(管内の水銀の重力)/断面積S(m²)

      =(体積)×(単位体積あたりの質量)×

         ×(重力加速度)/S

      =0.76×13600×9.8

      ≒101300 (N/m²)

 

 この値を、気体の状態方程式に代入すると、

  101300×0.0224=1×R×273

  ∴ R≒8.3 (J/mol・K) ・・・答

 

 

 (解説・感想)

 非常に有名な実験だから、ほとんどの人は知ってる

 だろうし、結果の値も有名で、受験生なら暗記してる

 のが普通。

 ということは、途中の式で単位の換算ができてるか

 どうかが採点のポイントになる。すべてmks単位系

 で揃えればよい。長さはメートル、質量はkg。

 

 

     ☆        ☆        ☆

 77 (熱気球) 電気通信大

 

 圧力p₀、温度T₀の大気中に容積V、質量mの変形

 しない容器がある。

 

 (1) まず大気の密度ρ₀を求めよ。ただし、大気を

   理想気体とみなし、その1molの質量をM₀、

   気体定数をRとする。

 (2) 器内の圧力をp₀に保って器内の温度を上げて

   いくと、ある温度Tで器が宙に浮き始める。その

   温度Tを求めよ。ただし、器は熱を伝えないもの

   とする(熱気球の原理)。

 (3) 器内の温度をT₀に保って器内の圧力を下げて

   いくとある圧力pで器が宙に浮き始める。その

   圧力pを求めよ。

 (4) はじめ、器内を真空にし、のち、温度をT₀に

   保ちながら、ヘリウム・ガスを詰めていくとある

   圧力pで器が宙に浮かなくなる。その圧力pを

   求めよ。ただし、ヘリウムも理想気体とみなし、

   その1molの質量をMとする。

 (5) p₀=1atm、T₀=273K、V=44.8L、

   m=14g、M₀=28g/mol、M=4g/mol、

   R=0.082atm・L/mol・Kとおいて

   (1)のρ₀、(2)のT、(3)のp、(4)のp

   を計算せよ。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 (解答)

 (1) 大気の1molあたりの体積をV₀とすると、

    p₀V₀=1RT₀より、 V₀=RT₀/p₀

    ∴ ρ₀=M₀/V₀

        =M₀p₀/RT₀ ・・・答

 

 (2) 温度を上げると、器内の気体分子は外に

   逃げる。器内の新たなモル数をnとすると、

   p₀V=nRT  ∴ n=p₀V/RT

   よって器内の大気の質量は、 p₀VM₀/RT

   器の質量はmだから、重力加速度をgとすると、

   (容器全体の重力)=(p₀VM₀/RT+m)g。

   浮き始める時には、この重力が浮力と一致。

   ∴ (p₀VM₀/RT+m)g=ρ₀Vg

  ∴ p₀VM₀/RT+m=M₀p₀V/RT₀

  ∴ T=p₀M₀T₀V/(p₀M₀V-RT₀m) 答

 

 (3) 器内のモル数がnになったとすると、

   pV=nRT₀  ∴ n=pV/RT₀

   ∴ (容器全体の重力)

    =(pVM₀/RT₀+m)g

   これが浮力と一致するから、(2)と同様に

   pVM₀/RT₀+m=M₀p₀V/RT₀

   ∴ p=p₀-(RT₀m/VM₀) ・・・答

 

 (4) 器内のヘリウムのモル数がnとすると、

   pV=nRT₀  ∴ n=pV/RT₀

   (2)(3)と同様に考えて、

   pVM/RT₀+m=M₀p₀V/RT₀

   ∴ p=(M₀p₀V-mRT₀)/MV ・・・答

 

 (5) 代入して計算すると、

   ρ₀=1.3(g/L), T=3.6×10²(K)

   {(3)のp}=0.75(atm)

   {(4)のp}=5.3(atm) ・・・ 答

 

 

 (解説・感想)

 (2)は地上から浮き始める時。(3)はかなりの

 上空で、大気圧が下がった時の話だと思う。

 (4)は下降する時だと思うが、真空にすると

 いう設定の意味は不明。大気を追い出して、

 ヘリウムだけ満たすということか。

 最後の計算の過程は省略したが、約分と近似

 を上手く使ってもちょっと面倒だった。完答した

 受験生はかなり少ないだろう。

 

 

     ☆        ☆        ☆

 83 (ボイル・シャルルの法則と

      外気のする仕事)  熊本大

 

171109a

 

 図のように1molの単原子理想気体の入った

 断面積S〔m²〕の円筒容器が軸を鉛直にして

 固定されている。この容器にはなめらかに動く

 ピストンがあり、外気の温度がT〔K〕、その圧力

 がP〔N/m²〕のときに容器の上の内面から

 ピストンまでの距離はL〔m〕であった。ビストン

 の重さは無視できるものとし、重力加速度を

 g〔m/s²〕として次の問いに答えよ。ただし、

 答えは気体定数R〔J/K・mol〕を用いずに

 表せ。

 

 (1) このピストンに質量M〔kg〕のおもりを

   つるすとピストンは下の方へ動く。十分

   時間がたって気体の温度が外気と同じに

   なったとき、ピストンはもとの位置からいくら

   下がっているか。

 (2) 次に、ピストンがもとの位置へもどるまで

   容器内の気体を冷やした。このとき気体の

   温度はいくら下がったか。

 (3) (2)において外気がした仕事はいくらか。

 (4) (2)において容器の中の気体が失った

   熱量はいくらか。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 (解答)

 (1) ピストンが下がることで増した分の浮力が、

    おもりの重力とつり合う。    

    ピストンが動く前後で、ボイル・シャルルの

    法則(温度一定)を使用。圧力をP₁、

    下がった長さをx(m)とすると、

    P(SL)=P₁S(L+x)

    ∴ P₁=PL/(L+x)

 

   「増した分の浮力=おもりの重力」より、

   {P-PL/(L+x)}S=Mg

  ∴ x=LMg/(PS-Mg) (m) ・・・答

 

 (2) 冷やした後の容器内の圧力をP₂、温度を

   T₂とすると、ボイル・シャルルの法則より、

    P/T=P₂/T₂  ∴ P₂=T₂P/T

 

   「初期状態より増した浮力=おもりの重力」

   より、(1)と同様に、

   (P-T₂P/T)S=Mg

   ∴ T₂=T-(MgT/PS)

   よって、元の温度Tから下がった温度は、

    MgT/PS (K) ・・・答 

 

 (3) 外気は圧力Pのまま、体積Sxだけ

    ピストンを押してるから、

   (外気がした仕事)

    =PSx

    =PSLMg/(PS-Mg) (J)・・・答

 

 (4) まず、気体定数を求める。

   初期の容器内の状態方程式は、

   P(SL)=1×RT

   ∴ R=PSL/T

   よって、

   内部エネルギーの減少は、

    (3/2)(PSL/T)(MgT/PS)

   =3LMg/2

   外気が容器内の気体に対してした仕事は、

    (外気がした仕事)-(おもりに対する仕事)

   =PSLMg/(PS-Mg)

     -Mg{LMg/(PS-Mg)}

   =LMg

 

   熱力学の第一法則より、

    (内部エネルギーの変化量)

     =(外から加えた熱量)+(外からされた仕事)

   ∴ (外から加えた熱量)

      =-3LMg/2-LMg

      =-5LMg/2

   ∴ (中の気体が失った熱量)

       =5LMg/2 (J) ・・・答

 

 

 (解説・感想)

 最初から気体定数Rを求めて解いてもいいが、

 出題者としてはボイル・シャルルの法則を使う

 ように誘導したつもりだと思う。

 

 最後、熱力学の第一法則は、書き方や読み方

 が色々細かく分かれるので、その場に応じて

 適当な形を使うことが必要。

 「外からされた仕事」にマイナスをつけると、

 「外に対してする仕事」。

 「外から加えられた熱量」にマイナスをつけると、

 「外に加えた熱量」。あるいは「失った熱量」。

 

 

次回は2ヶ月以内に書きたいと思うが、年末年始と重なるので、

年明けの1月下旬になるかも。今日のところはこの辺で。。☆彡

 

               (計 3731字)

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重力波の観測 by LIGO(ライゴ)~ノーベル物理学賞2017、授賞理由(英語原文と和訳)

171005a

 

2017年のノーベル賞は、最初の3賞で日本人が受賞しなかった

ので、日本のメディア報道はかなり小さくなってしまった。これが本来

の自然な扱いかも知れないが、年に一度の学問の祭典としては、

ちょっと寂しい感もある。後はノーベル文学賞狙いか。

 

ただ、今年のノーベル物理学賞の業績は、今後の科学の歴史に

残ると思う。少なくとも50年くらい。あるいは、新たな発見や理論に

よって、今回支持されたアインシュタインの一般相対性理論が否定

されてしまうまでは。

 

171005b

 

イラストの作者はお馴染み、ニクラス・エルメヘド(Niklas

Elmehed)。許容範囲の引用と考える。左から、レイナー・

ワイス(Weiss、85歳)、バリー・C・バリッシュ(Barish、

81歳)、キップ・S・ソーン氏(Thorne、77歳)の3氏。

 

賞の1/2がワイス氏(ウェイスという表記もあり)に授与されてる

から、中心人物として特別に評価されてるようだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆ 

では、プレスリリース冒頭、授賞理由の英文を日本語に訳してみる。

ほぼ直訳。主要部分である前半だけ扱うので、全文は英語公式

サイトを参照。医学・生理学賞よりシンプルな英文だと思う。

 

171005c

 

The Royal Swedish Academy of

Sciences has decided to award

the Nobel Prize in Physics 2017

 

スウェーデン王立科学アカデミーは、2017年ノーベル物理学賞

を、次の3氏に贈ることを決定した。

 

with one half to Rainer Weiss

LIGO/VIRGO Collaboration

 

半分は、レイナー・ワイス氏に。ライゴ/バーゴ共同研究。

 

and the other half jointly to

Barry C.Barish

LIGO/VIRGO Collaboration

and Kip S.Thorne

LIGO/VIRGO Collaboration

 

そして、もう半分は、バリー・C・バリッシュ氏(同上)と、キップ・

S・ソーン氏(同上)に。

 

“for decisive contributions to the

LIGO detector and the observation

of gravitational waves”

 

“ライゴ検出器と重力波の観測に対する決定的な貢献に対して。”

 

 

171005f

 

(注. 上図は添付資料の一部。ブラックホールの合体で生じた

  重力波を、4kmの線2本が直交する観測装置ライゴでとらえる。

  2方向に分かれたレーザーが重力波で僅かにずれて干渉する。

  3000km離れた地点に2つ設置して、場所の影響を除去。

 

  なお、ライゴ観測所は天文台と表記する場合もあるが、イメージ

  的にはむしろ、装置とか検出器に近い。)

 

 

     ☆        ☆        ☆

171005d

 

Gravitational waves finally captured

 

重力波が遂にとらえられた

 

On 14 September 2015,the

universe’s gravitational waves

were observed for the very

first time.

 

2015年9月14日、まさに初めて、宇宙の重力波が観測された。

 

The waves,which were predicted

by Albert Einstein a hundred

years ago,came from a collision

between two black holes.

 

アルバート・アインシュタインによって100年前に予言されていた

その波は、二つのブラックホールの衝突から到来した。

 

It took 1.3 billion years ago

for the waves to arrive at the

LIGO detector in the USA.

 

その波が米国のライゴ検出器に到達するまで、13億年を費やした。

 

 

171005e

 

(注. 上図も添付資料の一部。ブラックホールの衝突時に、

   重力波の振幅が最大になってる。)

 

 

     ☆        ☆        ☆

The signal was extremely weak

when it reached Earth,but is

already promising a revolution

in astrophysics.

 

その信号は、地球に届いた時、極度に弱かったが、天文物理学

における革命を既に約束している。

 

Gravitational waves are an 

entirely new way of observing

the most violent events in

space and testing the limits

of our knowledge.

 

重力波は、宇宙で最も激しい出来事を観測する全く新しい手段で、

私たちの知識の限界を試している。

 

LIGO,the Laser Interferometer

Gravitational-Wave Observatory,

is a collaborative project with

over one thousand researchers

from more than twenty countries.

 

ライゴ(レーザー干渉計・重力波観測所)は、20ヶ国以上の

国から1000人以上の研究者を集めたプロジェクトである。

 

Together,they have realised a

vision that is almost fifty

years old.

 

力を合わせて、彼らはほとんど50年前からある構想を実現した。

 

The 2017 Nobel Laureates have,

with their enthusiasm and

determination,each been invaluable

to the success of LIGO.

 

2017年のノーベル賞受賞者たちはそれぞれ、熱意と決断力を

もって、ライゴの成功にとって計り知れない貴重な存在だった。

 

Pioneers Rainer Weiss and Kip

S.Thorne,together with Barry C.

Barish,the scientist and leader

who brought the project to

completion,ensured that four

decades of effort led to

gravitational waves finally

being observed.

  

開拓者のレイナー・ワイス氏とキップ・S・ソーン氏は、プロジェクト

完結リーダーである科学者バリー・C・バリッシュ氏と共に、40年の

努力を重力波発見へと確実に導いた。

 

 

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

cf.「重力波」観測の英語論文、要約(アブストラクト)の日本語訳

  体内時計と遺伝子の解明

   ~ノーベル医学生理学賞2017、授賞理由

 

                (計 2708字)

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温度と熱量、熱容量、比熱~物理の問題と解き方7

問題文を書き写すのが面倒で、なかなか進まない『物理重要問題

集』シリーズ、第7弾。また2ヶ月も間が空いてしまったが、今回も

数研出版が集めた過去の大学入試問題を解説してみよう。

 

これまでの6本は次の通り。他にも物理カテゴリーの記事は色々あ

るし、数学カテゴリーには多数の記事がある。相変わらずアクセス

は地味に続いてるので、受験生その他の需要はあるようだ。

 

 等加速度直線運動、放物線、モンキー・ハンティング~物理1

 運動の法則、浮力、物体の連結と分離~物理2

 動滑車、摩擦力(静止・動)、バネの弾性力~物理3

 等速円運動、円すい振り子、万有引力と人工衛星~物理4

 単振動、ばね振り子、水平ばね2本~物理5

 物体の衝突、運動量保存法則、はねかえり係数~物理6

 

 

今回は第7章、温度と熱量(p.43~)のA問題から3問。わりと

単純で簡単な分野だが、熱という特殊なエネルギーを扱う内容

だから慣れは必要だろう。

 

いつものように、式や説明は私が書いたもの。読みやすさと入力

環境のため、小文字を大文字に変えたり、添え字を小文字に変え

たりしてるが、言葉遣いは元のままだ。

 

 

     ☆        ☆        ☆

 66 (熱容量と比熱) 久留米工大

 次の各問いに、単位をつけて答えよ。

 

 (1) 比熱が0.1cal/g・Kである物体の温度を10℃から

    60℃まで上げるのに5000calの熱量が必要であった。

    この物体の熱容量はいくらか。

 (2) この物体の質量はいくらか。

 (3) 質量100gのある物体を80℃に熱して、容器に入れた

    温度10℃の水340gの中に落としてかきまわしたら、

    水と物体の温度は12度になった。物体から水に移動

    した熱量および物体の比熱を求めよ。ただし、容器の

    熱容量は無視する。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 (解答)

 (1) 10℃から60℃まで50K上げる熱量が5000calだから、

    1K上げる熱容量は、

    5000 / 50 = 100(cal/K) ・・・答

 

 (2) 「熱容量=比熱×質量」だから、

    100=0.1×(質量)

    ∴ (質量)=100/0.1

           =1000(g) 

           =1(kg) ・・・答

 

 (3) (物体から水に移動した熱量)

       =(水が得た熱量)

       =(水の比熱)×(質量)×(上昇温度)

       =1×340×(12-10)

       =680(cal) ・・・答

 

    また、物体から移動した熱量が680calだから、

    (物体の比熱)×(質量)×(下降温度)=680

    ∴ (物体の比熱)×100×(80-12)=680

    ∴ (物体の比熱)=680/(100×68)

               =0.1(cal/g・K) ・・・答 

 

 

 (解説・感想)

 基本問題だが、問題文でわざわざ単位を求めてるので、単位を

 揃えて計算する。この種の問題では、質量の単位はgが普通

 なので、(2)では1000gのままでもいいはず。

 

 温度の単位は、 「℃」と「K」の違いを気にする必要はない。

 温度差が問題になる時は「K」が普通だろうが、問題文や説明文

 に「℃」と書いてることも多い。学校の場合は、先生に合わせる。

 (3)では、物体と水をハッキリ分けて考えればよい。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 67 (金属球の比熱) 東北歯大

 比熱がc1[cal/g・K]の金属で作った質量50gの

 容器に100gの水を入れて温度を測ったところ15℃で

 あった。これに80℃の湯70gを入れてよくかきまぜた

 ところ全体の温度が41℃になった。

 

 (1) この金属容器の熱容量a1はいくらか。

 (2) この金属容器の比熱c1はいくらか。

 

 引き続いて、この容器の中へ温度100℃で質量が200g

 の金属球を入れてよくかきまぜたところ、全体の温度が

 52℃になった。

 

 (3) この金属球の熱容量a2はいくらか。

 (4) この金属球の比熱c2はいくらか。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 (解答)

 (1) (湯が失った熱量)

       =(金属容器が得た熱量)+(水が得た熱量)

    ∴ 1×70×(80-41)

         =a1×(41-15)+1×100×(41-15)

    ∴ 2730=26a1+2600

    ∴ a1=5(cal/K) ・・・答

 

 (2) (熱容量)=(比熱)×(質量)だから、

     5=c1×50

    ∴ c1=0.1(cal/g・K) ・・・答

 

 (3) (金属球が失った熱量)

       =(金属容器が得た熱量)+(水が得た熱量)

    ∴ a2×(100-52)

        =5×(52-41)+1×170×(52-41)

    ∴ 48a2=55+1870

    ∴ a2≒40(cal/K) ・・・答

 

 (4) (比熱)=(熱容量)÷(質量)

    ∴ c2=40/200

        =0.2(cal/g・K) ・・・答

 

 

 (解説・感想)

 金属容器と金属球、水とお湯、計4つの物質を合わせて考える

 ので、ミスが無いよう注意。(1)の熱容量は、比熱×質量で

 50c1と書いた受験生が少なくないと思うが、採点でどうなるか

 は不明。ただ、(2)が合ってれば、(1)は50c1でもいいはず。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 69 (熱量の保存) 近畿大

 

 3個の物体A、B、Cがあって、最初これらの物体の温度は、

 互いに異なっていた。まず、物体AとCとを接触させたら、

 物体Aの温度は41℃下がり、物体Cの温度は16℃上昇

 した。次に物体AをCから離して物体BとCとを接触させた

 ところ、物体Bの温度は2℃上昇し、物体Cの温度は10℃

 下がって、80℃となった。接触した物体の間だけ熱のやりとり

 があり、そのために両物体の温度が等しくなるものとする。

 

 (1) さらに物体CをBから離して、物体AとCとを接触

    させると、物体Cの温度は何℃になるか。

 (2) このようにして、物体Cを交互にAとBに接触させていく

    と、物体Cの温度は、しだいにある一定の温度に近づいて

    いく。この温度は何℃か。

 

 

      ☆        ☆        ☆

 (解答)

 (1) まず、Cの温度に注目すると、

     Aとの接触で74℃から90℃へと16℃上昇し、

     Bとの接触で90℃から80℃へと10℃下降。

 

    よってAはCとの接触で131℃から90℃へと41℃下降。

    BはCとの接触で78℃から80℃へと2℃上昇。

 

    ここで、A、B、Cの熱容量をそれぞれa、b、cとすると、

    41a=16c   ∴ a=16c/41

    2b=10c   ∴ b=5c

 

    よって、2度目のAとCの接触でt℃になったとすると、

    (16c/41)×(90-t)=c×(t-80)

    ∴ 16(90-t)=41(t-80)  (∵ c≠0)

    ∴ 4720=57t

    ∴ t≒83(℃) ・・・答

 

 (2) 無数の操作全体をまとめて考えると、

    (Aが失った熱量)=(Bが得た熱量)+(Cが得た熱量)

 

    よって、最終的に近づく温度をs℃とすると、

    (16c/41)×(131-s)

       =5c×(s-78)+c×(s-74)

    ∴ 16(131-s)=205(s-78)+41(s-74)

    ∴ 2096+15990+3034=(16+205+41)s

    ∴ 262s=21120

    ∴ 131s=10560

    ∴ s=80.6・・・

        ≒81(℃) ・・・答

 

 

 (解説・感想)

 やや問題文が読みにくいが、実力が問われるユニークな良問だと

 思う。質量も比熱も出てないので、熱容量だけで解く。変数3つは、

 条件を使って1つだけに絞る(ここではc)。最後は計算が面倒

 なので慎重に変形。

 

 おそらく、何か具体的な例があるのだろう。例えば、高温のAから

 低温のBに熱を移したいが、Bは高い温度に耐えられないから、

 Cを媒介にして熱を移動させるとか。Cは単なる媒介だからこそ、

 主役のAとBに続くアルファベットを選んでるのだと想像する。

 

 

毎度の事ながら、物理の記事は入力が大変だと痛感しつつ、

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

cf. 気体の状態方程式、熱気球、ピストンと仕事~物理8

 

                  (計 2972字)

      (追記 27字 ; 合計 2999字)

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物体の衝突、運動量保存法則、はねかえり係数~物理の問題と解き方6

問題文を書き写すのが面倒で、なかなか進まない『物理重要問題

集』シリーズ、第6弾。約半年ぶりになってしまったが、今回も数研

出版が集めた受験問題を解説してみよう。

    

これまでの5本は次の通り。他にも物理カテゴリーの記事は色々あ

るし、数学カテゴリーには多数の記事がある。アクセスは地味に続

いてるので、それなりの需要はあるようだ。

    

 等加速度直線運動、放物線、モンキー・ハンティング~物理1

 運動の法則、浮力、物体の連結と分離~物理2

 動滑車、摩擦力(静止・動)、バネの弾性力~物理3

 等速円運動、円すい振り子、万有引力と人工衛星~物理4

 単振動、ばね振り子、水平ばね2本~物理5

     

今回は第6章、運動量の保存(p.36~)のA問題から3問。

いつものように、式や説明などはすべて私が書いたもの。

読みやすさと入力環境のため、小文字を大文字に変えた

り、添え字を小文字に変えたりしてるが、言葉遣いは元の

ままだ。

  

   

     ☆        ☆        ☆

 54 (一直線上の衝突) 関西学院大

  

 なめらかな水平面上をx方向に運動する2つの球A、Bが

 向心衝突した。A、Bそれぞれの衝突前の速度をVa、

 Vb、衝突後の速度をUa、Ub、質量をMa、Mbとする。

    

 (1) 反発係数(はねかえりの係数)eを上の記号を

    用いて表せ。

 (2) Va=26m/s、Vb=8m/s、Ma=0.4kg、

    Mb=1.8kg、e=0.8としてUa、Ubを求めよ。

 (3) この衝突によって失われた力学的エネルギー

    ΔEを計算せよ。

 (4) 失われた力学的エネルギーは何に変わったか。

   

   

      ☆        ☆        ☆

 解答

 (1) 定義式より、 

   e = -(Ua-Ub)/(Va-Vb) ・・・答

    

 (2) 反発係数の定義式より、

    0.8=-(Ua-Ub)/(26-8)

    ∴ -Ua+Ub = 14.4 ・・・①

    また、運動量保存則より、

    0.4×26+1.8×8=0.4Ua+1.8Ub

    ∴ 2Ua+9Ub=124 ・・・②

    ①②の連立方程式を解いて、

     Ua=-0.5 m/s,

     Ub=13.9 m/s ・・・答

    

 (3) ΔE={(1/2)×0.4×26²+(1/2)×1.8×8²}

  -{(1/2)×0.4×(-0.5)²+(1/2)×1.8×13.9²}

       =18.9 (J) ・・・答

    

 (4) 熱エネルギー、音のエネルギー、

    球の変形のエネルギー ・・・答

  

   

 (解説・感想)

  全くの基本問題で、小数や分数の計算ミスに注意すれば

  よい。数値がキレイに出ないし、有効数字も不明だが、

  (2)の問題文から、小数第1位までと考えておいた。2ケ

  タで答えても、ほとんど減点はないはず。

  

    

      ☆        ☆        ☆

 55 (走る台車からの打ち上げ) 上智大

   

 水平面上に固定されたなめらかなレール上を、質量

 500g(弾丸を含む)の台車が2.0m/sの速さで

 走っている。時刻t=0に、この台車から100gの

 弾丸を、水平面上の観測者から見て、鉛直方向から

 30度後方に向けて12m/sの速さで打ち上げた。

 弾丸が上昇して再びレール上に落下した瞬間の台車

 と弾丸との距離はいくらか。ただし、重力の加速度

 9.80m/s²、√3=1.73とする。

   

   

     ☆        ☆        ☆

 解答

170502a_va_vix

    

 発射後の台車の速さを x m/sとする。

 水平方向の運動量保存則より、右向きを正として、

  0.5×2.0=0.4x+0.1×(-12×sin30°)

 ∴ 1=0.4xー0.6   ∴ x=4 

   

 また、弾丸の鉛直方向の初速は、

 12×cos30°=6√3=10.38

   

 鉛直方向・上向きを正とし、時刻t(>0)における

 位置が0とおいて、

 10.38t-(1/2)×9.8×t²=0

 ∴ 10.38=4.9t   ∴ t=2.12

   

 これが弾丸落下時の時刻だから、求める距離は、

 (台車の右向き移動距離)+(弾丸の左向き移動距離)

 =4×2.12+(12×sin30°)×2.12

 =10×2.12

 =21.2 (m) ・・・答

  

    

 (解説・感想)

 水平面上から台車の上の面までの高さが書いてないから、

 ゼロと解釈。問題文が3ケタの数字になってるから、tは

 4ケタで計算する方がいいかも知れないが、おそらく問題

 作成者でさえ3ケタで計算してるはず♪

 弾丸の打ち上げ角度を、水平方向に対して30度だと誤解

 しないように。。

   

    

     ☆        ☆        ☆

 56 (床との衝突 東京水産大

   

 高さ10mの所から、ボールを静かにはなして床に落とし

 たら、衝突してはね上がり、6.4m(最高点)までもどった。

 このあと再び床に落ちてはね上がることをくり返した。重力

 加速度を9.8m/s²とする。

    

 (1) はねかえりの係数を求めよ。

 (2) 手をはなしてから、床ではね返り、6.4mの最高点

    に達するまでにかかる時間を求めよ。

 (3) 2回目に床に衝突する直前の速度と直後の速度を

    求めよ。

 (4) 何回かくり返しているうちに、最高点はしだいに低く

    なるが、最高点が3.0mに達しないのは何回目の

    衝突のあとか。

   

   

     ☆        ☆        ☆

 解答

 (1) 衝突直前の下向きの速度を x m/sとすると、

     速度、加速度、距離の関係式より

     x²-0²=2×9.8×10

     ∴ x=14

     衝突直後の上向きの速度を y m/sとすると、

     0²-y²=2×(-9.8)×6.4

    ∴ y=11.2

    よって、 速度ゼロのまま動かない地面に関して、

    (はねかえりの係数)

      =-(11.2-0)/(-14-0)

      =0.8 ・・・答

    

 (2) (落ちる時間)+(上がる時間)

    =14/9.8+11.2/9.8

    =2.6 (s) ・・・答

    

 (3) 下向きを正とすると、

    (2回目の衝突直前の速度)

    =(1回目の衝突直後の速度の符号を逆にしたもの)

    =-11.2 (m/s) ・・・答

   (2回目の衝突直後の速度)

    =-(衝突直前の速度)×(はねかえり係数)

    =-11.2×0.8

    =-9.0 (m/s) ・・・答 

   

 (4) 上向きを正として、

    (3回目の衝突直後の速度)

    =(2回目の衝突直後の速度)×(はねかえり係数)

    =9.0×0.8

    =7.2 (m/s)

    最高点の高さをhとすると、

    0²-7.2²=2×(-9.8)h

    ∴ h=51.84/19.6 < 3 (m)

    よって、3回目の衝突のあと。 ・・・答

   

    

 (解説・感想)

 鉛直方向のはね返りの問題では、速度計算する時の符号の

 プラス・マイナスに注意する必要がある。

   

 2回目以降の衝突の計算では、はねかえり係数の定義式を

 使うのは省略した。もし時間があれば、真面目に定義に従う

 ところだが、多くの受験生は省略すると思う。

    

 (4)の問題文は、おそらく「はじめて3.0mに達しない

 のは・・・」という意味だろうと解釈した。文字通りに読むと、

 答は、「n回目の衝突(n≧3)」とかだろう♪

    

    

やはり、物理の記事は入力が大変だなと思いつつ、それでは

今日は この辺で。。☆彡

    

                    (計 2650字)

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『頭脳王2016』問題・解説2~大谷のホームランの飛距離、数列8パズル、ジグソー不足ピース

(☆追記: これに続く記事も3日後にアップした。

  『頭脳王2016』問題・解説3

    ~立体三目並べの先手必勝法&コンピューター対局内容 )

   

   

    ☆        ☆        ☆

今日も第2弾として、日テレ『頭脳王2016決定戦』の理数系

の問題を解説する。昨日の第1弾記事は次の通り。タイトルに

入ってない問題についても、末尾のP.S.でコメントしてある。

    

 『頭脳王2016』、太陽にスマッシュしたシャトルが届く時間

          &立方体の体積の解説

    

一方、今年と来年の一次予選の記事は次の2本。

   

 『頭脳王 2017』実力テスト「謎解きクイズ」、問題と考え方

 『頭脳王2016』1次予選クイズの問題、解き方、感想

    

それでは今日は、物理(力学)の問題から始めよう。

   

   

     ☆        ☆        ☆

二刀流で大活躍のプロ野球選手・大谷が、実力2倍になって、自分

自身と勝負したら、特大ホームランとなった。飛距離はいくらか?

    

 投手・大谷の球速と、打者・大谷のスイングスピードは、

 共に時速330km/h。

 バットとボールの重さの割合は、6.5 : 1。

 バットとボールはバッティングの瞬間まで

 水平な同一直線上を移動。

 バッティングの直後、バットは下方向に軌道を変えたが、

 僅かなので考慮せず、水平を保つとする。

 バットのスピードはバッティング前の72%まで低下。

   

 打球は地面から仰角45度で打ち上げられ、

 ボールの着地点は打点と同じ高さ。

 空気抵抗や外力は無視。重力加速度は9.8m/s²。

 飛距離はメートル単位の整数値。小数第1位を四捨五入。

   

  

かなり色々と条件がついてるが、これでもまだ、問題の説明が足り

ないような気がする所だろう。そもそもバットは、直線運動ではなく

て回転運動だから、外力(手の力)が大前提のまず♪ 

   

まあ、色々と好意的にシンプルな解釈をしてみると、テレビで正解

とされた距離と同じ答に到達できた。要するに、2物体の衝突と、

斜方投射による放物運動との組合せだ。

    

    

     ☆        ☆        ☆

(解答) まず、時速を秒速に換算する。

  時速330km=3600秒で330000m

         =275/3 (m/s)

     

次に運動量保存則を用いる。バットから投球への向きを正とし、

バットとボールの質量を6.5a(kg)、a(kg)とする。

さらに、打球の水平方向の速度をv(m/s)とすると、

     

  a×(-275/3)+6.5a×275/3

    =a v+6.5a×{(275/3)×0.72}

 ∴ v=451/6 (m/s)

  

仰角45度だから、鉛直方向のスピードも同じ(上向きを正)。

ここで、打点の高さを基準点として、打球の鉛直方向の

位置(打点から見た高さ)hを時間tで表すと、

 h=(451/6)t-4.9 t²

  

着地点では、h=0、t>0だから、

  0=(451/6)t-4.9 t²

 ∴ 451/6-4.9t=0   ∴ t=2255/147 (s)

   

 ∴ (飛距離)=(水平方向の移動距離)

        =(水平方向の速度)×(時間)

        =(451/6)×2255/147

        =1017005/882

        =1153.0・・

        =1153 (m) ・・・ 答

    

   

     ☆        ☆        ☆

一応、筆算の図も挿入しとこう。私も電卓やアプリの類は使わず、

自分の手で計算した。昨日の記事で扱った太陽シャトル問題よ

りは簡単だ。

           

161218f2

    

           

161218g

    

  

ちなみに、衝突後のバットの速度が与えられてるので、はねかえり

係数(=反発係数)は不要。また、衝突では一般に力学的エネ

ルギー保存則は使えないのが普通で、ここでも保存されない。

高校1年か2年の物理の発展問題レベルであって、難問ではない。

   

もし「2倍の大谷」ではなくて、その半分の「普通の大谷」だと、打球

のスピードは半分になって、飛距離は4分の1になる。つまり、

288m程度。

   

ただし、現実の世界だと、打球は空気抵抗を強く受けるし、仰角

が45度(理論的にベストの角)ではないので、百数十mになる。

   

    

    ☆        ☆        ☆ 

続いて、「数列パズル」とテロップが出てた、3×3のスライ

ディング・パズルとか8パズルと呼ばれるもの。4×4

の15パズルの方が普通だろう。実物のオモチャが無くても、

紙に書くだけで楽しめるし、数学的にも興味深い脳トレゲーム。

   

最初の状態から、次の図のように、1個ずつ数字ブロックを上下

左右にスライドさせていけば、12345678の順に並べられる。

3×3で配置も簡単だから、私も含めて、知ってる人なら秒単位。

実物も紙も不要。頭の中のイメージを動かすだけ。

         

161218a

   

161218b

    

161218c

   

  

参考までに、8パズル関連の当サイトの記事も紹介しとこう。

2本目はややハイレベルで、基礎知識は不要だけど、大学

1、2年の内容が入ってる。

     

 「15パズル」の攻略法~8パズル、3パズルへの還元

 置換・互換と14-15パズルの不可能性

       ~3パズル&8パズルからの証明

    

       

     ☆        ☆        ☆

今日の最後は、絵が描かれてないし、1ピース足りないジクソー

パズル。緑の正方形の枠に、小さな正方形に近い15コの

ピースを入れた時、足りないピースの形は何か? 出場者は

秒速で、頭のイメージだけでイラストを描いてた。

  

昨日と同様、1枚だけ静止画キャプチャー(写メ)を掲載させて

頂こう。非営利の個人ブログで、番組レビューのための限定的

引用なので、著作権的に問題は生じないと考える。

   

161218d

   

   

     ☆        ☆        ☆

    

私には、これを頭の中だけで組み合わせるのは無理。それ

でも、足りないピースの形は書けるのだ。

   

15コのピースで、突起もくぼみもない真っ直ぐな辺の数を数え

ると、ちょうど16ある。ということは、これらが緑の枠と接する

部分で、それ以外の辺は、あるピースの突起と他のピースの

くぼみの組合せになってるはず。

    

15コのピースの突起は21個。くぼみは23個。ということは、

足りない1個のピースだけ見ると、突起がくぼみより2個多い

はず。

   

突起が2個、くぼみが0個のピースだと、真っ直ぐな辺が2つ

出来てしまうので不適。よって、足りないピースは、突起が

3個、くぼみが1個。イラストは次のようになる。

    

161218e

  

ちなみに、隣り合う2辺が共に真っ直ぐになってるピースが

4コあって、それらが緑の枠の四隅になる。ただ、その配列まで

は分からないから、この問題だと、すぐに隅に置けるのは1コ

だけ。あとの3コの配置は、そこから考える必要がある。

     

  

    ☆        ☆        ☆

これであと、気になる理数系の問題は、立体三目並べのみ。

これは場合分けが面倒だし、図を描きにくいので、しばらく時間

がかかると思う。できれば1週間以内にアップしたいけど、あま

り自信はない。

☆追記: 3日後に先手必勝法の記事をアップした。)

    

ただ、ルービックキューブと比べると遥かに単純で、別にコン

ピューターが必要な問題でもないので、遅くとも1ヶ月以内には

記事を書けると思う。おそらく、先手の人間必勝か引き分けの

ゲームだろうと思うけど、細かく調べてみないと分からない。

    

なお、今週計14343字となった。ではまた来週。。☆彡

    

                 (計 2654字)

      (追記 92字 ; 合計 2746字)

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単振動、ばね振り子、水平ばね2本~物理の問題と解き方5

問題文をブログに書き写すのが面倒で、なかなか進まない『物理重要

問題集』シリーズ、第5弾。今回も、数研出版が集めた受験問題を解説

してみよう。これまでの4本は次の通り。他にも物理カテゴリーの記事

は色々あるし、数学カテゴリーには多数の記事がある。

   

 等加速度直線運動、放物線、モンキー・ハンティング~物理1

 運動の法則、浮力、物体の連結と分離~物理2

 動滑車、摩擦力(静止・動)、バネの弾性力~物理3

 等速円運動、円すい振り子、万有引力と人工衛星~物理4

  

今回は第5章、単振動・単振り子(p.30~)のA問題から

3問。いつものように、式や説明などはすべて私が書いたもの。

元の問題集は、最後の数値など、最低限の事しか書いてない。

      

  

      ☆        ☆        ☆  

 43 (質点の単振動) 東京商船大

 

 次の文章の中の空欄(長方形)にあてはまる数値、またはグラフ

 を描け。ただし、数値は有効数字2桁まで求めよ。

   

  質量9kgの質点がx軸上を単振動している。x=1mの点

 Aをx軸の正の向きに通過した質点が、t=3sでx=3m

 の点Bに到達し、その後、向きをかえ、t=6sで点Aを

 x軸の負の向きに通過した。質点の速さは、点Aを通過する

 とき最大となり、点Bでは0であった。

   

 (1) この質点の運動について、時刻tと座標xの関係を表す

  グラフを、時刻t=0から9sまで、右図に描け。

 (2) 単振動しているとき、速さの最大値は振幅と角振動数

  (振動数に2πをかけたもの)の積であるから、点Aで質点

   がもつ運動エネルギーは     Jである。

 (3) この運動では、質点にはたらく力の大きさは点Aから

  質点までの距離に比例し、その比例定数は質量と角振

  動数を用いて表すことができる。時刻t=9sのとき、

  質点にはたらく力の大きさは     Nである。

   

   

     ☆        ☆        ☆

 解答(1)

161127c    

   

 (2)グラフのように、振幅(上下の触れ幅)は2m。

   また、周期は12sだから、

   (角振動数)=2π/(周期)

           =2π/12

           =π/6

   ∴ (点Aでの速さ)=(速さの最大値)

               =(振幅)×(角振動数)

               =2×(π/6)

               =π/3

   ∴ (点Aでの運動エネルギー)

        =(1/2)×(質量)×(速さ)²

        =(1/2)×9×(π/3)²

        =π²/2

        ≒9.86/2

        ≒4.9 (J) ・・・ 答 

   

 (3) (力)=-(質量)×(角振動数)²×(変位)

        =-9×(π/6)²×(-2)

        =π²/2

     ∴ (力の大きさ)≒4.9 (N) ・・・ 答

   

  

 (解説・感想)

  グラフの縦軸がx軸になっている点と、単振動の中心が

  原点ではなくx=1であることに注意。問題文の最初に

  時刻t=0sと書いてないのは意図的なものだろうが、

  おそらく気づかなかった受験生が多いと想像する。

  

  後は親切で簡単な基本問題で、(2)と(3)の計算式

  が同じである点も嬉しい。ただ、試験会場だと逆に、やや

  不安になる所かも。

 

  なお、「力」とは向きも考えた概念で、この問題の場合は

  直線運動だから、正負の符号があるもの。一方、「力の

  大きさ」とは、力の絶対値だから0以上で、符号なし。

   

   

     ☆        ☆        ☆

 46 (ばね振り子)  都立大 91年

 

 自然の長さL、ばね定数kの、重さを無視できるばね(つり巻き

 ばね)がある。 重力加速度の大きさをgとして、次の問いに答

 えよ。

  

 (1) 上端を固定し、下端に質量mのおもりをつるしたら、自

  然の長さから長さ x0 だけ伸びてつりあった。x0 を求めよ。

  

 (2) 次に、つりあいの位置から長さAだけばねを伸ばして

  静かにはなすと、おもりは単振動を行った。この振動で、

  ばねが自然の長さからxだけ伸びているときの、おもりの

  加速度aを、k、m、x、x0 を使って表せ。ただし、鉛直

  下向きを正の向きとする。また振動の周期Tはいくらか。

  

 (3) (2)の振動において、ばねが自然の長さからxだけ

  伸びているときの、ばねの弾性力の位置エネルギー

  Wと、おもりの重力の位置エネルギーUはいくらか。

  ただし、位置の原点は自然の長さの位置にとる。また、

  このときのおもりの運動エネルギーKを求めよ。解答

  にx0が現れたときには(1)で求めたx0を代入せよ。

   

   

     ☆        ☆        ☆

 解答(1) k x0 = mg   

      ∴ x0 = mg/k ・・・ 答

   

 (2) (加速度a)=(力)/(質量)

           =-k(x-x0)/m

           =k(x0-x)/m ・・・ 答

     (周期T)=2π√(m/k) ・・・ 答

  

 (3) (弾性エネルギーW)

       (1/2)kx² ・・・ 答

     (位置エネルギーU)=-mgx ・・・ 答

  

    長さx0の時、

    (力学的エネルギー)

      =(1/2)k(x0)²-mgx0

    長さxの時、

    (力学的エネルギー)

      =(1/2)kx²-mgx+K

   

    よって、力学的エネルキー保存則より、

    (1/2)k(x0)²-mgx0

        =(1/2)kx²-mgx+K

   

    x0=mg/kを代入して、Kについて解くと、

    K=(1/2)k(x0)²-mgx0

          -(1/2)kx²+mgx

     =(1/2)k(mg/k)²-mg(mg/k)

           -(1/2)kx²+mgx

     =mgx

      +(k/2){A²-x²-m²g²/k²} ・・・ 答

   

   

 (解説・感想

  丁寧な問題文と誘導で、出題者の実力を感じる。下の問題

  文と比べるとかなりの差がある。それはさておき、(3)の

  運動エネルギーだけが重要で、そこまでは誘導しながら、

  少しずつ点数を与えてるわけだ。

  

  最後の計算がやや面倒だが、保存則の式が書けてれば、

  ある程度以上の点数をもらえると思う。ちなみに、「振り子」

  とは普通、左右に揺れる物を指す言葉だが、「ばね振り子」

  の場合は上下の振動を指すようだ。

   

   

    ☆        ☆        ☆

 48 (2本のばねによる単振動)  千葉工大

  

 質量mの物体Aが、ばね定数がk1で自然長がL1の

 ばねS1と、ばね定数がk2で自然長がL2のばね

 S2に図のように結びつけられて摩擦のない水平面

 上に静止している。

  

 

161127d

   

 このとき、S1、S2は自然の長さの状態にあり、Aの

 位置をx軸の原点Oとし、S2側を正の向きとする。

 S1の左端とS2の右端は壁に固定されている。ばね

 の質量と空気の抵抗はないとして、次の問いに答えよ。

  

 〔1〕 Aに外力Fを加えてAを右方にaだけ変位させた。

  (1) S1がAに及ぼす力はいくらか。

  (2) S2がAに及ぼす力はいくらか。

  (3) Aに加えた外力Fはいくらか。

  (4) 外力FがAになした仕事はいくらか。

  

 〔2〕 〔1〕の状態から外力FをAから取り除いたら

    Aは単振動した。

  (5) Aが原点Oを通過するときのAの速さはいくらか。

  (6) Aの単振動の周期はいくらか。

  

   

    ☆        ☆        ☆

 解答〔1〕

  (1) -k1 a ・・・ 答

  (2) -k2 a ・・・ 答

  (3) (外力F)=-(上の2つの力の和)

           = (k1+k2)a ・・・ 答

  (4) (外力がなした仕事)

      =(ばねS1とS2が得た弾性エネルギーの和)

      =(1/2)(k1+k2)a² ・・・ 答

  

  〔2〕(5) (4)の仕事が、原点での運動エネルギー

      ∴ (1/2)(k1+k2)a² 

           =(1/2)m(速さ)² 

      ∴ (速さ)=a√(k1+k2)/m ・・・答

     (6) ばね定数 k1+k2 の1本のばねに

        よる単振動と考えられるから、公式より、

        (周期)=2π√{m/(k1+k2)} ・・・答

   

   

 (解説・感想)

  ばねが2本あることだけがポイント。簡単な誘導も付い

  てるが、解いた経験がほとんど無い受験生だと、考え

  が上手くまとまらないかも知れない。

  

  前の問題もそうだが、もちろん実際には、徐々に振幅

  が縮まる減衰振動となる。ばねとおもりが失った力学

  的エネルギーは、天井や壁の振動になったり、熱エネ

  ルギーに変換されるはず。鉛直方向で重いおもりを

  振動させると、ばね自体も少し伸びてしまって、自然の

  長さやバネ定数が変わるだろう。

   

なお今週は計16326字で終了。ではまた来週。。☆彡

    

                     (計 3061字)

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満月の大きさと楕円軌道の変化~月・地球・太陽の万有引力による三体問題

昨日、2016年11月14日は、「スーパームーン」が見れるという

ことで、メディアが多少盛り上がってた。

   

国立天文台HP(暦計算室)は、スーパームーンにはっきりした定義は

ないと書いてるが、要するに「超・月」。「超」大きく見える満「月」という

こと。1年ちょっと経つ度に現れる大きな満月か、その中でも数十年

に1回くらいしかない大きさの満月か、どちらかを表してるわけだろう。

        

どちらにせよ、それほど変わらないようで、小さい時と比べて大きさ

が14%増えて、明るさが30%増えるというお話。

   

(面積比)=(相似比)の2乗

∴ (面積の倍率)=1.14倍×1.14倍=1.30倍

明るさは面積に比例するので、1.30倍。つまり30%増。

    

という単純な計算だろうか。この記事では明るさ問題にはこだわらない。

        

   

     ☆        ☆        ☆

この現象に関する天文学的説明を、国立天文台HPで細かく読むと、

なかなか納得できない点が色々あった。昨夜は、本物の月の代わり

に、各種の解説図の月を延々と眺めることになったのだ。

         

おかげで、それなりに理解できたし、国立天文台の説明が多少おかし

いことにも気付いた。もちろん、一般市民向けの説明として、専門家が

分かりやすさを心がけた結果だろうが、数学好きの私から見ると、間

違いと言っていいような部分もあるし、論理的に飛躍した部分もある。

  

例えば、離心率eが大きくなるから、最近距離a(1-e)が小さ

くなるとか。楕円軌道の長半径aも同時に大きくなると、そんなことは

必ずしも言えないし、実際、aが大きくなってる図を書いてたのだ。

    

既に早くも流行遅れだし、数学的・物理学的にマニアックな話にもな

るが、個人的考察を簡単にまとめとこう。図はすべて、天文台のイラ

ストを加工して、引用させていただいた。

      

   

      ☆        ☆        ☆

最初に、月、地球、太陽の位置関係と満月について、確認しとこう。

小学校の理科の話に近いが、満月が「望」、反対の新月が「朔」(さく)

と呼ばれる点に注意。

   

161115a

    

下側のピンクの丸印が、満月、つまり「望」。太陽、地球、月の順に、

一直線に並んだ時に生じる。太陽に照らされてる月の表面全体を、

地球から見てるわけだ。以下では、この満月=望に焦点を絞り込

んで考える。

   

まず、上図を90度回転して、以下の話に合わせとこう。月の軌道の

右端、ピンクの丸印を付けてるのが満月、つまり「望」だ。

     

161115b

   

   

     ☆        ☆        ☆

ここまで、月が地球中心に円運動してるかのように説明してるが、

より正確には楕円運動だ。

   

下図は、太陽を回る惑星(地球など)の軌道だが、地球と月の関係も

こんな感じになる。太陽は、楕円の焦点と呼ばれる位置にある。

     

161115c_2

  

右端のピンクの丸印は、地球などの惑星が最も太陽に近づく「近日点」。

お日様に近い点という意味だ。

   

だから、月の楕円軌道で最も地球に近づく時なら、地球に近い点という

意味で「近地点」と呼ばれる。また、地球はこの楕円の焦点あたりに位

置する。要するに、中心から少しズレた場所だ。

     

   

      ☆        ☆        ☆ 

次に、太陽を回る地球の公転と、地球を回る月の公転を合体させる。

ここでは、地球の軌道はほぼ円、月の軌道はかなり極端な楕円として

描いてる。地球の軌道の方が円に近いので、分かりやすく対比を付け

てるわけだ。青丸が地球。ピンクの丸印が、近地点での満月。ここでは

点線は気にしない。

     

161115d_3   

   

    

       

      ☆        ☆        ☆

地球は1年で太陽の周りを公転するから、大まかに言うと、1年に

1回くらいピンク色の丸印の位置に月が来て、近地点だから大きな

満月=月になる。

  

正確には、近地点と満月は時間的に少しズレるようで、例えば今回

の場合だと、近地点の2時間半後が満月。まあ、月の見え方というの

は巨大なスケールの話だし、細かい誤差は気にしないということか。

    

あと、実は月の楕円軌道自体も回転する。イメージがつかめなけれ

ば、こちらに簡単なアニメがある。地球の周りを8.85年で1回転。

その他、複雑な理由が重なって、近地点の満月は約410日に1回

くらいになるらしい。この日数を、天文台は「約14朔望月」と書いてる。

    

     

     ☆        ☆        ☆

いずれにせよ、1年ちょっとで大きな満月が見れるわけだが、その大き

さも微妙に変化するらしい。月と地球の中心の距離(地心距離)で、

数km~数十kmほど。

  

昨日のスーパームーンは、その意味で68年ぶりの近さ(つまり大きさ)

だったが、天文台はかなり冷めた書き方をしてた。そんな僅かな差より、

真上で月を見るか、地平線の辺りで見るかの違いの方が遥かに大きい

からだ。

  

言われてみれば、真上に見る時の方が、地球の半径の長さ6400

kmくらい近いことになる。ただし、心理的効果によって、真上の月は

逆に小さく感じてしまい、地平線の辺りの方が大きく見えるのが普通。

私も何度も試したが、錯覚だと教えられても、そうとしか見えない。

    

    

      ☆        ☆        ☆

最後に、遥かに難しい話に向かおう。ここで私は悩むことになった。

  

近地点の満月では、特殊な2つの効果も加わって、より近くに満月が

来るというのだ。「出差」(しゅっさと読む)と、「二均差」。

左下の「出差」の図については、この記事の最後で再び考え直す。

          

161115e

    

「出差は太陽の影響で楕円がゆがむ効果」。「二均差は太陽の

影響で軌道のカーブが変化する効果」と書かれてるが、何がどう

違うのか、どうして分けるのか、なかなか分からなかった。

   

   

     ☆        ☆        ☆   

英語のウィキペディアなども読みながら考えた結果、おそらく原理的に

はこうゆう事だと思う。

   

本当は、月と地球と太陽、三つの天体が万有引力によって非常に複雑

な運動をするのであって、知る人ぞ知る、三体問題。より一般的に言う

と、「多体問題」。万有引力の3本の方程式から、キレイに軌道の式を

導くことはできない。そもそも、楕円軌道とか焦点という話も、正確には

近似に過ぎない。天体は無数。質量が重心の一点にあるわけでもない。

       

だから、シンプルな三体問題に絞り込んで、数値解析のような近似計

算を使うと共に、実際の計測で補うのだと想像する。

    

その一方で、三体問題を二体と考える近似的やり方も、ニュートン以前

からある。まず、太陽と月、太陽と地球の関係を考えて、それらを総合

するのが出差。たとえば、月の方が地球よりも太陽に強く引き付けられ

るから、月と地球の距離が変わるとか。

             

また、地球と月の関係を基本にして、それに対する太陽の僅かな影響

を考えるのが、二均差。一般的には、「摂動」と呼ばれる補正的な項目。

  

要するに、出差も二均差も、昔ながらの近似的で実用的な説明だから、

物理学的・数学的な違いがハッキリしないのだと思う。近地点の満月

の周期が約410日(14朔望月)になることについて、定量的な

説明が見当たらないのも、そうした背景によるものだと想像する。。

    

    

      ☆        ☆        ☆ 

最後に、天文台HPの図の問題点について、一言だけ書いとこう。

出差の図の一部分だけ再掲する。

   

161115f

     

この楕円だと、ゆがみ過ぎてて、地球にもっとも近い点は上と下に

あるように見えてしまう。

  

それは強調表現としても、この点線の軌道だと、右端にある近地点

の満月は、実線の軌道より離れてしまってる。これでは、「出差に

より・・・・・・最近距離は小さくなり」などの説明と矛盾してしまう。

   

おそらく、正しくは、点線を次のピンク色のように書くべきだろう。

  

161115g

    

これなら確かに、右端の近地点の満月が、黒い実線よりも地球

(青丸)に近づいてる。その後の説明文とつじつまが合うのだ。

    

いずれまた、データや数式をまじえて、もっと細かい話を書きたいと

思ってる。今日のところは、この辺で。。☆彡

        

                      (計 3055字)

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