放射性ラジウムその他と崩壊系列&37度微熱ラン

(13日) RUN 18km,1時間22分26秒,平均心拍151

    

福島の原発事故から7ヶ月経過。今頃になって、東京の区道で高い放射

線量が検出された事件の原因は、瓶詰めの放射性物質だったらしい。原

発とか、いわゆる「ホットスポット」とか無関係で、単なる危険な「違法廃棄

事件ってことね。「保管」には見えない。警察の捜査って話がニュースに見

当たらないけど、明らかな犯罪。誰なのか、憶測はさておき、ぜひ犯人を

突き止めて欲しいもんだ。どうせ単純な「過失」扱いで、不起訴だろうけど。

      

ところで報道では、「放射性ラジウム」とか「ラジウム(Ra)226」っていう名

前ばかりが強調されて、同時に検出された「鉛(Pb)214」や「ビスマス(Bi)

214」とかの放射性物質は影が薄い。これには、素人判断で、2つの理由

が「想像」できる。

   

まず、半減期を見ると、ラジウム226が1600年(!)、鉛214が26.8分、

ビスマス214が19.9分。要するに、ラジウムだけ安定してるから、量が

多くて検出されやすいだろう(線量測定以外の方法なら)。

    

追記: 日経HPでは、ビスマスと鉛の検出からラジウムを推定したような

     書き方になってる。という事は、β線の測定をしたのかな。ちなみ

     に時事通信の報道は、そうゆう書き方にはなってない。)

              

もう一つは、「崩壊系列」の順序。それらが含まれるのは「ウラン系列」と呼

ばれる崩壊系列で、ウラン(U)238を起点とする崩壊の途中でラジウム

226が生じ、α(アルファ)崩壊3回を経て鉛214になり、β(ベータ)崩壊

でビスマス214になり、これまたβ崩壊する。つまり全体の崩壊の流れは、

ラジウム226 → ・・・ → 鉛214 → ビスマス214」だから、原因としては

先にあるラジウムを挙げやすいと思う。玉突き追突事故で、最初に追突し

た自動車みたいなもんだ。

    

ちなみに、α崩壊で放射されるα粒子透過力が弱いので、ビンどころか

箱さえ透過しないはず。鉛214やビスマス214のβ崩壊で放射されるβ

粒子(電子)も、ビンでかなり遮蔽できると思うけど、透過した分だけでも相

当な影響力になるわけか。当然、専用の特殊なビンを使ってると思うけど。

案外、ビンが割れてたとか、フタが開いてたとか。文科省は一応、一部は

鉛の容器に入れて金属の缶に封入したそうだ。系列の途中に、透過力の

高いγ(ガンマ)線を出す変化が絡んでるのかも知れない。

   

一応オマケとして、高校物理の復習もしとこう。α崩壊では陽子2個と中性

子2個が減るから、原子番号(陽子数)が2だけ減って、質量数(陽子数+

中性子数)が4減る(2+2)。β崩壊では、中性子1個が減って陽子1個が

増えるから、原子番号が1増えて、質量数は変わらない(-1+1=0)。

        

したがって、ラジウム226からビスマス214までの変化は次の通り。ちな

みに、ビスマス214がβ崩壊した後はポロニウム214になる。最終的には

鉛206で安定。放射性物質でなくなるまでには、長い道のりがあるわけだ。

質量数は常に「4の倍数+2」だから、「4n+2系列」とも呼ばれる

      

                  原子番号   質量数

    ラジウム226       88      226 

   ラドン(Rn)222      86      222

   ポロニウム(Po)218   84      218

    鉛214           82      214

   ビスマス214        83      214

     

   

なお、話題のセシウム(Cs)137は、β崩壊でほぼバリウム(Ba)137mに

なり、更に半減期2.55分でバリウム137になって安定セシウム134

β崩壊でバリウム134になって安定ヨウ素( I )131はβ崩壊とγ崩壊の

連続でキセノン(Xe)131になって安定。いずれの流れも、崩壊系列とは呼

ばれない(もちろん原子核が割れる「核分裂」でもない)。

        

まあでも、原発事故で話題になる放射性物質というのは、何かから出来て、

何かになるのが普通だから、前後を合わせると、実質的には系列を成して

るわけだ。高校生や大学生が、こうゆう独自の見方をテストで書くと、バツか

減点されそうだから、念のため♪ 教科書や参考書の通りの答が、正解と

されるのだ。卒業後はもう、何でもあり。ただし、周囲からの突っ込みや現

実世界でのアクシデントに気を付けつつ、自己責任ってことで。。

      

         

P.S. 朝日新聞14日・朝刊によると、2月まで民家にいた女性に、放射

     線障害は見られないとのこと。僅かサンプル数1とはいえ、原発

     容認派や、放射線の影響を低く見る人達が、頷いてるかも。相当

     な量の外部被曝だと思うけど、文科省は計算しないだろうな。放射

     能が何ベクレルかも、今のところ発表されてない。誰か研究者が

     調べて、公表すればいいのに。。    

      

P.S.2 ラジウムの瓶には、現存しない「日本夜光塗料製造所」の名前

      があったそうだ。早速ネットで調べると、なかなか有益な情報が

      見当たらないが、1929年に夜光塗料の先駆者・藤木顕文が

      東京で設立した株式会社とのこと。ドイツから輸入した塗料

      「エラジウム」という名で販売。「ERADIUM」だから、ひょっとす

      ると「いいラジウム」という意味のダジャレなのかも♪ 

      以上、情報は、「国内唯一の夜光塗料メーカー」と称する根本

      特殊化学株式会社HPより。。

         

cf. 外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

   放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

   ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響 

                      

          

         ☆            ☆           ☆

最後に、昨夜の走りについて。やたら熱くて、ノドも渇くから、今まで避けて

体温測定を渋々と実行。高い体温を見ると気力が失せるから、普段は

避けてるのだ。現実逃避とか現実否認というのは、必ずしも悪いわけじゃ

ない。減量の辛さを聞かれたボクサーが「大丈夫」と答えるのは、ありがち

なことだろう。ただ、今夜は妙に熱っぽかったし、微熱がかなり長引いてる

気もするから、試しに測ってみたわけ。

   

電子式なのに、しっかり10分ワキに挟んで取り出すと、「37.0」度。う~

ん、36.8度か36.9度だと思ったけどな。いや、この僅かな違いは大き

いのだ。37.2度とかになると、もう寒気がして来る。ま、今も暑いのに寒

いけどネ (^^ゞ

    

とはいえ、足はそれほど重くないし、ノドの腫れも治まってるから、少しス

ピードを出すことに決定。公園2周目から口呼吸でハーハーゼーゼー。そ

のくせ、たかが1km4分半ペースを切るのが精一杯だったけど、まあ心肺

に負荷をかけるトレーニングと考えれば、そこそこ意味はあった。トータル

では1km4分35秒ペース。う~ん、先日のハーフ21.1kmと同レベル。

イマイチか、イマニか。。左足ふくらはぎは相変わらず痛いけど、右膝はか

なり回復した感じだ。

       

今夜はたぶん、時間が無くて走れないし、明日も土曜出勤だから苦しいか

も。ま、その場合は日曜日に頑張るとしよう・・・とか言いつつ、夜はドラマ

『南極大陸』を見なきゃいけないのか。義務って所が笑えるかも (^^ゞ 

合マニアック・ブロガーというものは大変なのだ。放射線の話もしなきゃい

けないし、キムタク=木村拓哉ファンへの気遣いもしなきゃいけない♪ 走

るだけなら超~ラクなのになぁ・・・とボヤいた所で、それではまた明日 ☆彡

       

          

  往路(2.45km)  12分31秒    心拍130 

  1周(2.14km)  10分10秒       147         

  2周           9分43秒       152     

  3周           9分34秒       157

  4周           9分29秒       158

  5周           9分44秒       157

  6周           9分31秒       159

  7周(0.26km)   1分18秒       159

  復路          10分28秒       155     

計 18km  1時間22分26秒  心拍平均151 最大165(ゴール前)

              

                                 (計 3078文字)

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津波の物理学~浅い海、水面波の波動方程式と速度

PCデータのバックアップをするために、外付けHDDの周囲を片付けてたら、

たまたま津波の簡単な説明が目に留まった。問題形式で、与えられた式3

本から波動方程式を導き、津波の速度を求めるというもの。解説文は無い

し、私も流体力学の計算は久々だったから、まず自力で解くのに手間取っ

た後、参考書を引っ張り出して来て、一応の理解に到達した。

    

まったく予定外のことだけど、折角だから記事にまとめとこう。使った参考

は標準的なもので、恒藤敏彦弾性体と流体』(岩波書店)。参照箇所は

主として、p.63~70(連続の方程式とオイラー方程式)と、p.158~160

(水面の波; 浅い場合)だ。ただし、私の判断や計算で、大幅に加筆修正

してある(重要な式は元のまま)。また、時間の余裕が無いので、図は手書

きで済ませておいた。悪しからずご了承を。。

     

なお、08年1月に書いた福山雅治『ガリレオ』関連の記事は、以下の議論

と密接に関係しており、数学的には、以前の記事の方がややレベルが高い。

手書きだらけで読みにくいのは恐縮だが、一応リンクを付けとこう。

    

  cf. 『ガリレオ』第5話、波動方程式の導出と一般解

     

         

          ☆          ☆          ☆

さて、津波というのは、沖合での波長(隣り合った波の間隔)が100kmと

非常に長く高さはたかが数十mなので、物理学的には、「浅い海」で

「水面」波として扱われる。海底までの水深は数kmレベルだから、波長

に比べると浅い。しかし、津波の高さはこれより遥かに低いから、水面だ

けの波として考えられるのだ。

    

既にこれだけでも、非常に大まかな「近似」が行われている(この場合は

グループ分け)。数学と比べた時、物理の大きな特徴は、この種の大まか

な近似を多用すること。その近似が妥当かどうかは、比較的気にしないが、

必要なら数学を援用するし、近似で求めた結果を観測その他と比べてチェッ

クすることになる。

    

水の波のような流体の運動を扱う時の基本は2つ。まず、「連続の方程式

とか「連続の式」などと呼ばれる法則で、簡単に言うと、「ある領域における

ものの増加=流入」ということだ。何かが増えるとは、それが流入したこと。

逆に、何かが減るとは、流出したことだ。増減には必ず流れがある。

       

これをまず、(増加)=(流入)と書いて、変形すると

        (増加)-(流入)=0。

流入と流出は単なる符号(プラス・マイナス)の違いと考えられるから、

        (増加)+(流出)=0

  

こう書き直すと、左辺の和が常に0に保存されてる形になってるから、大ま

かに「保存則」とも言われる。例えば、道で100円拾ったとしよう。すると手

持ちの増加は100円。また、流「入」した金は「+100円」だから、流「出」

した金は「-100円」。この時、増加+流出=100円+(-100円)=0。

こうゆう基本的な話なのだ。

     

           

          ☆          ☆          ☆

この話を津波に当てはめてみよう。図のx方向に進行し、z方向に上下

110915b

  る波を考える。

  y方向(図に垂直

  な方向)には一様

  な波とする。つま

  り、図の奥側や手

  前側にも、全く同

  じ形の波が続いて

  るという意味で、

  実際に津波の映像

  を、進行方向の真

  横から見ても、ほ

ぼそんな感じのはずだ。

               

波の高さは、x(水平方向の位置)とt(時間)の関数h(x,t)と考えられる。

要するに、岸からどれだけ離れてて、時刻は何時何分何秒か、この2つの

条件で波の高さは決定するという話なのだ。

           

110915c

  今、図の赤くて非

  常に薄い部分に注

  目しよう(厚さdx、

  奥行きw、高さは

  h₀+h )。水の

  度、つまり単位体

  積当たりの質量を

  ρ(ロー)とすると、

   

   (赤い部分の水の質量)=(密度)× (体積)

                  =  ρ ×(h₀+h) w dx

よって、(単位時間あたりの質量の増加)=ρ w dx ・(∂h/∂t)

         

一方、水のx方向の運動速度Vx(x,t)とすると、高さは約h₀と近似して、

  (単位時間あたりに流出した水の質量)

          = ρ×{(右側面からの流出)-(左側面からの流入)}

          ≒ ρ { Vx(x+dx,t)h₀ w-Vx(x,t)h₀ w }

          = ρ { Vx(x+dx,t)-Vx(x,t) } h₀ w

          ≒ ρ(∂Vx / ∂x)dx・h₀ w     (一次近似を利用)

   

よって、連続の方程式より、単位時間当たりの増加+流出はゼロだから、

    ρ w dx ・(∂h / ∂t)+ρ(∂Vx / ∂x)dx・h₀ w = 0

   ∴ ∂h/∂t + h₀ (∂Vx / ∂x) = 0   

     

両辺を t で偏微分して、∂²h/∂t² +h₀ ∂(∂Vx/∂x)/∂t=0

   ∴ ∂²h/∂t² +h₀ ∂(∂Vx/∂t)/∂x=0 ・・・・・・①

     

     

           ☆          ☆          ☆

一方、連続の法則と並ぶ流体力学の基本は、「運動の法則」とも呼ばれる

オイラー方程式。詳しい説明は省略するが、要するにニュートンの運動方

程式、「力=質量×加速度」の応用だ。

    

x方向とz方向だけ考え、圧力P(x,z,t)、微小体積dV、重力加速度gとして、

    -(∂P/∂x) dV = ρdV (∂Vx / ∂t)

    -(∂P/∂z) dV-ρg dV = ρdV (∂Vz/∂t)  

     

 ∴  -∂P/∂x = ρ (∂Vx / ∂t) ・・・・・・②

    -(∂P/∂z) -ρg = ρ(∂Vz/∂t) ・・・・・・③

    

                 

いま、津波は主にx方向に動くから、③の右辺の∂Vz/∂t (z方向の速

度変化)は無視してゼロとすると、

    -(∂P/∂z) -ρg = ρ×0

 ∴  ∂P/∂z = -ρg

z で積分して、P(x,z,t)=-ρg z+f(x,t) ・・・・・・④

                   (f は x と t の関数で、z については定数)

   

ここで、「境界条件」として、z=h(波の一番上)では、水圧P=大気圧P₀

と考える(表面張力は無視)。すると④より、

    P(x,h,t)=-ρg h+f(x,t)=P₀

 ∴ f (x,t)=P₀+ρgh

④に代入して 、f を消すと、P=-ρgz+P₀+ρgh

    

これを②に代入、Pを消して計算すると、

   -ρg ∂h/∂x = ρ ∂Vx/∂t

∴ ∂Vx/∂t =-g∂h/∂x ・・・・・・⑤  (Vの話をhの話で表す操作)

    

⑤を①に代入してVを消すと、

   ∂²h/∂t² +h₀ ∂(-g∂h/∂x)/∂x=0

 ∴ ∂²h/∂t² -gh₀ ∂²h/∂x² =0

 ∴ ∂²h/∂x² -(1/gh₀) ∂²h/∂t² =0 ・・・・・・⑥

    

        

⑥は非常に有名な、一次元波動方程式の形である。一次元とは、波の高

さ h が x (と時間t )だけで変化して、y や z とは関係ないという意味だ。こ

の波動方程式で表される波は、x方向の速度「√gh₀」を持つことが知られて

いる(例のガリレオ記事における解を参照)。やや意外かも知れないが、水

深 h₀ が深い方が、波は速いのだ。

    

従って、遥か沖、水深の深い太平洋で発生した津波は、超高速で岸に向かっ

て来る。太平洋の平均の水深を約4000mとすると、

    gh₀ = 9.8×4000≒40000 (m²/s²)

 ∴ √gh₀ = √40000 = 200 (m/s)

   

つまり、秒速200mだから、3600倍して、時速720000m=720km

新幹線の3倍程度のスピードで、この値がウィキペディアに掲載されている。

     

     

         ☆          ☆          ☆

なお、参考書のコラム「コーヒーブレイク」には、面白い余談(?)もある。

波が岸(つまり浅瀬)に押し寄せるに連れて、スピードは下がり、波長が縮

まって、高さは増す。この時、もはや「水面波」ではなくなるから、上で使っ

たような比較的簡単な議論は出来ないが、そこを無理して使ってみる。

         

すると、の山の一番上は、波の高さの分だけ、下の方より「水深」が増

から、スピードが大きいことになる。だから、葛飾北斎の浮世絵みたい

110915

 に、波は頭から

 崩れるのだ。。

 ちなみに図は、

 ウィキメディア・

 コモンズから拝

 借したもので、

 富嶽三十六景・

 「神奈川沖 浪

 裏」。昔は、富

士山の5倍の大波もあったようだ♪

             

今のところ、私には、この大まかな議論が正しいのかどうか分からない。

その筆者も、「無理をして」、「・・・であろう」と推測してるに過ぎないのだ。

まあでも、面白くて、一応の筋が通っていて、他に有力な代案も見当たら

ないので、しばらくはそう思っておくことにしよう。

       

波動方程式を導く考えも含めて、物理学的説明というものは一般に、大な

り小なり、そういった性格のものだと思ってる。それで「通常」はかなり上手

く行くのだ。「想定外」の事態は別として。。では、今日はこの辺で。。☆彡

            

    

cf. 震災後の青空文庫で人気、寺田寅彦『津浪と人間』

   津波で死んだ妻の幻への情愛~柳田国男『遠野物語』第99話

            

                                 (計 3384文字)

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外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

時間に追われる中、前から引き延ばしにしたままの放射線記事を、軽く

き上げておこう。原発事故から5ヶ月半経っても需要の多い話、ベクレルと

シーベルトの関係だ。

    

この問題については、3月半ばにアップしたロングセラー記事、「シーベルト、

グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について」で扱って以降も、度々

言及して来たが、ベクレル(放射能)とシーベルト(放射線量、正確には実

効線量)の「物理的な関係式」(吸入や飲食を除く)については、一度も

いてなかった。と言うのも、今の日本の状況だと、あまり実用的な話では

ないからだ。実際、マスメディアで正確に報じられることも(ほとんど)ない。

              

たとえば、当サイトへの検索アクセスを見てると、「○○ベクレルは何シーベ

ルトか?」といった質問文をよく見かける。これが、「○○ベクレルの放射性

物質を体内に取り込むと何シーベルトの『内部』被曝なのか」という意味なら、

かなり実用的な話で、もちろん当サイトでも度々書いて来た。身体の内部

で、長時間、至近距離から放射線を浴びることが避けられないからこそ、

重要な問題なのだ。

                 

例えば、Cs137(質量数137のセシウム)なら、関係式は次の通り。

       

 Bq(ベクレル数)×0.013(実効線量係数)=μSv(マイクロシーベルト)

    

ただし、こうして求めたシーベルトは、成人飲食した場合の50年分

被曝量(経口摂取による預託実効線量)で、子供だと別だし(年齢に応じて

不規則な変化)、1年分なら少し減る(以前のセシウム牛肉の記事を参照)。

ベクレルに掛け合わせる実効線量係数は、ヨウ素131なら0.022セシ

ウム134なら0.019が、現在よく使われてる数字だ(別の説については、

以前のシーベルト記事参照)。

   

                 

         ☆           ☆          ☆

それに対して、「○○ベクレルは何シーベルトか」という質問が『外部』被曝

に関するものなら、多くの市民にとって、ほとんど実用性はない。これはた

とえば、セシウム牛肉の「売り場」を通り過ぎるとどれだけの放射線を浴

びるか、というような話で、あまりに小さい値だからだ。そうでなければ、テ

レビでいわゆる「ホットスポット」(空間線量が異常に高い場所)の測定な

ど、気軽にするはずはない。

     

ただ、原発事故の現場処理の作業者とか、福島県の一部地域の住民に

とっては、小さい値とは限らないし、純粋に物理的・科学的な興味を持つ

人もいるだろう。あるいは、一部には、福島から来た人や物に近づくと危

ないような気がしてる人もいるようだ。心情的な側面もあるだろうが、

確な知識があれば、そういった誤解や偏見を持つこともないと思う。

    

そこで、以下では、信頼できる公の文書を参照して、外部被曝における

ベクレルとシーベルトの関係を解説し、具体的に計算してみよう。ポイン

は、放射性物質との距離、接近時間遮蔽物(普通は空気)、これら3

つの要素だ。いわゆる距離の「逆二乗法則」、たとえば距離が3倍にな

れば線量は9分の1になるといった話を、厳密に定式化したものだと言っ

てもいいだろう。ちなみに逆2乗法則の基本的な話については、3月に

既に記事をアップしてある。

              

     

         ☆           ☆         ☆  

出典は、IAEA(国際原子力機関)2000年の文書、「放射線緊急事

態時の評価および対応のための一般的手順」(Generic Procedures

for Assessment and Response during Radiological Emergency)。この

日本語訳が、国の唯一の研究機関とされる放射線医学総合研究所

よって、pdfファイルで公開されている。英語原文も簡単にダウンロード

可能だが、以下では基本的に邦訳を使用し、英語原文は補助的に示

すことにしよう。

              

全185ページの本格的文書の中盤、81ページから始まる「セクション

E 線量評価」の冒頭は、総実効線量を求める簡単な足し算になってる。

邦訳に続いて、参考までに原文も挿入しておこう。まさか著作権を問われ

ることはないと確信している。

      

110826a

     

110826a2

      

    

要するに、全放射線量=外部被曝+内部被曝(呼吸&飲食)という当た

り前の話だ。ここから、「外部放射線からの実効線量」(つまり外部被曝)

を求める話へと移行する。もっとも基本的な、「点状線源」(狭い空間に集

まった放射性物質)の場合、その関係式は、次の通りだ。

    

110826b

    

110826b2

      

これを見ると、線量ベクレル数(A)や被曝時間(T)に比例し、距離(X)

の2乗に反比例してるのが分かるだろう。表E1の換算係数というのは、

Cs137の場合、6.2×(10の-8乗)。Cs134なら、1.6×(10の

-7乗)、I (ヨウ素)131なら、3.9×(10の-8乗)だ。

         

また、「半価層」とは、線量を半分(0.5)にしてくれるような遮蔽物の厚み

のことで、物の種類によって異なるが、表E2で「大気」の項目を見ると、

Cs137なら0(ゼロ)とされている。これは0.99cm未満という意味だから、

多めに1.0としとけば十分だ。式の右上、「0.5」の部分は、遮蔽の効果

を示している。例えば半価層の3倍の「遮蔽厚」の遮蔽物があれば、0.5

の3乗倍、つまり0.125倍(=1/8)まで線量が減ることを示すわけだ。

         

            

          ☆          ☆          ☆ 

では最後に、具体的な外部被曝の実効線量を計算してみよう。4000ベ

クレル(=4kBq)の放射能を持つ牛肉から1m(=100cm)の場所に、

6分(=0.1時間)いたとすると、上の公式を用いて、次のように計算で

きる。公式の指定に合わせた単位の取り方に、注意して頂きたい。

       

110826c2

    

これは要するに、ほとんどゼロということだ。この計算で大きい役割を果た

してるのは遮蔽の部分で、これを考え合わせるなら、線量は距離の逆2乗

よりも更に小さいことになる。ただし、これについては元の文書に、「遮蔽

は考慮できるが過小評価になるかも知れない」といった内容の話や、「

蔽を無視するためには遮蔽厚をゼロに設定する」という文も書かれてる。

        

そこで、遮蔽を無視して計算し直すと、2.5×(10の-5乗)μSv

つまり、0.000025マイクロシーベルトとなって、ほんの僅かに意味の

ある数字となる。とはいえ、セシウム牛肉を大量に取扱った業者でさえ、

この10万倍程度の被曝だろうから、ほとんど実害は無いはずだ。

         

なお、原発の事故現場では、放射性物質が空気中(つまり身体のすぐ近

く)に大量に浮遊している可能性があるので、距離遮蔽厚ゼロに近

づくし、ベクレル数桁違いに上がる。すると、実効線量は数ミリ~数百

ミリシーベルトの危険域にまで達してしまうわけだ。もちろん、外部被曝以

外に、吸入による内部被曝も相当あるだろう。したがって、高性能な防護

服(つまり遮蔽物)に身をつつみ、時間を短く制限することになる。

         

      

          ☆          ☆         ☆    

「ベクレル 危険度」とか、「ベクレル 危険値」といった感じの検索アクセ

スがよくあるが、ベクレルの値だけでは、危険かどうか分からない。放射

物質の種類、距離、時間、遮蔽物に応じて、個別に計算・判断する必

要があるのだ。放射線の話は、きわめて定量的なものであって、しかも

計算の多くは単純な算数レベル。今こそ、目を背けず、みんなが正面か

ら向き合うべき事だろう。

      

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

      

     

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学的・生物学的半減期

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  被災地の被害が深刻とされる、「風評」の意味とは・・

  「想定外」という言葉の考察&リハビリラン2日目

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  原発事故はみんなが無責任、だけどね・・

                    ~東電社員の息子・ゆうだい君への応答

  震災後の青空文庫で人気、寺田寅彦『津浪と人間』  

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  久々に涼しい1日&放射線量の「ホットスポット」など

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  津波の物理学~浅い海、水面波の波動方程式と速度

  放射性ラジウムその他と崩壊系列&37度微熱ラン

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  放射線被曝のがんリスクを帳消しにする運動量の計算など

  福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推定(全国、年代・経路別)

     

                                 (計 3780文字)

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放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

これから書く内容は、かなり前から準備が出来てたけど、数式の入力に時

間がかかるから、ずっと先延ばしにしてたものだ♪ 今、自転車その他に

時間をかけてるので、Wordで長い数式を入力して微調整する気にはなれ

ない。そこで、とりあえず手書きでアップしとこう。後で余裕が出来たら、ワー

ドで打ち直すかも知れない。

   

 (☆追記: さっそく翌日、Word 入力への変更を実施。)

         

大震災以降、ウチでは原発・放射線関連の記事を多数アップして来たけど、

まだ書けてない話も沢山ある。今日アップするのは、分かりやすくまとめるな

ら、放射性物質の半減期(物理学的)と質量に関する解説だ。主要な部分は、

何も見ずに自分で導いて解いたが、念のために色々とチェックはしてある。

         

110818b

 例えば、『現代物理学小事典』(講談社)、

 『第1種放射線取扱主任者試験 徹底研

 究』(オーム社)、『改訂版 高等学校 物

 理ⅠB (教科書)』(数研出版)だ。すべ

 て個人的な所有物なので、証拠として写

 真を小さく載せとこう。他にも、参考書と

 か英語版ウィキペディアとか見ている。

     

110818a

 放射線関連の話について、今現在まず理

 解しとくべき事は、ベクレルとシーベルト

 ろう。ウチでも早くから色々と書いてるけど、

 一般人にとっては、「ベクレル」の方がより

 奇妙な言葉=概念だと思う。

 

 ありがちな説明だと、放射能(=放射線を

出す性質)の単位ということになってるけど、実際にはもっと単純に、放射

性物質の量を示す目安として使われてる。それなら、どうして「kg」や「g」

といった質量(いわゆる重さ)の単位を使わないのだろうか。

    

110818c

  おそらくそれは、質量よりも放射能で表

  す方が実用的だからだろう。何 g ある

  のかという事より、どれだけの放射線

  を出すのか。これが問題だから、1秒

  に1回、放射性崩壊によって放射線を

  出す性質を1ベクレルと呼ぶわけだ。

  ちなみに、ベクレル(Becquerel)とは

  放射能の発見者とされるフランスの

  科学者の名前で、1903年、有名

なキュリー夫妻と共に、ノーベル物理学賞を受賞している。

    

             

         ☆           ☆          ☆

さて、半減期と質量とベクレルの関係だけなら、ほとんど「算数」のレベル

で済んでしまう。それだと、簡単過ぎて私も退屈だし、数学系の常連読者

の方々も、パスする人が多いだろう♪ ブロガーとして興味深いことに、数

学系の読者は、物理系の記事をパスすることが目立つのだ。アクセス解

析から、すぐに読みとれる。

   

そこで、以下ではまず、壊変定数(or 崩壊定数 : decay constant)と呼ば

れるものを用いて、微分方程式を導入して解く。次に、その解を、壊変定数

の代わりに半減期を用いて書き直し、最後に、与えられたベクレル数から、

元の放射性物質の質量を計算してみよう。

   

物理学史の正確な流れをまだチェック出来てないが、おそらく話の始まり

は、「放射性崩壊の法則」とか呼ばれるものだと思う。つまり、「放射性物質

の崩壊(=壊変)の速度は、その時に存在する物質量に比例する」というも

のだ。これは、ごく限られたデータから実験的に求めた法則だが、物理学で

はしばしば、そこから一般的な数式を仮定する。つまり、数学的な仮説を導

入して、その後の展開が上手くいけば、「仮説は実証された」と考えるわけだ。

       

110819b

     崩壊の法則から仮定した数式

     は左の通りで、微分を含んだ

     方程式だから、微分方程式

     呼ばれてる。は、時刻 t にお

ける原子数λ(ラムダ)が壊変定数だ。最初の式の左辺が、崩壊または

壊変の速度で、それが右辺と等しいのだから、その時の原子数Nに比例

することになる。λが比例定数の役割を果たしてるわけだ。二番目の式、

dN/dt = -λN」の方がよく見かける気がするので、以下ではこちら

を基準に解くが、マイナス記号は左辺か右辺のどちらかにあればよい。

     

 (☆補足 : ブリタニカ百科事典のサイトなどによると、この辺りの理論は、

        ラザフォードとソディが1902年から03年頃に築いたものらし

        い。後にそれぞれ、ノーベル化学賞を受賞している。)

         

これを、一昔前の高校の数学Ⅲレベルで、丁寧に解いてみよう。今現在は

微分方程式は教えてなくて、映画『ガリレオ 容疑者Xの献身』の天才数学

者(犯人)・石神(堤真二)も残念がってた(96年の高校3年生以降)。

   

N≦0の場合は、物理的に無意味なので、N>0という前提条件で、微分方

程式を解くと、下の通り。∫(インテグラル)記号を用いた不定積分では、t

からNへの置換積分を用いてある。大学レベルなら、「変数分離形」として、

ビミョーに異なる扱いをする所だ(結果は同じ)。ちなみに、「log e N」とは、

e≒2.718(ネイピア数)を何乗したらNになるかを表す数。Nの自然対数

と呼ばれるもので、「ln N」と略記することもある。

        

110819c

      

         

Nが t の式で表せたから、これでほぼ解けてる。あとは、初期条件と呼ばれ

110819d

     るものを用いて、右辺の

     ジャマな「e の c 乗」を

     消せばいい。t=0、つ

     まり「初期」の原子数

N₀ とすると、微分方程式の最終的な解、「N = N₀×(e の-λt 乗)」

決定する。

        

ここでNの半減期とすると、時刻Tにおいて、原子数NがN₀の半分に

110819a2

   なるのだから、

   λとTの関係は

   左の通り。

   λT= 0.693

    だから、λとT

   の一方が分かれ

ば、他方は簡単に求められる。

       

このλとTの関係式を用いて、前に書いた微分方程式の解からλを消し、

代わりにTを使うと、次の通り。最後の式、「N=N₀×(1/2 の t/T乗)

は、非常に有名で簡単なもので、高校1年の教科書にも太字で掲載され

てた(ただし両辺をN₀で割った形)。

         

110819e

      

        

          ☆           ☆          ☆

では最後に、ベクレルの値から、放射性物質の質量(グラム数)を求める

とにしよう。ここ最近、食品の内部被曝でよく話題になってるのがCs137

(セシウム137 ; 数字は「質量数」)で、数百Bq(ベクレル)とか数千Bqと

いった数字がよく出てるから、以下では、1000Bqのセシウム137の質

を求めてみる。

     

110819f

    ベクレル数とは、t=0

    (初期)における崩壊

    速度(or 速さ)だから、

    この記事の序盤に書い

                           た微分方程式で t = 0

の時を考えて、1000=λN₀ となる。

     

ここで、λ=0.693÷(半減期)。セシウム137の半減期は30年だから、

ベクレルの時間単位である「秒」に直して計算すると、

   λ= 0.693÷(30×365×24×3600)

   

また、初期の原子数N₀は、初期の質量 x (エックス)を用いて次のように

書ける。セシウム137がもし137gあれば、原子数は「1モル」、つまり

6.02×(10の23乗)個であることを用いた簡単な算数だ。6.02×

(10の23乗)というのはアボガドロ定数と呼ばれるもので、より簡単に

6.0とする場合もあるが、ここでは6.02で計算しておく。

      N₀ = ( x / 137)×6.02×(10の23乗)   

   

したがって結局、以下のように x (エックス)を計算できる。

   

110819g

   

は、3.11グラムの100億分の1♪ つまり、ものすごく微小な量であっ

て、いちいち飲食物の放射能を測定するのがいかに大変な作業なのか、

想像できるだろう。人間には見ることも触ることも出来ない、僅かな量が問

題なのだ。高価で高性能の計測器を使って、正確に測定する必要がある。

      

なお、放射性物質のベクレル数から質量を求める式を一般的に書くと、

次のようになる。「質量数」とは、物質の質量という意味ではなく、上のセ

シウム137なら137のこと。その核種(=原子核の種類)における、陽子

と中性子の個数の和だ。

          

   質量(g) = { ベクレル数×半減期(秒)×質量数 }

                   ÷( 0.693×6.02×10²³ )

   

逆に、質量からベクレル数を求める式は、以下の通り。

    

   ベクレル(Bq) = { 質量(g)×0.693×6.02×10²³ }

                      ÷ { 半減期(秒)×質量数 }

     

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

    

      

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

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 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  久々に涼しい1日&放射線量の「ホットスポット」など

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  津波の物理学~浅い海、水面波の波動方程式と速度

  放射性ラジウムその他と崩壊系列&37度微熱ラン

            

                                   (計 3838文字)

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セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

放射線の被曝量の計算については、先日のまとめ記事を始めとして、これ

までに何本も記事を書いてるし、先日の牛肉セシウム事件の後にも、新た

な話を追加する必要はないと思ってた。ただ、かなり前に書いた生物学的

半減期や有効(or実効)半減期に関する記事へのアクセスが急増してるし、

今の所、細かい具体的計算を新聞・ネット等で見る機会はほとんどない。

    

そこで、これまでの話の応用編として、新たに記事を書くことにしよう。主た

る目的はただ一つ。この牛肉を食べた人が、「今後1年間に」受ける内部

被ばくの計算だ。もちろん、既にあちこちに書かれてる話(実効線量係数

を使った単純な掛け算)は、今後50年間に被曝する線量(預託実効線量)

であって、今後1年間だけの分ではない。

     

大まかな結論から言うと、今後50年間の被曝線量と、今後1年間の被曝

線量は、あまり変わらない。つまり、最初の1年で急激に放射性物質が

減少するから、残りの49年間はほとんど関係ないのだ。

        

それは、簡単な算数と図でイメージ的に説明できなくもないけど、正確に

高校3年の数学(数Ⅲ)の「定積分」が必要になる。とはいえ、高校2年

の数学(数Ⅱ)の定積分がよく分かってれば、話の流れは十分理解でき

るだろう。つまり、理系・文系に関わらず、高卒レベルの話であって、専門

家も専門書も必要ないのだ。

         

        

        ☆           ☆           ☆

まず、最低限の事実の確認から。7月14日までに各メディアで発表され

たニュースによると、最もセシウム汚染が進んだ牛肉で、4350Bq/kg

の放射能濃度だった。安全のために、多めに見て、これを1kg食べた人

がいたとすると、摂取したセシウムは4350Bq(ベクレル)となる。

       

このセシウム(Cs)の中に、Cs137Cs134がどれだけの割合で入っ

てたのか、発表には示されてないが、仮に半々としてみよう(違う割合で

も計算・結果ほぼ同じ)。すると、それぞれ2175Bqの摂取となる。つまり、

それぞれ1秒間に2175個の原子(核)が崩壊して、放射線を出すわけだ。

       

原子1個の崩壊から、平均してどれだけの内部被曝が生じるかは、セシ

ウムの種類ごとに違っている。そこで今、Cs137が1個崩壊するごとに、

平均してp マイクロシーベルト(μSv)、Cs134の場合は q マイクロシー

ベルトの内部被ばくが生じるとしておく(計算の最後にp,qは消える)。

    

また、物理学的半減期と生物学的半減期の両方を考慮して求めた、

効半減期以前の記事を参照)については、Cs137が約1/5年(=73

日)、Cs134が約1/4年(≒91日)と考えて良さそうだ。あちこちに、

微妙に異なる実効半減期(あるいは生物学的半減期)が、ほとんど根拠

なしに書かれてる状況だが、自治体HPや英語版ウィキペディアも含めて、

大まかに一致した期間になってるから、1/5年と1/4年でいいと思う。

もちろん、計算や結果を単純にするための配慮にすぎない。

      

気になる人は、以前の記事で説明した公式を使って、物理学的半減期

と生物学的半減期のデータから計算すればいい。要するに、両方の掛け

算を両方の足し算で割った値(「和」分の「積」)だが、人間の排泄という曖

昧なものが関わるし、年齢によってもかなり違うから、73日と70日の違

いとか、細か過ぎる区別には意味がないのだ。

       

         ☆          ☆          ☆

それでは、Cs137とCs134に分けて被曝線量を計算してみよう。

1年=24時間×365日=8760時間=8760×3600秒=31536000秒

よって、31536000を文字 a とおくことにすると、50年なら50a秒、半減

期1/5年なら a/5 秒と表せることになる。これは、時間の単位をベクレ

ル(1秒あたりの崩壊個数)と同じく「」にするという事だ。 

      

 (1) Cs137について

 

    単純に、経口摂取の実効線量係数0.013を使って50年分を計算

    すると、

      0.013×2175 ≒ 28.3(μSv)

    

    これが50年(=50a秒)の放射線の定積分だから、下の式が成立。

    ちなみに、指数(1/2の右肩)の5t/aとは、t÷(a/5)という意味。

    log2とは、2の「自然対数」で、e と呼ばれる数(約2.718)を何乗

    したら2になるかを示す定数だ。約0.693のこと。

       

110714a

         

    上の式の最後の等号(=)は、正確には近似の記号(≒)だが、ほとん

    ど誤差はない。よって、1年分なら次のように、50年分の31/32

    (つまり 1-1/2⁵)、したがって27.4μSvとなる(pもaも消える)。

       

110714b

       

   

  (2) Cs134について。

     

      単純に、経口摂取の実効線量係数0.019を使って50年分を

      計算すると、

         0.019×2175 ≒ 41.3(μSv)

      

      ここから、Cs137の時と同様に考えると、1年分なら50年分の

      15/16(つまり 1-1/2⁴)となる(qもaも消える)。

   

      ∴ (1年分) = 41.3×15/16 ≒ 38.7(μSv)

   

    

  以上、(1)(2)より、今後1年間に内部被曝する放射線量の合計は、

      27.4+38.7 = 66.1(μSv) ≒ 0.066(mSv)

         

        

         ☆          ☆          ☆

この0.066ミリシーベルトという値は、厳しく見積もった年間基準値の

1ミリシーベルトと比べても1/15に過ぎないから、これ以上摂取しなけ

れば、健康の心配はまず無いと言える。ただし、食べ物や飲み物は毎日

必ず一定量摂取するものだから、政府・自治体、生産者、販売者、消費

者、みんなが今後、相当な注意を払い続けないと危険だろう。

          

この記事で示したかったのは、1年分の被曝量の計算方法。要するに、

実効半減期を1/c 年として定積分すれば、50年分の被曝量と比べて

1-(1/2のc乗)倍になるということだ。 ヨウ素やセシウムの場合、こ

の値は1より少し小さい程度。つまり、実効線量係数の掛け算で求めた

50年分の値が、ほぼ今後1年間の被曝線量だと考えてよいということ

なのだ。

    

では、今日はこの辺で。。☆彡

    

    

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

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  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

            

                                 (計 3103文字)

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被曝する年間放射線量すべての計算方法 (自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

(☆7月14日追記: セシウム汚染牛肉に関する計算記事をアップ。

 セシウム牛肉、食後1年間での被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期) )

     

     

        ☆          ☆          ☆

人間が生きていく中で、あまりに基本的過ぎて忘れがちな事が2つある。

1つは、何かを信用すること。もう1つは、リスクを取ることだ。この2つは

密接につながるものでもある。と言うのも、信用するということは、裏切られ

るリスクを取ることだし、逆にリスクを取ることは、リスクの推定に関わる色

んなものを信用することだからだ。

       

東日本大震災&福島第一原発事故以来、情報が激しく対立・錯綜する中、

何を信じて、どれだけのリスクを取るかは結局、各個人、各自治体、政府

など、それぞれの主体に応じて違って来る。ただ、いずれにせよ、出来た方

がいいのは、自らに関する数値データの計算だ。

      

健康に影響する放射線被曝量というものが、それぞれの人や場所でかな

り違うことが分かって来た以上、自分の生活に関するデータを自分で処理

できた方がいいのは当然だろう。もしそれが出来なければ、実質的に無意

味な数値だけ見て右往左往するか、あるいは誰か他人の(大まかな or 信

頼性の低い)話を信じるしかなくなってしまう。

     

そこで今回は、自分の年間被曝量をどう計算すればいいのか、その全体

をまとめてみよう。一つ一つの話はあちこちにあるが、これほどまとまった

形の解説は、現在なかなか見当たらないと思う。以下、朝日新聞の報道(特

に6月19日の別刷GLOBE)と、独立行政法人(国立)・放射線医学総合

研究所HP(以下、放医研)を主たる参考資料として、具体的に見て行こう。

ただし、単なる請け売りではなく、独自の突っ込んだ見方も示してあるし、

数値設定もかなり変えてある。

          

              

        ☆           ☆           ☆

まず、意外にまだ、実質的には知られてない話から確認しておこう。被曝

には、自然放射線と人工放射線(医療その他)があって、この内、普通

1mSv(ミリシーベルト)とされてる年間基準値に関わるのは、その他の人

工放射線だけだということだ。

      

自然放射線については、あちこちに世界の年間平均値2.4mSvが書か

れてるけど、日本では1.4mSvとされてるらしい(朝日19日)。同じ朝日

でも、5月11日の特集では1.48mSvとされてたが、ほとんど同じ値だし、

新しい方の1.4mSv1400μSv(マイクロシーベルト)を採用しよう。

     

1年は、24時間×365日=8760時間。

  ∴ (1時間の自然放射線) = 1400÷8760 ≒ 0.16μSv  

    

世界のデータを見ると、この内の8分の3弱外部被曝と推定されるから、

   (1時間の自然放射線の外部被曝)=0.16×3/8 = 0.06μSv

    

実際には、朝日放医研も、(東京の値として)0.05μSvを採用してい

る。要するに、事故前の平常値という意味で、ほぼ0.06と同じ値だから、

以下でもこの0.05μSvという値を採用して、屋外の計測データから差

引くことにしよう。繰り返すが、自然放射線は元々浴びてたものだから、基

準値と比較するための計算には入れないのだ。

       

          ☆          ☆          ☆

一方、医療の放射線量を確認しとくと、あちこちに書かれてるのが、胸部

X線CTスキャン6.9mSv年間基準値の7倍近くもある大きい数字だ。

もちろん、スキャン自体が危険だと言う意見もあるわけだが、それは震災

以前には全く少数派だったはず。したがって、私も含めて、こうした大量の

医療放射線を浴びてない人は、その分、被曝量に余裕があることになる。

            

ただし、そうゆう話は公には語れないようだ。と言うのも、それでは実質的

に、年間基準値を大幅に緩めることになってしまうし(1+6.9=7.9mSv

とか)、適切な医療行為を受けないように勧めることにもなってしまうからだ

ろう。でも市民として、その辺りの数字まで冷静に計算しとくべきだと思う。

           

少なくとも私は、1回0.05~0.1mSv程度の普通の胸部X線検査とか、

1回0.6mSv程度の胃の集団検診を受ける程度だから、被曝量には多少

の余裕があると考えてる(6ミリとまでは言わない)。もちろん、自己責任だ

が、合理的判断だろう。。

    

              

         ☆          ☆          ☆

自然放射線と、医療による人工放射線について見た所で、いよいよ問題の、

その他の人工放射線の計算に入る。当初は、文科省データくらいしか信頼

できそうなデータが無かったけど、現在では、各自治体や、大学、「有志」の

データなど、様々なデータが揃って来た。

         

文科省が毎日更新する詳細なデータも、批判を受けて、今では地上1mの

測定値を追加。さらに、普通の測定値が地上何mのものかという数値も公

表している。週刊誌などで大きく騒がれたわりには、高さによる差さほど

大きくない、という印象を私は受けた。ただ、測定地点の高さの話を知らな

かった人は、違いに驚いたかも知れない。

     

ここでは、文科省データの代表例として、東京・新宿の22日のデータを使っ

てみよう。しばらく大きな変化は見られない。地上1mで、0.07μSv/h

(毎時マイクロシーベルト)。ここから、自然放射線量の分を差し引くと

  0.07-0.05=0.02μSV/h。これは屋外の値。

屋内ではその4割として、

  0.02×0.4=0.008μSv/h 、としとこう。       

     

ここから、年間の外部被曝量を計算する時に問題となるのは、1日当たり、

屋外に何時間いるかということだ。当然、人によってかなり違うはずで、おそ

らく平均的な人は6時間以下だと思う。ただ、朝日も放医研も屋外8時間で

計算してるし、安全のためには少し厳しめの計算をしとくべきだから、ここで

屋外8時間としとく。すると、屋内は16時間で、

    

  (年間の屋外の外部被曝) = 0.02×8×365 = 58.4μSv

  (年間の屋内の外部被曝) = 0.008×16×365 ≒ 46.7μSv

  ∴ (年間の外部被曝量) = 58.4+46.7 ≒ 105μSv

    

つまり、年間で約0.1mSv(ミリシーベルト)だから、1ミリという基準値に

はたっぷり余裕があるようにも見える。ところが、まだ内部被曝の計算が

残ってて、これが色んな意味で厄介なのだ。。

    

    

☆追記: 局所的に線量が高い場所、「ホットスポット」についての記事

       を追加したが、年間線量の計算で特に気にする必要はない。)        

        

    

           ☆          ☆          ☆

内部被曝は、大きく分けると、呼吸、飲み物、食べ物の3種類に分けられる。

この内、呼吸による内部被曝は(原発周辺を除いて)ほとんど無視できる

量にすぎないことは、先日の記事で示しておいた。実際、メディアその他で

も、呼吸による内部被曝はほとんど話題になってないので、以下でも、飲み

物と食べ物に絞って計算してみよう。大まかに言うなら、次の計算式だ。

  実効線量係数(μSv/Bq)×放射能濃度(Bq/kg)×摂取量(kg)

            

なお、原発周辺の方は、以前の記事をご参照頂ければ、呼吸による内部被

曝の計算方法が分かるはずだが、居住地の基本的なデータ(空気中の放

射性物質の濃度)が手に入るかどうかまでは分からない。残念ながら、全国

的にはまだ、ほとんど公開されてない(or 測定されてない)ようだ。       

        

さて、飲食物に関しては、「暫定規制値」なるものが事故後に定められ、そ

の後そのままになってる。今現在、実際には規制値より遥かに低い測定値

が多いようだけど、規制値未満なら出荷されて口に入る可能性があるわけ

だから、以下、規制値の約10分の1のものを飲食したと仮定する。

      

規制値ギリギリまで許容されるのだから、規制値で計算すべきだという考え

には一理あるが、現状では非現実的だと思う。もし必要なら、下の計算を

10倍すればいい(微妙な大きさの数字に到達)。

     

計算は、放射性ヨウ素(I 131)と、放射性セシウム(Cs 134,137)に分

けて行う。摂取物の単位は基本的に、Bq/kg(1kg当たりのベクレル)。

「Bq」(ベクレル)とは、放射能(物質が放射線を出す能力)の単位で、計算

の最後に、線量の単位・シーベルトへと換算。その辺りは3ヶ月前の記事で

詳しく説明しておいた。

           

               

 (1) ヨウ素   

     規制値   水,牛乳など 300     野菜類,魚介類 2000   

     想定値             30                200

      

     水・牛乳1日1.5kg(ほぼ1.5L)、野菜・魚介1日0.2kg

     としてみよう(根菜・芋類は地面の下だから除く)。すると、1年では

        

      (水・牛乳) = 30×1.5×365 ≒ 16400Bq

      (野菜・魚介) = 200×0.2×365 ≒ 14600Bq

      (飲食合計) = 16400+14600=31000Bq

        

     これに、成人の「実効線量係数(経口摂取)」0.022(μSv/Bq)

     を掛けて、シーベルトに換算すると、年間基準値に接近して来る。

   

       (ヨウ素の内部被曝量) = 0.022×31000

                      ≒ 680 μSv

                      ≒ 0.68 mSv

    

      

  (2) セシウム

        規制値  水・牛乳など   野菜・魚介・肉・穀類・その他

                 200          500

        想定値     20            50

       

        水・牛乳や、野菜・魚介などについては先ほどと同じと仮定。

        穀類年間120kgと仮定する(米80kg、その他40kg)。

       

        (水・牛乳)= 20×1.5×365 ≒ 11000 Bq

        (野菜・魚介)= 50×0.2×365 = 3650 Bq

        (穀類)= 50×120 = 6000 Bq

        (飲食合計)= 11000+3650+6000 ≒ 21000 Bq

         

        これに、成人の実効線量係数(Cs137が0.013、Cs134

        が0.019)の平均値0.016(μSv/Bq)を掛ける。つまり、

        二種類のセシウムが同じ量だけ含まれてたと仮定すると、

   

        (セシウムの内部被曝量)= 0.016×21000

                        = 336μSv 

                        ≒ 0.34 mSv

        

          ☆          ☆          ☆

ここで注意すべきなのは、こうして計算した内部被曝量は、「預託実効線量」

と呼ばれるもので、50年分の放射線量の蓄積(=預託)だということだ。ヨウ

の場合は、「物理学的半減期」が8日、つまり物質そのものが短期間でほ

ぼゼロになるから、50年分と言っても、結局は1年分の線量と考えてよい。

          

でもセシウム137の場合、物理学的半減期が30年と長く、生物学的半減

期(排泄で半減するための期間)が70~90日程度である(若いほど短い)。

実質的には、生物学的半減期だけで考えていいから、1/4年で半減する

と考えると、1年後でも(1/2)⁴=1/16は残ってる。よって、50年分の

蓄積(=普通の計算結果)よりも、1年分の方が少ない。セシウム134につ

いても、同様の計算で1年分の方が少なくなる。

       

不思議なことに、こうした話は(ほとんど)見聞きしないが、当サイトで以前

実行したような積分計算が面倒で分かりにくい(高3教科書レベルの数学)

こともあって、多めにそのまま50年分を受けとめようという事なのだろう。

一応ここでも、「1年分の内部被曝だから数値が減る」という話使わない

ことにしとこう。

      

すると、以上(1)(2)より、たまたま分かりやすい数字(近似値)が出る。

     (年間の内部被曝量)=0.68+0.34 ≒ 1.0 mSv

    

結局、外部被曝0.1mSvと合わせると、

     (年間の全被曝量) = 0.1+1.0=1.1 mSv

      

    

          ☆          ☆          ☆

僅かに基準値1ミリを超えてしまったが、実際には1ミリ以下にギリギリ収まっ

てると思う。というのも、例の自然放射線の中に、1割ほどは飲食の内部被

が含まれてるからだ。1.4×0.1=0.14mSvとして、これを先ほどの

値から引くと、1.1-0.14 = 0.96 ≒ 1.0mSvとなる。

   

まあ、ここまで差し引く計算は見たことないので、年間1.1mSvをそのまま

受け取ってもいい。基準値1ミリを僅かに超えてるだけだから、ほとんど問題

ないだろう。

    

以上より、色々なデータが大幅に上がらない限りは、全ての被曝量を合計

しても、十分安全だと思っていい(特に医療被曝が僅かの場合)。もちろん、

引き続きデータの変化は注視したいと思ってる。あと、内部被ばく独特の

特殊な危険性については、また機会を改めて考えるかも知れない。

     

なお、内部被曝の話には、普通の「実効線量」より遥かに大きな値である

等価線量」が、時々紛れ込んでしまってる。明らかに大き過ぎる値を見た

ら、まずはその混同(または説明不足)を疑ってみていいだろう。朝日新聞

でも時々あることで、当サイトの以前の記事で既に説明しておいた。

        

では、今日はこの辺で。。☆彡

      

       

            

P.S. 6月26日のフジテレビ『Mr.サンデー』で、千葉県野田市独自

     基準である0.19μSv/h(毎時マイクロシーベルト)が使われた。

     この数字は、1日に屋外8時間、屋内16時間(屋外の4割の線量

     いるとして、外部被曝を年間1mSv=1000μSv以下にするため

     の数値だろう。

    

     数式は次の通りだが、自然放射線量を差し引いてないし、内部

     被曝も考慮してないから、科学的にはあまり意味のない基準

     すぎない。実測値より少しだけ低い、実現可能な値になる式を採

     用したのではなかろうか。ちなみに、数式は以下の通り。

   

     1000÷{(8+0.4×16)×365} = 1000÷5256

                            ≒ 0.19    

         

            

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学的・生物学的半減期

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  被災地の被害が深刻とされる、「風評」の意味とは・・

    

  「想定外」という言葉の考察&リハビリラン2日目

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  原発事故はみんなが無責任、だけどね・・

                    ~東電社員の息子・ゆうだい君への応答

  震災後の青空文庫で人気、寺田寅彦『津浪と人間』  

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

  セシウム牛肉、食後1年間での被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

  放射性ラジウムその他と崩壊系列&37度微熱ラン

      

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  放射線被曝のがんリスクを帳消しにする運動量の計算など

  福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推定(全国、年代・経路別)

            

                                 (計 6014文字)

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体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学&生物学的半減期

(☆7月14日追記: セシウム汚染牛肉をめぐる関連記事をアップ。

 セシウム牛肉、食後1年間での被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期) )

    

   

         ☆          ☆          ☆

忙しくて時間がとれない中、久々に放射線関連の記事をアップしてみよう。

簡潔にまとめたものだけど、今現在ネット上に(ほとんど)見当たらないマ

ニアックな内容にはなってると思う。

          

東京電力・福島原発の事故が、いずれ何とか収まるとしても、放射線の問

題はその後も長く残るだろう。ヨウ素はすぐ消えるとしても、セシウムやプ

ルトニウムは延々と放射線を出し続ける。放射性物質や放射線への関心

も、当然続くだろう。

             

放射性物質や、それが含まれる野菜・水が、どれだけの放射線を出すの

か。その放射する能力(=狭義の放射能)を示す単位がベクレル。また、

我々が体重1kg当たりで吸収する放射線量を表す単位がグレイ。さらに、

その線量がどのくらい人体に実害を与えるかを考慮した「実効線量」の単

位がシーベルトだ。これら3つは、以前の記事でわりと詳しく書いてる。

     

人々の関心は当然、何をどれだけ摂取したら危ないのかという問題に向

かうことになるわけだが、理数系の話が好きな人間にとっては、何ベクレ

ル摂取すると何シーベルトになるか、という話が気になる。

         

この換算は、一般には「実効線量係数」(effective dose coefficient)という

ものを掛ければいいと言われてる。例えば、ヨウ素131の経口摂取なら

ベクレル×0.022=マイクロシーベルト。これも、既に前の記事に書いて

ることだ。係数の一覧表は、例えば「緊急被ばく医療研修のホームページ」

にある。

        

☆追記: 4月5日の朝日・朝刊は係数0.016を採用。詳しくは、下の記

       事のP.S.3、4、5を参照。

       シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について )

            

ただ、この係数が、放射性物質の種類や摂取方法によって違うのはいい

としても、それほど厳密なものではないという点は語られることが少ない。

ICRP(国際放射線防護委員会: International Commission on Radiological

Protection)が1996年に示した報告書(Publ.72)の数値が出回ってる

が、あれは一つの参考に過ぎないのだ。そもそも医学・生理学が絡む複

雑な問題だし、実験も観察も非常にしにくいことなのだから。

            

早い話、長期間の人体実験を大勢の被験者で行うことなど不可能だ。考

えれば明らかなことだし、実際、帝京大学の「複合災害救援の基本的考

え方と放射線被曝防護」と題するpdfファイルでも、人体への影響を計算

する困難さが強調されている。もちろんウチでも、最初からハッキリ書いて

たことだ。

           

とはいえ、ベクレルからシーベルトを求める際の長い理論的プロセスには、

数学的に明快な部分も一応ある。それは、半減期と放射線量に関わる部

分だ。以下では、その点について、数式計算でハッキリさせておこう。 

         

            

        ☆          ☆          ☆

まず、高校1年・物理の教科書レベルからスタートする。

    

  放射性物質(ヨウ素131,セシウム137など)のベクレルの値

           = 1秒間に崩壊する原子核の数

           ≒ 1秒間に出る放射線(β線、γ線など)の量

   

「≒」は近似を表す記号で、本当は比例だから「∝」と書くべきだけど、等号

「=」に似た「≒」で書く方が分かりやすいだろう。上の式から、もしベクレル

の値が変わらないならば、「(ベクレル)×(秒数)≒(放射線量)」だ。

           

しかし実際には、ベクレルの値(≒放射能の強さ≒放射性物質の量)は、

半減期」の時間が経つごとに、1/2になって行く。つまり、ベクレルは時

間tの関数だから、B(t)と書くことにしよう。すると最初(つまりt=0)のベク

レル数は、B(0)と書ける。さらに半減期をTと書けば、t=1Tの時に1/2、

t=2Tの時に(1/2)の2乗になるから、以下同様に考えれば、以下の式

が成立する。と言うより、これが半減期Tの定義式だ。

110402e

    
時間tにしたがって刻々と変わるB(t)に、非常に短い時間を掛け合わせたも

のを、長い時間にわたって合計すれば、全体の放射線量(とみなせるもの)

が求められる。x 年後までの全放射線量をR(x)と書けば、50年後(=157

6800000秒後)までの全放射線量R(50)は、次の「定積分」で表される。

   

110402g

     

難しく見えるが、実は計算のレベルも答えも高校3年の教科書レベルだ。

計算結果は下の通り。莫大な秒数は関係ない。中央の「=」は、本当は

「≒」だが、誤差はほとんど無視できるから等号「=」にしてある。

    

110402h

       

つまり、B(0)T / log2 が答。したがって、半減期Tに比例する。ちなみ

に分母のlog2は、約0.693。分子の半減期 T は秒で表した数字だか

ら、かなり大きい数。半減期の短いヨウ素131でさえ約8日間だから、約

70万秒。セシウムなら約30年だから、遥かに大きい数字だ。ただし、人

体への影響を考えてシーベルトの値を求める時に、数字は一気に小さく

なる。そこの計算部分は、まだブラックボックスだけど、もはや数式計算

のように明快な話が出来なくなるレベル、人間的な話なのだ。。

     

           

         ☆          ☆          ☆

私自身の興味は、実はこの先の僅かな部分にあった。ここからは、物理

の高1教科書レベルを少しはみ出す話だが、数学的には高1の教科書レ

ベル。ただし、考えたことが一度もなかったから面白かったのだ。半減期

2種類ある場合を考えてみよう。

             

現在の日本社会も含めて、普通に話題とされるのは物理学的な半減期だ。

つまり、原子核の崩壊による半減期。ヨウ素が8日、セシウムが30年といっ

た数字はすっかりお馴染みだろう。一方、生物の体内に取り込んだ放射性

物質がどうなるかという点も少しだけ話題になってるが、計算式を見ること

はない。それどころか、朝日・読売・毎日新聞のサイトで検索する限り、生

物学的(な)半減期といった言葉は見当たらない。

           

体内に摂取された放射性物質は、少しずつ体外に排出されて減って行く。そ

のプロセスで半減する期間が生物学的半減期だ。いま、物理学的半減期

T₁生物学的半減期T₂とすると、   

110402a

     

ここで、右辺を指数法則にしたがって変形すると、
 

110402b

    

一方、トータルの半減期というものを想定して単にと書くなら、一番最初

の式と同じだが、少しだけ書き方を変えて、

110402c

         

上の2式の右辺、1/2の右肩部分を見比べれば、2種類の半減期の組合

せに関する公式が導ける。同じ意味の式が、日本語版ウィキペディアの「被

曝」や、英語版ウィキ「Half-life」にも、結果だけ掲載されている。要するに

私は、それらの式を見て、導き方を考えたのだ。 

110402d

         

ちなみに、原子力資料情報室によると、ヨウ素131の生物学的半減期

ヨウ素129と同じのようで、甲状腺で120日、その他の組織で12日。一

方、セシウム137の生物学的半減期は曖昧な書き方だったので、英語版

ウィキペディアで調べると、数ヶ月らしい。大まかな値だけど、一応の参考

にはなるだろう。プルトニウムも数ヶ月となってるが、別の場所には200年

なんて凄い数字が出てたから、とりあえず保留しとこう。論争中なのかも。。

      

         

         ☆          ☆          ☆

上のような理数系の考察は、目先の生活の指針にはならないが、理解や

安心感の手助けにはなる。訳の分からないまま、メディアが出して来る多

様な情報に惑わされるよりは、少しでも理解できた方がマシだろう。少なく

とも、私自身はモヤモヤが少し晴れた気がする。

      

原発や放射線に関しては、引き続き注目し続けるので、またしばらく後で

記事を追加するかも知れない。とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡

    

    

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算

                              (by 定時降下物データ)

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算式(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会

  原発事故はみんなが無責任、だけどね・・~東電社員の息子・ゆうだい君への応答

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

  被曝する全放射線量の計算方法 (自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  セシウム牛肉、食後1年間での被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

           

                                  (計 3496文字)

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人間のジャンプで地球が太陽から離れて温暖化防止になるか~物理的考察

難しい。。細かい数式計算も含めて、それなりにまとまった記事をアップし

ようと思ってたんだけど、少なくとも数ヶ月、下手すると数年はかかりそうだ

から、とりあえず現在までの考察だけを報告しとこう。要するに、途方も無く

難しいことだけは分かってるのだ。

     

まずは、元々のイベントの話から始める。ウィキペディアによると、2006

年7月20日・19時39分13秒、西半球で6億人の人間が同時にジャンプ

して地球の公転軌道をずらし、地球温暖化をストップさせよう、という試み

が実行された。「ワールド・ジャンプ・デー」(World Jump Day)だ。ちなみに

日本は東半球だから、残念ながら仲間に入れなかった。

   

科学的な意味が分からない人のために、簡単な図を挿入しとこう。

101010

     

太陽の周りを約1年かけて公転してる地球上で、人間が太陽の側にジャン

すると、「反作用」による反動で、地球は太陽から僅かに離れる。すると、

太陽からのエネルギーが減って、地球の温度が下がるという理屈だ。ちな

みに、太陽からのエネルギー(太陽放射)は、距離の2乗に反比例するとさ

れ、その65%が熱となり、地球の気候に大きな影響を与えてるという話だ

(ウィキの「太陽放射」と「地球のエネルギー収支」参照)。

        

日本では、ジャンプ・デーをパクったらしき日テレが、翌2007年6月、科

学バラエティ特番『ガリレオの遺伝子』で似たようなイベントを企画。日本

が太陽の方向に向いた瞬間に、参加者が一斉ジャンプしたらしい。日本の

どの地点で計算したのかまでは不明だけど、人口から考えて東京だろう。

        

私は、先に日テレの企画を知った時、声を出して笑った♪ あまりにバカ

げてるけど、壮大な構想の「お遊び」で爽快だし、一応の科学的理屈も

る。だからこそ前年には、西半球の人々もそれなりに参加したんだろう。

                    

ただ、ネットで調べてる間に目に入って来た物理的説明は、否定的または

批判的なものが目立ってて、しかもその説明が高校1年の物理の大まか

な理解に留まってる。日本はもちろん、英語版のウィキペディアまでそのレ

ベルで、中途半端に真面目なのだ。

         

そうした批判は、確かに「近似的」には間違ってないけど、マニアックサイト

のウチとしては、もう少し突っ込んでみたい。本気で真面目に考えると、も

はや底無し沼、ズブズブの難解な世界に入って行くことになる。。

         

          ☆          ☆          ☆

まず、最も根本的なレベルの事から確認しとこう。それは、数学・論理学

など、一部の例外を除けば、ほとんどの学問は「近似的」な理論体系だと

いことだ。大なり小なり「大まかな」ものにすぎない。実は、数学や論理学

でさえ、完全ではないけど、それでも一応、他と比べれば遥かに厳密だと

は言える。それは、人工的、理想的な学問だからだ。

         

数学の「1」や「球」、論理学の「ならば」などの専門用語は、現実の世界に

そのまま存在する訳ではない。古代ギリシアの哲学者・プラトンの言葉を

借りれば、「イデア」的なものであって、人間の「理性」が遥か遠い世界に

「考える」存在なのだ。昔、ある有名評論家が、数学は「文学」だと語るの

を聞いたことさえある。「見事に作られた言語芸術」といった意味だろう。

        

それに対して、物理学は全く違う。これは「人工」的世界ではなく、あるがま

まの「自然」界を扱う学問で、もともとは自然哲学だった。自然界には、数

学的な直線(幅のない真っ直ぐな線)はなく、かなり細くて大体真っ直ぐな

線があるだけ。数学的な球もなく、ほぼ球形の物体があるだけで、しかも

表面を確定することさえ出来ない。物体を原子(=原子核+電子)の集ま

りと考えても、原子の外側に境界面などないし、外側の電子の軌道も確

定不可能だ。物体の表面とか軌道は、たかが実用的な近似に過ぎない。

        

したがって、天体の運動を考える時にも基本となる物理法則、ニュートン

の運動の3法則万有引力の法則も、「自然」法則としては、近似に過ぎ

ない。それは、ニュートン自身の主著『プリンキピア』を読んでも、万有引

力の検証実験と言われるものを見ても、明らかなことだろう。

        

よくある話だと、重力加速度として定数(記号 g とか9.8m/s² )を使う

のも近似。もちろん本来は、重力による加速度は一定の値ではなく、重心

からの距離に応じて変化する。これは、法則自体が語ってる内容だし、実

験的にも検証済の科学的事実だ。

       

物理の教科書の説明を読んで、まるで数学の教科書のように正しいものと

して受け止めるのは、両者の性格の違いに気付かない勘違い、あるいは

過度の素直さにすぎない。ただし、その勘違いや素直さをとがめるものな

ど、テストや教師も含めて、世の中にほとんど存在しないわけだ。。

     

        ☆           ☆          ☆

もちろん、物理学は近似的な学問のままで、世の中に十分役立ってる。た

だ、近似が通じない、あるいは通じにくい分野があるのだ。原子内部の極

微の世界や、宇宙の彼方、宇宙の始まりと終わり。あるいは、カオス(極度

に不規則な変化)とか。

    

ここで問題となってる話でいうと、地球の軌道や温度の僅かな変化も、そ

れを精密に考えるとなると、近似は上手くいかない。特に、高校1年の物

理の大まかな理解でそうした僅かな変化を考えるのは、普通の定規を使っ

て1000分の1ミリの長さを測ろうとするようなもの。達人が定規を使うの

なら、ギリギリ何とかなりそうにも見えるけど、根本的に無理がある。

     

どこに無理があるのか、個別に見て行こう。まず、一番単純に考えても、

ジャンプする人間と地球の質量の差が大き過ぎるから(10の23乗倍の

差)、地球の軌道はほんの少しズレるだけ。軌道変化も温度変化も、全

測定不能のはずだ。

         

「だからジャンプは無意味」と言いたくなる気持ちは理解できるけど、理論

的にはむしろ、「だからジャンプの結果を正確に論じるのは不可能」と言

うべきだろう。地球上のあちこちで、大勢の人間が別々の動きを行ってる

ことを考えても、ジャンプによる変化を識別するのは、測定上も理論上も

不可能だ。

        

一応、こうゆう可能性なら無いこともない。つまり、例えばジャンプの1億倍

の効果を持つ「と思われる」実験を行って測定。そこから、ジャンプの効果

を1億分の1として計算することなら、一応出来なくはないだろう。でも、これ

は近似的な推測だし、実際にはあり得ない。そんな実験に膨大な金と労力

を注ぐことに、同意が得られるはずはないからだ。少なくとも、ここ数十年

ではあり得ないだろう(数百年だと微妙かも・・)。

          

次に、ありがちな考えの問題点について。高校1年で習う「運動量保存則

を用いて、軌道は変わらないとする考えのことだ(運動量=質量×速度)。

私の言葉でまとめ直すと次のようになる。──元々、地球と人間は軌道に

沿って真っ直ぐ公転していて、垂直方向(上図の左右方向)へは運動して

ない(太陽と地球を結ぶ方向への「運動量」がゼロ)。その状態は、ジャン

プが終了して地球と人間が一体化した後にも「保存」されるから、以前と同

様、地球&人間は真っ直ぐ進むだけだ──。

       

この考えは、近似的・結果的になら、間違ってないとは思う。ただ、今問題

となってるのは精密な話であって、そのレベルでは運動量保存則は使えな

し、使ったとしても粗雑過ぎる。

        

仮に保存則が使ったとしても、ジャンプ後に以前と同様なのは「真っ直ぐ」

なことだけ。少なくとも保存則だけでは、その真っ直ぐの軌道が最初とズレ

てる可能性を否定することは出来ない。つまり、太陽から遠ざかるかどうか

はともかく、軌道と垂直な方向に少しズレる可能性なら残る。他にも、そも

そも「真っ直ぐ」ではなく「楕円」軌道だという点、また、たとえ軌道がズレな

くても一時的には地球が太陽から遠ざかるという点を指摘しとこう。

                   

ただ、そんな細かい問題より根本的に、やはり運動量保存則は使えない

のだ。この法則は、「『外力』が働かない時という前提条件の下でしか保

証されてない。その前提のもとで、運動の第2法則(運動方程式 : 力=

質量×加速度)と、第3法則(作用・反作用の法則)を用いて、数学的に積

分計算した結果が、運動量保存則なのだ。

    

地球と人間の間の万有引力だけを考えるのなら使えるけど、ここではそれ

らの」側から、太陽の万有引「が加わってるのだから、前提が崩れ

しまってる。しかもその「外力」は、軌道と垂直方向、つまり重要な方向で

働いてるのだ。

         

これに対して、「その外力は公転の遠心力と(見かけ上)釣り合ってるから

無視できる」、あるいは、「その外力は公転を維持する向心力として使われ

るだけだから無視できる」するのなら、これまた同じこと。近似的にはとも

かく、精密には物理・数学的に間違ってる。

         

というのも、太陽から働く万有引力Fは、太陽の重心からの距離 r の2乗

反比例する(F=GMm / r² : Gは比例定数、Mとmは質量)。ところが

遠心力または向心力mv²/r (v は速さ)だから、 r の1乗に反比例

2乗と1乗は全く異なる。したがって、ジャンプによって僅かに r が変化す

ると、つり合いも崩れるのだ。

      

さらにダメ押しするなら、この遠心力は等速円運動のものであって、楕円

運動に使うのは近似に過ぎないし、実は地球の公転が楕円だというのも

近似的想定にすぎない。本当の軌道は、計算不能なのだ。授業や教科書

ではほとんど触れられない事ではあるが。。

         

          ☆          ☆          ☆

ちなみに私は、上で書いた軌道のズレとか、つり合いの崩れを精密に計算

ようと頑張ってたのだ。けれども、太陽と地球と人間の3項関係を考える

は途方もなく難しい。これは限度を超えてるな・・・と内心ボヤいてる時、

ふと気付いた。そうか、これは有名な3体問題」(three body problem)とか

多体問題」(n-body problem)だから、普通に計算できるはずないのか。。

      

3体問題というのはもともと、太陽と地球と月、3つの天体が万有引力を

及ぼし合う時の運動(軌道や速度)を計算する問題。ニュートン以来、研

究が続けられ、あの「ポアンカレ予想」にも名を残すポアンカレも大きく貢

献した。その結果、2体問題のように積分計算でキレイに解くことは出来

ないことが証明されたとされている(高度に専門的な話)。ましてや、4体

以上の多体問題となると論外なわけだ。

             

実際の科学では、ここでも近似計算を用いることになる。代表的なのが

摂動」を利用した考え。摂動とは、英語で「perturbation」。脇から「かき乱

すこと」を指す言葉だ。元の動詞「perturb」は、語源的に「disturb」(邪魔す

る)の類語だということを考えると、綴りも意味も納得しやすいだろう。

          

例えば、月の動きなら、まず地球との2体問題として解いて、太陽による摂

動=かき乱しを加えて補正する。あるいは、地球の動きなら、まず太陽と

の2体問題として解いて、月による摂動を加えて補正する。ただし、摂動を

使うこと自体が近似だし、摂動の計算にも近似が使われてるようだ。

       

とにかく、太陽と地球と人間1人の三体問題だけでも、普通には計算できな

。まして、人間が多数だと無理だし、宇宙にちりばめられた無数の物体

を考慮すると論外。もちろん、一つ一つの物体の重心(=質量の中心)も

正確には決定できないし、近似による重心から計算した引力も、実際の引

力とは一致しない

           

例えば、太陽と地球の間の万有引力を計算する時に、普通は両者の重心

を使って計算するわけだが、質量の中心としても近似だし、ましてや重力

の基準点としては近似にすぎない。というのも、太陽とか地球とか、一つ一

つの天体自体が、より小さな物体の複雑な組合せで構成されてるからだ。

無数の原子の中の電子が、超高速で動いてる(=位置変化している)こと

を考えるだけで、気が遠くなるだろう。電子にも僅かに質量があり、万有

引力がある。「万有」とは、「無限有」なのだ。。

        

          ☆          ☆          ☆

以上、近似、運動量保存則、3体問題(一般には多体問題)を軸に、一斉

ジャンプ問題を精密に扱うことの難しさを示して来た。もちろんこの話は、

お笑いの世界に近いジャンプだけでなく、現実の自然な世界に関する精密

な測定や理論構成ならすべて適用可能だ。

                

念のために付け加えるなら、「物理の近似」と「数学の近似」の違いにも注

意する必要がある。数学の場合、しばしば真の値や数式が分かってて、そ

れをもっと簡単な別物で近似する。だから、どの程度の正確さの近似なの

かまで、厳密に論証出来るのだ。それに対して、物理の場合、真の値や数

式が分からないまま近似することになる。それが近似になってるかどうか

は結局、実用的に役立つかどうかで大まかに判断するしかないわけだ。

       

ただし、たかが近似、されど近似。どうせアバウト(いい加減)な話だから、

何を選んでも一緒、というような粗雑な考えで妥協するのは、学問的な姿

勢ではない。どのような近似が、どのような価値を持つのか。精度、コスト

パフォーマンス、分かりやすさ、安全性など、色々と考えるべき事は山積

みだろう。

    

学問に王道なし。また、終わりもなし。結局はそうゆう当たり前のことだ。

なお地球温暖化については、いずれまた記事を書く予定。ではまた。。☆彡

                                 (計 5359文字)

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我が家にノーベル物理学賞の受賞者が・・♪

またしてもココログが激重の中、何とか日付けが変わる前に記事をアップしなきゃ

なんない。何が手っ取り早く書けて面白いかな、と考えた時、やっぱり日本人3名

のノーベル物理学賞・同時受賞で行くのがいいなと判断。おめでたい話だもんね。

早速、あれこれ検索開始。

                     

米シカゴ大名誉教授で大阪市立大名誉教授の南部陽一郎氏(87)の授賞理由は、

「対称性の自発的破れのしくみの発見」。と言われても、普通の人にはサッパリ分

からない話で、福山雅治のドラマ『ガリレオ』で物理解説記事を書き続けてる私に

とっても、素粒子物理学はちょっと縁遠い話だ。サラッとでも解説しようかと思った

ものの、とても無理と判断して諦めた。

         

ちなみにウィキペディアでは、米国籍だから米国人として扱うべきだと書かれてる。

これって、百科事典が書くべき客観的説明じゃなくて、個人的意見だと思うけどね。

実際ニュースではどこも日本人扱いだ・・・とか書いた後、試しに英語のウィキを見

ると、国籍に関する激しい編集合戦が展開されている。しばらく前まで日本生まれ

のアメリカ人と書かれてたのに、日本人と書き直されて、結局7日13時59分(現

地時間)に、「日本人でアメリカ人」(Japanese American)とされたようだ。やっぱり

国籍の問題は厄介なんだな。現在、日本国籍がないのかどうかは分からない。

ノーベル賞の英語のページだと、「USA」とか「US citizen,Born 1921 in 

TOKYO,JAPAN」と書かれてた。

              

一方、高エネルギー加速器研究機構・名誉教授の小林誠氏(64)と、京都大名

誉教授で京都産業大理学部教授の益川敏英氏(68)の2人は、「CP対称性の

破れ」という現象が起きる理由を73年に理論的に説明したらしい。それが「小林・

益川理論」なのかな。どうも、まだ正確な情報が伝えられてないようだ。

          

それより、日本在住のこの2人の様子がなかなか面白かった。小林氏は、ひた

すらニコニコ喜んで、いい人って感じの方。ところが、益川氏の方はやたら明るく

元気のいい人で、既に実験で自分達の正しさは証明されてたんだから嬉しくない、

とか言いつつ、ものすごく嬉しそうな笑顔を見せていた。この2人の喜び方の違い

こそ、まさに「対称性の破れ」と言うべきものだろう。

        

         ☆          ☆          ☆

さて、この記事のタイトル。まさか真に受けた人はいないと思うけど、これはもちろ

んお遊びだ。「我が家にノーベル物理学賞の受賞者が」書いた本があったのだ♪

いや、これってわりと珍しいでしょ。小林氏や益川氏の本を持ってる人はかなり少

ないだろうし、もっとメジャーな南部氏も、米国を拠点にしてることも影響してるの

か、一般書はほとんど出してないようだ。

          

081007 で、その貴重な本がこの写メなのだ。

 南部氏による『クォーク』第2版,講談

 社ブルーバックス。もと数学・物理大

 好き人間としては当然、物質の究極

 的構造にも関心あるから、本格派っ

 ぽい本を買ってあったのだ。内容も

 顔写真も、いかにも賢そうだったか

 ら、この名前はしっかり覚えてた。い

 や、正直言って、流し見しただけ

 だったんだけどね (^^ゞ

     

081007b  この本では一応、題名の通り、

 3世代・6種類の「クォーク」こそ

 究極の基本粒子だという話が

 詳しく展開されてるけど、最後の

 「第24章 素粒子物理学のゆく

 え」を見ると、今後はスーパー・

 ストリング(超弦)理論が有望

 と考えてるようだ。ただし、それ

 で最終的に解決するとは全く

 思ってない様子。本の一番最

 後は、なかなか美しい言葉で

締めくくられてるので、引用しとこう。

     

「われわれが本当に驚嘆せざるを得ないのは、自然の秘密が次から次へと解明

されていくことではなかろうか。宇宙の生誕から100億年後の一瞬間とも言うべき

現在の時期に、その中の一部の物質をなすわれわれが宇宙の法則を見出し、そ

の歴史を知り、物質自身も有限の寿命をもつ一時的存在かも知れないと悟るの

は、まことに不思議だと言わねばならない」(p.310)。

      

という訳で、今日の更新はこの程度でおしまい。ガリレオのレビュー2本で膨大な

時間を取られちゃったから、超キツイわ。ちなみに、ガリレオの名字「湯川」はもち

ろん、日本人初のノーベル物理学賞受賞者・湯川秀樹にちなむもの。そして先日

の『ガリレオΦ(エピソードゼロ)』の友永は、おそらく2人目の受賞者・朝永振一郎

にちなむものだろう。朝永を除く受賞者3人は素粒子物理学が専門で、日本の

その分野のレベルを誇示してるわけだ。エライぞ、日本!

ではまた。。☆彡

        

               

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.ちなみに、賞金1千万スウェーデンクローナ(約1億4000万円)は、半分

    が南部氏に、残り半分が小林氏と益川氏に分けられるそうだ。7000万円

    と、3500万円ずつか。うらやましい・・・とか書くと、俗っぽ過ぎるかね♪

   

P.S.2 小林氏も同じ講談社ブルーバックスから一般書を出してた。その名も

      『消えた反物質』。いかにも編集者に無理強いされたって感じのタイトル

      だね。いい人だから、断れなかったわけか♪

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操縦ることの巧みさと難しさ~『ガリレオΦ(エピソードゼロ)』

    (☆09年12月29日追記: 映画のレビューを追加♪

     解けない問題、χ(カイ)=愛 ~『ガリレオ 容疑者Xの献身』 )

        

 どうしたんですか 湯川先生 先生があの事件を解決したんですよ

 僕じゃない あの人は わざと僕に教えたんだ

 エッ?!

 ・・・僕は・・・友永さんに操られたわけだ・・・

 ・・・・・・・・・・・

     

           ☆          ☆          ☆

実に面白い! 1年ぶりのスペシャルとして素晴らしい出来だった☆ 去年の本編

の色々な要素を適度に散りばめながら、その一方では、東野圭吾の原作で活躍

する相棒・草薙刑事(北村一輝)を新たに前面に押し出す。福田靖の脚本全体の

ムードは、しんみりとさせる内容だけれど、コミカルな脇役・栗林(渡辺いっけい)

トボけた能天気さと魅力を合わせ持つ塩野谷あかり(しおのや:長澤まさみ)の活

躍とかで、決して重くはなってない。奈美恵(なみえ:香里奈)や水着ギャル達が、

華やかさや健全なお色気も加味してくれてるし、友永幸正(蟹江敬三)の渋い演技

は全体に落ち着きを与えてくれてる。

    

トリックや実験もなかなか見事だし、数式や物理的解説もしっかりしたもので、好

印象だったから、去年同様、すぐに先行して物理記事だけをアップ。検索やニフ

テイの紹介を通じて、既に相当なアクセスを頂いた♪ ま、常連さんの反応はイマ

イチみたいだけどネ。理系ネタやスポーツネタにありがちのこと。。

                            

屈折した笑いもあちこちにあって、私はオンエア中、何度もプッとふき出した♪ 

一番笑えたのは、何と言っても岩場の謎解きシーンだろう。まず、CM前にあかり

(長澤)が頭から血を流して、長澤が出演するロッテのガム「SPASH」のCMが流

れた後、単に果物(あんずかイチジクか、何かの実)が落下してたまたま当たった

だけだと明かされる。ガクッ・・・と苦笑してると、ガリレオ=湯川学(福山雅治)はあ

れこれ調べた後で再び岩場に行き、素手のロッククライミング(フリークライミング)

で、実をつけて頭上にそびえる木の枝をチェックしにいく。

                    

視聴率稼ぎとも思えるほど、意表を突く妙な展開だけど、流れはちゃんと出来てる

し、本編第3話で内海薫(柴咲コウ)がボーッと見とれてたクライミングシーンの記

憶も呼び起こされて、何とも微笑ましい。木の枝が不自然に折れてるのを確認した

直後、「ダダダ♪」と湯川のテーマ曲「VS.~知覚と快楽の螺旋~」が流れる中、

彼は大げさに海の方へ走っていく。すると何と、そこには炭の入った缶がわざとら

しく置かれてて、またプッと吹き出すわけよ♪ 湯川が閃く所には、必ず筆記用具

が置かれてる。ただしこれも、目撃者となった釣り客(ベンガルかな)が使ってた

焚き火もどきだから、ギリギリでつじつまは合ってるのだ。

             

そこで、炭を手にとって湯川が岩場に数式を書くけど、何を書いてるのかはその時

点で「さっぱり分からない」。頭の中の数式も、ご専門の方の助言コメントが入るま

では分からなくて、アハハ♪とひたすら笑ってたら、最後はなぜか湯川が海に頭か

ら飛び込んで終了。爆笑&拍手拍手! 上着だけ脱いだ、スリーピース(三つ揃い)

のスーツ姿で、眼鏡だけ外して海底で凶器を見つけ出したわけね。見えないだろ!

現実なら絶対あり得ないけど、ドラマとしては全くアリなのだ☆ 特に、天才&変人

ガリレオならね。実に面白い! 演出の西坂瑞城にも拍手しよう☆  

      

・・って感じで、ウチお得意の絶賛のスタートだけど、一般ウケする内容だったかど

うかについては、ちょっとビミョーな所もある。特別編だから当然とはいえ、本編を

見てない人にはピンと来ない部分が相当あっただろう。あの冒頭の爆発殺人シー

ンだけでも、第1話(感じ悪い若者の頭がレーザーで燃える)、第9話(夜の湖で爆

発)を中心に、第5話(離れの部屋で火の玉が飛ぶ)で軽くトッピングしてミックスし

たような作りになってるのだ。初めてだと、何か奇妙なスタートだなぁと感じても無

理はない。

               

また、単に人間ドラマとしてみるなら、それほどの厚みも味わいもない。友永の色

んな思いの大部分は、奈美恵の説明的なセリフでさらっとまとめられてただけだ。

ガリレオを演じる福山のファンは別として、やっぱり「科学ミステリー」を楽しめる人

じゃないと、スカスカした軽い印象が残ってもおかしくはないだろう。もちろん私自

身は、もと理系の文系マニアック男として、たっぷり楽しめたんだけどね♪ ま、

視聴率だと17%前後、平均的な満足度だと「やや満足」って感じじゃないかな。

☆追記: 視聴率20.8%という噂がたまたま目に入った。本当なら凄いネ!)

            

ところで、実は今この冒頭を書いてる時点で、早くも5日(日曜)の夜。予想通りっ

て言うか、予想以上に、先にアップした物理・数学記事で時間を取られてしまって、

普通のドラマレビューを書く時間が僅かになってしまった。毎年10月は一番忙しい

のに加えて、今年は特殊な事情も加わってるから、もう軽くレビューしてお茶を濁す

しかない。ただし、ウチらしさは十分に出した上で。となると、やっぱり「操縦る」とい

う抽象的テーマで書くのがベストだろう♪

      

        ☆          ☆          ☆

常連さんはよくご存知のように、ウチのドラマレビューはサブタイトルをほとんど相

手にしてない。ピント外れだったり、大げさだったり、表面的だったり。感心しないも

のが多いから、自分でオリジナルタイトルを付けた上で、記事を書いて来たわけだ。

でも、もちろんサブタイトルの中にもちゃんとしたものはあるわけで、今回の第0章

「操縦る(あやつる)」は最高の部類だと思う☆ これは、2つの原作小説の内の一

つ(『別冊文藝春秋』2008年3月号)の題名で、直接的にはあの凶器発射装置や

離れのプレハブ小屋を友永が遠隔操作で爆発させることを指す言葉だ。  

          

でも、少し考えると、湯川も気付いてたように、友永が湯川や警察を操って、自分と

奈美恵にとって最高の状況を作り出したとも言える。この程度の考察なら、ドラマの

ままであって、深みも広がりもないから、そこを自分でもう少し突っ込んで考えてみ

よう。時計を気にしながら、可能な範囲で。。

      

友永がどうやってあの装置を操ったかについては、既に番組内で詳しく説明され

たし、物理的原理はウチの前の記事で示してある。要するに、爆発のエネルギー

を一点と一方向に操る成形爆薬(shaped charge)の理論と技術を、町工場

「友永スチール」の元社長が持ってたのだ。中卒なのに、「途轍もない努力家」で、

見事な論文『爆発圧着における金属の流体的挙動の解析』を書き上げ、「メタル

の魔術師」と呼ばれた彼なら、容易いことだろう。NASAも認める科学技術と、脳

梗塞になってまでボトルシップやステッキ型レーザーポインターを作れる器用さ・

忍耐強さ。きっちりと事件の伏線は出来上がってた。

                  

彼が凄いのは、物質だけじゃなくて、人の心も操ってる所だ。通話記録が残らない

内線電話を使って、ドラ息子の邦宏(波岡一喜)に水上バイクの話をして、窓際に

立たせるなんてのは、まったく簡単なこと。でも、わざと天才物理学者・湯川に謎解

きさせて警察に捕まったのは、なかなか高度な技だった。邦宏を殺して自分が捕ま

れば、愛する奈美恵にとっての厄介者が2人同時に消えて、遺産もすべて渡せるこ

とになる。ハイレベルなトリックを誇示することで、科学者としての遊び心やプライド

も満たされる。特に、中卒の町工場職人が、トップクラスの大学のエリート研究者に、

技を見せ付けた点は強調すべきだろう。

         

もっと大きくドラマ作りの観点から見れば、昔のNHKの人気番組『プロジェクトX』

で中島みゆきが歌ってた主題歌のように、目立たない『地上の星』が輝く姿を視聴

者へと見せ付けたわけだ。ただし、かなり屈折した形で。これは、資源にも体格に

も地理的条件にも恵まれない日本という小国への応援歌でもあるだろう。アイデア

とか丹念な技術・作業とかで頑張るしかないわけだ。

               

こうして、ある意味で日本的すぎる人間、友永の「操縦る」能力の高さはよく分かる

んだけど、本当に彼が人間を操れたのかどうかはかなり怪しい。すぐ気付くのは、

奈美恵の今後に対する不安だ。彼女の幸福だけを願ったはずなのに、殺人犯の

孤独な娘にしてしまって、面会に来る度に涙を浮かべさせることにもなってしまった。

恋人・紺野宗介(長谷川朝晴)との結婚にも暗雲がたれこめることになるだろう。理

由はどうであれ、人殺しの罪は重い。今は情状酌量を求めて頑張ろうと思ってる社

員たちも、やがて会社の評判が落ちて、取引や経営に支障が出てくれば、気持ち

が揺らいでくるだろう。そうでなくても銀行の貸し渋りが流行る現在、資金繰りに困っ

た会社が倒産する可能性も十分ある。

        

そうなって来て初めて、友永は事の重大性に気付くことになる。そして、刑務所で

一人淋しく後悔することになるだろう。つまり彼は結局、根本的に「操縦る」ことに

失敗してるのだ。自分の心を、自分の欲望を、そして、社会の動きを。この失敗は

当然とはいえ、彼の場合は文字通り致命的な失敗となった。命を奪われたドラ息子

にだって、明るい未来や幸せな人生の可能性はまだそれなりに残ってたのだ。。    

        

       ☆          ☆          ☆

科学は、新しい考えや解釈を我々にもたらしてくれる。でもそれより重要なのは、

未来の予想と、広い意味での「操縦」だ。もっと普通の言葉で言うなら、制御=

コントロール。意のままに物質を作り、破壊し、人間の生命を操る技術さえ次々と

創り出していく。ところが、肝心の原点、「意のまま」と言う時の自分の心自体は、

決して意のままにならない所が最大の問題で、その点は本編でも、第4話で殺人

兵器を作って実験した科学者・田上(香取慎吾)との対決とか、第9話・10話で

核兵器に接近してしまった恩師・木島(久米宏)との対決によく表れていた。

     

では、湯川自身はどうかと言うと、もちろん彼も全く自分の心を操れてないのだ。

大学で忙しいはずなのに、ビキニの女の子がウジャウジャいるとか草薙にそその

かされるとすぐ乗ってしまう。折角、ゼミの可愛くてナイスボディな女子大生が、恋

とビキニを前面に出して迫って来てるのに、「恋の単位は何だ」とかいう妙な理屈

をこねて、帰らせてしまう。おそらく彼は、しまった!と後悔した後、仕方なく携帯

で内海を代わりに呼び出しただろう♪ 塩野谷が湯川を操るのに失敗したという

のは不運な結果にすぎないのであって、むしろその原因となった湯川自身の自己

制御ミスを責めるべきラストシーンだった。ま、ビーチバレーのボールは単純な物

質だから、ちゃんと制御できてたようだけどネ。

               

こうしてみると、番組冒頭でいきなり、塩野谷が実験に大失敗して、実験室を泡だ

らけにしてしまったのも、操縦の本質的な難しさ、制御不可能性の象徴的表現のよ

うに感じられてくる。もっと言うなら、事故が起きる度に大騒ぎになる原子力発電所

のパロディだ。いつかの事故現場の写真に似てたように感じるのは私だけか。たと

えば、第9話の科学批判とかを思い出して欲しい。

             

予期しない出来事との出会いは、クリエイティブな側面と共に、危険な側面も持って

るのだ。泡に囲まれたまま、塩野谷や栗林の絶叫を無視して草薙と語る湯川はも

ちろん笑えるんだけど、実はあれも、ちょっとシニカル(冷笑的)なシーンでもあった

わけだ。失敗に気付かないまま、あるいは知らないフリをして平然さを保つ科学者

の、悲しいほど滑稽な姿。。

               

最後に、この番組で最も巧みに「操縦る」姿を現してたのは、ビキニの話で湯川

を操った草薙と言ってもいいけど、それよりはむしろ制作スタッフとスポンサー

ろう。トヨタのコラボCMを始めとして、長澤(ロッテ)や香里奈(資生堂・化粧惑星)

など、登場人物関連のCMを散りばめると共に、最後は思い切り、映画『容疑者X

の献身』のアピール。KOH+(コープラス:柴咲コウ&福山雅治)が歌う主題歌の

『最愛』をたっぷり見せた後で、プロモーション映像。もちろん、番組の中の学生

時代(三浦春馬が湯川の役)でも、映画に登場する天才数学者・石神(堤真一)や、

彼がこだわる難問「4色問題」がさりげなくアピールされてた(2冊の専門書)。

                

実際にどれだけの視聴者が「操縦」られて映画館に足を運ぶか分からないけど、

非常に巧みなコラボレーション、あるいはプロモーション活動だろう。ま、個人的

には、CMの使い方がちょっと気になったし、チャンネルを変えられてしまいそう

な22時47分のCM前に出たテロップ「驚くべき事件の真相が この後、明らかに

!!」に苦笑したのは確かだけどね。

       

いずれ公表される動員観客数や評判で、スタッフがどの程度「操縦る」ことに成功

してるのか、明らかになるだろう。もちろん、「操縦」された視聴者が悪いわけでも

何でもないので念のため。別に、「洗脳」と重ね合わせて非難するような、単純な

議論をしてるわけではないのだ。自分の期待通りに周囲が動くことを意図して努

力すること、広い意味で「操縦る」ことは、別におかしいことではない

           

ちなみに私自身は、先にアップした記事で、相当多くの読者をウチへと操ることに

成功したけど、それが今後にどうつながるのかとか、今書いてるこの記事が成功

するかどうかは全く自信ない。ま、それでもきっちり書き上げるのが、ブロガー魂っ

てもんだろう。自分の生活全体でいうと、もちろん操縦不可能な状態が続いてる

けどね。「落下」しないのが不思議なほど。。

        

という訳で、もう時間だ。一部の数式が「さっぱり分からない」ものだったのは心残

りだけど、全体としては「実に面白い」ドラマだった♪

ではまた。。☆彡

            
     
       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
P.S.1 今回のSPで、『操縦る』と共に原作となってたのが、『落下る』(おちる:

      『オール讀物』2006年9月号)。学生時代の湯川の活躍は、おそらくそ

      こからのものなんだろう。

  

      水を沸騰させてフタを締めた鍋を冷やすと、中の空気が冷やされて圧力

      が下がる。これは中学・高校レベルのボイル・シャルルの法則だ。で、

      対的に高い大気圧が、外側からフタを押さえつけることになって、鍋のフ

      タは開かない。高品質の鍋で上手くやれば、40kgの砂袋をぶら下げた

      ロープを巧みに操れるわけだ。

      ただし、フタの穴を塞いでる氷が溶けると、外の空気が入って、鍋の中

      の空気圧は外の大気圧に近づく。すると、外から押さえる力が薄れて、

      フタが開いて、砂袋(つまり女性)は「落下る」(おちる)わけだ。

        

P.S.2 珍しく長澤まさみがマトモな理屈を喋ってた部分も解説しとこう。ビーチ

      バレーのウンチクを湯川がビキニギャル達に話してる時の、「つまり、

      物理学におけ弾力と位置エネルギーの法則ですね」という得意げで妨

      害的な乱入のセリフ。

       

      ボールが強く叩かれた後、空中を飛ぶ間には、空気抵抗などを除くと、

      弾力のエネルギー(弾性エネルギー)と位置エネルギーと運動エネル

      ギーの和は一定のまま保存される。叩かれて凹んだボールは、弾性

      エネルギーを与えられたことになって、球形に戻る際にはそれが運動

      エネルギーへと変換される。つまり、スピードが増す。一方、高い位置

      で叩かれたボールは、下に向かうに連れて位置エネルギーを失い、そ

      の分はやはり運動エネルギーに変換されて、スピードが増す。

              

      簡単に言えば、高い位置で強くスパイクすれば、下でレシーブするのが

      難しいって話で、もちろんそんな当たり前の知識がビーチバレーの実技

      を手助けすることはほとんどないだろう。もっと単純で時間的ゆとりのあ

      るビリヤードなら、もうちょっと手助けになるかも知れないけど、ま、要す

      るに、ガリレオとか塩野谷とか、物理屋さんの変人ぶりを示す面白エピ

      ソードなわけだ。

    

P.S.3 ER流体が冒頭に出たから少し検索が入ってるけど、あれは本編第7話

      のエピソードを反復してるだけだから、ここで改めて取り上げはしない。

      下にリンク付きで掲載してある過去記事タイトルからどうぞ。

            

P.S.4 一番売れてる香里奈より、お姉さんの能世あんなや、えれなの日本的な

      顔立ちの方が可愛いと思うな。化粧惑星も、一番右の太田在がベスト。

      あと、ビキニより、露出度や密着度の高いワンピース(ワンショルダー、

      ベアトップなど)の方が萌えるね。

      エッ、聞いてない? あっ、そう♪

     

P.S.5 この調子なら、毎年でもスペシャルが作れるんじゃないかな。オリジナル

      脚本もありだし、塩野谷&内海の恋愛バトルもありだしね。栗林が出世

      して、AランチやBランチどころか、Cランチやスペシャル・ランチを注文

      する姿を見たいもんだ♪ 後釜の助手は、小淵沢(福井博章)よりむし

      ろ、渡辺美雪(高山都)か谷口紗江子(葵)かな。

    

P.S.6 検索してみると、この番組のサブタイトルが「操縦る」(あやつる)だって

      ことはあんまし触れられてないみたいだね。ってことは、ウチの記事の

      タイトルも、読み方さえ分からない変な言葉に見えちゃうわけか。ちょっ

      と失敗したかも。。(^^ゞ

     

P.S.7 視聴率20.8%という噂が本当なら、少なくともドラマ視聴者をこの番

      組へと「操縦る」ことには大成功したことになる。スタッフ&キャストの

      皆さん、おめでとう!☆彡

     

                      

cf.天才・湯川が示した物理学の解読と検証~『ガリレオ』第1話

   サンタと女、揺れる理系の男心~『ガリレオ』第2話

   ブランコとおにぎりでホカホカ~『ガリレオ』第3話

   科学と恋愛、2つの円端具流~『ガリレオ』第4話

   愛と矢、ひねくれた直進~『ガリレオ』第5話

   遠く離れたもののつながり~『ガリレオ』第6話

   つながりの中の細かい事~『ガリレオ』第7話

   結果が語る過剰なプロセス~『ガリレオ』第8話

   過剰な格差がもたらす劇的な出来事~『ガリレオ』第9話

   サンタを信じた科学者へのプレゼント~『ガリレオ』最終回

   解けない問題、χ(カイ)=愛 ~『ガリレオ 容疑者Xの献身』

       

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   『ガリレオ』第1話、レーザー光線の計算式

   『ガリレオ』第2話、光の屈折の計算式

   『ガリレオ』第3話、共振現象の証明

   『ガリレオ』第4話、超音波による泡の衝撃波に苦戦中・・

   『ガリレオ』第5話、キューピッドの黄金と鉛の矢は流行るかな♪

   『ガリレオ』第5話の数式、波動方程式の導出と一般解

   『ガリレオ』第6話の数式「フーリエ変換」について

   『ガリレオ』第7話、ER流体とトリックについて

   『ガリレオ』第8話の数式、アレニウスの式と2次反応速度式

   『ガリレオ』第8話の数式、2次反応速度式の計算と答

   『ガリレオ』第9話、雷の放電エネルギーの数式か・・

   『ガリレオ』最終回の数式1~熱伝導方程式

   『ガリレオ』最終回の数式2~熱伝導方程式の計算と答

   『ガリレオ』最終回、核爆弾処理シーンの数学的解説

   『ガリレオΦ(エピソードゼロ)』の数式と図について

   『ガリレオΦ』の数式、ナビエ・ストークス方程式

        

      ・・・・・・・・・・・・・・・・

   『ガリレオ』第1話、ドラマと原作の比較

   『ガリレオ』第4話、ドラマと原作の比較

   『ガリレオ』第5話、ドラマと原作の比較

   『ガリレオ』第6話、ドラマと原作の比較

   『ガリレオ』第7話、ドラマと原作の比較

   『ガリレオ』第8話、ドラマと原作の比較

   『ガリレオ』第1話の脚本チェック☆

        

      ・・・・・・・・・・・・・・・・

   『ガリレオ』レビュー、香港女性もウットリ♪

   『ガリレオ』民放連賞!スペシャルも映画も接近中☆

   読者&テンメイ、『ガリレオ』でエレクトーン大会出場♪

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