人は人間関係に何を求めるのか~野ブタ第5話
(☆2020年5月10日の追記: 再放送の後、この記事とは別の新たな長編レビューをアップ。
「花の街」、七色の谷を越えて、リボンのキャッチボール~『野ブタ。』第5話(再放送) )
「野ブタ。をプロデュース」第5話、悪夢のデート。
このドラマは一見、出演するアイドル達の人気に頼った単なる若者向け学園ドラマにすぎないようなイメージがあるかも知れない。実際ネット上でも、顔を見れれば十分って感じの言葉を目にすることがある。
確かに、カッコイイ男の子と可愛い女の子の高校生活を描いてるわけだし、そうゆう見方もありだろう。ただ、その一方で、毎回見終わった後まで色々と考えさせられるドラマだってことも事実。今回も味わい深い物語になってる。
あらすじは次の通り。野ブタ。=信子(堀北真希)は同じクラスのシッタカ(若葉竜也)からラブレターをもらう。信子が人気者になるにはキャピキャピ感が必要と言う修二(亀梨和也)は、信子に恋愛しろと提案。シッタカとまり子(戸田恵梨香)を利用してダブルデートを企画。信子に対する自分の気持ちに気付いてる彰(山下智久)は猛反対するものの、信子は修二に逆らえず、しぶしぶデートを承諾。
ダブルデートからシングルデートになった後、信子は「野ブタ。パワー注入」のアクションで気合を入れて、シッタカと水族館へ。たまたま飲み過ぎで倒れたおじいさんを介抱する信子の手に、おじいさんのよだれが付き、シッタカは「汚い」と叫んでしまう。デートは気まずく終了。
ずっと後をつけてた彰は、おじいさんを運ぶ救急車の中で、信子の手に触れながら褒めまくる。信子は、彰にデートの失敗を謝り、期待に応えて人気者になって2人にありがとうって言いたいんだと告げる。
翌日学校に、信子が男をもて遊んでると中傷するビラがばら撒かれ、信子はウソの恋愛なんて止めたいと言い出す。それどころか、人気者にもなりたくないと言ったため、プロデューサー修二と久々のケンカ。
最後は、期待に応えて人気者になろうと努力する信子の姿を彰が修二に見せ、修二が中傷ビラをクシャクシャに丸めて信子とキャッチボール。何とか、仲直りする・・・・・・
今回は、人が人間関係の中で求めているものは何なのか、という話。元々人気者へのプロデュースというのは偶然生じたもので、する方もされる方も、実はそれほど大した事じゃない。特に、クラスのイジメが落ち着いた今となっては、無理して人気者になるだけの理由なんてない。
だけど、偶然のプロデュース・ゲームから生じた人間関係は、3人にとってかけがえの無いものになっている。その重要性はそれぞれにとって微妙に異なり、簡単にまとめると、修二にとって大切なのは友情、信子は友情と修二への愛情、彰は友情と信子への愛情。いずれにせよ、人気者を目指すこと自体はもはやオマケにすぎない。
ところが、そのオマケ抜きに3人が付き合うのは、なかなか難しい。これまでの経緯や流れもあるし、共通の目的が無くなると結束は緩んでしまう。だから、本来はオマケになってるプロデュース・ゲームとの、微妙な距離感や向き合い方が問題になってくる。
信子は彰に言った。
「期待に応えたかった。上手くいって、みんなにありがとうって言いたかった」
また、内心では次のようにささやいてた。
「私はいつも、2人にボールを投げてもらってばかりなんだよね。
でも、受けるのが精一杯。だからいつか、そのボールを投げ返したいと
思っている。2人のグローブに、スポンって届くように投げ返せたら、
気持ちいいだろうな・・・」
本質的に重要なのは、2人と対等な立場で双方向的に付き合うこと。だけど、そもそもプロデュース・ゲームっていうのは対等じゃないし、かと言って他の付き合い方も見つからない。仕方なく、時々プロデューサーに抵抗しながらも、当面は現状維持するしかない。
一方、修二がさほど意識しないままにこだわってるのは、自分自身=オレ。
「オレやっぱさぁ、オレがお前を人気者にしたい」
仲直りの際のこの言葉には、二重の意味が込められている。一つは、他の人(ひょっとすると彰も含む)でなく「オレが」っていう意味。もう一つは、信子のプロデュースにこだわってるのが「オレ」自身ってこと。
信子と彰の大切さは既に感じてるし、人気者になった信子の笑い転げる姿も見てみたい。だけどやっぱり、「オレ」が当面夢中になれるゲームって側面は消えてない。だからこそ、信子がゲームを止めたいと言った時に激怒したのだ。その怒りは本当は、相手が嫌がってるゲームにこだわってしまう自分自身に向けられるべきものなんだけど、まだそこまでは大人になれない。
「オレは今、わけもなく思っている。負けたくない。人の幸せを素直に喜べねぇ奴にだけは、オレは絶対に負けたくない。」
もちろん、明らかな悪意に対する常識的な正義感ってものはあるだろう。ただ、そのレベルを超えて、「わけもなく・・・絶対に負けたくない」。つまり、人気者ゲームは悪意との対決ゲームでもあり、ハマってしまう自分の内面の方へ目を向けるべきなのに、まだ外側の悪意しか見えてないってこと。
最後に、彰の立場はますます微妙。修二より精神的に大人だから、この状況の不自然さには気付いてるだろうし、信子の思いも分かってる。でも、自分の思いはもはや抑えられない・・・・・・
今後、3人の関係とプロデュース・ゲームがどうなっていくのか、悪意の今後はどうなるのか、信子に女友達(助けたおじいさんの孫)が出来たことが3人にどう影響するのか。ますます今後の展開が楽しみだ♪
オマケ: トリビア的解説を一つ。最後に信子がかすかな声で歌ってたのは、学校の音楽で歌った覚えのある「花の街」。シッタカの花占いと共に、花で恋心を表す細かい演出になってる。
この曲とか第3話の「真夜中のギター」とか、選曲がやたら渋いのは、年配者へのサービスか、それともスタッフの年齢層の問題か。。
P.S. 「野ブタ。をプロデュース」、面白い♪(第1話の記事)
・・・・・・・・・・・・・・・
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コメント
ドラマをそこまで真剣に語れるっすごい。
別にバカにしてるとかぢゃないよ!!
ただ、人間の本質、心理までを深く考え、このよーなブログを書いている事に驚き、コメントさせてもらってます。
あなたのブログ、何だか読んでいて面白いです。
また見ます。。
投稿: ゆうどん | 2005年11月13日 (日) 01時53分
>ゆうどん様
素早いコメント、どうもありがとうございます<(_ _)>
ドラマをここまでマジメに語るのもすごい事でしょうが、
こんな理屈っぽい記事を毎回かなりの人が読みに来て
くださるってのも、なかなかすごい事だと思ってます。
実はこれでもかなり遠慮してるので、どこまで理屈を
こねるとアクセスが激減するのか、試してみたいですね(^^)
投稿: テンメイ | 2005年11月13日 (日) 02時03分
TB&コメントありがとうございました。
信子に友達が出来たことで、三人の関係が微妙に変わってくるんでしょうかね。彰と修二の信子への想いも変わってきてるので、これからの展開が気になります。
投稿: naomi-0604 | 2005年11月14日 (月) 15時50分
>naomiさん
コメントどうもありがとうございます。
女友達出現の影響は読みにくいですよね。
ありがちなパターンだと、つられて他の数人の
女の子も仲良くなるって展開でしょうが、それだと
ますます人気者プロデュースの意味がなくなります。
あと、今後のまり子の役回りも分かりにくい。。
今さら、単なるいいコにするのは変だと思いますが。
ドラマ作りは結構、臨機応変にやってるようなので、
番組プロデューサーもまだ迷ってて、視聴者の反応を
見てるのかも知れませんね。
視聴者の最大公約数的な希望は、修二とまり子、
信子と彰が仲良くなるって展開でしょうか。
今後も楽しみですね♪
投稿: テンメイ | 2005年11月14日 (月) 16時25分