愛がもたらす夜の太陽~白夜行第1話
(☆2015年12月28日追記: 特典映像の記事をアップ。
ドラマ『白夜行』完全版DVD-BOX、オリジナル・エンディングの感想 )
(☆同年3月5日: 映画版の記事をアップ。
抑制された上質の不運、倒錯した愛~映画『白夜行』レビュー )
☆ ☆ ☆
今クールに記事を書くドラマの候補作4本の1つ、東野圭吾原作、『白夜行』。
別の候補作『けものみち』と時間帯が重なってるけど、2時間近くのスペシャル
版だし、こっちは話を知らないので新鮮味がある。同じ2人が主演した『世界の
中心で、愛をさけぶ』も良かった。という訳で、こちらの録画はまず決定。ただし、
『けものみち』もリアルタイムで見て、そっちの記事を先にアップ。
そのため『白夜行』を見る時には疲れてたし時間も無くなってて、雑用をこなし
ながら適当に見てた。ところが、不覚にも途中で涙ぐんでしまった。親殺しの十
字架を背負った幼い2人が、愛し合いながらも別れる駅のホームの場面。。。
本来なら感情移入のしようがないような、現実にはほとんどあり得ない極限状
況が描かれたドラマなのに、なぜだかスッと入って行けた。人間の心理ってい
うのは不思議なもんだ。という訳で、来週以降も書くかどうかは分からないけ
ど、とりあえず1回、お試しヴァージョンで記事を書いておこう。
あらすじは次の通り。2005年のクリスマス・イブ。クラブらしき夜の店を新たに
出した唐沢雪穂(綾瀬はるか)は、お客を送り出した店先で、サンタクロース姿
の若い男・桐原亮司(山田孝之)が血まみれで倒れてるのに気づく。胸にはハ
サミが突き刺さったまま。近づこうとした雪穂の脳裏に、昔の情景がいくつかフ
ラッシュバックし、彼女は結局、男から離れて店に戻る。店の名は、「R&Y」。
その上には、太陽みたいなマーク。雪穂の指にも、同じ形の指輪。
後で分かる事だが、店名は「亮司と雪穂」、マークは幼い亮司が雪穂にプレゼ
ントした切り絵の太陽だった。この後、14年前の状況へと映像はバックする。
なお、血まみれの亮司の姿が幻想なのか現実なのかは、今のところ不明。
14年前、ふとしたキッカケで知り合った11才の小学生、亮司と雪穂。亮司は、
母・弥生子(麻生祐未)が自宅で浮気してるせいで、居場所がなくて寂しい思い
をしている。相手は、父・洋介(平田満)が自宅で経営する質屋「きりはら」の従
業員・松浦(渡部篤郎)。
一方雪穂は、父に先立たれたために母・美千代(河合美智子)と二人で貧しい
生活。美千代は金に困って、物だけでなく身体も「きりはら」で売ってるらしく、
雪穂まで亮司の父に売ってしまった。
笑顔を失った雪穂が、なぜかドブ川にたたずんでる所を、亮司がたまたま目
にする。その後、偶然図書館で雪穂を見かけた亮司が雪穂にたずねると、ド
ブに咲く花を探してたとの事。亮司は日ごろから馴染んでる百科事典で探し、
ドロの中で咲くハスのことだろうと考え、得意の切り絵でハスの花を作って夜
のドブ川に浮かべて雪穂に見せた。感激した雪穂はようやく亮司に心を開き、
笑顔を見せると共に、お返しとしてドブ川に映った満月を花に見立ててプレ
ゼント。亮司も感激する。
仲良くなった二人だが、亮司の父が自分をもてあそぶ洋介だと知った雪穂は、
突然亮司との関係を断とうとする。落ち込んだ亮司は、自分たちが遊び場に
してるバブルの残骸のビルに入っていく、雪穂と美千代を発見。ダクトを伝って
部屋をのぞくと、父が雪穂の裸体の写真を撮っていた。絶望と衝撃に襲われた
亮司は部屋に乗り込み、切り絵用のハサミで父を突き刺して殺してしまう。
呆然とする亮司に、「やったのは私だよ」と涙の笑顔を見せた雪穂は、全くの
他人のふりをしようと提案。指きりで約束した後、ハサミを持つ雪穂を置き去
りにして亮司は家に逃げ帰る。その後、雪穂は亮司にもらった切り絵をドブ川
に流してお別れの儀式をすませ、母を犯人に仕立てるために自宅で母とガス
心中を図る。ところが、自分だけ助かってしまい、母が犯人とされて事件は一
応解決。ただし、自殺した殺人犯が残した娘として雪穂は生きることに。一方、
亮司は、父を殺された息子として生きることに。
刑事の笹垣(武田鉄矢)だけは、この二人が犯人だと確信していたが、冤罪
で人を死なせるハメになった過去をもつだけに、詰めきれず。離れ離れになっ
た二人だが、凶器のハサミを笹垣から形見としてもらった雪穂が、一人で遠
くの街(施設らしい)へ旅立つ時に、駅のホームで亮司が追いかけて来た。雪
穂が、図書館の愛読書『風と共に去りぬ』に挟んでおいた手紙に、亮司が気
づいたから。
とどまるように言う亮司を振り切る雪穂。仕方なくあきらめた亮二は、自分に
出来る唯一のことをする。雪穂がホームに落としたハサミを使って、手紙から
太陽の切り絵を作り、別れのプレゼント。これは雪穂の大切な物として部屋
に飾られ、後に店のマークにも使われることになった。
そして、別れから7年が経過、2人とも高校生。雪穂は、施設から唐沢礼子
(八千草薫)のもとに引き取られ、亮司の母は例の殺人現場のビルでスナック
「やえこ」を開く。これで雪穂を覚えてるのは図書館の司書・真文(余貴美子)と
松浦だけだと思ってた亮司の目の前に突然、雪穂を覚えてる第三の人物が登
場。それは、自分たちを疑ってたあの刑事・笹垣だった・・・・・・
父を殺した息子と、母を殺した娘。わずか11才で、太陽のない夜を歩む運命
へと導かれた2人。TBSのHPに掲載されてる記者会見で、雪穂の育ての母を
演じる八千草薫が、ギリシャ悲劇のようだと語っている。これはおそらく、父殺し
の『オィディプス王』と母殺しの『エレクトラ』を指している。『白夜行』とでは相違
点も多いけど、愛のために親を殺す物語っていう意味で、本質的には同じだ。
親を殺した者は、もはや昼間の太陽の下を歩くことはできず、暗い夜の生活
を送ることになるけど、愛ゆえの親殺しならわずかな光は差す。闇夜ではなく
うっすら明るい白夜をもたらすのは、夜の太陽=ドブ川に浮かぶ切り絵のハス
の花=ドブ川に映る満月=暗い愛の光。偽物の冷たい太陽でも、不安や恐れ
を抱きつつ夜道を歩く人達にとっては、唯一の希望の光だろう。ただし、身体
を暖めてくれることはない。むしろ、夜道へと人を誘い込むことで、身体が冷え
切った状態へと追い込むかも知れない。。。
この愛が、制作者サイドの言うような「純愛」の名に値するのかどうか、今の所
まだ何ともいえない。この後も、夜のドブ川みたいな2人の生き様が描き続けら
れるんだろう。『風と共に去りぬ』のヒロインのように、人を殺してでも前向きに
進もうとする雪穂と、タイムマシンに乗ったら過去を目指してしまう、後ろ向きの
亮司の、暗く重たい人生の交錯。
賛否両論を覚悟した挑戦的作品が、今後どう展開し、どんな反響を呼ぶのか、
注意深く見守りたい。ただ、今の時点で一つだけ言えることがある。『けものみ
ち』以上に暗い世界を描きつつ、こちらだけ涙を誘うことが出来たのは、やは
り基本に愛があるからだろう。
大きく間違ってるがゆえに、あまりにも切ない愛が。。。
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コメント
冒頭のシーンは現実なのか妄想なのか
ものすごく気になりますよね!
私も『けものみち』をオンタイムで見て
『白夜行』録画していたんですが、
泣けましたね~
投稿: あい | 2006年1月15日 (日) 22時09分
>あい様
コメントどうもありがとうございます♪
噂だと原作者はかなりイジワルらしいので、ドラマの方も、
冒頭のシーンが現実か幻想か、曖昧なままにするのかも♪
フツーに考えれば、幻想でしょうけどね。。
来週も一緒に、『けものみち』と『白夜行』を
ダブルで見ましょうか(^^)
投稿: テンメイ | 2006年1月16日 (月) 02時32分