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屈折した愛と良心~『医龍』第7話

霧島は本当に可哀想な奴だ。皮肉じゃなく文字通りの意味で。朝田にNo.1

心臓外科医の座を奪われた上に、愛する女性を2人とも取られたとは。。

今回は極端な寝不足と時間の無さとで、記事を1回休みたかったんだけど、

霧島&ミキと荒瀬に関する重要な描写があったので、やっぱり記事を書い

とこう。多少、手抜き気味かも。。♪

   

あらすじは公式HPに詳しいので手短に。って言うか、今回は物語より人物

説明が大部分だった。霧島(北村一輝)にバチスタの報道で屈辱を味わっ

たチーム・ドラゴン。ミキ(水川あさみ)は責任を感じて、藤吉(佐々木蔵之

介)加藤(稲森いずみ)に事情を打ち明ける。実は霧島とミキは異母兄弟。

霧島が正妻の子、ミキが愛人の子。妻との離婚後、ミキ達は霧島邸に迎え

られ、霧島の父の世話をさせられるなど屈辱的な立場におかれる。父の死

後、霧島が無理やりミキ達の支配を続け、ミキは北日本大学のオペ看に。

そこで出会ったのが朝田(坂口憲ニ)。

はじめ霧島は、天才的後輩の朝田と上手くやってた。けれども、朝田が執

刀医、霧島が助手、ミキがオペ看のある手術で、霧島は朝田に実力の違

いを見せ付けられ、愛する義妹のミキも朝田に近づいていく。その後霧島

は、患者が死亡した医療事故の責任を無理やり朝田に押し付け、朝田は

医局を追い出されてNGOへ。ところが、ミキも朝田に同行し、義兄の霧島

のもとを離れてしまう。こうゆう事情で、霧島は朝田とミキに敵意をもってる、

とミキは説明するが、加藤との話はまだ知らない。

一方、加藤は、野口(岸部一徳)から冷たいプレッシャーを受けつつ、霧島

を呼び出す。そこで別れを告げられ、泣き崩れてる所を朝田に助けられた。

そんな中、霧島の件とは別に、バチスタに必要な人間だと再認識された

瀬(阿部サダヲ)。彼について、鬼頭(夏木マリ)の話や伊集院(小池徹平)

のネット検索から意外な話が分かった。荒瀬は昔、麻酔の新薬の臨床実験

チームに所属して、多くの患者を死なせてしまった上に、隠蔽をもくろむ製

薬会社から大金をもらったとの事。それ以降、腕はあるけどやる気のない、

やたら金を要求する人間に荒瀬はなってしまった。それでも朝田は、過去

は関係ないといい、荒瀬に挑発的な誘い文句を投げかけた。

そしてラスト。なぜか霧島のもとに突然、朝田が現れて。。。

     

まず、いいシーンから始めよう。霧島に裏切られ、別れも告げられ、大粒の

雨の中、泣き崩れる加藤。そこに朝田がそっと傘を差し出し、大きな手で

引き上げる。さらに、病院に戻った後、朝田が温かい飲み物を手渡すと、加

藤が口を開いた。 

 「霧島って、あなたを医局から追い出した張本人だったのね。私、霧島と

  付き合ってた。まさかこんな事に。私のせいで・・」

 「仮眠室にいる。何かあったら呼んでくれ」

さえぎるように口を挟み、その場を去った朝田。ここには二つの意味がある。

まず、霧島にバチスタ情報をもらしてたなんて話はもう気にするな、言わなく

ていい、という心配り。ちなみにこれは、『ギャルサー』第3話でレミがナギサ

に見せた配慮と同じものだ。もう一つは、朝田が意図したものかどうかは分

からないけど、加藤との距離の維持。恋人にひどい仕打ちを受けて捨てられ

た加藤が、温かく支えてくれた朝田に心引かれるのは自然な事。でも、それ

をそのまま受け止めるのはホメられた行為じゃないし、そもそも朝田にその

気はなさそうだ。ともかく、これでますます朝田が加藤の心に入り込んだこと

だけは間違いない。

      

次に、可哀想な霧島。当事者のミキがどの程度感じてるかはともかく、視聴

者にとっては、霧島のミキに対する屈折した愛は明らか。ミキは愛人の子で、

妹だし、お手伝いさん的立場。自分は正妻の子で、兄だし、病院を引き継ぐ

超エリート。明らかに霧島の方が「上」の立場で、それを保ったままミキを支

配的に愛そうとしてる。この支配欲には、ミキの母のせいで自分の母が出て

行ったんじゃないかっていう子供心の恨みも関わってただろう。

ところが、臨床医として自分より「上」に朝田が立ち、そこにミキが近づいた

ことで、霧島の屈折した愛が崩壊しただけでなく、自己愛=プライドにも亀裂

が生じてしまった。さらに追い討ちをかけたのが、恋人・加藤による朝田のバ

チスタ起用。偶然とはいえ、霧島の衝撃は大きい。

 「どうして、どうして朝田なんかに頼った?」

別れ際のこの言葉から、加藤よりも先に、霧島が心の中で泣き崩れてたの

は明らかだろう。再び傷ついた愛と自己愛が、霧島をバチスタに向かわせた

のは自然なこと。バチスタは、朝田とミキと加藤が全力を注いでるものだから。

     

最後に、痛々しい姿の荒瀬。チーム全体の流れとはいえ、若いうちに大勢の

患者の命を奪ってしまい、おまけに大金まで受け取ってしまった。マトモな医

者なら、良心の呵責に耐え切れないはず。本来なら、警察とかマスコミを利

用して、今からでも罪を明らかにした上で、何らかの「裁き」を受けるべき所

だろうけど、理由はともかくそれはできないようだ。そこで、屈折した良心は、

自分を昔と同じ姿へと貶めることによって制裁を加える。患者の命よりも金

に執着する、最低の医者へと。

もちろん、そんな良心の制裁を受けるよりも、患者に全力を注ぐほうが償い

になるのは当然だけど、そこに向かうためには、ある精神的衝撃が必要な

んだろう。朝田の天才的手腕の凄さという衝撃が。

 「最高の麻酔医なら、最高の外科医と組みたくなる・・・試してみろよ♪」

朝田の挑発は、間違いなく荒瀬の心に突き刺さっただろう。。。

      

今回、説明的な内容だったせいもあるのか、演出面がイマイチだった。特に、

屋上で伊集院とミキと藤吉が一列に並んで朝田を見守るシーンは不自然で、

しかも必要ない。原作の影響なのかも知れないけど、このドラマとしては珍し

く首を傾げてしまった。また、昔のミキが霧島に別れを告げたシーンのCGの

使い方も酷い。ドラマ全体の映像と全く調和してないし、これまた必要ない。

こういったシーンは、今後見たくないもんだ。折角の完成度の高さが台無し。。

それにしても、霧島が握手してた年配の男性は何者なのか? 外国人医師

ならちゃんと映したはず。顔を映さなかったって事は、裏で暗躍する何者かが

いるんだろうか。ひょっとして、実は野口とか? また木原(池田鉄洋)はチー

ムに入らないのかな。そして、朝田は霧島に何を言おうとしてるのか。いずれ

にせよ、2回目のバチスタや論文も含めて、来週にまた期待しよう。

ただし、来週こそ記事を休むかも。。

       

P.S.ミキは場違いなくらい妙に脚線美を強調するなぁ。後ろのバラエティ番

    組でもそうだったし、事務所の方針だろうか。キレイだからいいけどネ♪

     

P.S.2 やっぱり伊集院はハリーポッターだったのか♪

      

P.S.3 野口の「エントラッセンしてもらう」って、ドイツ語のentlassenは、

      「去らせる」とか「解雇する」って意味の他動詞だから、「エントラッ

      センさせてもらう」って言うべきだと思うけど、誰も突っ込まないの?

    

cf.権威的秩序vs破壊的天才~『医龍』第1話

   完成度の高い本格派~『医龍』第2話

   誤解と対立の爽やかな克服~『医龍』第3話

   君を必要としている人はいる~『医龍』第4話

   氷の涙~『医龍』第5話

   極限状況における人間の姿~『医龍』第6話

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