光の忘却、闇の過剰~『タイヨウのうた』第6話
残念ながら、ハズレの回だ。今までで一番悪い。薫(沢尻エリカ)も美咲
(佐藤めぐみ)も孝治(山田孝之)も好きだし、タイヨウの記事も最後まで書
き続けるとは思う。でも、この回をホメるのはムリだし、ホメるべきでもない。
ここ数ヶ月で見た全てのドラマの中でも、ワースト5に入るだろう。一体どう
して、こんな話にしたんだろう。最近、独自路線を突っ走って来たドラマ記事
だけど、今回は時間も無いし、わりとフツーに批判記事を書いてみたい。
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まずはあらすじを簡単に。孝治のギターで薫が歌う姿を見た3人は、バンド
を組むことに。孝治と薫も巻き込んで、XP患者の呼称「ムーンチャイルド」
をバンド名にして、一ヶ月以内にあるバンドフェスティバル出場を決意。素
人の3人には、修(竹中直人)の特訓も。ところが、折角みんなで盛り上がっ
てる所に暗い影が忍び寄る。孝治が4年前、麻美(松下奈緒)を守るために
起こした暴力事件で少年院入りした時の仲間が、今のツレと共に孝治に接
近。相手にしない孝治を見て、デートの待ち合わせの場で薫を襲う。幸い、
間一髪で助かったものの、孝治の暗い過去や麻美との重いつながりが明る
みに。薫にとって何がいいのかを考えた孝治は、薫から離れることを決意。
そうやって私から逃げるのは卑怯だと薫は怒るものの、結局二人の距離は
遠ざかる。そんな時、ゴーストライター関連で苦悩する麻美が再び孝治の前
へ。昔に戻りたいと、孝治を抱き締めた。。
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『白夜行』というドラマは、徹底的に人間や社会の「闇」にこだわって成功した。
その成功の3分の1くらいは、笹垣(武田鉄矢)というくすんだ「光」のおかげ
だったが、中心はあくまで闇だ。けれども、『タイヨウのうた』は根本的に違う。
これは難病XPがもたらす巨大な闇を消し去ろうとする光のきらめきやはかな
さを描くべきドラマだ。第一話冒頭が、強烈な太陽の光で始まったことが象徴
的だった。「白夜」と「タイヨウ」のコントラストは明確なのだ。
タイヨウは、薫の難病という中心的な闇に加えて、孝治と麻美を包み込む周
縁的な闇も用意する。ここまでは別にいい。ところが、さらに2つ、余計な闇を
導入した。一つはレイサ。原史奈はわりと好きだから、先日はつい応援してし
まったけど、マジメな話、悪役レイサは不要だ。麻美をゴーストライター使用に
向かわせようとする今回のレイサの登場も、不要というより無い方がいい。
そしてもう一つ、全く余計な闇が、孝治の昔の仲間とそのツレ。彼らのレイプ
未遂も、全く不要だし、男性視聴者へのサービスなら可愛い服装と演技だけ
で十分なはず。何もしなくても魅力的なヒロインなんだから。不快なシーンで
無駄な時間を使ったあと、ケンカ別れした薫に「ホントは、抱き締めたかった」
と独白させて、代わりに麻美が孝治を抱き締めるって演出も、あまりに唐突
で不自然。唖然としたままドラマが終わってしまうハメになった。。
一般に大人の社会では、他人のやる事に文句だけ言う人間は相手にされな
い。そこで、代案を提示しよう。この回はどうすべきだったのか。要するに、レ
イプ未遂なんかじゃなくて「うた」に時間を使えば良かったのだ。隆介(川村陽
介)、雄太(田中圭)、晴男(濱田岳)の3人(orみんな)の練習ももっと映すべ
きだけど、もっと重要なのは薫と孝治のユニット。突然ギターが弾けなくなっ
た薫が、孝治のギターで歌うっていう劇的な変化が、まるで何事も無かったか
のように素通りされていた。ギター止めてネイルができたと微笑んで、2倍楽し
かったと感謝しただけ。つい先日死のうとまで思いつめた難病ストリート・ミュー
ジシャンの葛藤・困惑・不安・喪失感が、完全に無視されている。突然ギター
を再開することになった恋人の複雑な思いの描写も、山田の個人的演技だけ
に頼っている。この部分こそ本筋で、しっかり描くに値する箇所なのだ。レイプ
事件をキッカケに2人を引き離すくらいなら、ユニットが上手く行かなくて一旦
離れる方が遥かに自然だった。。
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沢尻や山田の個人的魅力で何とか踏ん張ってるものの、これでこのドラマは
ますます苦しくなった。次回は華やかなフェスティバルが映し出されるようだけ
ど、出来ればまたゴレンジャー的な起死回生のアイデアを出して欲しい所だ。
もっと光を! ではまた。。☆彡
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コメント
テンメイさん、はじめまして。
タイヨウのうたで検索していてたどりつきました。
いちいちうんうんと納得してしまう記事でした。
私も今回の後半エピソード要らなかったなと感じていて、
じゃあ何をもって孝治に過去の話を薫に話し出すきっかけを
作ればよかったのかを考えてました。
要は孝治が「なぜギターをやめたのか」、「そのことに麻美はどう関係していたのか」このことを薫が知る展開にもっていければよかっただけなので、テンメイさんの2人のデュオがうまくいかずに…という流れが描かれていたなら、すごく
素敵な話になったと思います。ちょっと嫉妬しちゃう薫とかでもかわいかったし。
それと友人たち一人一人をもっと掘り下げて、どうして今バンドなのか、描いたらよかったのにと思います。
私は山田孝之のファンなのですが、それだけで見続けるにはどうにもつらくなってきました。見ますけど(笑)。
思うにこの脚本家さんは「白夜行」を見ていて、それに大いに影響を受けているような気がします。ナレーションとかサブタイとか。
でも物語の方向性として、今週はあちゃーでしたね。
またお邪魔します。
投稿: balineko | 2006年8月21日 (月) 08時09分
>balinekoさん
はじめまして。コメントどうもです♪
おっしゃる通り、ギターと麻美の話が必要なだけだから、
過去の事件は再現映像で僅かに見せる程度に抑えて、
あとは孝治がしゃべっておしまいにすれば良かったのです。
バンドは、もうちょっとだけ説明が欲しい所。
あんまりやると、中心がボケてしまうので。
まあ、「童貞捨てるため」って説明を薫の前で口ごもった
孝治の姿は、ちょっと面白かったですけどネ。。(^^)
投稿: テンメイ | 2006年8月21日 (月) 22時49分