『大山倍達正伝』購入♪
大山倍達「ゴッドハンド伝説」のウソと題する記事の見出しが載った、週刊現代
9月30日号の広告を見た時は、どうせまたレベルの低い記事だろ、と感じてし
まった。世界に広がる極真空手を一代で築きあげた故・大山倍達に関する武勇
伝の多くに、少なからずの脚色やウソや間違いが含まれていることは、格闘技
ファンの間では常識に近いことだろう。どうせまた、昔から分かってる小さいネタ
をほじくり返して騒ぎ立てるくだらない記事だろうというのが最初の印象だった。
ただ、私は単なる格闘技ファンじゃなくて、昔は熱烈な極真ファン、大山ファン
だった。大山の著書だけでも10冊以上買って愛読してたし、大山が愛してた
(とされてた)吉川英治の長編『宮本武蔵』も通しで3回読んでる。もちろん、梶
原一騎原作の『空手バカ一代』は、マンガもアニメも思い切りハマってた。極真
の猛者たちの著書も10冊近く買って読んでる。
本当に憧れの対象だったから、その後かなり幻想が崩れてしまった後も、どう
しても気になってしまう。昔大好きだった恋人って感じだ。たとえメッキが所々
はげても、分裂騒動が続いてても、格闘イベントでKO負けするシーンがテレビ
で度々映されても、やっぱり嫌いになれないし、忘れることもできない。メディア
の報道にも、つい目が行ってしまう。。
という訳で、さほど期待せずに週刊現代の記事をチェックした所、記事独自の
文章や情報は平凡だったものの、気になる情報源が載ってた。それが、小島一
志・塚本佳子『大山倍達正伝』(新潮社)だ。これまでの膨大な情報に独自の
取材や体験を踏まえてまとめ上げられた、決定版的書物らしい。これは一度見
ておかなきゃと思い、あちこちの書店で探すものの、見当たらず。その間、この
本に対する評判の良さも耳に入って来た。これは注文するしかないなと思って
たら、遂に仕事帰りの大手書店で発見。
今まで無かったから、要するに品切れだったってことかと思い、巻末をチェック。
すると、7月30日発行で、9月30日に早くも4刷となっている。やっぱり、かな
り売れてるんだ。その場でパラパラめくって、出来の良さを確信。620ページ
のハードカバー書き下ろしで2300円って値段も良心的だ。著者も問題なし。
小島は元『月刊空手道』『月刊武道空手』編集長、塚本は元『新極真空手』編
集長。経験も人脈も十分そうだし、筆力もある。当然、即購入を決定♪
電車の中でサラッと読むだけで、ワクワクして来る。本の帯の宣伝文句「衝撃
ノンフィクション!!日本と韓国、昭和の闇に封印された哀しき真実」って言葉
にウソはない。文章や議論がしっかりしてるし、巻末の参考文献も充実。残念
なのは、写真がないことと、索引が付いてないことくらいか。まあコストパフォー
マンスとか権利問題とかで仕方なかったんだろう。そんなものは玉にキズ。間
違いなく見事な作品だ。
肝心の内容は、塚本執筆の第一部「人間・崔永宜(チェヨンイ)」と、小島執筆
の第二部「空手家・大山倍達」の二部構成。格闘技ファンとしては、当然第二
部にひかれてしまうが、実際には第一部の意味合いが非常に大きい。つまり、
なぜ虚構の大山倍達伝説が築き上げられたのか、その理由や背景を考える
上で、彼と朝鮮半島との関わりが決定的に重要だからだ。
例えば、第二部で「第一回全日本空手道選手権優勝」という伝説に関する
詳細な検証が行われてる。その説明は、彼が死ぬまで故郷の韓国(旧朝
鮮)と深く関わり続けながらもそれを隠して日本人として生きようとしていた
事実と密接に結びついたものだ。あくまで、第一部があってこその第二部
なのだ。
なお、週刊現代の記事でも触れてあったと思うが、この『正伝』は決して大山
や極真の価値を否定するものではない。序章の次の言葉を引用しておこう。
「伝説」に包まれていた「虚像」を取り払ってなお、大山倍達が十分に
魅力溢れる人間であり、超人的な実力を持った空手家であったという
「真実」は微塵も揺るがない・・・(p.19)
結局、帰宅後に明け方まで一気に読み通して、今日は一日フラフラ状態になっ
てしまった。そろそろ寝る時間なので、今回はとりあえずこの辺で。できれば今
後、内容に関して2回くらい記事を書きたいと思ってる。非常に優れた労作では
あるけど、そもそも伝記に「決定版」などあり得ないので、疑問点や問題点など
もきっちり書いておきたい。
ただ、果たしてこんな記事読む人いるのかな? 普段ウチでは書いてない内容
だから、ランニングファン・自転車ファン・ドラマファンには完璧に無視されそう
だな。検索エンジンでの扱いがポイントか。いずれにせよ、ここ1週間くらいの
アクセス状況が楽しみだ。ではまた。。☆彡
cf. 『実録!!極真大乱』購入♪
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コメント
「大山倍達正伝」の記事、楽しみにしています。
男なら、憧れますよね。実は私も「空手バカ一代」にはまって
空手を始めたひとりです。
投稿: じゅん吉 | 2006年10月 6日 (金) 13時49分
>じゅん吉さん
はじめまして。コメントありがとうございます♪
実は僕がランニングを始めたのも、空手の基礎
体力作りって意味が大きかったんですよ。
確か『空手バカ一代』でも、全身運動としての
ランニングの重要性は強調されてましたからね。
『正伝』の記事、少し時間がかかるかも知れませんが
書いてみようかなとは思ってます。
ちなみに、今そちらに書き込みしようとしたら、
なぜか画面では表示されませんでした。
一旦チェックするって意味でしょうかね。。
投稿: テンメイ | 2006年10月 6日 (金) 19時02分
テンメイさん、始めまして。
私は学生に大好きだった空手の魅力を思い出して、最近また娘たちと一緒に極真系空手をやっているおばさんです。
大山先生というと、本当に今でも道場では神さまのような存在。「お前たちは孫弟子なんだぞっ」っていつもはっぱをかけられてます。
もちろん伝説もいっぱいでしょうけれど、極真はやっぱすごいです~!!私は女だから、激しい組手はやりませんが、毎回の稽古に感動してしまいます。
また大山先生について、いろいろ教えてください。
投稿: ぐみ | 2006年10月19日 (木) 14時05分
>ぐみさん
はじめまして。コメントありがとうございます♪
そちらを伺ってみましたが、色々と凄い方ですネ☆
上段回し蹴りで秒殺されたって感じ。恐れ入りました。。
これから一週間おきくらいに、数本の極真空手記事を
書こうと思ってます。数日以内にスタート。
宜しければまたご一読ください♪
投稿: テンメイ | 2006年10月19日 (木) 22時10分