ドラマ・演劇・人生、3重構造への挑戦~『役者魂!』最終回
泣いてしまった。。先週に続いて今週も。。今年はブログのためって意味もあって
かなりドラマを見たけど、その中でたったひとつ涙を流してしまったのが『役者魂!』
だ。先週なんて、画面を全く見ずに雑用をこなしながら音声だけ聞いてたのに、後
半の別れの決断シーンで涙がこぼれた。瞳美(松たか子)の気持ちが分かりすぎ
るくらいよく分かったのだ。私は男だけど、もし瞳美の役=立場だったら、あの場面
で全く同じ演技=行動をしていた。だから、感情移入なんてよそよそしいものじゃな
く、瞳美と完全に同一化してたのだ。
諸々の事情でマトモな記事を全く書かずに終わったけど、今クールに一番安心して
楽しんでたのはこのドラマだった。今週も時間がないけど、最後にもう一度だけ、軽
い記事を書いとこう。
☆ ☆ ☆
このドラマは一つの劇だが、その中でシェークスピア劇をやってるから、いわゆる
「劇中劇」になってる。それに加えて、登場人物たちの人生そのものが劇的だから、
結局「劇中劇劇」だ。こうゆう複雑な構造で、しかもシェークスピア、人気アイドルに
頼らず、定評ある原作にも頼らずドラマを作るっていう、「スタッフ魂!」に拍手を送
りたい。脚本の君塚良一、演出の若松節朗・木下高男・村谷嘉則、プロデューサー
の船津浩一、音楽の森英治をはじめとする皆さんに拍手! もちろん、スタッフの
要求に応えた「俳優魂!」も見事だった☆
目先の視聴率や一般的評価にとらわれずにチャレンジする「クリエイター魂!」は、
誰かが見届けるべきだし誰かが評価すべきだ。ドラマの完成度から言えばいま一
つ物足りない所もあるものの、開拓者が時々道を間違えたり迷ったりする姿を見
て野次を飛ばすようなマネはしたくない。むしろ「ブラボー!」と最後に叫ぶ役を、
私は演じることにしよう。これこそ私の「役者魂!」、あるいは「ブロガー魂!」だ。
このドラマ、とにかく主役の2人が抜群に安定感があった。瞳美と本能寺海造(藤
田まこと)は、矛盾した表現になるけど、自然に演技している。演技とは本来、不自
然なもののはずなのに、見てて自然だし、演じる方も自然だろう。その2人に加え
て、強烈なインパクトで楽しませてくれた柳沢社長(香川照之)。主役とは逆に、極
端に不自然な存在で、その大げささやわざとらしさが毎回笑えた♪
ほとんどこの3人だけで十分魅力的なドラマだったけど、最後に重要な役を演じた
母・まり子(戸田菜穂)も良かった。まり子は、瞳美と海造が子供2人を渡す気に
なるような女でなければならない。子供を海造のもとに勝手に残して、アメリカで
男と暮らしてたような女にも関わらず、視聴者が本物の母親として認められるよ
うな存在でなければならない。その難しい役を戸田が好演したおかげで、ドラマ
のラスト2回がうまく収まった。今まで戸田に注目した事なんてなかったけど、孤独
の陰りと母性の温かみを共存させた上品な美しさに、魅惑されてしまった♪
最終回だけ振り返ってみると、エンディングはイマイチって言うかイマ半分だった。
社長が役者になって護(森山未來)みたいな役を演じてたのは笑えるし、護が社
長そっくりのマネージャーになってるのも笑えた。ただ、欲を言えば、ラスト10分で
もう1回泣かせて欲しかった。部屋の掃除中に、忠太(吉川史樹)の破れた靴下を
片方だけ見つけた瞳美が昔を思い出すっていう脚本自体よりも、それを映像にし
た演出がイマ半分だったのかも知れない。
でも、始めの瞳美とまり子も良かったし、何と言っても「劇中劇」のリア王が素晴ら
しかった。リア王=海造の剣に、忠太と桜子(川島海荷)が無邪気に貼り付けた
プリクラで、海造の演技は一気に崩れる。まず控え室に閉じこもった間は、愛娘
コーディリア=里奈(加藤ローサ)が父を迎える日舞(!)を即興で披露して何と
かつなぐことに成功。ところがその後、コーディリアと桜子がダブってしまったリア
王=海造は沈黙。そこで役者あがりの社長が、即興で舞台に踊り出てリア王を
励ます。続いて瞳美が舞台裏からこっそり台詞を教えるものの、しゃべれないリ
ア王。そこで瞳美は即興で、海造自身にピッタリの台詞を教え、海造はそれを、
観客席の一番後ろに立ってた2人の子供に向けて言い聞かせた。
「わしの子供たちよ。人生は決して思惑通りには進まないのだ。
しかし子供たちよ、人生というもの、楽しみ方ひとつで見方も変わる。
幸せに過ごすのだぞ。君らを愛している。頑張れよ!」
この台詞が、海造自身、さらには思いついた瞳美自身にも向けられた言葉である
のは言うまでもなかろう。瞳美が告げた言葉と海造の台詞がわずかに違ってたの
もイイ。まったく思惑通りに進まなかった最後の劇を、海造と瞳美は全力で楽しん
だ。社長や里奈も楽しんだ。結局、台詞を胸に刻んだ子供たちは、観客席の後ろ
のドアから退席する。ドラマの初回の登場を反転させた、美しい形だ。こうして、舞
台と観客席、役者と観客・マネージャーが渾然一体となったドタバタ劇の幕が下りた。
人生とは所詮、ドタバタ劇だ。思惑通りには進まないのだから。ただ、それを喜劇
として楽しめるかどうかは、役者であると同時に観客でもあるわれわれ自身にかかっ
てるのだろう。。
☆ ☆ ☆
時間があればもっと本格的な記事を書くところだけど、もう寝る時間だ。明日は
早い。書き残した点を二つだけ簡単に書こう。今回、舞い落ちる雪とクリスマスツ
リーが良かった。こうゆうのは美術スタッフの力なんだろうか。雪は最高の背景に
なってたし、控えめながらも存在感のあるツリーもキレイだった。
そして、ドラマ全編を通じてすごく素晴らしかったのは、音楽だ。例えば先週、音声
だけで泣いてしまったのは、BGMの力が大きかったと思う。そして、松たか子が歌
う主題歌「みんなひとり」も好きだった。これを作詞・作曲した竹内まりや自身が歌
う挿入歌「スロー・ラブ」はそうでもなかったけど、主題歌でいい仕事をしたから、竹
内にも拍手だ♪
確かに、みんなひとり。だからこそ、ひとりひとりがお互いを必要とするし、必要とさ
れたいと思う。ブログなんてのも、そうした営みのひとつだろう。書くにせよ、読むに
せよ、その点においては同じことだ。。
それでは、雷が鳴り始めたので、このへんで。。☆彡
☆ ☆ ☆
P.S.最後に、海造の大好物の大福にも活躍して欲しかったな。。
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