『ガリレオ』第5話、ドラマと原作の比較
あ~、またズルズルと遅れが拡がってきた。忙しい秋に、これだけのドラマ記
事を書くっていうのが無理なんだよな。仕方ない。ここらで強引に先週分の原
作記事を書くことにしよう。第6話「夢想る」(ゆめみる)は後回しってことで。
第4話「壊死る」(くさる)に続いて、第5話「絞殺る」(しめる)も、ドラマと原作
(東野圭吾『予知夢』文芸春秋,第四章)はかなり違ってる。例によって、相違
点を箇条書きにしてみよう。ドラマ放映後、既に1週間以上経ってるけど、広
い意味ではネタバレ記事と言えなくもないので、十分ご注意あれ♪ 特に、こ
れから原作を読もうと思ってる方は、以下の文章は読まない方がいいと思う☆
①ドラマの自殺者・矢島忠昭(岡本光太郎)が経営する長野の「ペンション・ヤ
ジマ」だけど、原作は東京の小さな部品工場で、社員が3人いる。その中で一
番年配の坂井善之が「最大の」共犯者だ。もう1人の共犯者が妻・貴子(水野
美紀)。長野って設定は、自然に囲まれた清らかさの演出と同時に、原作で複
雑だった妻のアリバイを分かりやすくするための工夫だろう。
②ドラマでは子供は中学生(or高校生)の秋穂(大後寿々花)1人だったけど、
原作では小学校5年の秋穂と3年の光太の2人いる。原作の秋穂は喘息じゃ
ないし、特にひねくれてはいない女の子で、火の玉目撃以外はほとんど活躍
しない。ってことは、ドラマは寿々花=ニコのちょっとクセのある魅力を存分に
発揮させてたわけだ。
③ドラマは電気配線工事の人を持ち出して密室殺人を強調してた。原作では
そうゆう話はなくて、貴子や従業員らがやったとは言えないっていうことが、少
しややこしく書かれてる。
④ドラマでは、ホテルの部屋の焦げ跡は丸いけど、原作では幅1センチ、長さ
5センチとハッキリ書いてある。つまり、ドラマは火の玉の形になってるけど、
原作はアーチェリーの弦の形を暗示してるのだ。ちなみに、原作の火の玉は
1つだけ。つまり、2本目の弦が切れて、弓が大きくはね返った後だけだ。
⑤ドラマではコーヒーカップ2つが残されてたけど、原作では缶コーヒーで、他
にタバコの吸殻もあった。吸殻から犯人の血液型がB型って話になるけど、
実は偽装工作だったようだ。
⑥原作には内海薫(柴咲コウ)は登場してないので、例の「ベッドシーン」はな
い。だからと言って、代わりに草薙刑事(北村一輝)が湯川学(福山雅治)と妖
しい雰囲気になるわけでもない♪
⑦ドラマで湯川に恋愛相談を持ちかけたのは、ゼミの谷口紗江子(葵)だけど、
原作では男子学生で、名前もないしアーチェリーとも無関係。湯川が学生結婚
に反対する理由として「統計」を持ち出すと、ドラマの内海は「そうゆう考え方し
てて人生楽しいですか?」と突っ込んだけど、原作の草薙は思っただけで口に
は出さなかった。つまりドラマでは、湯川と内海の「夫婦ゲンカ」が大きな魅力
の一つなのだ。
⑧「一射入魂」って言葉は原作では工場だけにあった。湯川が昔、アーチェリー
部の友人からその言葉を聞いてたって流れだ。湯川自身はアーチェリーをやっ
てないし、ウンチクも数式やグラフもない。湯川が派手に光るシーンはないのだ。
⑨ドラマでは仕掛けに2本のハンダごてを使ってたけど、原作では工場にあっ
たヒーター1本を使う。工場経営者って設定が、からくりの複雑さにつながって
るのだ。
⑩ドラマでは夫に携帯で頼まれた貴子が仕掛けを片付けるけど、原作では従
業員・坂井が片付けたらしい。ただし、貴子は薄々計画に気付いてて仕方なく
受け入れたんだろうって話になってて、警察の疑惑を坂井から外すための手
助けを自主的にしている。ドラマと同じく、保険金の請求まではしてないし、そ
もそも原作は証拠不十分で未解決って終わり方だから、貴子も坂井も捕まら
ない。ドラマの貴子が持ってた妙な暗さは、原作の貴子が自殺に気付いてた
のに止めなかったっていう淋しい設定を引きずってたんだろう。それに対して、
ドラマの夫が持ってた、突然自殺して妻に後始末させるなんて残酷さは、原作
にはない。
⑪ドラマの最後は例によって湯川&内海の「夫婦ゲンカ」だけど、原作の最後
は、湯川がインパクトのある台詞を口にして草薙が返答に詰まる。
あえてここには書かないことにしよう♪
☆ ☆ ☆
こうしてまとめるてみると、改めてドラマと原作がかなり違うってことがよく分か
る。やっぱり、ドラマの方が映像重視で分かりやすくて面白くて一般向けだけ
ど、原作の方が緻密で現実的で重みがある。要するに、別物なのだ。
ではまた。。☆彡
cf.天才・湯川が示した物理学の解読と検証~『ガリレオ』第1話
・・・・・・・・・・・・・・・・
『ガリレオ』第5話、キューピッドの黄金と鉛の矢は流行るかな♪
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