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『ガリレオ』第1話、ドラマと原作の比較

  (☆08年5月1日追記『ラスト・フレンズ』の検索でいらっしゃった方は

    右側の「最近の記事」かトップページの「全記事一覧」をご参照あれ♪)

            

ドラマ第1話からもう3週間以上も経っちゃったけど、今からコツコツと、原作

との比較記事をアップして行こう。全部書くかどうか、いつ追いつくか(or止め

るか)分からないものの、まずは1本目の記事ってことで。昨日放映のドラマ

第4話「壊死る」(くさる)からスタートした方が遥かにアクセスは多いだろうけ

ど、まだ原作の対応箇所をほとんど読んでないから、やっぱりドラマの放映

順に書いて行くことにする。

        

ドラマ第1話「燃える」は、原作『探偵ガリレオ』(文芸春秋)第一章「燃える」

(p.9~p.71)に対応してる。つまり、ガリレオシリーズのスタートはドラマも

原作も同じだ。でも、ドラマ第2話は『探偵』第5章、ドラマ第3話は原作『予知

夢』(文芸春秋)第三章、ドラマ第4話は『探偵』第三章、来週のドラマ第5話

は、おそらく『予知夢』第四章、つまりバラバラの対応になってる。題名は全

部同じだ。原作の各章の題名がそれだけ上手いってことだろうね♪

             

最初だからあらためて書いとくけど、『華麗なる一族』と『ホタルノヒカリ』で経

験済みの、ドラマと原作の比較記事。これは、広い意味では「ネタバレ」だか

ら、十分ご注意を☆ 私自身、各回のドラマが終了するまでは、ネタバレ情

報はシャットアウトしてる。つまり、放映が終了した回の対応箇所しか原作は

読んでないし、ネット・テレビ・雑誌などのメディア情報も、放映前には公式サ

イトしか見ない。あと、この原作記事は、ドラマ単独の本格的レビューとは違っ

て、一つ一つのポイントを簡単に比較しただけの、かなりアッサリした記事だ。

ハッキリ言って、自分のドラマ研究のために書くメモに近い。ただ、過去の例

を見ると、ドラマ単独の記事とあまり変わらないアクセスがあるんだよな。どっ

ちか片方しか読まない人が結構いるのも面白い発見だった。では、スタート!

       

         ☆              ☆              ☆

まず、帝都大学理工学部物理学科准教授、湯川学(福山雅治)について。原

作第一章ではまだ「ガリレオ」っていう呼び名は登場してない(ネット百科事典・

ウィキペディアによると第五章から)し、変人っていう話も特にない。もちろん、

「准教授」って肩書きは2007年4月1日から始まったから、原作の時点では

「助教授」だ。要するに、昔は教授を「助」ける存在だったのが、今は独立した

教員として認められたってこと。「准」なんて漢字は他にあんまし使わないから、

まだ「じゅんきょうじゅ」と読めずに、「ゆいきょうじゅ(唯教授)」とか読んでる人

もいるだろうネ♪

           

原作の湯川のめぼしい描写は、「長身で色白、黒縁眼鏡をかけた秀才タイプ

の顔つき、前髪を眉の少し上で切りそろえた髪型」(p.25)って部分以外には、

学生時代にパドミントン部のエースで右手の握力が強い、コーヒーカップの趣

味が悪いし汚い、記憶力と推理力が優れてる、子供嫌い、ちょっと頑固って程

度。やっぱり何と言っても、優秀な物理学者で警視庁に友達がいるって所が大

きな特徴になってる。

ちなみに、ドラマの湯川の眼鏡はよくある細い金属製のフレームで、レンズの

周りに縁はない。髪型も、ドラマだと自然にフワッとさせた短髪になってる。要

するに、女性ファン向けのビジュアル重視ってことだろう。

               

例の女の子が見た「赤い糸」(ヘリウムネオンレーザー)って話を、車の中で

薙(北村一輝)から聞いた瞬間に、サイドブレーキを引いて止まらせるなんて

シーンもあるけど、別にそうゆうアブナイ性格って意味でもないだろう。授業で

女子学生にキャーキャー言われるなんて話も全くないし、数式を書きまくるど

ころか、原作には全く数式は出ない(ただし説明は細かい)。「実に面白い」「さっ

ぱり分からない」「現象には必ず理由がある」って決まり文句も今のところ出て

ない(「じつに論理的」ならある)。

    

「ドラマの湯川の変人度が足りない」って感じの感想をあちこちで目にするけ

ど、少なくとも第1話については、むしろドラマの方がハッキリ変人だ。つまり、

数式書きまくり、意味不明なバカ笑い、下品な言葉、女性の内海薫(柴咲コ

ウ)への気配りのなさ、過去の人体発火現象についてペラペラ話す様子、科

学的解明にしか興味がない性格、等々。。ただ、ドラマが変人って設定を大

きくアピールしてるわりにはそうでもないって意味なら、一応分からなくもない。

    

次に、内海について。原作ではもっぱら、湯川と草薙の2人が活躍する。もち

ろん、名探偵シャーロック・ホームズとワトスンのコンビを意識してるんだろう。

ドラマでは内海が湯川の軽い態度を叱り付けて、湯川が携帯で謝ってたけど、

原作で似たようなシーンはない。そもそも、原作の初出は『オール讀物』(文芸

春秋)96年11月号だから、まだ今ほど携帯が当たり前になってるわけでもな

し、絵文字入りメールが気軽に交わされてたわけでもないだろう。ちなみに、

犯行に使われたのも携帯電話じゃなくて固定電話だ。

   

とにかく原作は、内海だけじゃなく婦警さんも出ないし、美人監察医の城ノ内桜

子(真矢みき)も出ない。ただし、ドラマ化の話を受けてのことか、『オール讀物』

2006年9月号掲載の続編「落下る」(おちる)で内海が初登場してるようだ。

          

三番目に、犯人の金森龍男(唐沢寿明)について。ドラマでは『刑事コロンボ』

や『古畑任三郎』と一緒で最初から分かってたけど、原作では分からない。し

ばらく読むと、アパート1階の現場が見えない部屋に住む金森が登場するけど、

2階の現場が見える部屋に住む前島一之(時田製作所勤務)が犯人であるか

のように思わせてる。最後の最後に、実は金森も時田製作所勤務で、犯行時

は2階の前島と部屋を交換してたっていうカラクリを提示。金森が朗読のボラ

ンティアで録音する際、前島の機材と本を借りてたって話だった。

    

ちなみに、原作の金森は、目の不自由な妹のためにボランティアを始めたし、

少年たちを殺すつもりはなくて脅かすだけのつもりだったし、事件後は本を上

手く読めなくなってた。3ヶ月以上も前から準備してたって話もないし、足を踏

みつける神経症的症状もない。つまり、ドラマの金森は極端に悪者のイメー

ジを強めてあったのだ。なお、金森の足の動きは、おそらく原作の前島の足

の動きにヒントを得たものじゃないかな。草薙が聞き込みに来て、事件当時

どこにいたかと聞かれた唖者の前島は、話す代わりに足で床を踏む。これ

で草薙は、2階の部屋にいたと思い込んだんだけど、実はその足の動きは

1階を指すものだったっていう細かいカラクリだった。

    

四番目に、レーザーの道筋、つまり光路。ドラマでは、工場の中で2回、外で

2回ミラーを使わないと少年に命中しない構造になってて、実証実験も4枚の

鏡を使ってた。原作は、1枚の鏡を使ったことがほのめかされてるにすぎない。

つまり、ドラマよりもレーザーの調整が遥かに簡単で実現可能性が高いのだ。

ドラマみたいに工場の外だけで2枚も鏡があると、設置と調整の段階で他人

に怪しまれる恐れが高い。おそらくあの複雑な光路設定は、実験を壮大なも

のにするためと、金森の執念深さを強調するため、あと東京都大田区(?)で

ロケーションの都合だろう。

             

071106 参考までに、ドラマと原作

 の光路の違いを図で示して

 おいた。ドラマの現場は公

 園、原作はバス亭。原作で

 は、少年たちを現場に固定

 するための設定として自販

 機とベンチが置かれてて、

                            金森が狙ったのは自販機横

071106b の灯油入りポリタンクだっ

 た。しかも、ポリタンクは

 四段重ねビールケースの上

 にあって、工場の窓から狙

 いやすい位置にあったし、

 距離の短さも明示されて

 る。さすが、人気ミステ

 リー作家の芸は細かい♪

         

最後に、まだ触れてない「ドラマだけにあるもの」を列挙すると、ねずみ花火、

タバコやレーザーの跡、助手、学生、ヘッセ『車輪の下』、貝塚北署、終了前

に出て来る危険性の警告。一方、「原作だけにあるもの」は、ブラッドベリ『火

星年代記』、色々な細かい説明。

      

以上、この程度見ただけでも、ドラマとか月9ってものがどうゆう特徴を持って

るのか、どれだけ視聴者(特に女性)に配慮してるかが分かるだろう。福山の

ルックスと実験に代表される視覚的効果、男女関係(特に恋愛関連)、登場人

物の適度な人数と個性、説明抜きの単なるイメージとしての数式。。もちろん、

ドラマの特徴を裏返せば、小説の特徴も見えてくるわけだ。

    

という訳で、今回はこの辺で。それではまた、次回をお楽しみに。。♪☆彡

    

cf.天才・湯川が示した物理学の解読と検証~『ガリレオ』第1話

   サンタと女、揺れる理系の男心~『ガリレオ』第2話

   ブランコとおにぎりでホカホカ~『ガリレオ』第3話

   科学と恋愛、2つの円端具流~『ガリレオ』第4話

   愛と矢、ひねくれた直進~『ガリレオ』第5話

   遠く離れたもののつながり~『ガリレオ』第6話

   つながりの中の細かい事~『ガリレオ』第7話

   結果が語る過剰なプロセス~『ガリレオ』第8話

   過剰な格差がもたらす劇的な出来事~『ガリレオ』第9話

   サンタを信じた科学者へのプレゼント~『ガリレオ』最終回

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   『ガリレオ』第2話、光の屈折の計算式

   『ガリレオ』第3話、共振現象の証明

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