『ガリレオ』第8話、ドラマと原作の比較
現在、本格的な風邪で絶不調。。(-_-;) 正直言うと、第8話の原作記事は無期
延期!と書きたい所だけど、もう来週で『ガリレオ』は終わりだもんな。2007
年の最後でもあるし、病体にムチ打って軽く書いとこうか。まだ第2話と第3話
の原作記事も延期したままだしね。。
ドラマ第8話の「霊視る」(みえる)は、原作だと東野圭吾『予知夢』(文芸春秋)
第二章だ。第4話以降のドラマは全て、原作を大胆に変更してあるんだけど、
今回はさらに科学的な謎解きの部分もかなり違ってる。自分の頭を整理する
ためにも、いつものように淡々と両者を比較してみよう。
その前に、毎度おなじみの前置き。以下、見方によってはネタバレになって
しまうので、くれぐれもご注意あれ☆ 特に、これから原作を読もうという方
にはお勧めしない。。
☆ ☆ ☆
①久々に、図を入れ
てみよう。ドラマと原
作の共通構造だけを
チャートにして取り出
すと、左図のように表
せる。
②被害者の女性は、ドラマでは料理研究家・前田美鈴(引田博子)。原作で
は、クラブで働く長井清美。両者の共通点として、飲食関係ってことを挙げ
ることはできるけど、むしろプラスとマイナス両極端の異なる設定って感じが
強い。実際、ドラマでは美鈴はいい人っぽく描かれてたけど、原作の清美は
もともと感じ悪い女で、殺される前は犯罪者でもあった。
要するに、ドラマが温かい人間の触れ合いを強調する一般ウケ路線なの
に対して、原作は硬派で現実的な科学ミステリーなのだ。
③逆に目撃者については、むしろ共通点の方が重要だろう。ドラマで被害者
の幽霊を目撃した(霊視した)のは、妹の千晶(釈由美子)。原作では恋人の
細谷忠夫。どちらも、被害者と非常に親密な人間だ。だからこそ「霊視」も起
きるし、あわてて携帯で連絡するって流れにもなる。
④ドラマでは、目撃者の携帯連絡のせいで犯人(共犯者)の小杉はすぐ死ん
だ。密かに交際してた恋人の無茶な頼みを断れず、既に死んでる被害者を
メッタ刺しにしてストーカー殺人に見せかけ、最後は電話と警備員に動揺して
転落死。生きてる間も社会性のないヒモで、何ともパッとしない男だった。要
するに、ドラマにとって小杉はオマケ的存在にすぎない。
一方、原作では、目撃者の携帯連絡のせいで、絞殺の犯人(主犯)・小杉は
すぐ捕まった。スポーツライターとしてそこそこ活躍してた男で、目撃者との
普通の付き合いもあったし、別に悪いイメージはない。むしろ、悪い女に騙
された男って感じで、哀れに思えてしまうほどだ。女との出会いもスポーツ絡
みだから、ドラマよりはしっかり描かれている。
⑤被害者を憎んだ犯人の女・金沢頼子は、ドラマでは被害者の共同経営者
(たくませいこ・主犯)で、活躍に対する嫉妬が原因だった。原作の金沢は、
たまたまひき逃げ事件を被害者に写メで撮られてしまったスポーツ関係者
(ひき逃げ事件では単独犯、絞殺事件では共犯者)で、脅迫されたのが原因
だった。いずれにせよ、女に対する女の憎悪ってこと。やっぱ女は怖いね♪
ちなみに、原作の1つ『探偵ガリレオ』(文芸春秋)第ニ章「転写る」(うつる)
で、湯川は草薙(ドラマでは北村一輝)にこう語ってる。「真犯人は身近にいる、
しかも女、というのは推理小説のセオリーだが」。
⑥謎解きの中心は、ドラマでは「結露」だった。水滴でくもったガラス越しに被
害者が好きだった黄色を見て、錯覚で「霊視」が生じてしまったってお話。物
理記事でほぼ解明したように、湯川学(福山雅治)が描いた数式やグラフも
結露に関するものだった。
一方、原作では結露なんて話は無くて、単に黄色その他の変装に騙されて
錯覚って話。だから、原作の科学ミステリー的要素は湯川の論理的思考そ
のものが中心で、後は錯覚と、例の「ガリ」音の話。オーディオのガリガリ音
から小杉の女関係がバレるって箇所は、原作の湯川の台詞がほとんどその
ままドラマにも使われてるんだけど、どの程度信じていいのか分からない。
ガリ音→シリコン微粒子の影響→ヘアスプレーの使用→女の存在っていう
論理だけど、「音響機器メーカー」の「データ」は検索しても出てこないし、ヘ
アスプレーのシリコンとガリ音の関係についての信頼できる科学的記事も見
当たらない。
⑦ドラマでは、被害者だけじゃなくて湯川や内海薫(柴咲コウ)までお料理して
たけど、原作には料理シーンは全くない。ま、湯川が事件を料理したとは言え
るけどね♪ やっぱりドラマの脚本(古家和尚)は、湯川の萌えシーンとして料
理を選ぶ所から作って行ったんじゃないかな。。
☆ ☆ ☆
フーッ、こんなもんでしょ。第9話は前編だから止めとこうかな。下手に原作
を見るとネタバレになるし、余裕もないしね。
ともかく、今日のところはこの辺で。。☆彡
cf.天才・湯川が示した物理学の解読と検証~『ガリレオ』第1話
・・・・・・・・・・・・・・・・
『ガリレオ』第5話、キューピッドの黄金と鉛の矢は流行るかな♪
・・・・・・・・・・・・・・・・
| 固定リンク | 0
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- やす子24時間マラソンの2日目と「同じ道」を9時間で歩いて「検証」した YouTuber、実際は6割弱の距離(29km)を歩いただけ(2024.09.12)
- 直前の欠場、「パリ五輪は、まだ走れ!っていうメッセージ♪」~カンテレ『前田穂南が走れなかったオリンピック』(TVer動画)(2024.09.06)
- 世論の逆風と雷雨の中、やす子(体重78kg、25歳)の81kmマラソンSPの感想~日テレ『24時間テレビ』2024年(2024.09.04)
- パリ五輪2024・女子マラソン、ほぼリアルタイムの感想♪&優勝したハッサンのラップタイム(2024.08.11)
- パリ五輪2024・男子マラソン、ほぼリアルタイムの感想♪&6位入賞、赤﨑暁選手のラップタイム(2024.08.10)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 牧田真有子『桟橋』(24共通テスト国語)、全文レビュー・書評 ~ 漁師に拾われた魚、捻じ切れた血の橋を自分で生き始める(2024.01.23)
- 梅崎春生『飢えの季節』(23共通テスト)、全文レビュー~戦後の日常・欲望・幻想をユーモラスに描くエッセイ私小説(2023.01.21)
- 誰が、何に、どれほど飢えているのか?~梅崎春生『飢えの季節』(初出『文壇』2巻1号、2023年・共通テスト・国語)(2023.01.15)
- 黒井千次『庭の男』全文レビュー~居場所も力も失った高齢男性(家の男)の不安と性的倒錯(窃視症)(2022.01.23)
- テレビ未放映、『カネ恋』幻の第5話~第8話における『方丈記』の引用と意味(大島里美『シナリオブック』)(2021.01.08)
コメント