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エコ電気とグリーン電力証書について

新聞というメディアは、かなり苦しい立場に置かれている古い情報産業だ。もと

もと、マスメディアの第1位の座をテレビに譲って以降、押されっぱなしだったの

に加えて、最近ではネットという強敵にも脅かされてる状況。速報性ではネット

が一番だし、大衆性(普及度・人気・分かりやすさ・面白さなど)ではテレビが一

番だ。もはや、新聞に残された長所は、信頼性、一覧性(全体をパッと眺められ

ること)、特集記事や文化記事、折込広告くらいだろう。

    

このうち、信頼性に関しては、新聞社のHPを見れば同じことだから、私が新聞

を取り続けてるのは、一覧性と特集記事・文化記事と折込広告のためだ。で、

昨日はテレビの特集記事について触れた記事をアップしたわけだけど、今日

はエコロジー(広い意味)の特集記事に触れてみよう。

     

       ☆          ☆          ☆

朝日新聞では毎月の最終日曜日に、「環境ルネサンス」と題するシリーズで、1

ページの大きな特集記事を掲載している。全体の色調は緑で、本文の冒頭に

は「for a Sustainable Society 明日の地球環境のために」という文字と共に、

緑色のリボンをアレンジしたようなデザインも掲げられている。数年前から流

行し始めて、早くも下火になって来た感のある、「ロハス」(LOHAS=Lifestyles

Of Health And Sustainability)、つまり「健康と持続可能性のライフスタイル」と

の関連も明らかだろう。

    

そのシリーズの今月の記事は、昨日(2008年2月24日)の朝日新聞朝刊

掲載された。大見出しは「買おう エコ電気」。小見出しは三つあって、「広がる

『グリーン電力証書』」、「秋田の風 愛媛のタオル生む」、「企業イメージ向上

にも貢献」と書かれてる。左側には、風車と緑色のタオルの大きな写真。

        

さて、この記事はまさに大新聞の面目躍如でしっかりしたものだけど、詳し過

ぎて焦点がボケてるようにも感じられる。これを読んだ読者に「エコ電気を買う

てどうゆうことですか?」と質問したら、何割の人が答えられるか怪しいもんだ。

私なら簡単にこう答える。「普通に電気を買って、それにプラスして風力発電と

かに寄付金を払うこと」。

    

少しだけ詳しく説明しよう。具体例は、愛媛県今治市の池内タオルだ。この会

社はごくフツーに四国電力の電気を使ってタオルを作る。その一方で、会社は

秋田県の能代風力発電所にお金を払って、「グリーン電力証書」を貰う。そし

て、「風で織るタオル」と名づけた商品を売るわけだ。

         

この程度なら簡単な話で、風力発電された電気が東北電力に販売されるという

ことを付け加えても、大したことはない。朝日の記事がややこしいのは、会社と

風力発電所(or太陽光,バイオ)の仲介をしてグリーン電力証書を発行する、

本自然エネルギー会社」を中心にして説明してるからだけど、それは枝葉

末節にすぎない。市民レベルからのお金の動きを大きく図式化すると、結局は

「消費者→タオル会社→風力発電所」なのだ。電気の動きは近所でやり取りす

る普通のもので、エコ電気とかグリーン電力証書とは関係ない。

             

ここで問題なのは、これが本当に良いシステムなのかどうかってことだ。例えば

「消費者→風力発電所」という形で直接お金を回すのと比べてどうなのか。今

現在、エコ電力を買うことが出来るのは企業・団体に限られてるらしい。個人の

参加は、Tシャツ等を利用して昨年末までやってたらしいけど、現在休止中との

ことだ(日本自然エネルギー会社のHPより)。だから、エコ電力というものに賛

同する個人は、商品を買ったりイベントに参加したりすることになる。でも、それ

なら風力発電(or 太陽光発電、バイオマス発電)に直接寄付した方が中間の

ムダが省けていいんじゃないだろうか。

                

と言うのも、東京電力などが出資した日本自然エネルギー会社の運営だけで

相当な費用(特に人件費)がかかってるはずだし、チェック役のグリーン電力

認証機構の運営費も気になるし、例のタオルも調べてみるとかなり高価に感じ

るからだ。

    

池内タオルのHPで月間ランキング1位とされてる「オーガニックカラーソリッド1」

の場合、フェイスタオルで1300円(税込)、バスタオルで3600円(同)だ。ス

ウェーデンで認定された枯葉剤を使用しない有機栽培綿100%とはいえ、この

値段のどれだけがエコに使われてるのか、気になってしまう。フェイスタオルな

んて、今どき200円前後で十分買えてしまうものだ。無印良品なら、210円と

か315円である(同)。差額の1000円はどうゆう使われ方になるんだろうか。

        

ウィキペディアを見ると、ロハスのブームが下火になって来たのは、ビジネスと

の絡みが問題となったのが大きかったようだ。でも、それを言うなら、エコロジー

の話は最初からビジネスの匂いがかなり強かった。緑色にしてエコとか環境と

かいうだけで巨額の金と大勢の人が動くのが現実だ。

     

私は、別にエコとかロハスを否定してるわけじゃなくて、重要な考え、あるいは

運動だと思ってる。ただ、その中身、あるいは使われ方が問題なのだ。ややこ

しいシステムを作って、中間で利益を得ようとする人間や団体は、どの世界で

もいくらでもいるだろう。別に利益を得ることは悪いことじゃないし、必要な仲介

役だってある。ただ、表面だけキレイにした上で、分かりにくい形でこっそり儲

けるのはどうかな、と少し疑問に思ってるだけだ。 

       

少なくともマスメディアの代表の1つ、朝日新聞の特集記事なら、たとえばフェイ

スタオルなら、800円はエコに回して200円は会社の手数料と思われるとか、

仲介役の日本自然エネルギー会社からエコにいくら回されて運営費がいくらな

のかとか、そうゆう本質的な部分を追求して欲しいもの。これは「単なる金の細

かい話」ではなくて、エコと呼ばれてるもののどの程度が本当にエコなのか、と

いう意味で、話の核心部なのだ。

     

人間だから、お金でイメージを買って満足するってこともあっていい。また、エコ

について考えるキッカケとしては、色んな目新しいものがあってもいいと思う。

「風で織るタオル」が去年のミスチル=Mr・Childrenのコンサートグッズになっ

たとか、池内タオルが22日に経済産業省から新エネルギー大賞・審査委員長

特別賞を受けたとか、別にかまわないと思う。単に会社が風力発電に寄付する

だけだと、こうゆうインパクトを生み出すことはできなかったはずで、発想とか

影響力は評価されてもいい。

     

でも、ハッキリしてるのは、イメージとか商売とは別に、本物のエコが必要とさ

れる時代に入ってるということだ。とりあえず我々としては、「買おう エコ電気」

とか言う前に、電気や水のムダ使いを無くすとか、車よりも自転車を選ぶとか、

身近にできる確かな行動から始めることが大切だろう。ま、割り箸はビミョーな

問題だけどね。

                       

ともかく、エコを取り巻く全体は、今のところ緑ではなくて灰色に見えている。

その色を美しく透明にする作業は、予想以上に大変なことのようだ。。☆彡  

    

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.京都市が昨年末から試験的に始めた「京(みやこ)グリーン電力証書」

    も、発電設備が身近にあるのがメリットとはいえ、本質的な構造は同じ

    こと。ただし、京都議定書の採択地だから、世界に向けたメッセージと

    しては大きいと思う。。 

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