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死ぬ自由より、生きる不自由~『あしたの、喜多善男』第9話

 絶対食べてくださいね 心をこめて作りましたから

 それを食べてれば 平太さんも絶対にカレー好きになります

 じゃあ さぁ 喜多さん作ってよ 

 エッ?

 喜多さん 作ってくれたら 一緒に食べるからさ

 だって 2ヶ月寝かせないと

 だからぁ 喜多さんが作ってくれよ な 

 これいいから (・・手紙をビリビリ・・) 必要ねぇよ

 あっ 平太さん

 なあ 喜多さん 死ぬの止めろよ 

 どうしたんですか 

 オレさぁ 喜多さんに死んで欲しくねぇんだよ 死ぬなよ な?

 昨日から急に色んな人が 僕に死ぬなと言い出した 平太さんまで

 でも僕は 自分の意志でこの世界から消えることを決意したんです

 僕の最後の自由を、奪わないでください

 自由って何だよ 生きるのに自由も不自由もねぇだろ

 なぁ 喜多さん みんなあがいて生きてんだよ そうだろ?

 それもお父さんの言葉ですか

 いや これはオレんだよ

 僕は そんな あがいてるなんて話を 平太さんとしたくはない

 不思議だなぁ みんなが僕に死ぬなと言い なのに 僕は今日 殺されかけた

 殺されかけた? 誰に? 

 いや あのう・・

 どうしたんだよ

 物盗りだと思うんですけど・・

    

       ☆          ☆          ☆

いやぁ、可愛い! 出番は少ないけど、宵町しのぶ=吉高由里子がまた光って

た☆ 矢代平太(松田龍平)の所へ、「善男ちゃんを死なせないで」と頼みに来た

シーン。しのぶの「頼みたいことがあるの」っていう妙なイントネーションの言葉が、

まるで台詞の棒読みみたいだと、平太が皮肉を飛ばす。するとしのぶは、この

方がタレントとして売れるんだと長い言い訳をした最後に、「だから、ワザとなの

・・・ウソで~す♪」。あの後、おそらく龍平は素で笑ってたんじゃないかな。アド

リブの台詞じゃないだろうけど、「ウソで~す♪」の前後の演技は三宅喜重監督

の演出じゃなくて、吉高自身のものだろう。切り替えが速いのに自然で、独特の

小悪魔的魅力を醸し出してた☆

     

似たようなキラッと光る演技だと、先週の鷲巣みずほ(小西真奈美)との化粧室

シーン。「頼みたいことがあるの」と言い出した時、「その態度で?」と突っ込ま

れたしのぶが、悪びれずにニコッとして「ウ~~ン♪」。日常生活どころか、ドラ

マや映画でもなかなか見ない面白い反応だ。あのウ~~ン♪だけで、ご飯3杯

は食べれるな。あっ、深読みせずに、文字通り受け取ってネ!

     

さて、第9話全体の中では完全に脇役だったし、公式サイトのトップやサントラ

CDの写真からも外されてる吉高に、ここでこだわってるのは、ファンクラブ会長

の座を狙ってるからだ。いやいや、そうじゃない♪ 読者の方から耳寄りな情報

を手に入れたからだ。何と、今日7日(金)の夜0時30分からWOWOWで、吉

高主演のショートドラマ『紺野さんと遊ぼう』がスタートするのだ☆ 詳しくは、

日の記事をご参照あれ。

    

ちなみに、残念ながら私自身は見れないのよ。そもそもフツーの地上波のドラ

マでさえ週1本ちょっとに制限してるくらいだから、衛星放送とかゲームとか、面

白すぎて時間を取られるものには禁欲的姿勢。仕事とスポーツとブログだけで、

寝るヒマ無くて病気になりそうなほどだもんね。。    

       

        ☆          ☆          ☆

初回から絶賛してきた注目の新人女優・吉高の話はこのくらいにして、サスペ

ンスあるいはミステリー的な要素の話に移ろう。もちろん、このドラマは自殺が

テーマであって、保険金殺人事件の話じゃない。ところが、ストーリーの大枠的

に単なる枝葉のはずの、保険金殺人とか脇役が前面に出過ぎてて、幹が隠れ

そうなほどなのだ。正直言って、少なくとも先週から、飯田譲治の脚本はやや

暴走気味だと思う。視聴率低迷がどう関わってるのか分からないけど、コント

ロール不能状態に見えてしまうのは確かだ。

    

私は3週間前から、三波貴男(今井雅之)はやっぱり死んでるんじゃないかと

言ってたし、先週のレビューではその話を少し詳しくしておいた。で、どうだった

かと言うと、予想はハズレ。三波は生きてたらしい。まあ、放映直後の感想で

すぐ書いたように、ホンマかいな?って感じはいまだに残ってるんだけど、本当

なんだろうね、たぶん。

     

でも私は、自分がハズレたとは思ってない。逆に、ドラマがハズレたのだ。この

辺りは、子供じみた意地っ張りとか駄々じゃなくて、昔から続いてるウチの首尾

一貫した姿勢。つまり、ウチの予想というのは、的中させることが目的じゃなく

て、筋道立てて全体を考える作業の結果だ。毎回積み重ねてる詳細な考察、そ

の筋道=論理に自信がある限り、ドラマの方がそこからハズレてると言うのは

当然のこと。

実際、いよいよ映画版が公開となる、山P=山下智久主演のドラマ『クロサギ』

では、ウチの予想とかけ離れた最終回だったけど、結局は映画の形で続編を

作ることになってる。つまり、ドラマの最終回のままだと、話の終わりになってな

かったわけで、ハズレたのは私じゃなくてドラマだったってこと。

     

更に、関東地区で再放送されたばかりの『ホタルノヒカリ』とか、スペシャル版の

続編が近づいてる『プロポーズ大作戦』の話を持ち出してもいいけど、長くなる

し時間もないから止めとこう。ま、常連さんは聞き飽きたでしょ。そもそもウチの

レビューは、与えられたドラマだの、スタッフの意図だのよりも向こう側へと進む、

独自の解釈や創造を重視したものだ。これまでの膨大なレビューやコメント、レ

スを読めば、すぐに分かるだろう。ホントに読めばネ♪

              

話を元に戻すと、三波が生きてることで生じる短所、デメリットは、一言でいうな

らバランスの悪さだ。たかが脇役の生死を、ここまで引っ張って来ただけでもバ

ランスが崩れてるのに、生きてることにしちゃったから更に色んな面で崩れる。

まず、今回の喜多善男(小日向文世)よりも、三波の方が目立ってしまったのだ。

と言うのも、善男は今まで通り、死にかけて運良く助かっただけなのに対して、

三波の生存はインパクトあったし、みずほの今後にも巨大な影響を与えること

になったのだから。

    

ここから、もう1つのバランスの崩れが生じる。それは、みずほ1人が悪者になっ

てしまいそうなことだ。まだ不確定だけど、もしみずほが鷲巣英人(神保悟志)

保険金殺人の主犯(or首謀者)なら、来週はみずほの周辺が一番目立ってしま

うことになる。最終回直前に社長のみずほが逮捕されて、Waycys(ウェイシス)

が記者会見。今回、社長室の椅子にドッカと不敵に座ってた秘書の森脇大輔

(要潤)が、不自然ながらも臨時の社長代理になる。なんて話にもしなったら、何

のドラマなのか、すっかりピンボケ。イケメン・森脇の成り上がりストーリーみた

いな感じだ。

     

おまけに、三波の処理にも困ってしまう。今回、杉本マサル(生瀬勝久)与田

良一(丸山智己)のお笑い保険調査員コンビは、宇野教授(中丸新将)に論文

とビデオを見せに行って、法廷での証言まで頼んでる。さらに杉本は、三波に

対して直接、保険金殺人未遂事件の告発を匂わせていた。こうなると、もしホン

トに三波が告発されればますます話が逸れるし、告発されなかったとしたら、こ

の大掛かりな舞台装置は何だったんだということになる。いずれにせよ、バラン

スが崩れてしまってて、立て直しには少なくともあと1週かかってしまうだろう。

     

最後に、これはあまり強調する気もないけど、三波の扱いに無理がある分かり

やすい証拠として、2点追加しとこう。まず、三波が現れた理由について、「俺は

お前の事件とは全くの無関係だ。それが伝えたくて連絡したんだ」と語られてい

た。でも、みずほが三波に精神的に寄りかかろうとしてることが、なぜ分かった

のか。11年間音信普通で、名前を変えてひっそり暮らしてる三波に。

    

もう1つは、三波に対する杉本の台詞。「やっぱりあなた、吾妻さん(山崎まさよし)

とつながってましたね」。手続きミスで、たまたま飛行機事故で助かった2人の人

間を、「つながって」ると言うのは相当苦しい。その偶然を機に、連絡を取り合う

ようになったとか、そうゆう具体的エピソードは出てないんだから。つまりこの杉

本の台詞は、先週単なるサスペンスと主題歌のプロモーションのために、吾妻

を持ち出してしまったことに対する、脚本上の言い訳にすぎないのだ。

    

        ☆          ☆          ☆

という訳で、先週からの保険金殺人サスペンスへの傾斜が、最終回直前の来週

まで続いてしまうことへの批判は、この程度にしとこう。ここからは枝葉じゃなくて

幹の問題。このドラマの主題である、中高年男性の自殺についてだ。

    

国立保険医療科学院「平成10年(1998年)以降の自殺死亡急増」というレ

ポートのグラフ(図1)と表(図3)を見ると、この年以降に中高年男性の自殺だ

け突出して伸びてることがよく分かる。もともと男性の方が多いものの、この頃

から女性との開きが急拡大してるのだ。統計の取り方の変化が影響した部分

もあるかも知れないけど、それだけならわざわざ国立研究機関の詳細なレポー

トが作られることもないだろう。島田雅彦の原案小説『自由死刑』(集英社文庫)

の発売は1999年だから、時代に対する嗅覚の鋭さに感心させられてしまう。

さすが、今年度の芸術選奨・文部科学大臣賞・文学部門の受賞者だ☆

    

一般的に、自殺の理由としてよく挙げられるのは、経済と健康だ。つまり、金と

病気の2つ。それに対して、98年以降の増加理由として挙げられてるのは、経

済的な格差拡大だ。要するに、金の差。実際、中流崩壊、上流と下流への二分

が問題となって来たのも、ちょうどこの頃だ。善男の場合も、直接のキッカケと

なったのは、知人の保証人になって金の取立てにあったことらしい。

    

ただ、そもそも理由とか原因という概念自体が非常に複雑で曖昧なものだ。そ

の点は、ちょうど1年前、『華麗なる一族』の鉄平が雪山で猟銃自殺する直前、

遺書のラストに「でも僕は なぜ 明日の太陽を見ないのだろう」と書いたことを

思い出せば分かりやすいだろう。死ぬ本人にも、演じるキムタク=木村拓哉に

もよく分からないのだ。これに対してウチのレビューでは、ドラマと原作それぞれ

に即して理由を考察したものの、もちろん1つの試みにすぎない。

また、経済格差の拡大といっても、女性の自殺率はさほど変化してないのだ。

これを、男性が経済的に支えてるからと理由付けるのは奇妙なこと。男性が死

ねば、支えられてた女性はますます困るのだから。

     

こういった事情を考えると、善男の自殺理由がほんの僅かしか描かれてないの

は、いいことだと思う。一般性が出るし、本質的でもある。ともかく、「なぜか」、人

は自殺するし、男性(特に中高年)は女性よりも死にたがるし、ここ10年ほどで

急増してるのだ。ちなみに、ネタバレに注意しながら少しずつ読んでる原作のあ

とがきのラストだけ、うっかり目に入ってしまったんだけど、島田の目線も、なぜ

かはともかく人は自殺したがる、という事実に向けられてるようだ(実際は有名

な専門用語が使われてたけどボカして意訳しとこう)。

               

そこで問題は、自殺との向き合い方になる。もちろん誰だって目をそむけたくな

る暗い話で、特に女性はそうかも知れない。でも、リストカットというのは、若い女

性に特徴的な、軽めの自殺未遂だし、女性の場合は自分や周囲の心に与える

影響も大きくなりがちだ。つまり今の自殺問題は、決して中高年男性だけの問題

じゃないわけで、性別に関わらず真正面から見据えることも時には必要だろう。

        

自殺の場合、一番根本的なのに、それほど考えられてないように見えること

ある。それは、善悪の問題だ。そもそも自殺は、善いのか悪いのか。これほど

大きな問題をこの場できっちり扱えるはずはないものの、私なりの差し当たりの

考えを簡単に述べるくらいのことなら可能だ。

      

まず、自殺とは、一概に善いとか悪いとか言える話じゃない。本人とか周囲の

状況(経済的・心身的・宗教的・思想的・社会的)を十分考えて、個別に対処す

べきことだろう。死ぬのは個々の人間、千差万別の複雑な生物なんだから。と

言うことは、場合によっては自殺を容認するのも仕方ないし、現在の社会的感

覚もほぼそうなってると思う。仕方ないよねとか、悪いのは周囲だとかいう反応

はありがちなものだ。だから、自殺を止めるのは止めたい人間の欲望だ、とい

うような考えは、必ずしも間違っていない。

     

でも、だからと言って、「止めたい人間(つまり他人)の欲望にすぎないんだから、

本人の自由意志に任せるべきだ」と考えるのは行き過ぎだし、やや浅薄で性急

な考えだろう。このシンプルな考えは、現実社会でかなり少数派というだけじゃ

なくて、いくつかの根本的な問題点がある。

     

まず、簡単な社会的・法的事実として、本人の自由意志が許されないこと、認

められないことなんて、いくらでもある。分解して考えるなら、本人が他人よりも

優先されるとは限らないし、人間の心が無数の対立する要素から成り立ってる

ことを考えると、本人とは誰のことかという問題もある。さらに、自由意志がそん

なにエライのかって話も重要だ。

    

ドラマに即して考えてみよう。善男の場合、フツーの善男もネガティブ善男も、自

殺の方向を目指してる。それは「僕の意志」、「自分の意志」とも語られている。

でも、自殺を目指す人はしばしば方法に迷うもんだ。例えば、溺死でもいいけど、

もっと簡単な例を考えると、息を止めて自殺した人間というのを聞いたことがあ

るだろうか。私はないし、まず不可能だと思う。つまり、「自分の意志」で息を止

めると、「自分の身体」が強烈に逆らうのだ。ここから分かる事は、「自分の意志」

なんてものが自分の一部にすぎないということだ。心の自由は、身体にとっては

暴力なのだ。

     

一方、自殺が多いとか増えてると言っても、「死にたい」と思ったり口にしたりし

たことのある人間と比べれば、ごく一部にすぎないはずだ。ということは、「死に

たくない」という思い(事情をも含む広い意味)があったことに加えて、「死にたく

なくなる」ことが多いことを示してる。つまり、時間の問題があるのだ。自分の意

志だの、自由意志だのというものは、その時々で変わるもの。ある時点の意志

に、後の意志全体を抹殺してしまう権利があるかどうかを考えると、かなり怪しい

ことが分かるだろう。

自由なんてものが束縛よりも上とは限らない点については、前回述べた通りだ

束縛の中で「みんなあがいて生きて」るし、そこにも満足や心地良さや幸せはあ

るのだ。死ぬ自由が、生きる不自由に優先するとは限らないし、少なくとも私は

そうは思わない。これは本気で考えるに価する、生の根本的な問題だろう。。    

        

        ☆          ☆          ☆ 

では結局、今後どうすべきか。少なくとも、このドラマでは明らかだ。ドラマ内部

のストーリーとか、原作の前半を見る限りでは、このまま善男が死んでも全く不

思議はない。話の流れの問題だ。でも、公式サイトの脚本家のインタビューでは、

早くから「再生の物語」だと語られていた。これは、不特定多数へのプライムタイ

ムの地上派テレビ放送であることを考えると、当然の配慮だろう。だから、善男

は自殺を止めるはずだし、そうであるべきだし、そうあって欲しい。

          

ところが、今の善男は死のうとしてるし、これまで順に、しのぶ、みずほ、平太の

説得が失敗してる。杉本も入れてもいいだろう。すると残るのは2つだ。「偶然」

と、母・静子(加藤治子)。偶然は、今までも何度も善男を助けてるし、虚構の世

界に限らず、現実社会でもいくらでも作用してるものだ。それを運命と呼ぼうが

必然と呼ぼうが、確率論的な出来事と呼ぼうが、大した問題じゃない。一方、今

回、母への遺書は善男には結局書けなかった。母は善男の「現在の自由意志」

にとっても自由にならない、巨大な存在なのだ。

     

しかし残念ながら、偶然と母、これら2つの巨大な存在だけでは力不足だ。そも

そも、ドラマの副題は「世界一不運な男」となってるから、偶然は少なくともあと

1度は、自殺の方向に働かないと「世界一不運」にならないし、母は初期の認知

症で、しかも自殺計画を知らない。すると、偶然と母に手を貸す存在は、やっぱ

り平太としのぶしか残ってないのだ。平太の直接的な自殺阻止は、今回見事に

失敗したばかりだから、ここ最近は陰で活動してたしのぶが、何かを新たにやっ

てくれることを期待してる。もちろん、多少は残ってるはずの、平太の言葉の効

力も、しのぶを手助けしてくれるだろう。

        

そうゆう視線で見るなら、予告映像でのしのぶのダッシュは、飛躍=ジャンプに

向けた助走に見えてくる。それは、二重の意味で助走なのだ。善男の飛躍的変

化と、自身の飛躍的変化に向けて。もちろん、2人が飛躍するとき、全体の流れ

も大きく逆転。ひっくり返るはずだ。ちょうど、新しいタイトルバックで、しのぶの口

紅攻撃を受けた森脇がひっくり返ったように。。♪   

     

         ☆          ☆          ☆

今回も最後に本音を書いとくと、第9話も満足はできなかった。でも、第8話(こ

の時だけ監督が日比野朗)ほど退屈はしなかったし、俳優の存在感は依然とし

て圧倒的だ。吉高の輝き、龍平の味わい、コロっと滑稽にコケる小日向(転倒

=重心の落下=下に向かうこと=マゾヒズム)。同じく落ちて行く(=堕ちていく)

長谷川リカ=栗山千明の独特の暗さ、小西の引き締まったギャップ表現、要潤

の脇役への硬派な徹底ぶり、生瀬&丸山コンビの即興的ギャグ。

        

プー(渡辺万美)、まーくん(片山瞳)、ミュウ(桂亜沙美)の三人組を中心とした

キャバ嬢軍団も粒ぞろいだし、これまで書かなかったけど、取り立ての丸山を演

じる眞島秀和も、悪役なのに不思議な魅力を放ってて、特に声の響きが圧倒的

だ。今回のタイトル表示の際の音楽として、小曽根真のジャズピアノが流れたの

もすごく良かった。これぞ、大人の世界だ。

     

さらに、形式美もちゃんと作られている。先週、善男と平太が会話する時には、

後ろで都庁の第一本庁舎と第二本庁舎が並んでたのに対して、善男の単独行

動や独自路線が目立った今回は、第一本庁舎だけが善男と重ねられていた。

一方、第3話では、白い服の善男と黒い服のみずほになってたのに対して、最

後から3話目の今回は、黒い服の善男と白い服のみずほになってたのもキレイ

な対称性だ。善男の黒は、死そのものとか、死の欲望を示すと共に、ネガティブ

な側面を強調するもの。みずほの白いスーツは、インナーとタイツとパンプスの

黒を引き立たせるものだ。つまり、内側は黒だという強調。もちろん、そのまた内

側は白の可能性もあるけどね。いや、あくまで真面目な話をしてるのよ♪ 

    

そして、カレーの謎。今回で少しは分かったと思う。あれは、お香なのだ。死んだ

後、平太に供えてもらうお香を、自分の好みで用意したってこと。だから、遺書の

執筆と並行して作ってたし、物語の最初から善男が執着してた。母の部屋でも、

死の影が漂う母や仏壇、セピア色の夕陽と共に映されてた。こたつの上の皿に、

線香を立ててたのだから、そのまま2皿残されてたのも不思議じゃない。こうした

カレーの使い方を取っても、首尾一貫した上手さはあるのだ。 

   

つまり『喜多善男』には、最近の冴えの無さや相変わらずの低視聴率にも関わ

ず、依然として評価すべき点は多いし残り2回への期待も変わらないってこと。

という訳で、スタッフ&キャストの皆さん、見事なラストスパートを飾ってね。

ではまた。。☆彡

             

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.しのぶが小指噛めおじさん(平泉成)と切り離されたのは、みずほと平太

    の密談を盗聴した森脇が強気に交渉したってことかね。秘書にそんな力

    があるってのも変な話だけど、小指噛み攻撃だけじゃなく、イケメンの言

    葉攻めにも弱いってことか。平泉成の渋いイメージがガタガタかも♪

    

P.S.2 三波の論文名は、「脳内のネガティブ要素と形成人格の消去理論」

      英語は直訳で、「Deletion theory of negative element and formation

            character in brain」。ここに「delete」=削除って言葉が出るあたりに

            も、現代性が現れてるかも。こんな言葉、Windows95以降にパソコ

       ンが普及するまで、一般的じゃなかっただろうから。

       ゲームと共に、「reset」=リセットって単語や考えが一般化したのも似

          たようなお話だ。まあ、善男の場合は、リセットと言うより削除だろうけ

      どね。しかも、シフトキーを押したままの、ごみ箱にも残さない削除。。

     

P.S.3 前から気になってたウェイシスの女子社員。多中多枝子って役名なん

      だね。演じてるのは水谷妃里(ゆり)。どっかで見た顔だなと思ったら、

      雑誌のグラビアで見てるんだな。かなりスタイルいいもんネ☆ 細さと

      顔の小ささだと小西に負けるけど、首から下のプロポーション(=バラ

      ンス)では水谷の方が上でしょ。まだ21歳、これからも頑張ってね♪

       

P.S.4 今回のスポンサーは、LION、TOYOTA、hoyu、VISA、ヘーベルハ

      ウス、KDDI、DHC、FUJIFILM、DAIHATSU。不人気ドラマを支え

      てくれて、ありがとう☆

    

P.S.5 公式サイトによると、生瀬はかなりアドリブを使ってるらしい。たとえば

      今回、三波(=ナパ)と会った時の「ナッパ。お漬物みたい」って台詞と

      かは、アドリブなのかもネ♪

     

P.S.6 来週、つまり最後から2話目で、第2話に出てきた新橋がまた出てくる

      ようだ。あの、看板が落ちて来た場所ね。服の白黒だけじゃなく、これ

      を見ても、形式美というものへの感覚がよく分かるだろう。。

    

P.S.7 どうして『夜回り先生』(=水谷修)のコミックが映ってたかも分かって

      来た。そう言えば、保険調査員コンビって、単に保険金支払いを減ら

      すだけじゃなくて、悪事とか自殺を阻止する方向で動いてるもんね。

      ご苦労様♪ ピストル型のライターで殺人犯と戦うのは、素手で暴力

      団相手に交渉する実物の夜回り先生と似たようなものなわけね。

      

P.S.8 平太が「みんな、あがいて生きてんだよ」って言葉を、親父じゃなくて

      自分の言葉だと言ったのは、筋が通ってた。つまり、第二の「親父」を

      救おうとしてるんだから、親父じゃなくて自分の言葉が必要なわけだ。

      あそこの龍平の、ちょっと照れたような演技も絶妙だった☆

    

P.S.9 どうして平太が自殺を止めたかについては、おそらくわざと曖昧に

      れている。つまり、平太はみずほとの2000万の契約で、善男を「殺

      すのを止める」んだけど、「自殺を止める」とまでは約束してない。契

      約の直後のリカへの携帯でも、平太は「殺さなくて良くなった」と告げ

      ただけで、「逆に自殺を止めなきゃならなくなった」とは言ってない。

      ただ、自殺されると、みずほとしのぶの約束が破られて、みずほの仕

      事に巨大な悪影響が生じる(はずだった)から、自殺しない方が平太

      にとって都合がいいのも事実だ。だから、今回の自殺阻止の失敗を、

      その少し不純な動機と結びつけるのは、不可能ではないだろう。その

      後、平太あての手紙の断片も読んだんだから、平太がもう一度、もっ

      と心を込めて自殺を止めさせる可能性は一応残ってると思う。

    

P.S.10 暗示催眠とは、別にフィクションの世界のものじゃなくて、100年前

       まではわりとフツーに行われてたことだ。治療に使うのなら、催眠状

       態にして、「痛みが消えます」とか暗示をかける。これは、少なくとも

       一部の人に対しては、それなりの効果があったらしい。催眠など無く

        ても、暗示に一定の効果があることは現代医学でも認められている。

       三波&みずほの場合、ベッドの上でウトウトして催眠状態に近くなっ

       てる善男の耳元で、みずほが「あなたの心は苦しみで一杯なのね」

       とか、「解放されて楽になれたら幸せよね」とか、囁く計画だったん

       だろう。それで別人格が出来るかどうかはともかく、自殺の方向に

       向かう可能性はある。良い子は決してマネしないように。。♪☆彡

        

cf.パンドラの箱に残されたもの~『あしたの、喜多善男』第1話

   母を抱擁するマゾヒスト~『あしたの、喜多善男』第2話

   服のない人生はない~『あしたの、喜多善男』第3話

   魂の道の永遠性~『あしたの、喜多善男』第4話

   善悪の混沌への誘い~『あしたの、喜多善男』第5話

   父殺しへと向かったファザコン~『あしたの、喜多善男』第6話

   偶然という名のふれ合い~『あしたの、喜多善男』第7話

   束縛された愛の喜び~『あしたの、喜多善男』第8話

   つながり合う心と心~『あしたの、喜多善男』第10話

   生へとつなぎ止める他者~『あしたの、喜多善男』最終回

   『あしたの、喜多善男』最終回、原作『自由死刑』との比較

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   『あしたの、喜多善男』第9話をサラッと見終わった直後・・

   吉高由里子のドラマ『紺野さんと遊ぼう』に期待☆

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コメント

ごめ~ん!鹿男のTB送った(笑)
消しといて時差に弱い私(苦笑)


えっと・・・そんなに吉高由里子が好きなのね。
わかったわかった(笑)
でも、かわいいよね~私も好きだ。
なんとなく、しのぶが喜多さんの死を止めるような
気もするし。。。本当に死んでしまうような気も
するし、あと2日どうなるのか???


今回は三波さんの登場でちょっとガクっと
きちゃった。
そうだね、バランス崩れたよね。
あと2話、三波の出番はあるわけ?
ちょっと気が抜けてしまった9話だけど
あと2話見に行きます!


投稿: アンナ | 2008年3月 7日 (金) 22時17分

>アンナちゃん
  
何じゃ、そりゃ  前にもあったような気がするな。
時差って、海外旅行かよ♪ オレが遅いと言いたいわけか。
ま、その通りだけどさ。。
   
えっと・・って、コメントに困ったわけね
正直でよろしい。重い話はスルーってことで。
吉高はイイでしょ☆ 顔はあんまし可愛くないけど、
存在が可愛いわ  仕草とかキャラとか口調とか。
色気もあるし  一緒に応援してくれたまえ♪
しのぶがもう1回活躍しないと、全体の構成がおかしいのよ。
前半に中途半端な活躍してるから、終盤で締め直さないとネ。
   
いやぁ、死なないでしょ。病死とか、流れの中での死なら
ともかく、最初から自殺するって言ってる人間が、周囲に
止められながらも自殺決行なんて、ドラマ的にあり得ない。
深夜の実験番組とかじゃないんだからさ。
   
三波はヘン! 来週以降の扱いにも困るよ。
出しても出さなくても、バランス的におかしい。
ま、あと2話、ただ「見る」んじゃなくて、
積極的に「見に行こう」

投稿: テンメイ | 2008年3月 8日 (土) 13時52分

テンメイ様、こんにちは。

ふふふ・・・前フリから
本題に入るまでの長さ・・・。
これが天使のためらいというもので
ございますね。

まあ・・・しのぶについて
讃えることは
男性にとっても
エム性にとっても
異論はないのでございますが・・・

低視聴率の原因になっている方々の心には
届かないかもしれません。

このドラマ・・・きっと
ある種の人々には感情移入しにくい
ものすごさを持っていますね。

イケメンキャラは
龍平と要と用意されているのですが

龍平が・・・千明
要が・・・・真奈美

と・・・ある意味異質な顔立ちの美女二人。
男性も好みが分かれるところでしょうし
女性はなんとなく・・・無理みたいな心境に。

そして・・・可能性を秘めた由里子の相手が
文世でございます。

計算できないキャスティングです。

まして雅之なんてどうでもいい・・・感じ?

映画「静かな生活」(1995)でかなり
インパクトのある「悪」を演じて
昔の言い方でいうとかなりの性格俳優っぷりでした。
だからキッドはムフフと見ていたのですけれどね。

さて・・・本題は
自殺の否定。
そして・・・救助者は平太としのぶ
ということになりますね。

キッドは二人がゴールとして
「母」か「みずほ」を使うか
どうかがポイントだと思っています。

母は本来・・・防波堤のようですが
「先立つ不幸をお許しください」
という言葉があるほどなので決め手にかける。
そうなると「みずほとの再婚」が
一番効果的。

その場合・・・みずほは消される可能性が高い。

自殺は世界に対する反逆です。

世界(生きようとする人々)は消滅を恐れて
自殺者を否定します。
「死んで花実が咲くものか」です。

しかし・・・「消えろ」と
文世が世界を消滅させるほうに
悪魔は賭けたいと考えているのです。

まあ・・・これは来週も主題となりますけど。

投稿: キッド | 2008年3月 8日 (土) 16時41分

>キッドさん
   
こんばんは  ちょっと今、強烈に時間が無いもんで、
今回はサラッと行かせて頂きます <(_ _)>
   
本題までの長さは、それほど普段と違ってもないでしょ。
キッドさんの関心が本題に集中したってことじゃないかな。
お互いが全く正反対の主張をしてるわけですからネ♪
   
確かに、しのぶ=吉高は「低視聴率の原因になっている方々」
にとってはほとんど響かないでしょうね。
要潤がもうちょっと人気あれば違ってくるんだろうけど。
龍平も栗山も小西も、無理なんでしょう。
僕も栗山は・・とか言うと、キッドさんに怒られるわけね ^^
文世は当然として、雅之の重用は「何じゃ、こりゃ」って感じ。
まさか、脚本家が特別の思いを寄せてるとか。。
いや、俳優としては味があるような気がしますよ。
問題なのは、このドラマでの使われ方。
      
救助者は平太としのぶって、キッドさん的には
「救助を試みる者」って意味ですよね。
僕は「救助に(結果的に)成功する者」って感じ。
まあ、平太は変わったことはできないだろうから、しのぶと
「偶然」と母親を上手く使ってくれるのを期待してます。
みずほとの再婚?! みずほが消されるって、逮捕や殺人?
あまりに意外な話で、すぐには頭が働かないなぁ。
ま、後でゆっくり考え直してみましょう。想定外でした。
    
自殺の見方が、やっぱり決定的に違ってますね。
世界は消滅を恐れて自殺者を否定します。。
僕なら、むしろこう言いますよ。
世界は存在を愛して自殺志願者を肯定します。   
恐れと愛、否定と肯定は、コインの裏表のようなもの。
一体化したもののどちらに視線を向けるか、
それが生き方を決定的に左右するんでしょう。。

投稿: テンメイ | 2008年3月 8日 (土) 22時23分

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