コミュニケーションという困難~『Around40』第9話
今が 主婦だけで終わらない 最後のチャンスだと思ったの
何言ってんだ お前?!
私にだって自分の人生があるのよ!
(グランポンの入り口の外には岡村と洋介)
そんな事 一言も言ったこと無かったじゃないか
ちょっと いいですか
子供の患者さんで こうゆうケースがよくあります 両親が向き合わなければ
ならない状況を 無意識のうちに子供が作ってしまうということが
どういう事ですか
私達夫婦が向き合うために わざとガラスに手を突っ込んだってこと?
まさか・・・何のためにそんな事・・・
子供ってねぇ それほど 両親の不仲に心を痛めるものなんですよ
そうゆう子供たちを沢山みて来ましたから
(チリン♬)
洋介!
洋介君が 話したいことがあるそうです
☆ ☆ ☆
今週もてんこ盛りの内容だなぁ。来週の予告も凄かったし、意地でも15%前後
の視聴率を最後までキープするぞって感じの気持ちが伝わって来るね。しかも、
脚本家の橋部敦子が豪腕を発揮してるおかげで、空回りにはなってない。ゴチャ
ゴチャのように感じられても、よく見るとホントに細部まで練り上げられてる、意
外なほど優等生的な脚本だ。ネタ豊富、切り口色々、笑いあり、涙あり、深みも
感じられる♪ 基本的に、地味な設定にも関わらずね。
余裕があれば本格的に扱える内容だけど、残念ながら今週は今まで以上に余
裕がない。切るのも難しいから、サラッと「軽~い感想♪」的内容で書いとこう。
ハッキリ言って、第9話も『ラスト・フレンズ』より『アラウンド40』の方が良かった☆
ま、ラスフレはお祭り騒ぎが最高潮に達しつつある凄い状況だけどさ。ウチへの
アクセスもますますバブル状態で、膨らみきってはじける寸前って感じかも。。
それはともかく、アラフォーってドラマ。やっぱりメインは緒方聡子(天海祐希)と
岡村恵太朗(藤木直人)の恋愛だろうけど、予告がほのめかしてたプロポーズが
今回無いことに関しては、予想通りだった。もしプロポーズしてたら、展開に無理
があるから、また卓袱台を放り投げる所だ♪ そもそも、サブタイトルが疑問符
付きで「誕生日にプロポーズ!?」となってたら、プロポーズのはずはない。最後
の記号が「?!」じゃなくて「!?」となってる事にも注意しよう。クエスチョンマー
クの方が後ろで目立ってるのだ。
プロポーズは無かったものの、最後の東京・お台場の潮風公園らしきシーンは
良かったね☆ 夕陽がキレイで、やり取りや聡子の内心の声も軽妙で面白かっ
た♪ 木の指輪で、代金の7%を森林を守る基金に寄付ってのもエコっぽくてい
いし、ケースを聡子が開けた瞬間にすっとぼけた鳥の鳴き声が2回入ったのも
笑える。「人差し指か、中指か、薬指のどっかに合うといいんですけど」っていう
無邪気な台詞も、岡村らしくて可愛かった。
横浜・みなとみらいじゃなくて、わざわざフジテレビのそばでやってる姿勢も、挑
発的で私好みだ。演出の坪井敏雄をホメるべきなのかも。あの辺りは都内有数
の気持ちのいいスポットで、カップルも親子連れもくつろげるし、1人で気分転換
するにもいい。私も聡子と同じパステルグリーンのビアンキの自転車に乗って、
何度も出かけてる♪ 自転車でのんびり散歩する「ポタリング」には最適の場所
の一つだ☆ とか言いつつ、自転車ほったらかしでドラマ記事書いてるよな ^^;
さて、聡子&岡村カップルもいいんだけど、今回の中心テーマはやっぱりコミュ
ニケーションだろう。あるいは、裏返してディスコミュニケーション(=コミュニケー
ション不全)と言っても同じことだ。これをドラマで描く時の基本は、相互不理解
から相互理解に進む、一般ウケしやすいポジティブな流れとなる。週末の夜、大
人の女性がくつろいで見れる甘口ドラマ、『アラフォー』の今回も、普通に見れば
そうなってた。
中心は竹内家で、瑞恵(松下由樹)と夫・彰夫(神保悟志)のコミュニケーション
不全を、息子の洋介(木村遼希)が身体をはって救った形になってる。ガラスに
腕を突っ込む話とか、マーくん=大橋貞夫(筒井道隆)の洋食屋・グランポンで
の涙の竹内家の涙には、あんまし引き込まれなかったけど、その翌朝、彰夫
がハンカチを手に取って「ありがとう」と瑞恵に言葉をかけて、ゴミ袋を持って出
て行く所にはジーンとしてしまった。あそこだけ見ると、家族3人の写真を映す
必要はないんだけど、あの写真は遥か昔に軽く伏線を張ってたものだし、聡子
&和哉(加藤雅也)の写真エピソードのヴァリエーションでもあるからOKだろう。
ただ、その直後、聡子が岡村に、「ちゃんと言葉で伝えないと気持ちって伝わら
ない」と語ったのは、ややミスリーディング、誤解を招くおそれがあって、一言コ
メントしたくなる。何とも普通の話だし、間違ってるとも思わないないけど、この
ままだと言語的コミュニケーションばかりが脚光を浴びることになるからだ。
コミュニケーションというのは、決して言語的なものだけを指す言葉ではない。非
言語的なものとして、今回のドラマでも、舌打ち、表情、ガラスでの自傷行為、ゴ
ミ捨て、などが目立ってた。あるいは、瑞恵が仕事を始めたこととか、彰夫が瑞
恵の望みどおりに家を買って息子を私立中学に入れたことなんてのも、非言語
的な自己表現だ。
それらは、言語的表現に比べると、細かい伝達能力はないし、不正確な理解や
無理解も招きやすいけど、喋るだけが人間的なやり取りなのではない。「目は口
ほどにものを言う」なんて話もあるし、「愛してる」なんて言葉より、2人が交わす
ボディー・ランゲージ(身体言語)の方が何十倍も気持ちを伝えることだって、い
くらでもあるだろう。だから、先週の冒頭が、朝の目覚めから始まったのはダメ
なのよ。エッ、しつこい? あっ、そう♪
上の聡子の台詞は、深読みするなら、精神医学とか心の病に対する橋部(&ス
タッフ)の個人的主張とも見れなくはない。今の精神科の治療は、全体的に見れ
ば薬物治療が中心だ。カウンセリングとか、患者と話し合う時間は少なくて、以
前ほど重視されてもいない。聡子の講演用に岡村が用意したグラフでも、うつ状
態が神経伝達物質の不足で説明されていた。その物質の不足を補うのが、私
が第5話レビューのP.S.に書いておいた、SSRIとかSNRIと総称される薬物
だ。聡子が準備中に使ってた専門雑誌にも、『精神科治療学』(星和書店)の増
刊『精神科治療薬の副作用:予防・早期発見・治療ガイドライン』が含まれてた。
第5話で岡村がカバンに入れてた雑誌も、『臨床精神薬理』(同上)だ。
ただ、DSMを筆頭とするマニュアルに沿って薬物を投与するのが、本当の治
療になるのかという批判は、昔から根強く続いてる。橋部もひょっとすると、もっ
と対話を重視すべきだと思ってるのかも知れない。対話なら、医者や病院なし
でも一応可能っていう長所もあるから、対話重視の姿勢には一理も二理もある。
まあその姿勢も、歴史的に見れば、精神分析的な談話療法の登場以降に普及
したもので、ここ100年ちょっとの流行にすぎないとも言えるんだけどね。。
あと、洋介が「無意識のうちに」行った行為は、あくまで非常手段だし、リスクが
高いわりに、上手くいく可能性は低いことにも注意すべきだろう。実際、今回た
またま、友人に精神科医・聡子やスーパー臨床心理士・岡村がいたから良かっ
たようなものの、そうでなければ夫婦で責任をなすりつけ合って、余計に家族の
崩壊が進んだ可能性は十分ある。洋介自身も、あの程度のケガでは済まなかっ
たかも知れないのだ。まあ、このドラマは大人向けだから、中学生とかへの悪影
響は少ないだろうけど、またしても男性患者なのかって思いもあって、ちょっと引っ
かかったのは事実だ。
☆ ☆ ☆
もう時間だ。スパッと切り上げよう。前から書いてるように、橋部はエピソードを
後まで引っ張っていく癖のある脚本家だし、普通より突っ込んで考えるタイプだ。
今回コミュニケーションが上手く取れて、めでたしめでたしに見えた竹内家も、そ
のままハッピーエンドにはならないわけだ。ヒネリがあっていいと思う。予告によ
ると、早くも新たな離婚の危機が訪れるらしい。しかも、皮肉なことに、夫の方か
らのコミュニケーション(意志伝達)によって。
おまけに来週は、聡子の父・友康(林隆三)も危ないみたいだし、新庄貴文(丸山
智己)は離婚届を破るし、奈央(大塚寧々)は思いがけず妊娠しちゃうみたいだ。
そして、いよいよ岡村がプロポーズするようにも見えた。それですんなりハッピー
エンドになるとも思えないから、残り2話(?)もてんこ盛りの内容になりそうだね。
あとちょっと、橋部の剛腕を見せて頂くとしよう。
それにしても、「マーくん」って呼び名の由来、いつまで引っ張るの?!と思って
る視聴者が、全国に100万人以上いそうだね♪
それでは。。☆彡
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P.S.アラフォーでは、奇妙なほど男性患者が活躍している。その一方、第8話
の聡子は、女性患者の多さについて語ってたし、今回の聡子の講演テー
マも「多様化する女性の生き方と心の病について」だ。
精神疾患全体の男女比に関しては、なかなか決定的なデータが見当たら
ないものの、ここ数年の各種医療統計を見渡す限り、女性の方が少し多
いような感じだ。いわゆるドラッグ(精神作用物質)の使用患者に限定す
るなら、男性の方が圧倒的に多いようだけど、特殊な分野だし、一般的感
覚からすると、「心の病」というより「薬物乱用」と言うべきだろう。
あと、医療統計に出ない「潜在的患者」については何とも言えない。どう
定義するか、つまり何を病気とするかもすごく難しいしね。。
P.S.2 『ラスト・フレンズ』というドラマは、巧妙な精神医療システムとも言える。
「癒し」と言うと聞こえがいいけど、対症療法的な大衆薬に似た感じだ。
視聴者は、虚構の患者に対して他人事のようにあれこれ言うことで気
晴らしするけど、自分も患者だと認める視点はほとんど見当たらない。
この事実自体が、皮肉なことに、病の蔓延を示すことになっている。
これに対して、ウチが一貫して言い続けてるのは、程度の差、種類の
差はあっても、みんな患者でしょってことだ。暴力というのは、虚構の
登場人物・宗佑だけがふるうんじゃないし、ニュースに出る実在のDV
男だけがふるうんでもない。現実社会の全体が、暴力と共に作動して
るのだ。。☆彡
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コメント
テンメイ様・・・おはようございます。
サイコのラインは・・・
非合法のラインと似て非なるものですが・・・
もちろん・・・
ある種の相似性は持つわけです。
順法的な人間には
実行が不可能なことを為す
人間が正常かどうか・・・
という問題です。
これを南極としますと
北極では
自立という問題があります。
人は本来は・・・個人である。
だから自立しているのは自然。
しかし・・・人間は社会性を持っているのも
自然です。
で・・・家族という集団の中の個人のあり方も
問われます。
時には依存過多や癒着が問題になるわけです。
大人が子供を育てるにあたって
大人がはたして大人であるのか。
子供はいつ大人になるのか。
支配と保護のボーダー。
自立と反抗のボーダー。
甘えと癒しのボーダー。
これらはまさに・・・
正解なし・・・の複雑性を見せます。
そういう題材を選んでいる以上・・・
ある種の深みを見せないと共感されないし
ちょっとでも深いと拒絶反応が出るという
難しい立場のドラマ。
まあ・・・はっきり言うと
男が全部悪い・・・という展開です。
しかし・・・まあ・・・そこがいい・・・と
悪魔なら納得なのかもしれません。
投稿: キッド | 2008年6月 9日 (月) 06時34分
まぁ、いろいろと思うところはあったんですが、
最後の岡村の笑顔に全部持ってかれた感じです。
さすが初代ビューネくん。
温泉成分で
聡子を癒してやってください。
そういや聡子は岡村と温泉に行きたいと思うかな?
素直に一人温泉がうらやましいななとしては
ラストまでにちょっと触れて欲しいわ。
あ、まーくんのことはもういいや。
女性の悩みはメインキャストでおなかいっぱいなので
病院の患者まで女性だと収拾がつかなくなるか
もしくはカブっちゃうとも思うけど…
そういや1話で見たきり…?
ホントだ、アンバランスですね。
投稿: なな | 2008年6月10日 (火) 00時05分
>キッドさん
おはようございます もう、眠くて眠くて。。
非合法のラインというのは、法という強い概念を基準に
するものだから、サイコ(精神病)のラインより明確です。
ただし、何を法として認めるかとか、法の解釈の問題は
ありますから、2つのラインは、輪郭の曖昧さだけでも
相似性を持つわけです。
違法行為をなす人間には、正常といえない者が多く
含まれてるでしょうが、意図的に法を犯す者には、
法という存在が認識できてるし、行為のコントロールも
できてるわけだから、それほど異常でもないでしょう。
サイコ = 個人的な存在の形
= 自立
= 非社会性
= 非合法
という変換でも、サイコと非合法の相似性は示せます。
支配と保護、自立と反抗、甘えと癒しという、3組の
概念のペアは、必ずしも相容れない組合せじゃ
ないのですが、大まかに見ると対立概念の組合せですよね。
そのボーダー=境界を深く考察するようなドラマは、
地上波のゴールデンタイムではかなり難しいでしょうが、
視聴者の側で深く考えるのは可能でしょう。
甘口のアラフォーは、その意味でも、深みを持ってます。
つまり、大人の辛口(ドライ)でもあるわけです。
下のななさんのコメントが鋭くて面白いですね。
視聴者の大半を占める大人の女性にとって、女性の悩みは
おなかいっぱいに描かれてるので、せめて精神疾患くらい
男性が受け持ってくれってことなんでしょう。
それを引き受けるのが、男の優しさだと思います
>ななさん
アハハ いろいろと不満だったんですね。
我慢せずに、書いちゃった方がいいですよ♪
藤木は知性派だから、ファンも理性的でしょう。
藤木の笑顔はホント、爽やかでしたね。
僕は男だから萌えないけど、女性なら萌えポイントかも。
初代ビューネくん?! スキンケアの広告塔だったのか。。
2人で温泉ね。なるほど、十分あり得るな♪
初回は1人で行ったり奈央と一緒だったりしたけど、
最後は恋人と一緒か。形ができてます。
一人温泉がうらやましいって、そんなの簡単でしょ?
っていう発想が、男のものなのかな (^^ゞ
アレ、マーくんが捨てられちゃってる!♪
女性の悩みはメインキャストでおなかいっぱいね。
なるほど 女性視聴者の代表的感覚かも。
女性は日常的問題、男性は非日常的問題を表現してるって
意味では、案外バランスが取れてるのかも知れません
投稿: テンメイ | 2008年6月10日 (火) 09時20分