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オバマ大統領誕生、新聞3紙の社説と黒人の定義

史上初の黒人(アフリカ系)の米大統領として、バラク・オバマが当選した。マスメ

ディアは一斉にトップニュースとして扱ってるが、ここでは当選直後、2008年11

月6日の、朝日、日経、読売の社説を比較してみよう。これら3紙は、日本を代表

する新聞であると同時に、共同で比較サイト「あらたにす」を作ってる仲間、あるい

はライバル同士でもある。そこから3紙のサイトの社説ページに飛ぶことも可能だ。

          

まず、3紙が共通してるのは、黒人初の当選を祝福する姿勢だ。一見、当たり前

のように思えるけど、そもそもオバマはどうして黒人扱いなのかという問題がある。

この記事を書く前に30分ほどあちこち検索をかけてみたけど、3紙のサイトも含

めて、まだどこにも信頼できる情報は見つかってない

    

 (追記: その後、日経の短い説明を発見したので、別記事にまとめた。

         オバマ新大統領の黒人扱いに関する再考 )

       

一応、「Yahoo!知恵袋」にいくつかの個人的意見が情報源(=ソース)無しで書

かれてて、それは英語のウィキペディアの詳しい説明とも整合的だ(話がほぼ合っ

てる)。黒人の定義、あるいは白人の定義というものがアメリカ合衆国の各州で定

められていて、ある程度以上の黒人の血が混ざってる場合は黒人扱いとなるらし

い。例えば、ヴァージニア州なら16分の1以上で黒人。オバマの場合、父が黒人、

母が白人で、2分の1という高い割合が黒人の血になってる。だから、どの州の基

でも、あるいは古典的な「ワン・ドロップ・ルール」(one-drop rule:一滴の血でも

混ざってれば黒人扱いとする基準)に照らし合わせても、オバマは黒人となる。

    

 (追記: 何分の1とかいう血統の計算は、真面目にやるとかなり面倒な話になる

      はずだ。したがって、実際上はアバウトに扱ってるのだろう )

          

ただし、英語のウィキ(「African American」 の項目)でさえ、「情報源が全くない」

とか「独自のものにすぎない研究や、実証されてない主張が含まれてるかも知れ

ない」と注意書きされてるくらいだから、まだまだ満足はできない。とりあえず今回

は、この程度で妥協しとこう。

        

           ☆          ☆          ☆      

さて、3紙の比較に戻ると、社説の文章構成が一番まとまってるのが朝日だ。こ

れは別に、ウチが朝日新聞を購読してるからって話ではなくて、単なる現代国語

的な見方からだ。社説のタイトルは「オバマ氏当選─米国刷新への熱い期待」

まず冒頭で黒人初を祝った後、「厚い壁を打ち破って」という小見出しのもとで、

さらに根深い人種問題を扱う。続いて「ブッシュ時代へ『No』」という小見出しの

もとに、ブッシュがもたらしたイラク・アフガニスタンでの戦争と金融危機に立ち向

かう状況を書く。

    

最後に、「米一極支配の終わり」という小見出しで、今後は多極化とかグローバル

な世界的協調に向かうだろうけど、米国にはまだ主導的国家としての役割を果た

して欲しいと主張。結局、全体として、社説のタイトル通り、米国刷新や再生への

期待を表すポジティブな文章に上手くまとめ上げられてるのだ。微妙なニュアンス

も含めて、「優等生的」な社説と言っておこう。

          

一方、日経(=日本経済新聞)は少し違う。まずタイトルは「歴史的な経済危機

に挑むオバマ大統領」となってて、最初から経済と危機が強調されてるのだ。内

容的にも、金融危機との対決とか、大恐慌時のルーズベルトの対策を再現する

ことの困難さが、かなり強調されている。また、自国を守りたいがゆえの保護主

義には陥らないようにクギを刺してる点も、いかにも日本経済を代表する新聞ら

しい部分だろう。後は、戦争とか、日米関係の話がパラパラと加えられてる感じ

で、社説全体の統一感はやや不足している。「保護主義に陥らぬよう」、「日本か

らの提案も重要」という小見出しも、はっきり言って無くてもいいような使い方だ。

     

あと、自社独自の主張性もやや薄くて、客観的な分析を淡々と行ってる印象が

ある。「大人」の態度と言えなくもないだろうが、これでは「社説」というより一般的

説明に近いようにも感じる。ただし、金融問題を中心に、記述が細かくて具体的

な所は評価できるだろう。その点、朝日は大雑把で抽象的、もっと冷めた言い方

をするなら、キレイごとっぽいのだ。

       

最後に、読売新聞タイトルは、「オバマ氏圧勝 米国の威信は回復できるか」

これが疑問形になってる所が、そもそも朝日とは違ってる。つまり、日経よりやや

強く、不安や疑問や要求が出た内容だ。小見出しの「金融危機克服に全力を」の

もとでは、新人政治家だから不安だという話とか、日経と同様に保護主義への懸

念が書かれている。次の小見出しも「どうするイラク撤退」という疑問形で、公約

の実現の大変さが強調されている。

    

最後の小見出し「日米同盟の再確認」に続く部分が、最も読売らしい部分だろう。

ここで、米国と協調して、北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題に対処することの重要

が書かれてるのだ。この極めて日本的・極東的な話は、他の2紙にはないけれ

ど、読売は最後の目立つ箇所で強く明言している。好き嫌いの分かれる部分だろ

うが、私は日本人として、わりと評価する。ただ、読売の主張は一般にかなり強め

なので、もうちょっと柔らかさが欲しいとは思う。相手を変化させるためには、北風

をビュービュー吹き付けるだけじゃなく、太陽でポカポカ温めることも必要。その微

妙な「北風と太陽」のバランスこそが、他者とか外部との交渉においては決定的

に重要なのだ。

          

           ☆          ☆          ☆  

以上、ウチでの初めての試みとして、主要メディアの論調の比較を簡単に行って

みた。普段なかなか、じっくり行う余裕はないけど、やっぱりこうした客観的、第三

者的な分析は重要だと思う。是非またやってみたいし、今後はテレビとかネット、

あるいは世界の論調の比較にもチャレンジしてみたい。ま、余裕があればね。

ではまた。。☆彡

      

cf.オバマ新大統領の黒人扱いに関する再考

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コメント

こんにちは~。

>そもそもオバマはどうして黒人扱いなのかという問題がある。
私もこれ思いました。
そして選んだ妻は黒人。。。
白人だったら変?とか、考えちゃいました。
最初は、黒人っぽくないなぁって見てたんですけど、
白人とケニアの血が入ってたとは驚きでした。
もっと驚いたのは、黒人でも「エリート留学生」だった父親を持つ
オバマさんの支持率を上げるために貢献したのは、
「黒人奴隷」の血を引く奥さんのミシェルさんだったと。
「黒人」と一つにはまとめられない深くて長い歴史があるんですね~。
しかしオバマさんのあのカリスマ性には感心します。
体力・精神力も並みではない(笑)


それよりもオバマさんを身近に感じさせてくれた番組、
水曜放送の「悪魔の契約にサイン」はご覧になりました?
オバマさんのそっくりさんとして有名になったノッチさんが、
オバマさん行きつけの床屋でカットして貰ったり、事務所を訪問したり
厳戒態勢の中、警官に銃口を向けられても怯まず…
これが地元で噂になり、新聞にも載ってしまったんです。
最後は演説を間近で見て、本人と握手までするほど接近出来、
「私はオバマ?」の問いに「君はオバマだ」と言わせたノッチさん(笑)

こちらまで嬉しくなりましたわぁ。

投稿: mana | 2008年11月 7日 (金) 17時17分

> mana さん
   
こんにちは~
     
この記事をアップした数分後にはもう、
黒人の定義を問う検索が入って来ましたよ。
最近のGoogleはやたらレスポンスがいい。
ただ、早くも流行遅れ気味だから、2週間前
くらいに扱っとけばいい話だったなぁ。。
   
アハハ 白人の妻ね。そりゃ、負けてたでしょ♪
投票の調査を見ると、黒人のほとんどが
オバマに入れてますからね。
もちろん、単なる人種の問題じゃなくて、低所得層に
配慮してるから結果的に黒人の支持が厚くなるって側面も
ありますが、それにしても極端な傾向。
白人だけなら、マケインは負け~ん。・・寒いわ♪
        
黒人奴隷と黒人の区別には、意表を突かれましたね。
僕もその辺りはゴチャ混ぜになってたけど、
確かに、奴隷とそれ以外とじゃ大違い。
それにしても、僕は先祖が何かなんて知らないけど。
幸せ者ってことなのかな。。
   
オバマは若いし、カリスマ性があって心身も強靭そう。
ただ、実力に関しては、これからの1年間くらいで
お手並み拝見って感じかな。
ま、誰がやっても途方も無く大変ですが、だからこそ
成功すれば歴史に名前が残るでしょう。
初の黒人の米大統領だけじゃなく、百年に一度の
金融恐慌から世界を救った指導者として。
あるいは、戦争の泥沼から脱出した賢者として。。
   
テレビは、ここ1年くらい、レビューする
ドラマ以外はあんまし見れない状況なんですよ。
北京五輪でさえ、ちょっとしか見てません。
開会式、閉会式、陸上、卓球(愛ちゃん)、
あとはチョコチョコ。
        
そっくりさんが人気者になるって、
日本の政治家だと少ない気がしますね。
小泉の前だと、橋本龍太郎と田中角栄くらいかな。
なるほど、オバマがそっくりさんに
「You are Obama♪」と言ったわけネ☆
それは、得票率が0.1%くらい上がったでしょう
        
とにかく、今後のオバマの手腕に期待しましょう。
それより先に、今度は日本の選挙が問題かな。。
  
     
P.S.実はこの記事の冒頭、「肌の色の違いだけなら、
    白人の日焼けとも考えられる」とか書こうとして
    止めといたんですが、イタリア首相がその種の
    発言をして問題になってるとのこと。
    イタリアでは日焼けがヴァカンス(気楽な長期休暇)
    の象徴になってるって事情もあるようだけど、
    書くのを止めて正解だったかな。。

投稿: テンメイ | 2008年11月 8日 (土) 14時11分

>「ワン・ドロップ・ルール」

「何分の一までは、どっち」という定義の方法そのものが、はっきりそうといわないままに、白が基本で黒が「混ぜ物」と見る、ものの見方を、いつのまにかうっかり、人に、受け入れさせてしまう、詐欺的な装置であろうかと思われます。

ニュートラルに考えるなら
「A種の血が一滴でも混じっていればB種ではない」という言い方をするなら、
「B種の血が一滴でも混じっていればA種ではない」とも言わねばならないことになります。

ところで、
もし現在的にも(現行の「白人/黒人」に対応する)なんらかの表現の必要が、実務レベルで、あるならば、
いっそ即物的に顔の色を パントン Pantone の色見本帳の No とかで表現する方法を浸透させた方が、人の同定としては(身長や体型と同様に)有用なはずだし、
また、人種という「観念」を排していく方法としても有効じゃないでしょうか。


投稿: たまたま通りがかり | 2008年11月 9日 (日) 15時33分

> たまたま通りがかりさん
   
こんにちは。コメントありがとうございます♪
さきほど追加記事をアップした所です。
中立性を重んじる気持ちはよく分かりますが、
僕は今現在、そこまで強く言うつもりもないんですよ。  
                 
たとえば最初から2行目以降は、僕なら、
「白が基本で黒が『付加された性質』と見るものの見方を、
いつの間にか人に受け入れさせる可能性のある仕組み」
とだけ言うでしょう。
     
世の中のさまざまな言い方が、すべてニュートラルに
なってるわけでもないし、だからと言ってすぐに
不都合を生じるわけでもありませんからね。
そもそも、黒人の定義の話自体がまだ曖昧だし、
白人の定義はまだほとんど調べてない状況なのです。

完全な形式的ニュートラルを求める姿勢自体が、
実は現実的にはニュートラルでない可能性もある。
僕はそう考えてます。
           
顔の色で分けるというのは、おそらく
半ばジョークなんでしょうね。
あと、人種という「観念」を排するべきなのかかどうか。
それが「観念」かどうかも問題だし、人種と人種差別は
分けて考えるべきだと思います。。

投稿: テンメイ | 2008年11月10日 (月) 08時40分

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