全国学力調査、伝説の確率の問題が登場♪(モンティ・ホール問題)
アハハ (^^) いやぁ、久々に数学で爆笑させてもらった♪ 昨日(2009年4月21
日)実施された、「平成21年度全国学力・学習状況調査」。中学3年向けに知識
の活用を問う「数学B」問題の最後を飾ったのは、確率に関する有名問題だった。
国立教育政策研究所のHPを見ると、著作権に関して意外なほど厳しい制限が
書かれてるから、そのままの引用は避けとこう。ただ、この学力調査の問題自体
が、有名問題をほんの少しアレンジしただけのものだから、そんなに強気に出る
ほどのオリジナリティはない。そこで、私もほんの少しアレンジしただけで、この
学力調査問題の5番を「大まかに再現」してみよう。「引用」ではないので、関係
者の方、よろしくネ♪
☆ ☆ ☆
それでは、伝説の問題を書くことにする(学力調査に似せたヴァージョン)。
司会者と挑戦者の2人で、賞品当てゲームを行う。3つの箱の内、1つだけ賞品
が入ってるから、挑戦者はとりあえず、どれか1つの箱を選ぶ(まだ開けない)。
そこで、答を知ってるみのもんた・・・じゃなくて司会者が、残りの2箱の内、ハズレ
の方の箱を開いて挑戦者に見せる。その上で、挑戦者はファイナル・アンサー
・・・じゃなくて最終的な答を選択する。
さて、挑戦者は最後に、選択を変えて残り1箱にすべきか、選択を変えずに元の
箱のままにすべきか。あるいは、どちらにせよ当たる確率は同じなのか。。
(注. 実際の全国学力テストは、もっと簡単な誘導問題になってる)
☆ ☆ ☆
この問題を初めて耳にしたのは、5年くらい前だったと思う。常連さんはご存知
の通り、私は半ば理系の人間だ。数学は今でも大好きで、大学レベルの数学・
物理の記事を何本も書いて来たし、周りにもそうゆう友人・知人が何人もいる。
その中の1人が、面白い問題を見つけたと前置きして話し始めたのが、上の問
題だったのだ。
その友人が問題を入手したのは、『放浪の天才数学者エルデシュ』(ホフマン著,
草思社,2000)から。生涯に1500本もの論文を書いた天才でさえ間違えてし
まった単純な確率の問題として、掲載されてたらしい。私は確認してないけど、今
ネットで検索すると、確かにその本に紹介されてるようだ。
(追記: 5月22日に自分で確認した)
私もそうだけど、たぶん最初は多くの人が、同じだと考えるんじゃないだろうか。
挑戦者が最初に選んだ箱が当たりの確率は当然3分の1。また、最後に残った
1つの箱が当たりの確率も3分の1。したがって、最初の選択を変更してもしなく
ても確率は同じだろう。あるいは、少し話が変わるけど、司会者のヒントによって
3分の1 vs 3分の1の2者択一になったから、変更してもしなくても当たる確率
は2分の1、とも考えられる。さらにはもっと単純に、残った2つは「同様に確から
しい」から同じく確率2分の1、という考えも可能だ。
いずれにせよ、直感的(or直観的)には、選択を変更してもしなくても同じような
気がしてしまう。でも、かなりモヤモヤする部分も残ってるし、わざわざ問題として
出して来たくらいだから、引っ掛けがあるんだろう。という訳で、私は最初、慎重
に解答を保留したのだ♪ 数学好きのプライドにかけて、この程度の問題を間違
えるわけにはいかない。
で、しばらく後にもう一度その話題が出たから、改めて考え直してみた。あまりに
頭がモヤモヤする時、私は思わず笑ってしまう♪ ニヤニヤどころか、声を出し
て爆笑することもあるから、人前だと注意しないと通報されそうだ。
別の友人が「同じ」と答える中、私は結局「変えた方がいい」と答えた。その時は
確か、高校数学で習う「原因の確率」の計算を使ったと思うけど、どう使ったかま
では覚えてない。今日、久し振りに朝日新聞で問題を見た時には、モヤモヤして
爆笑しながらも、以前より要領よく考えることができた。
ポイントは、最後に残った1箱が当たる確率の計算だ。確か、ハンガリーの天才
エルデシュは、司会者が途中で言う事なんて関係なく、最初の時点で3分の1に
決まってると考えたんだったと思う。つまり、元々は3分の1vs3分の1の互角の
戦いだから、ハズレを1箱教えてもらった後でも同じという考えじゃなかったかな。
これに対して、今日の私はこう考えた。ヒントをもらった後の時点で「最後の1箱
が当たり」ということは、「挑戦者が最初に選択しなかった2箱のいずれかが当た
り」ということと同じだ(互いに必要十分条件)。したがって、その確率は3分の1で
はなく、3分の2。だから挑戦者は最初の答を変えて、最後の1箱を選択すべきだ。
実際これが正解なんだけど、天才エルデシュは納得できずに、実験してみろと
主張したんじゃなかったかな(記憶が曖昧)。まあ、最終的には、現実の確率計
算の根拠は経験(実験&観察)だから、それほどおかしな事を言ってる訳でも
ない。ただ、ちょっと子供が駄々こねるみたいでカワイイね♪
(追記: エルデシュの伝記によると、知人が多数のコンピューター・シミュレー
ションを繰り返して、やっぱり理論通りになることを確認したようだ)
☆ ☆ ☆
ちなみに、今回の学力調査の問題でも最後は実験の話になって、どうゆう実験
の仕方が正しいかという設問で終わってる。という事は、挑戦者がどうすべきな
のかという微妙な問題はギリギリで避けてるのだ。
まあ、これは当然の配慮だろう。エルデシュどころか、今ネットで見ると、多くの数
学系の人が間違えて話題になったとか書いてある。モンティ・ホール(Monty Hall)
という司会者のバラエティで同種のゲームがあったから、「モンティ・ホール問題」
「モンティホール・パラドクス」「モンティ・ホール・ジレンマ」という言葉まであるらし
い。標準的な形では、箱でなくドアで、当たりが車、ハズレが山羊(ヤギ)とのこと。
英語版ウィキペディアの「Monty Hall problem」の項目に、詳しい解説がある。日
本のウィキはその部分訳といった感じか。。
という訳で、確率の問題は面白いし、ちょっと怖いよねって話だ。特に本質的な
のは、確率計算の根本にある「同様に確からしい」という概念。この問題だと、最
後に残った2つのそれぞれが当たることは、「同様に確からし」くはないのだ。
まだ納得いかない人は、ズブズブとハマって頂きたい♪ ではまた。。☆
P.S.2022年9月21日、NHKのバラエティ番組『笑わない数学』にも登場。
cf. 全国学力調査2012・中学数学B、スキー・ジャンプの問題(原田vs船木)
ポアソン分布(過程)による地震の確率計算(by政府・委員会)
ベルトランの箱のパラドクス~フランス語原文と日本語訳、確率の計算
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コメント
テンメイさんこんばんは♪
かなりお久しぶりです。
中学生になると色々忙しくて。
ちゃんと愛読してますがコメントを残せる程の時間が無くって…
学力調査は私にとって天敵です。
小6の時にやりましたけど…何か嫌なんです。
この間は知能テストと何だっけ…忘れました♪
とにかくお国の人がせっせせっせ税金掛けて作ってる事はよく分かる内容なんですよね…
実際のプリント?も良いものですし。
私も中3になったらやるんでしょうか…
その時はテンメイさんのを参考にします♪
ホントに著作権の事に関してはプリントにも異様なまでに書いてあります。
誰もコピーしないだろ…とも内心思ってますが。
他の記事で沢山新聞の記事の事を沢山取り上げられているのを見てやっぱり新聞って良いな♪と思いました。
あ、ちなみに私は毎日新聞を頭からしっぽまで読んでます。
では、この辺で♪
投稿: 碧沢 香 | 2009年4月22日 (水) 19時26分
> 碧沢 香ちゃん
ポアンカレ以来、1ヶ月ぶりだね。

ま、学校第一ってことで。

こんにちは
名前見て、アオサワ「カオリ」ちゃんだ!って
思ったんだけど、「コウ」ちゃんだった。
中学生になると忙しいでしょ。
授業時間だけでも、かなり増えるはず。
中一の春っていうと、やっぱキツかったなぁ。
学校も遠くなったし、知らない人間だらけだし。
勉強も急に本格的になったし。
英語なんて、軽く見てたら置いてけぼりに
されそうになって、焦っちゃったわ
で、忙しい中でも愛読してくれてるわけネ。
どうもどうも
学力調査はみんな天敵でしょ。
何か、時々急に変なテストが入ってたなぁ。
別に成績と関係ないんだけど、やっぱ
緊張するし、出来ないと不愉快。
知能テスト以外に何だったかな・・忘れちゃった♪
うん、しっかり作ってあるのは分かるのよ。
プリントも良いものって、紙質と印刷かな。
中3って言うと、あと2年後でしょ。
それまで、全国学力調査が続いてるのかな。
参加がもっと自由になってたりしそうだけど。。
ウチの記事を参考にって、嬉しいけど、
それよりお役所の過去問を勉強しとこうネ。
あるいは、今回の新聞記事を取っとくとか。
ただし、コピーして友達に渡すと怒られるかも♪
新聞って、マジメに読むと凄い情報量だし、
メディアの中で信頼性は一番。
親とか先生の影響もあって、昔からよく読んでる。
毎日新聞か。ちょっと渋い趣味だね♪
頭からしっぽまで、毎日読んでよ。ダジャレかよ!
ではまた。。
投稿: テンメイ | 2009年4月23日 (木) 14時17分