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ε-δ論法による極限の定理(線型性)の証明

雨が止まない。。今日はまたランニング記事の予定だったのに、これだけ本降り

が続いたんじゃ、傘ランもする気がしない。代わりに、サラッと見た『夜光の階段』

第6話の軽~い感想を書くのもいいけど、最近お堅い「ε-δ論法」の記事が地

味にヒットしてるから、続編の記事を追加しとこう。ま、藤木直人が木村佳乃を殺

して夏川結衣とくっつく話を書いた方がウケがいいんだけどネ。

         

イプシロン-デルタ論法を使った問題と答を求める検索が時々入ってるから、

適当な例題を解説しようかとも思ったけど、それより先に、私が高校数学で引っ

かった極限(limit=リミット)の定理の証明を済ませておきたい。それは、数Ⅱ

の教科書に枠付きか太字で書かれてた、関数の極限の「線型性」(または線形

性)を示す次の定理、あるいは公式だ(もう一つの定理は記事後半で)。

                                          

090528

     

   

   

   

        

簡単に言うと、関数 f の値が p に近づき、関数 g の値がqに近づくなら、和(足

し算)の関数「 f+g 」の値は p+q に近づくという話。つまり、「関数の和」の極限

は、各「関数の極限」の和ということで、lim (f+g)=lim f +lim g と単純化して

もいい。普通の人なら、当たり前に思える話だろう。でも、昔から理屈屋だった私

は気になったので、数学のN先生に質問した。すると、まず「当たり前だろ」とか

言って来たから、「そうですか?」と更に食いつくと、大学レベルの数学でないと

証明できないという感じの説明をしてくれた。

                                           

私はそれ以降、その証明を見たことも、自分でやったこともなかったけど、いい

機会だから今回やってみた。すると、確かにきっちり証明できたのだ♪ なるほ

ど、やっぱりこの論法には価値があるね。イプシロン・デルタ論法、強力な論証

方法だ☆ それでは以下、証明してみよう。

        

        

         ☆          ☆          ☆  

題意を示すには、次のことを導けばよい。

     

     任意の正のεに対して、ある正のδが存在し、

     0<|x-a|<δ ならば |{ f(x)+ g(x) } -( p+q )| < ε

            

さて、いま任意の正のεが与えられた時、2つの極限の仮定より、次の2つのこと

が言えるはず。

  ある正のδ₁が存在して、0<|x-a|<δ₁ならば|f(x)-p|<ε/2

  ある正のδ₂が存在して、0<|x-a|<δ₂ならば|g(x)-q|<ε/2

      

したがって、δ₁とδ₂のうち小さい方(同じならその値)をδとすると

 0<|x-a|<δならぱ、|f(x)-p|<ε/2 かつ |g(x)-q|<ε/2

 辺々加えて、|f(x)-p|+|g(x)-q|<ε

   

更に、一般に成り立つ「三角不等式」、|m+n|≦|m|+|n|を用いると、

 |{ f(x)-p }+{ g(x)-q }|≦|f(x)-p|+|g(x)-q|<ε

 両端を見比べれば、 |{ f(x)+ g(x) } -( p+q )| < ε

以上で題意は示された。(証明終)

      

           ☆          ☆          ☆

という訳で、鮮やかに証明できるわけだ。ポイントだけ、青色にしておいた。ちな

みに、絶対値記号(二本の縦線)に関する三角不等式は、この論法で非常によ

く使う基本定理だ(証明は高校1年レベルだから省略)。ついでに線型性を表す

もう一つの定理についても証明しとこう。それは、次の定理だ。

                     

090528b    

   

   

        

簡単に言うと、「定数倍した関数」の極限は、「元の関数」の極限の定数倍という

ことで、lim k f = k lim f と単純化してもいい。これまた、常識的には当たり前

のことだが、上と同じく正確に論証できるのだ。以下、実際にやってみよう。

     

               

         ☆          ☆          ☆

まず、k=0の時には両辺0だから明らかに正しい。よって以下、k≠0とする。

題意を示すには、次のことを導けばよい。

     任意の正のεに対して、ある正のδが存在し、

     0<|x-a|<δ ならば |k f(x)-k p|<ε                  

        

さて、いま任意の正のεが与えられた時、極限の仮定より次のことが言えるはず。

  ある正のδが存在して0<|x-a|<δ ならば |f(x)-p|< ε/|k|

                ∴ |k||f(x)-p|<ε

                ∴  |k f(x)-k p|<ε

以上で題意は示された。(証明終)

      

            

            ☆          ☆          ☆

こうして、関数の極限に関する「線型性」(or 線形性)を表す2つの基本定理を

証明することができた。「当たり前」として天下り式に認めるより、遥かに理論

的な対応だろう。そもそも高度なレベルでは、「当たり前」と思われる事柄が間

違ってることも珍しくない。なお、関数の積(掛け算)や商(割り算)についての

定理も、似たようなやりで証明可能だ(上で示した和や定数倍よりは少し難

しい)。

 (☆2年後の追記: 積の定理の証明記事を追加。下のリンクからどうぞ。)

            

という訳で、今日はここで終了。また次回をお楽しみに。。☆彡

     

     

      

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf. イプシロン・デルタ(ε-δ)論法による極限の定義

   イプシロン・デルタ(ε-δ)論法の問題の解き方

   ε-δ論法による基本定理の証明~関数の積の極限

   ε-δ論法における、∞(無限大)や発散の扱い方

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ε-N(イプシロン・エヌ)論法~数列の極限の定義と解き方

  ε-N論法による基本定理の証明~数列の商の極限

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数学」カテゴリの記事

コメント

大変参考になりました。
ありがとうございました。

投稿: イグジスト | 2010年2月 9日 (火) 13時28分

> イグジストさん
         
はじめまして。コメントどうもです。
「exist」(=存在する)とは、面白いお名前ですネ。
参考にして頂ける方が存在するのは、嬉しいこと。
機会があれば、またいらしてください

投稿: テンメイ | 2010年2月 9日 (火) 23時02分

関数の積についての
ε-δ論法の証明も教えてもらえませんか
テンメイさんのを参考にしてみて
やってみたのですがうまくいきません

投稿: Ate | 2012年5月18日 (金) 01時45分

> Ate さん
   
はじめまして。コメントどうもです。
   
先ほど、関数の積の証明記事をアップしました。
上のリンクとか、ページ右サイドとか、
適当な所をクリックして、ご覧ください。
  
なお、同種の別の話や、この先の話については、
ご自分で頑張ってください

投稿: テンメイ | 2012年5月18日 (金) 08時22分

なぜ関数fの対してのδ1は2分のεより小さいといえるんですか?

投稿: 私 | 2016年9月21日 (水) 00時56分

> 私 さん
   
はじめまして。質問コメント、どうもです。
  
ご質問の意図は、なぜ「ある正のδ₁が存在して、
0<|x-a|<δ₁ならば|f(x)-p|<ε/2」
と言えるのか、ということでしょう。
 
εではなくε/2と言えるのはなぜか、ここが唯一のポイント。
   
それが気になるのであれば、最初の「導けばよい」式の右端を、
εではなく、aとでもすればいいのです(a>0)。
   
0<|x-a|<δ ならば |{ f(x)+ g(x) } -( p+q )| < a
  
δ₁に対して、a/2より小さいと言えるのは明らか。
任意のεより小さいのだから、ε=a/2とするだけ。
  
その後、しばらく先で証明される式の右端はaになります。
最後に、数学の慣習にしたがって、
aの代わりにεと書き直せばよいのです。
  
もちろん、aのままでも同じ意味の命題。
そもそもδも、bと書いても同様。
文字の使い方は、単なる慣習、習慣の問題で、
数学の実質的内容とは無関係です。
   
これでも分かりにくいようであれば、
εという文字ではなく、0.1とか0.01とか、
具体的な小さい正の数で何度か書いてみれば、
分かりやすいでしょう。。

投稿: テンメイ | 2016年9月21日 (水) 20時53分

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