カトリック教会と科学、今なお緊張~朝日新聞・文化欄
今夜は中途半端な時間しか残ってない。小雨ラン、理数系、文学系、いず
れの記事にもちょっと時間が足りないのだ。かと言って超手抜きつぶやき
記事でお茶を濁すほどの切迫感もない。という訳で、「困った時の朝日新
聞」の出番となる♪ 6月16日の朝日新聞・朝刊をサラッと眺めて見た。
隠れ将棋マニアの私としては、第67期将棋名人戦・羽生善治vs郷田真
隆(つい先ほど羽生が勝利)の記事にも引かれるんだけど、読者にひかれ
ちゃいそうだから別の記事を探す♪ 運悪く全体的にちょっとインパクト
が弱いな。「わたしのがん対策」なんて企画記事でも一応いいし、科学欄
の恐竜復元やコイン投げ必勝法(小島寛之の数学カフェ)でも書けなくは
ないけど、やっぱ文化欄かね。
☆ ☆ ☆
ページの右側(半分ちょっと)は大江健三郎の「定義集」で、毎度お馴染
みの平和主義が説かれてる。それより気になったのが、左側の記事。見出
しは、「バチカン舞台の映画『天使と悪魔』」「宗教と科学 緊張なお」。
現在のローマ法王・ベネディクト16世と有名な理論物理学者ホーキング
が語るカラー写真が添えられている。
トム・ハンクス主演のこの映画。「反粒子」とか「反物質」という妙なも
のの取扱いをめぐって、物理学者のビミョーな反応を引き出してることで
も知られてるけど、この記事が扱ってるのは、世界10億人のカトリック
総本山バチカン(ローマ法王庁)の反応。と言うのも、映画はバチカンが
攻撃されるストーリーだし、その背景には、地動説のガリレオ迫害から現
在まで延々400年ほど続いてる、宗教と科学の緊張関係が見えるからだ。
同じ原作者ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』が映画化された時
はバチカン高官が非難したけど、今回の『天使と悪魔』では、バチカンの
新聞が「無害なエンターテインメント」と評したらしい。これについて朝
日記者の磯村健太郎は、「今回も不愉快だったはずだが、かなり抑えた印
象だ」と評してる。
キリスト教にとって、地動説も長年不愉快なものだったけど、今ではそれ
よりも世界の始まりの方が重要。『ホーキング、宇宙を語る』にも書かれ
てるように、バチカンが気にしてるのは、ビッグバン理論における宇宙の
始まりの瞬間らしい。神がもたらした「無からの創造」を、物質的に探求
してはならないとの事だ。法王庁の04年の報告書では、「ただ信仰によっ
てのみ知りうるもの」と書かれている。
ウ~ン、私は別に宇宙論や物理学の味方じゃないけど、そんなに拒絶する
必要があるのかね。これまでのキリスト教と科学的営みをめぐる歴史を眺
めても、もうちょっと柔軟な対応があってもいいけどなぁ・・とか思って
たら、記事の最後にちゃんと「大人」の対応が載ってた。去年のバチカン
の科学者会議では、現法王は「神の創造を信仰で理解することと科学によ
る証明は対立しない」と述べたようだ。うん、その路線でイイと思うね♪
説明不足だし、説明困難なのも確かだけど。。
☆ ☆ ☆
ビッグバン理論という名の宇宙進化説にせよ、いまだ論争中のダーウィン
の生物学にせよ、進化論というのは一般に、遙か昔のことを最近の理論と
データから語ることだ。常識的に見て非常に大まかな仮説にすぎないし、
「自然の斉一性(=一様性)」という偉大な掟=法に依存してる点では、
宗教と似たようなものだ。
そういった存在に過ぎない仮説を、さも宗教を超えた絶対的真実であるか
のように語る科学者や科学的主張が目立つのは確かだけど、世間一般を見
渡すと、意外に冷めた反応のような気がする。
たかが40年前の月面着陸でさえ信じてない人がかなりいるんだから、数
百万年前の話を真に受ける人は少ないだろうし、ましてや百億年前の話と
なるとごく僅かだろう。そもそも学校のテストでもない限り、そんな話は
信じなくてもほとんど損はないのだ。他にもっと身近で重要な話は沢山あ
るし、宇宙論はほとんどの人にとって難しすぎる。
それより聖書や教会を選ぶ人は今後も大勢いるだろうから、余裕を持って
対処してればいいのだ。「科学教」が伝統的宗教を壊滅させるのは、まだ
まだ遙か遠い未来のこと。あるいは、永遠に実現しない杞憂だろう。。
☆ ☆ ☆
ちなみに、私はキリスト教とも他の宗教とも特に関係はないので念のため。
今後もある程度の距離を保ち続けるだろう。宗教に対する知的関心はかな
りあるけど、物事を絶対的に信じるという傾向がまったく無い人間だし、
とりあえずそれでいいと思ってる。ま、死ぬ間際になったら突然あわてて
何かにすがりつく可能性はあるけど、神様仏様ならちゃんと人間のワガマ
マを許してくれるでしょ♪ 偉大な絶対者は慈しみ深き存在のはずなのだ。
ってことで、今夜はこの辺で。。☆
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