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イプシロン・デルタ(ε-δ)論法の問題の解き方

メインで使ってるパソコンが故障して以来、なかなか思うように記事をアッ

プ出来なくなってる。今日は久々に理数系の記事を書こうと思ったんだけ

ど、一時しのぎで今使ってるのは古いパソコンだから、これまで使ってた

数式エディター「数式 3.0」がワードに入ってないのだ。それどころか、

日本語入力システムが古いせいで、記号の右上や右下に小さく数字を

入れることもできない。仕方ないから、昔の記事の入力を部分的にコピー

&ペーストすることにしよう。

     

とにかく、非常に不自由な環境でのアップなので、悪しからずご了承を。

内容は、またイプシロン・デルタ (ε - δ) 論法について。前の2本の記

事が、ドーナツ(=トーラス)関連に続く地味なヒットになってるから、最

後に問題の解法を載せとこう。これは、最低限の知識のある人を対象

にしてるので、この論法を全く知らない人は、まず先行記事(特に1本目)

を読んで頂きたい。この記事自体も含めて、高校生が読んでも理解可

能だと思うけど、それなりの実力と努力は必要だろう。

                                  

    イプシロン・デルタ (ε - δ) 論法による極限の定義

    ε - δ 論法による極限の定理 (線型性) の証明   

      

        ☆        ☆        ☆

さて、厳密さが売りのロングセラー『解析入門Ⅰ』(杉浦光夫,東京大

学出版会)を見ると、この論法を用いた極限の証明として最初に出てく

る問題は、x → a の時の lim x ² だ。x が限りなく a に近づく時、x ²

は何に限りなく近づくか。高校レベル、あるいは一般レベルなら、明ら

かに a ²  と答えを出してすぐ終わりだけど、そこを ε-δ 論法で厳密に

示すことになる。つまり、次のことを証明するわけだ。

                                                 

  すべての正の ε に対して、ある正の δ が存在し、

  すべての x について、0 <|x-a|< δ ならば |x ²-a ²|< ε

     

要するに、自分である δ を見つけて、この条件を満たすことを示す

だけど、テキストでは最初からいきなり難しい δ を持ち出して、簡単に

証明して終わってる。どこからその δ を見つけ出したのか、その説明

はないのだ。現代のフツーの感覚だと、非常に不親切な参考書だけ

ど、逆に言うと、自分の頭で考えることを促してるとも見れるだろう。そ

こで、私が自分で考えて解説してみよう。

    

まず、この δ は当然 ε と a で表されるはずだ。また、ε に応じて小さ

くなるはずだから、とりあえず δ = k ε とおいてみる。ただし、k は

正で、a の関数だ (定数の場合も含む) 。単純な関数の極限は、こ

れで上手く行くことが多いと思う(k ε とおかずに δ のままでも解ける)。

                                

|x-a|< δ の時に、x ²-a ²|=|x-a||x+a|< ε を示したい

のだから、δ |x+a|≦ ε であればよい。つまり、k ε |x+a|≦ ε 、

すなわち、k|x+a|≦ 1 ・・・① であればよい

            

ここで、よく使う「三角不等式」より、次のことはすぐ言える。

|x+a|=|(x-a)+2a|≦|x-a|+2|a|< δ +2|a|

よって、k|x+a|< k(δ+2|a|)

①と見比べると、k(δ +2|a|)≦ 1 ・・・② であればよいことが分かる

この不等式に δ = k ε を代入して k を見つけてもいいんだけど、

δ は適当に一つ見つければいいのだから、もう一工夫してみる。

     

つまり、δ ≦1という条件を加えるのだ。この「1」は、要するに小さく

て簡単な正の数という意味で、別に2でも1/3でもいい。ここでは

テキストに合わせて1を選んでおく。すると直ちに、次の式を導ける。

   k(δ +2|a|)≦ k(1+2|a|)

これと②を見比べると、k(1+2|a|)≦ 1 であればよいことになる。

よって、k≦1 / (1+2|a|)。

したがって、δ =k ε ≦ ε / (1+2|a|)

     

最後に δ ≦1という条件を考え合わせると、δ は ε / (1+2|a|)

と1の小さい方に決めればよい(同じならその値)。

結局、2つの数の小さい方を表す記号「Min( , )」を用いれば、

  δ = Min ( ε / (1+2|a|) ,

       

          ☆        ☆        ☆

テキストでは、この値をいきなり書いて、そこから次のように証明

している。ここまでの話が分かれば、理解できるだろう。この記事

に合わせて、ほんの少しだけ形を変えて引用してみよう(p.62)。

      

   任意の ε >0 に対して δ = Min( ε /(1+ 2|a|) , 1 ) 

   とおけば 0< δ ≦1であって、

   |x-a|<δ  ならば|x|<|a|+δ だから、

   |x|+|a|<δ +2|a|≦ 1+2|a|≦ ε/δ

   となる。従って|x-a|< δ ならば

   |x ²-a ²|=|x+a||x-a|

          ≦(|x|+|a|)|x-a|< (ε / δ) ・δ =ε

   が成立つ。───

         

        ☆          ☆          ☆

似た考えで、3次関数の極限までなら上手くいくことは確認した。また、

テキストの演習問題(p.63)の1/x 、sin x 、eのx乗、log x も解く

ことが出来た。1/x の場合は定義域 x≠0 に注意して工夫する。

sin は「和積の公式」で変形。log は定義域 x>0 に注意すればよい。

テキスト巻末の解答にはデルタの値(の一例)しか書いてないけど、す

べて自力で求めることが出来た。ただし、1/x 以外はグラフを少し使っ

てラクをした。数式だけだと、面倒だし長くなってしまう。

         

一番苦労したのは 1/x 。これは、定義域が x<0 と x>0に分かれ

て不連続だから、その扱いに工夫が必要だったのだ。ちなみに sin

(三角関数)はともかく、e (指数関数)とlog (対数関数)は δ =kε

の形で求めることは出来ない。

        

一般的に言うと、最大のポイントは、|x-a|<δ という条件の使い方

「x-a」 が非常に小さいことを使って、「・・・< ε 」という不等式を示すわ

けだ。当然、不等式や絶対値記号にも習熟しておく必要がある。あと、

δ を一つ見つけるだけという事情もあるから、適当な条件を加えて工夫

するのもポイントだ。その意味では、やっぱりケースバイケースだろう。

                    

という訳で、今日はこの辺で。それでは、また。。☆

    

     

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.イプシロン・デルタ (ε - δ) 論法による極限の定義

  ε - δ 論法による極限の定理 (線型性) の証明

  ε-δ論法による基本定理の証明~関数の積の極限

  ε-δ論法における、∞(無限大)や発散の扱い方

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ε-N(イプシロン・エヌ)論法~数列の極限の定義と解き方

  ε-N論法による基本定理の証明~数列の商の極限

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