« ツール2日目、新城5位!&2ヶ月ぶりのハーフ♪ | トップページ | ツール4日目、ランス恐るべし!&居眠りラン »

うつ病の診断基準2~気分変調性障害

3週間ほど前、NHK『ためしてガッテン』のうつ病特集を見た後、「うつ病

の診断基準と抗うつ薬」という記事を書いたら、予想以上のアクセスを頂

いた。テレビの影響の大きさもあるだろうけど、うつ病が気になる人はやっ

ぱり多いんだろう。

            

特に、自分または身近な人がうつ病のように感じられる時、病院に行く前

に自分で軽く「素人診断」してみるのは自然なことだし、そのための情報

も今の世の中には溢れ返ってる。だからこそ、信頼性の高い情報を選択

しないと、混乱や誤解が増すだけになってしまうだろう。

              

前回の記事では、わりと信頼度の高いNHKの人気番組に加えて、現代

精神医学の国際標準マニュアル『DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統

計マニュアル』(米国精神医学会,医学書院,以下DSMと略記)を参照し

て、うつ病の最低限の診断基準(正確には大うつ病エピソード)を説明し

ておいた。

                                

ここに再掲すると、
     
   1. ほとんど毎日、抑うつ気分(ゆううつ)が続く。

   2. 何に対しても楽しいと感じることができず、興味がわかない。

   3. 食欲が低下している。体重が減った。

   4. よく眠れない。

   5. イライラする。

   6. 疲れやすく、だるさがとれない。

   7. 自分を責めてばかりいる。自分には価値がないと思う。

   8. 集中力が低下し、考えることができない。

   9. 死んだ方がよいと思う。

                

これらの内、1と2のいずれかを含む5項目が2週間以上続いて、苦痛や

生活上の支障を伴う時に、うつ病と診断される・・・というのが『ガッテン』の

説明だ。でもこれは、DSMの基準をかなり省略して書いてるし、各項目に

当人があてはまるかどうかの判断も素人には難しい

                 

さらに厄介なのは、一般に「うつ病」(広い意味)と呼ばれる心の病に、色

んな種類があることだ。上に挙げた9つの症状は、基本的には「大うつ病

性障害」(Major Depressive Disorder)、つまりメジャーな(or典型的)うつ

を診断するためのものである。それ以外にも、代表的なうつ病だけで、

気分変調性障害、双極性障害(いわゆる躁うつ病)が存在。さらに、これ

ら全体をまとめる「気分障害」というカテゴリーとは別に、「適応障害」とい

うカテゴリーの中にもうつ病的な障害があるのだ。

               

前回は結果的に、「大うつ病性障害」の診断基準を示したことになるから、

今回は「気分変調性障害」の診断基準を示しとこう。私が基本的に参照し

てるのは、精神医学マニュアル・DSMそのもの。他に、日本うつ病学会・

理事長の人気者、野村総一郎が去年出した力作『うつ病の真実』(日本評

論社)なども補助的に参照している。

                

         ☆          ☆          ☆

さて、「気分変調性障害」(Dysthymic Disorder)は、「大うつ病性障害」と

同じく「単極性」、つまり「うつ」単独の障害であって、「躁」も加わる「双極

性」障害(つまり躁鬱病)とは区別される。簡単に整理しとこう。

                  

       単極性(うつだけ)  ── 大うつ病性障害

                        気分変調性障害

       双極性(躁もある) ── 双極性障害(=躁うつ病)

                     (注. 単純化した分類に過ぎない)

                

気分変調性障害が、以前の大うつ病性障害と区別されるポイントをまず

大まかに書いとくと、前に挙げた診断基準(=大うつ病エピソード)を満た

さない抑うつ症状があることと、抑うつ気分が存在しない日も多少あるこ

と(だから気分変調性)。要するに、軽めなのだ。

                                             

正式な診断基準をすべて書くと複雑すぎるし、前の基準も省略版だった

のだから、今回も省略版の診断基準を書いとこう。ただし、今回は私個

人の判断で省略している。正式な診断は病院の精神科医に任せるのが

大前提なので、悪しからずご了承を☆

         

  ☆気分変調性障害の診断基準 (簡易版)

   A.抑うつ気分がほぼ一日中あることが多く、2年以上続いてる。  

   B.抑うつの間、以下のうち2つ以上が存在。

     (1) 食欲減退、または過食

     (2) 不眠、または過眠

     (3) 気力低下、または疲労

     (4) 自尊心の低下

     (5) 集中力または決断力の低下

     (6) 絶望感

   D.障害の最初の2年(小児や青年なら1年)は、大うつ病エピソード

     が存在しない

   E.躁病エピソードがあったことはない。

                     

   以上のA、B、D、Eすべてが満たされれば、気分変調性障害

           

          ☆          ☆          ☆

基準Eは、要するに「うつ」の反対の「躁」症状がないということだ。「躁病

エピソード」(=躁病の診断基準となる症状)については、次回の記事で

また説明することにしたい。あと、上で基準のC、F、G、Hは全く省いてる

し、A、D、Eもかなり省略してある(Bはほぼそのまま)。

             

こうした基準は本来、なるべく簡単に客観的診断を行うために考案された

ものだけど、「大うつ病性障害」と「気分変調性障害」を見ただけでも、一

般人の感覚でいうと面倒な話だろう。実はうつ病学会理事長の野村によ

ると、「専門家の間ですら、うつ病概念への安直な理解、もっとはっきり言

えば誤解が蔓延しつつあるのだ」(『うつ病の真実』 p.2)。

                                         

あらためて思うこと、また理解すべきことは、心の病の複雑さだろう。複雑

なものをあまりにも簡単に理解したり、手軽に治療したりすると、かなりの

「無理」が生じてしまうのは容易に想像できることだ。

           

ウチでは、ブログとして出来る範囲で、なるべく正確で公平な情報を発信し

たいと思ってる。ただしあくまで基本は、病院のプロに任せること。運悪くそ

れが上手く行かなければ、別のプロに頼るしかない。それでもダメなら、あ

るいはそれが出来なければ、やむを得ず他の道を探るしかないだろう。

                                 

次回のうつ病記事では、双極性障害(Ⅰ型、Ⅱ型など)を取り上げる予定。

とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡

            

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.うつ病の診断基準と抗うつ薬~NHK『ためしてガッテン』

  うつ病の血液診断と遺伝子変化

  うつ病の診断基準3~双極Ⅰ型障害 (躁うつ病)

  うつ病の診断基準4~双極Ⅱ型障害 (軽い躁うつ病)

  新型うつ病の一つ、非定型うつ病について

  統合失調症の診断基準、統計、および歴史的経緯

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  心理療法を無料で全国民に~朝日新聞「欧州の安心 イギリス」

  大胆かつ繊細な試論~香山リカ『雅子さまと「新型うつ」』

  ネット依存とうつ症状~朝日新聞「やさしい医学リポート」

| |

« ツール2日目、新城5位!&2ヶ月ぶりのハーフ♪ | トップページ | ツール4日目、ランス恐るべし!&居眠りラン »

心と体」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ツール2日目、新城5位!&2ヶ月ぶりのハーフ♪ | トップページ | ツール4日目、ランス恐るべし!&居眠りラン »