うつ病の診断基準3~双極Ⅰ型障害 (躁うつ病)
6月、7月と、うつ病関連の記事を3本アップしてから既に1ヶ月以上が経
過した(大うつ病性障害,気分変調性障害,血液診断と遺伝子)。アクセ
スは多いし私自身も関心があるので、久々に第4弾の記事をアップしよう。
正直言って今夜は、『ブザービート』第6話の直輝(山P=山下智久)の
「関節ねずみ」と呼ばれるケガについて説明した方がウケがいいんだろ
うけど、フィクションのコネタよりはリアルな精神医学を優先すべきだろう。
今回も主として、世界標準の精神医学マニュアル『DSM-Ⅳ-TR 精
神疾患の診断・統計マニュアル 新訂版』(医学書院)と、日本うつ病学会
会長・野村総一郎の『うつ病の真実』(日本評論社)を参照して書くが、そ
れ以外の情報にも色々と目は通してある。ただし、病気はあくまで専門家
に任せるのが基本。この記事は単に自己責任で参照すべきネット情報に
すぎない事をあらかじめご理解頂きたい。
☆ ☆ ☆
さて、うつ病と言っても色々あるが、これまでは「大うつ病性障害」と「気分
変調性障害」を取り上げた。簡単に言えば、ハッキリしたうつ病と、気分
が変化する微妙なうつ病だ。これらはどちらも、躁病なしでうつ病だけだ
から、「単極性」の気分障害だ。それに対して今日取り上げる「双極Ⅰ型
障害」は、ハッキリした躁病を伴ううつ病だから「双極性」障害と呼ばれる。
この「Ⅰ型」の基準を書く前に、「躁うつ病」という厄介な言葉を簡単に説
明すべきだろう。これには広義と狭義、2つの意味がある。一つは、うつ
状態を示す病気全体を指す広い意味(広義の躁うつ病)。20世紀初め、
精神医学の父とも言うべきクレペリンがこの意味で「躁うつ病」という言
葉を使って以来、何十年にもわたって世界に受け継がれて来た。
ところが、躁病が(ほとんど)無いうつ病まで躁うつ病と呼ぶのはおかし
い、というような意見が広まって来て、今では両方ある時だけを示す狭
い意味になって来ている(狭義の躁うつ病、より正確には双極性障害)。
とはいえ、長い間使われて来た広い意味もまだあちこちに影響が残って
るので、躁うつ病の説明を聞く時にはどちらの意味なのか注意する必要
があるのだ。たとえば古めの本だと、躁うつ病という言葉を広い意味で
使ってる可能性が高いだろう。年配の精神医学者、あるいは新しい基準
であるDSMに批判的な人の話を聞く際にも注意する必要がある。
さて、以下で説明するのは、狭い意味の躁うつ病(=双極性障害)の一つ、
双極Ⅰ型障害だけど、実はこの診断基準は細かく6組に分けられている。
一般市民にとってこの分類はわずらわしいだけだと思うし、専門家がこれ
らをきちんと分けて話してるのを見る機会もなかなか無い。実際、前述の
『うつ病の真実』でも、この6組の区別は全く出て来ないのだ。
そこで、6組にほぼ共通する最大の「診断的特徴」(DSMの説明の最初)
を挙げるなら、以前に説明した「大うつ病エピソード」に加えて、「躁病エピ
ソード」と呼ばれる特徴もあることだ(下記P.S.も参照)。その「躁病エピ
ソード」を示す基準は、例によってA~Eの5項目に分かれてるけど、重要
なA、B、Dに絞って要約しとこう(実際はもう少し詳しい)。
A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、または
いらだたしい期間が少なくとも1週間持続する。
B.障害の間、以下の症状の3つ以上がはっきり持続している。
(1) 自尊心の肥大
(2) 睡眠欲求の減少
(3) 多弁、または喋り続けたい気持ち
(4) 観念奔逸(色んな観念が素早く自由に変化)
(5) 注意散漫
(6) 目標に向かう活動の増加、または活動してない焦り
(7) 悪い結果になりそうな快楽的活動への熱中
(買物、性、投資など)
D.障害は、生活に著しい問題を起こすくらい重い。
☆ ☆ ☆
ちなみに、この躁病エピソードを軽くしたものが「軽躁病エピソード」で、
それと大うつ病エピソードが両方ある場合は「双極Ⅱ型障害」になる。
ただ、他にも補足すべき内容があるし、Ⅱ型その他についてはまた
別の記事をアップするとしよう。
ともかく何度も書いてるように、基本は専門家に任すことであって、ネッ
ト・本・テレビによる情報収集は補助的なもの、または参考にすぎない。
今日の記事で扱ったⅠ型に関連するDSMの説明だけでも、実は遥か
に長くて細かいものだという事をお忘れなく(全部で10ページ以上)。
今日はもう時間が来た。それではまた、次回の記事にて。。☆彡
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P.S.DSMの説明を文字通り読むなら、Ⅰ型にとって「大うつ病エピソー
ド」は必要不可欠なものではない。でも、単なる躁病エピソードだ
けならそもそも「双極性」と呼ぶ意味が無いのだ。ちなみにDSM
では、Ⅰ型の説明の冒頭で、「しばしば、その人には1つ以上の
大うつ病エピソードがある」と説明してある。つまり、躁病にはうつ
病が伴うのが普通だという事だ。ちなみにその逆、つまり、うつ病
には躁病が伴うのが普通だとは言えない。単独のうつの(ように
思われる)患者は多いのだ。
P.S.2 DSMにある「混合性エピソード」というのは、大うつ病エピソー
ドと躁病エピソードが混合してるだけだから無視した。正直、
マニュアルの分類と説明自体が不要だと思う。
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cf.うつ病の診断基準と抗うつ薬~NHK『ためしてガッテン』
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