科学ではなく、「カガクが街にやってきた」~朝日新聞・夕刊
さて、膝痛もあって今日もランニングはお休みだし、昨日山P=山下智久
のドラマ『コード・ブルー2』第6話の感想を書いた後だから、藤木直人
『泣かないと決めた日』第4話の感想を書くのもためらわれる。初回以来
久々に後半だけサラッと見たんだけど、別のドラマみたいだったな。あの
イジメ連発はどこに行ったんだろう。前半にあったのかな。まあ、藤木ファ
ンは涙ぐむ姿を見れたし、要潤ファンはセミヌードのリピートが出来るから
満足ってことか♪ 榮倉にも杏にも萌えない男性視聴者には辛いかも。
ともかく、ドラマは今夜はパスだし、バンクーバー五輪・スケート500m
の長島圭一郎(銀メダル)と加藤条治(銅メダル)で書くのも、ベタ過ぎて
却下。ウエアが「金」色って所がミソだなぁ。長島が銀色で、加藤が銅色
を着てたら、別の意味の感動があったかも♪
という訳で、ネタが決まらないから、締切時間の24時が迫って来る中、
「困った時の朝日新聞」をまたチェック。夕刊の短期連載「カガクが街に
やってきた」が目に飛び込んで来たから、これで行こう。いかにもアクセ
スが少なそうな所が、マニア心をくすぐるのだ。。
☆ ☆ ☆
連載第1回(2月15日)のタイトルは、「身近な『?』 テレビが解く」。私
は最近、ブログで扱うドラマ等と、特別なスポーツイベント以外、ほとん
どテレビを見なくなってるんだけど、新聞のテレビ欄を見渡して、科学番
組が増えてるなっていう印象は持ってた。
記事冒頭は、昨年10月スタートのフジ『ホルスの好奇心』から始まる。
液体の上を走る実験で、お笑い芸人が白い液体に力強く足を踏み入れ
ると、沈まない。ところが足を止めた瞬間に沈む。なるほど、面白いネ☆
この液体は、単なる片栗粉と水で、力を入れた時だけ粉の粒同士のす
き間が縮んで固体状になる「ダイラタンシー現象」を利用したそうだ。深
夜としては人気番組で、ゴールデンタイム進出も狙ってるらしい。
他にも、テレ朝『天才をつくる! ガリレオ脳研』、TBS『飛び出せ!
科学くん』が挙げられ、先駆的存在として日テレ『所さんの目がテン!』
の実験も紹介されてる。「虎の尾を踏む」という慣用句を検証したら、ト
ラは怒らなかったとか、「おじさんは臭い」を検証したら、40代男性より
20代男性の方が臭かったとか♪ なるほど、テレビ受けしそうな面白
い実験だね。記事にはないけど、NHK『ためしてガッテン』も同種の長
寿番組だろう。先駆的ってことなら、その前にも色々あると思うけどね。
いずれも、視聴率は「悪くない」ようで、凝った実験でなければ制作費も
抑えられるとのこと。有名タレントを出す必要があまりないから、人件費
も抑えられるようだ。サイエンスライターの渡辺政隆によると、「米国では
科学もののドラマや映画化が進んでいる」らしい。そう言えば、内容でも
人気でもウチを代表する記事へとつながった、福山雅治『ガリレオ』も、
科学ドラマの典型だし、その映画化『容疑者Xの献身』も大ヒットだった。
朝日新聞に戻ると、上に挙げた色々な「科学」的実験は、「被験者が少
ないし、再現性が乏しいなど厳密さに欠ける」と、一応書かれてる。被験
者が少ないのはその通りとして、「再現性」という非常に厄介な概念につ
いて、執筆記者の佐藤久恵が科学論・科学哲学的にどの程度考えてる
かは怪しい所だ。
とはいえ、「科学」というより「エンターテインメント」だという論旨はその通
りだろう。だからミニ連載全体のタイトルには、「科学」でなく「カガク」と書
かれてるわけだ。エンターテインメントと同じくカタカナを使うと共に、普通
と違う文字表記で、微妙な差異をも表現している。
こうした「カガク」ブームには、ちょっと複雑な思いがある。何事も実際に
やってみることや、科学の面白さを身近な現象で味わうことは、基本的
にいいことだろう。
ただ、「カガク」と「科学」がゴチャ混ぜになる恐れがかなりあるし、「カガ
ク」から「科学」に向かう人の割合はおそらく非常に少ないと思う。「科
学」は高度に洗練された知的体系&営みだし、実験・データ・理論・計
算といった科学の中心的要素は、かなり地味なのだ。面白おかしい「カ
ガク」とは、相当大きな距離がある。また、メディアが「身近」と宣伝す
るものが、本当に身近かどうかも怪しい所。むしろ、珍しい面白話とい
う方が近いのではないか。。
☆ ☆ ☆
一方、今日(2月16日)の夕刊に掲載された第2回のタイトルは、「狙
いは文系 相次ぐ新書」。なるほど、これは腑に落ちるね。最近、本屋
に行くと、やたら新書が多くて、理数系のものもかなり増えて来たなと
思ってた。ただ、平積みになった新書を私が手にとってペラペラめくる
と、どうも話のレベルというか、目線がかなり低く感じる。「狙いは文系」
というタイトルは、その点を一言で説明してくれるものだ。
科学系の新書というと、圧倒的に有名なのが講談社ブルーバックス。
1963年創刊で、シリーズは1600冊超☆ 私も数十冊買ってるし、こ
こ1年の理数系記事でよく使ってる『現代数学小事典』もその1冊だ。
その草分けを追うようにして登場したのが、PHP研究所「サイエンス
ワールド新書」で、出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンでも4月に科
学的な新書を創刊するらしい。ネットで見ると、「DIS+COVER サイ
エンス」というシリーズ名とのこと。
興味深いのは、最近の科学的な新書の傾向。ブルーバックスの主なヒッ
ト作品の書名を、記事の表で見渡すと、昔と最近でかなりハッキリ違うの
が分かる。40年前の物理学人気全盛期は、『相対性理論の世界』、『量
子力学の世界』、『ブラックホール』など。一方、最近は『解ければ天才!
算数100の難問・奇問』、『マンガ微積分入門』、『子どもにウケる科学
手品77』、『「分かりやすい説明」の技術』など。
ちょっと出来過ぎだとは思うものの、私自身が持ってる実感と一致して
る。やっぱり、本格的な科学&数学理論は敬遠されて、面白話とか分
かりやすいネタ、あるいは実用的知識に流れてるのだ。これは必ずしも
悪いことではないだろうけど、やっぱりブームになってるのは、「科学」と
言うより「カガク」だろう。その意味では、脳科学ブームを引っ張る茂木
健一郎も、社会的な位置づけの面から考えるなら、「脳カガク者」と言う
べきかも知れない。
☆ ☆ ☆
こうした世の中の流行の中で、講談社の堀越俊一出版部長は、「売れ
筋だけを追うと科学から外れ、読者の信頼を失う。ジレンマです」と正
直に語る。ただ、このジレンマは伝統ある老舗だから強まるわけで、新
参の出版社はそれほどでもないだろう。売れ筋の「カガク」的な本だけ
追って、たまに当たれば十分なのかも知れない。実際ディスカヴァーに
よると、「たまに10万部出れば続けられる」とのこと。原稿料を抑えられ
る点もプラスのようだ。
ちなみに、私自身は昔からずっと、本格的なものを志向してる。ブログの
本格的ドラマレビューはもちろん、理数系記事もそうだし、実際に大学か
らの熟読アクセスがかなり多いのだ。その典型が、例えば「イプシロン・
デルタ(ε-δ)論法」の記事。これは数学(細かく言うと解析学)の厳密
な理論だけど、最近では大学でさえ敬遠されてるようだ。だからこそ逆に、
きっちりした記事を書くと、一部の人達にとっての希少価値が生じる。
逆に、読者ウケが悪いのはニュートン物理学の記事で、これはやっぱり、
読者と私とで、求めてものや目線が相当違うことを示してる。私は普通
の話の向こう側を見てるんだけど、読者・検索者の多くは、普通の話の
分かりやすい説明を手軽に得ようとしてる感じだ。
こうした風潮には、まったく従うつもりはない・・・とは言わない♪ 逆に、
そうゆう風潮に合わせるかのように見せかけた科学・数学記事を書い
て、そこから遥か彼方の次元に誘って行く。そうゆう作業がブログで出
来たらいいなと思ってる。
という訳で、今日の所はこの辺で。。☆彡
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P.S.その後、第3回は、「語って壊せ 社会との壁」。お茶やお菓子
を楽しみながら、研究者と市民が気軽に科学のおしゃべりをす
る場である「サイエンスカフェ」の広がりを紹介。フランスの哲学
カフェがお手本で、1997年ごろ英仏で生まれたそうだ。
第4回は、「実験塾 理科離れに挑む」。92年開講の「サイエン
ス倶楽部」、ロボット製作を通じた教育の「クレファス」、大手進
学塾が開設した実験講座などを紹介。一方、科学技術振興機
構(JST)が「理科支援員」を小学校に派遣して実験を手助けす
る事業にも触れた。
第5回は「『ご近所の案内人』活躍」。東京都東久留米市の東部
地域センターで、東部図書館と市民グループ「ほんとほんと」が
開催する、「よもう!あそぼう!かがくの本」というイベント。わかり
やすく科学を紹介する「サイエンスコミュニケーター」の育成。「星
のソムリエ」という資格保有者の増加。これらが報じられた。
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