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金融危機問題、再び~オバマ vs 帝王ゴールドマン・サックス

2007年から問題となり、08年秋のリーマン・ブラザーズ破綻を大きな

キッカケとして一気に深刻化した、世界金融危機。100年に1度とか大

騒ぎされてたわりには、たかが半年ちょっとで底打ち。いまや、米国の株

価(NYダウ)はリーマン前の高値までほぼ戻してる状況だ。その一方、

失業率は高止まりだし、経済格差も拡大しつつある。

     

それだけでも奇妙なアンバランスだけれど、一番奇妙なのは、世界中の

金融機関が巨額の損失を発表する一方、巨額の利益を上げたと発表

する金融機関がなかなか見当たらないことだ。火事でお金が燃えたわ

けではないのだから、失った巨額の金は、誰かの手に渡ったはず。とこ

ろが、個人投資家の一部の自己アピールを除けば、ボロ儲けの実態や

仕組みは、ほとんど明らかにされてない。

                            

「世間の反感を買うのを恐れて、儲けを発表しない」というような発想は、

日本的なものにすぎないだろうから、発表しない理由が何かあるのだろ

う。すぐ思いつくのは、不正取引であげた利益だから公表できないとい

う理由だ。まだまだ、金融危機の実態も責任も不明確なままだと思わ

れる。おそらく、深くて広大な闇の世界、暗部が存在するのだ。。

           

        ☆          ☆          ☆

今回、アメリカ連邦政府のSEC(証券取引委員会)が提訴に踏み切った

のは、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)。世界最強とかウォー

ル街(=米国金融街)の帝王とまで呼ばれる、名門金融機関だ。

          

企業の資金調達や合併・買収に関わる、アメリカの「投資銀行」だから、

日本の一般の人にとっては馴染みの薄い会社だけど、経済に少しでも

興味がある人なら、知らない人はいないだろう。140年の伝統があり、

収益力も発言力も非常に高く、金融危機においても他の金融機関と比

べて上手く乗り切ったと言われてる。

          

そのゴールドマンに関する「詐欺」疑惑を、今日(4月20日)の朝日

聞・朝刊経済面の「キーワード ゴールドマン提訴」ではこう説明する。

      

   ・・・・・・詐欺の疑いで民事提訴した。ゴールドマンが2007年に

   発行した債務担保証券(CDO)を顧客に売った際、CDOの価格

   を下落させることで利益をあげようというヘッジファンドがあること

   を顧客に十分知らせていなかったという。SECはゴールドマンが

   不当に得た利益の返還と民事制裁金を科すよう求めている

      

簡潔な説明で、慣れた人ならこれだけでも、ある程度は想像できるだろ

う。ただ、数値計算の話が全くないし、使われてる言葉も一般には馴染

みのないものになってる。そこで以下、なるべく普通の話に置き換えて、

具体的な数字と共に解説してみよう。主に朝日とロイターの報道を参照

したが、数値やモデルは私の仮想によるものだ。。

                     

        ☆          ☆          ☆

まずウォーミング・アップとして、「債券を売買する」というイメージを確

認しよう。債券とは、要するに借用証書だ。例えば私がAさんに1000

万円貸すとしよう。代わりに、私はAさんから、「2年後に1100万円返

す」という借用証書を受け取る。けれど私は、半年後に何らかの事情

で、お金を回収したくなる。まだ返金まで1年半あるから、例えばBさん

に1030万円の割引価格で借用証書を売る

    

すると、私は半年で30万円(元金の3%)を儲けられるし、上手くいけば、

Bさんもその1年半後に1100万円を受け取って、70万円儲けられる。

Aさんは利息の100万円を負担することになるけど、先に1000万円を

手にしたことで、それなりに助かったはずだ。

                   

これを複雑にして多少の怪しい要素を加えたのが、今回の疑惑なのだ。

報道された範囲の情報を、簡単な話に置き換えたモデルを紹介しよう。

   

100420a

 は上と同じく、

 「イマイチさん」

 に1000万円貸

 し、2年後に

 1100万円返却

するという借用証書を受け取る。イマイチさんとは、信用度がイマイチと

いう意味で、だから2年で利息が10%もついてるのだ。

           

一方、私の友人は、「アブナイさん」に1000万円貸し、2年後に1200

万円返却するという借用証書を受け取る。アブナイさんは、イマイチさ

んよりもっと信用度が低くて「危ない」人で、だから利息は20%なのだ。

ここまで、上図参照。

       

100420b_2

 ところが、私も友人も2年後まで待

 ちきれなくなったから、「仲介役」を

 通して、ゴールドマンに依頼、借用

 証書を売ってもらう。この時ゴール

 ドマンは、2枚の借用証書を1つ

 にまとめて10枚に分割。

すると、2年後に230万円返却という借用証書になる。取引しやすい

形に証券化したわけだ。  

             

100420c_2

 これを1枚210万円の割引価格

 で売りさばくと、10枚で2100万。

 ゴールドマンが手数料40万を差

 し引き、残りの2060万から私に

 1020万友人に1040万渡す。

     

100420d

 結局、私が20万、友人が40万、

 ゴールドマンが40万儲けたことに

 なる。ここまでなら、普通の正常な

 取引にすぎない。

                     

しかし問題なのは、仲介役と、借用証書を買った10人だ。実はこの後、

借金した1人であるアブナイさんが自己破産してしまい、借用証書の価

値は60万円まで暴落する。まだイマイチさんの方は大丈夫なんだから、

値段が下がり過ぎだけど、その借用証書は信頼を失ったから、みんな

相手にしなくなるのだ。買った10人も嫌気がさして、60万で投げ売り。

1人150万の大損となった。

        

ところが仲介役は最初から、アブナイさんが自己破産寸前だという情報

を直接こっそり手に入れてた。そこで、仲間内で「賭け」をする。借用証

書の値段が下がるか上がるかを予想して、下がる方に賭けるのだ。結

果的に、用証書は暴落、仲介役は賭けでボロ儲けとなった。。

     

       ☆          ☆          ☆

これが、「疑惑」の大まかなモデルだ。私とAさんの1000万円ずつの貸

出が、いわゆる「サブプライム・ローン」(信用度の低い人向けのローン)。

2枚をまとめて10枚に分けた借用証書が、「債務担保証券」(CDO

Collateralized Debt Obligation = 担保で保証された借金の証書)。「賭

け」とは、金融工学で作り上げられた「デリバティブ」(金融派生商品)取

引。そして、一番の悪役のように見える仲介役が、「ヘッジファンド」だ

ポールソン・アンド・カンパニー)。

           

今後、このヘッジファンドにも当然厳しい視線が向けられるはずだけど、

差し当たり訴えられたのはゴールドマンだった。それはまず、証券を販

売する際、このヘッジファンドに関する情報を買い手に知らせてなかっ

た疑いがあるからで、事実なら単純な義務違反となる。

          

でも、それ以上に問題なのは、一連の取引でゴールドマンが不正に儲け

た疑惑があることだ。それが、裏金のようなものか、あるいはゴールドマ

ンも値下がりに賭けてたのか、その辺りはまだよく分からない。そもそも

ゴールドマン自身は、なぜか「我々も9000万ドルの大損だった」と主張

してるのだから、今後の捜査の進展を待つしかないだろう。

             

もちろん、人気の下降を背景として、中間選挙の前に一般ウケしそうな

金融叩きをするオバマ政権にも、引っ掛かるものは少し感じる。でも、経

済が落ち着いて来た今は、タイミング的に丁度いいし、正しい調査や裁

判であれば、政治的意図に関わらず、十分な意味があるわけだ。ゴール

ドマン以外にも目を向けてるらしいので、この際、業界全体を徹底的に

調べて欲しい。

                        

それにしても、2008年に日本で問題となったBNPパリバ証券・東京支

店の問題といい、過去の歴史といい、まだまだ金融の世界というのは

ダークなイメージを漂わせている。金融は経済の根幹なのだから、これ

を機に、多少なりとも透明な世界に変えて欲しいと思う。

ではまた。。☆彡

      

         

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.ロイターの報道によると、公的資金で救済された米保険大手・AIG

    が、ゴールドマンのCDO(商品名・アバカス)で損失を被らなかった

    かどうか、調査が始まる予定らしい(ワシントン、20日)。

    一方、共和党議員は逆に、今回の提訴が民主党政権の政治的意

    図によるものでないかどうか、調査を始めたようだ(同上)。

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