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天才オイラーも苦戦したラテン方陣~ニコリ「数独」の源流

先週、ニコリが世界に誇る数字パズル「数独」の記事を書いた所、地味に

アクセスが入ってる♪ 私自身が初体験でちゃんと難しめの問題を解き切っ

たことに意味があるわけで、別にヒット記事を狙ったわけじゃないからいい

んだけど、普段の理数系記事と比べても、マニアックさが全く物足りないの

は確かだろう。

                       

そこで今夜は、もっとマニアックな話題で、「数独」関連記事・第二弾をアッ

プしよう。実は今日の早朝アップの予定だったのに、ズブズブとはまり込ん

で、帰宅後の夜になってしまったのだ。それにしても、英語版ウィキペディア

の学問系記事は、マニアックなものが多いね☆ あらためて、日本版との

差を思い知らされた。本や雑誌記事より情報量が多いことも珍しくないん

じゃないかな。信頼性は問題だけど、数学の場合は自分で考えるだけでも

かなりチェックできるから、わりと安心なのだ。

                  

さて、私は先週の記事をアップした直後、本屋で一冊の本が平積みされ

てるのを見かけた。『別冊日経サイエンス169 数学は楽しい』(日経サ

イエンス社)。何気なく表紙を見ると、「数独の科学」と書いてある。数年

前に既に翻訳されてた論文だし、内容的にも、私の感覚だと、「数学的」

と言うより「雑誌的」。それでも予想通り、数独というパズルがかなり深く

数学と関わってるのは感じ取れた。単なる数合わせのお遊びではない。

    

そこでまず、日本版ウィキを見ると、例によって説明が物足りないから、英

語版に飛んでみると、今度は情報が多過ぎる♪ 時間もないことだし、以

下では天才数学者オイラーの研究の簡単な紹介に留めよう。数独と似て

非なるパズルを深く研究してたとは知らなかった。しかも、彼でさえ苦戦し

てたとは。。

              

        ☆          ☆          ☆

100726e

 話の導入として、再

 びニコリの数独を見

 ておこう。7月24

 日の朝日新聞・朝刊

 別刷beに載ってた

 のは、左の問題。応

 募に必要なのは、青

 い四角のマスに入る

 数の和で、青い☆印

 は私が記入したもの。

 前回同様、すぐに数字が分かるマスを表してる。例えば、左上の☆印

は、3しか入れられない(先週の記事の説明参照)。

      

縦、横、各ブロック(3×3)のそれぞれに、1~9の数字を1つずつ入れる

という、簡単なルールだけど、解くにはコツと根気が必要。初挑戦の前回

は、難易度4の問題に1時間ほどもかかってしまったが、2度目の今回は、

難易度3の問題を30分ほどで解くことができた。来週は15分だろう♪ 

脳トレだけじゃなく眼球トレって感じもある。目の動きの速さが問題なのだ。

            

この数独、名前はニコリが流行らせたものだけど、やり方自体はしばらく

前からあるようで、更に源流や元祖をたどって行くと、ラテン方陣とかラテ

ン方格(latin square)と呼ばれるパズルにたどりつく。昔から数字ゲーム

として一応知ってたものの、天才オイラーに由来する名とは知らなかった。

                     

100726a

 左の例題1が、ラテン方

 陣。それぞれの「行」(=

 横の並び)と「列」(=縦

 の並び)に、1、2、3の文

 字を1つずつ入れるルール

だ。3×3なら、小学生でもすぐに解けるだろうし、問題を自分で作るのも

難しくはない。数独との違いは、たとえ9マス×9マスのラテン方陣でも、

ブロック(3×3)は考えない点だ。縦と横だけが問題で、斜めも関係ない。

      

100726c

 数独にせよラテン方陣に

 せよ、別に数字自体には

 意味がないので、左の例

 題2のように、黒、青、赤

 の色分けで問題を作って

も同じことだ。ちなみに私がこれを書く時、まず1、2、3で問題を作って、

そこから「1→黒、2→青、3→赤」と変換した。もちろん、逆に色分けで問

題を作って、そこから数字へと変換してもいい。

      

以上、2つの例題は、どちらも「ラテン方陣」で、18世紀の大数学者レオ

ンハルト・オイラーLeonhard Euler)が、ラテン文字(普通のアルファベッ

ト)を使って書いたことに由来する。ところが、更に英語版ウィキで調べて

みると、オイラーの研究の中心は、もう少し難しい「ギリシャ・ラテン方陣

(またはグレコ・ラテン方陣: Graeco-Latin square)だったようだ。

                    

        ☆          ☆          ☆

この名前で検索しても、めぼしい記事は少ないから、多くの人はラテン

方陣(あるいは縦・横・斜めの和が等しい魔方陣)に留まるんだろう。私

も今日まで、全く知らなかった。細かい話を後回しにすると、これは2種

類のラテン方陣を組み合わせたものなのだ。

     

100726b_2

 さきほどの例題1(数字)

 と例題2(色)を組み合

 わせれば、左の例題3が

 作れることになる。つま

 り、数字と色、2種類の

ものに関してラテン方陣が出来てるのだ。ただし、同じ数字と色の組合

せ(pair)は一つ限りとする。

      

これをギリシャ・ラテン方陣と呼ぶのは、オイラーが、ギリシャ文字(α、

β、γ)とラテン文字(A、B、C)で書いてたから。例題3の答で、「1、

100726d

 2、3」→「A、B、C」と変換し、続

 いて「黒、青、赤」→「α、β、γ」

 と変換すれば、左のように、文字

 通りのギリシャ・ラテン方陣が完

 成する。

    

ところで、上では3×3=9マスのものを扱ったけど、2×2=4マスだと、

ギリシャ・ラテン方陣は作れない。これは、試してみればすぐに分かるこ

とで、証明というほどのものでもない。数字と色なら、それぞれ2種類の

100726f

 配置しかないから、2×2=4通り調

 べれば証明終了だ。一方、4×4=

 16マスなら、左図のように作れる。

   

 オイラーは、奇数×奇数のものと、

(4の倍数)×(4の倍数)(つまり4,8,12・・・)のものを作る方法を一般

的に示したらしい。ところが、他の場合が上手く行かなかった。そこで、(4

で割って2余る数)×(4で割って2余る数)のものは一般に作れないだろ

うと推測したそうだ。

                   

2×2はすぐにダメだと示せる。6×6は、証明ができないけど、作れなかっ

。6つの軍隊と6つの階級の組合せで、「thirty-six officers problem」

36人の将校の問題)とか呼ばれてるとのこと。それ以上の数の話はウィ

キに書いてないけど、試行錯誤の跡くらいはどこかに残ってるんだろう。

              

オイラーの推測1780年代のものだけど、1901年になってようやく、

×6が出来ないことが示された。ガストン・タリー(Gaston Tarry)の業績だ。

さらに1959年~60年の一連の研究で、オイラーの推測が10×10以上

ですべて間違いだと分かった。

                    

結局、大抵の場合は作れるわけで、ギリシャ・ラテン方陣が出来ないのは

2×2と6×6だけ。ちょっと奇妙な感じはある。天才数学者といえども推

測を間違えたほど、難しくて変則的な問題だということだろう。。

         

        ☆          ☆          ☆

この先、もうちょっと調べてあるんだけど、もう書く時間がないから、この

辺で終わりにしよう。そもそも、最初に私が自分で確かめたのは、4×4

の単純なラテン方陣が576種類あることなんだけど、その話はまた後

で、行列とか線形代数の記事を書く時に話題にしたいと思ってる。

     

要するに、一番上の「行」(横の並び)を「1、2、3、4」、一番左の「列」

(縦の並び)も「1、2、3、4」にして調べると、種類のラテン方陣が出来

る。一番上の行の並べ替えが、4×3×2×1=24通り。そのそれぞれ

に対して、一番左の列の並べ替え(一番上は既に決定済)が、3×2×1

6通り。トータルで、4×24×6=576通りとなるのだ。ただし、この考

えが正しいことをきっちり示すなら、行列の理論(置換など)が重要となる。

          

とりあえず、もう毎日更新のタイムリミットだ。なお、オイラー以前のギリ

シャ・ラテン方陣の研究は、トランプの「A、J、Q、K」と「スペード、クロー

バー、ダイヤ、ハート」を使ったものだったそうだ。やっぱり、「場合の数」

とか確率の話は、賭け事との関係が深いってことか♪

今日の所はこの辺で。。☆彡

    

    

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.コメント欄で面白い情報を頂いたので、別記事にしてみた。

   スイス職人の遊び心~オイラー生誕300年腕時計の「数独」文字盤

         

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.ニコリの数字パズル、「数独」に初挑戦(難易度4、朝日新聞)

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コメント

こんにちは!
今から3年前の2007年はオイラーの生誕300年にあたりいろんな行事がありました。その中にスイスから腕時計が発売されました。文字盤が数独になっています。解いて見ました。で、この腕時計ですが1707個(世界中で)の限定販売でした。10万円を越える価格でしたので、暫く躊躇していて、ある時、エイ!!とばかり申し込んだら既に完売でした。私はmixiのプロファイルにこの腕時計の写真を貼っています。

投稿: gauss | 2010年7月28日 (水) 13時06分

> gauss さん
                
こんばんは!
これまたマニアックなお話ですね♪
貴重な情報、ありがとうございます。
     
早速、検索して腕時計の数独を解こうとしたんですが、
答が少なくとも2種類出てしまうんですよ。
右側の3つのブロックで、3と8の入れ替えです。
他の答の可能性も、まだつぶせてないので、
本気で調べれば答はもっと多くなるかも知れません。
 
ひょっとして、中心にも数字があるんですか?
あるいは、オイラー関連で何か特殊な条件があるとか。
さっきから何度も見直してるので、目がチカチカ
してるし、眠くて暑くて頭も働きません(苦笑)
    
問題が不完全だと思うんですけどね。
検索しても、そうゆう指摘は出てこないけど、
答や解説も見つかりません。。
     
もうパズル遊びは止めてマジメに勉強しろっていう、
天の声なのかも♪

投稿: テンメイ | 2010年7月28日 (水) 21時42分

私のブログに載せました。見てください。
http://blog.goo.ne.jp/watanabegoo/

投稿: gauss | 2010年7月29日 (木) 00時51分

> gauss さん
   
やっぱり、問題が不完全だと思いますけど。
他の答が少なくとも2つありますよ。
時間がないので、また後でコメントします。。

投稿: テンメイ | 2010年7月29日 (木) 06時36分

確かに回答が複数ありますね!!。写真で見る限り最初に見える数字は間違いなと思うのですが??
何か情報が足りないのですかね。。

投稿: gauss | 2010年7月29日 (木) 15時58分

> gauss さん
   
やっぱり答が複数あるでしょ ♪
この解釈をめぐって別記事を書いたので、
参考までにご覧ください。。

投稿: テンメイ | 2010年7月29日 (木) 19時10分

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