ネット依存とうつ症状~朝日新聞「やさしい医学リポート」
RUN 12km,56分55秒,心拍151
昨日アップした「EDライダー」の記事。自転車系の記事としては狙い通りの
ヒットになったから、その後自分で少し調べて、2~3割ほど加筆した。例え
ば、雑誌の中で挙げられてた海外の学会2つのHPを調べたりして、根拠と
なる研究が確かにあるのを探り当てたのだ。短過ぎるから、学問系記事と
は言えないけど、一応の格好はついたと思う。
こうしたネットで調べる作業は、直接的には数年前、マニアックなドラマレ
ビューを書く作業を通じて養ったものだ(福山雅治『ガリレオ』とか)。慣れ
てしまえば、半ばお遊びの宝探し感覚で行うこともできる。
今日扱う朝日新聞の記事は、二重の意味で、ネットで調べる作業と関連
している。まず、その記事に対しても、私は実際にネットで調べることになっ
た。そしてもう1つ、その記事が扱ってるのが、まさにネットを飛び回る作
業の危険性なのだ。おそらく、その記事の筆者自身もネットを飛び回った
はずだから、かなりヒネリの効いた記事だと言える。実際、その筆者は、
自他共に認める「オタク」らしいのだ。。♪
☆ ☆ ☆
前置きが長くなったが、その記事は朝日新聞9月6日の夕刊に掲載され
た「ネット依存とうつ」と題する短いコラム。東北大・坪野吉孝教授による
「やさしい医学リポート」シリーズの一つで、世界の最新論文をやさしく噛
み砕いて紹介してくれてる。
オンライン情報有料化の流れの中で、このシリーズは朝日HPでも無料。
おまけに加筆されてるし、動画まで付けられてるから、かなり人気がある
んだろう。内容だけでなく、顔写真も「やさしい」のがポイント。動画だと表
情が硬いのも、普通の学者っぽくてイイ。がんなどの疫学(統計調査を利
用した医学)が専門のようだ。
で、今回紹介された論文は、米国小児科専門誌電子版に8月掲載された
もので、研究対象は中国広東省の13~18歳の生徒1008人。まず、ネッ
ト依存の程度を調べ、9ヶ月の追跡調査で生じたうつ症状と不安症状につ
いて統計を分析すると、ネット依存が中程度以上の場合、うつ症状のリス
クは正常者の2.5倍だった。一方、不安症状に関しては差が出なかった。
論文執筆者らによると、ネット依存と心の健康を「同時点で」調べる研究
は既にあったが、それではどちらが原因なのか、両者の関係は曖昧だ。
今回みたいに、ネット依存が原因で、後からうつ症状が生じるのを示す追
跡調査は初めてらしい。今後は、大人が対象のものも含めて、更なる調査
が必要だろう。
私自身は、半ば自虐的に、「ネット中毒」だと言って笑うことがよくある。ブロ
グだけでも5年間毎日更新だし、かなり検索しまくったマニアックな記事も多
数ある。もちろんブログ以外でも、色んな場面でネットを使ってる。特にブ
ロードバンドの普及以降は、生活スタイルが激変した。
ただ、昔からスポーツ系の人間でもあるし、うつ症状とは程遠い。むしろ最
近は逆に、「躁」に近い気もする♪ とはいえ、ネット中毒とかネット依存とか
呼ばれる状況がいいとも思ってないので、朝日新聞HPについてたリンクを
クリックして、元の論文を調べてみた。この作業自体がネット依存的な所が、
話をややこしく、また滑稽にしてるのだ。
☆ ☆ ☆
元の論文は、『Pediatrics & Adolescent Medicine』(小児科&青年医学)
の電子版で8月に紹介された、「Effect of Pathological Use of the Inter-
net on Adolescent Mental Health」(インターネットの病理学的使用が青
年の心の健康に及ぼす影響)。執筆は、Lawrence T.Lam と、Zi-Wen
Peng。無料ですぐアクセスできる Abstract(要約)しか読んでない。
一読してすぐ気付くのは、ネット依存やうつの評価法が明示されてること。
前者は「the Pathological Use of the Internet Test」(病理学的ネット使用
のテスト)、後者は「Zung Depression and Anxiety Scales」(ツングの抑うつ
&不安尺度)を用いたと書いてる。要するに、どちらも非常に簡単な質問
票で機械的に判定してるのだ。おまけに、前者は決して有名ではないよう
で、検索してもなかなか出てこない。
本来、うつ病の正式な診断というのは、ウチの一連の記事でも示して来た
通り、かなり厄介だし、不安症状とハッキリ分けられた精神疾患でもない
(基準の項目が一部重なってる)。また、ネット依存に関しては、まだ論争
中の段階で、国際標準となってる米国精神医学会のDSM-Ⅳでも採用
されてないし、そんな依存症など存在しないという反論も根強いようだ。
私自身は、既に書いたように、自分自身をネット中毒だと呼んでるくらいだ
し、ネット依存という病名にも全く抵抗はない。少なくとも、家にひきこもって、
オンラインゲームや動画などを一日中楽しんでる大人を、ネット依存と呼
ぶのは自然だろうし、別に差別とか偏見と言うほどのものでもない。そもそ
も、人はみな、ある意味で病気なのだ。
ただ、ネット依存がうつ症状を引き起こすというような話は、当然ネットの
使用制限を促すことになる。そうした強制的な動きの妥当性について考え
る際には当然、そもそもネット依存やうつとは何なのか、どうやって調べた
のか、といった点まで考えるべきだろう。
もちろん、そんな事は、朝日の記事を書いた坪野教授も分かってるはず
だが、記事でもHPでも、そういった留保が全く書かれてないのが気になっ
た。疫学に限らず、一般的に統計で問題なのは、集めたデータの処理方
法以上に、データを集める時点での基準なのだ。この人は本当にうつ病
なのか、この人はどうゆう意味で○○党を支持してると言えるのか、等々。
最近、統計はメディアの至る所に登場してるけど、そういった問題を指摘
する声はあまりに少ないから、ここでハッキリと指摘しときたい。
なお、ウチでは既に8本のうつ病関連記事をアップ、かなりのアクセスを
頂いてる。もちろん、単なる人の話やマスメディアの請け売りではなく、自
分で専門書を読んだ上で書いたものだ。下にリンク付きで紹介しておこう。
cf.うつ病の診断基準と抗うつ薬~NHK『ためしてガッテン』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ネット安息日(=禁止デー)の記事を見て、ネットを飛びまわった夜♪
☆ ☆ ☆
おっと、平日の朝からネットに気合が入り過ぎて、仕事を忘れる所だった♪
これぞ、ネット中毒だ。今朝は、連続5日目のランニング。遠くの台風の影
響で、少しだけ涼しかったし、身体からランに慣れて来たので、この5日間
では一番マトモな走り。ほんのちょっとだけ降ってた雨も、心地良かった。
ま、公園の人はやや少なめで、傘を持ってる人もいたけどね。
トータルでは1km4分45秒。うん、まだ遅いけど、ギリギリで合格点かな。
明日は天気も怪しいし、流石に休むかも知れない。ドラマ記事も書かなきゃ
いけないのだ。たかが趣味のブログに、義務とか責任を感じて、無理やり
頑張ってしまう所も、中毒の名に値するだろう。それでも止められないのだ
から、依存症と言えなくはない。
ただし、ネーミングは枝葉の問題であって、ネット依存だから何なのか。そ
こが問題なのだ。スポーツ依存や読書依存、あるいは恋愛依存や仕事依
存と比べてどうなのか、脱出すべき事なのか、メリットとデメリットを総合す
るとどうなのか、等々。根本的に考え直してみるべきだろう。ではまた ☆彡
往路(2.45km) 12分38秒 平均心拍131
1周(2.14km) 10分21秒 146
2周 10分14秒 155
3周 9分52秒 160
4周(0.68km) 3分07秒 164
復路 10分43秒 158
計 12km 56分55秒 心拍155(84%) 最大166(周回ラスト)
| 固定リンク | 0
「心と体」カテゴリの記事
- 看板の視線への対人恐怖、軽い社交不安障害+限局性恐怖症(DSM5)か~黒井千次『庭の男』(2022年・共通テスト・国語)(2022.01.15)
- 精神障害者等の犯罪者、全体的には健常者より少ないけど、放火・殺人に限ると・・(『犯罪白書』)&7kmウォーク(2021.12.18)
- 眞子さまの診断名「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と、国際的な分類基準(ICD11英語版、DSM Ⅳ・5)(2021.10.01)
- 子どもの睡眠からの起床、アラーム(電子音)より早く目覚めるのは母親の声、もっと早いのは足音か♪(2021.08.25)
- うつ病(抑うつ状態)の心理検査尺度CES-D、日本語訳と英語原文(米国NIMH、Radloff)の対比(2021.04.18)
「ランニング」カテゴリの記事
- 仕事に追われてるし、適当な小ネタも無いから、単なる練習日誌(2025.02.10)
- 最強寒波の冷たい強風にも負けず、気力・体力充実!、仕事は順調に先延ばし中♪(2025.02.08)
- 何となくの勘で歩いた10kmウォーキング、プチ迷子で遠回り♪&つぶやき(2025.02.06)
- 昔の先生(恩師)へのメッセージ、書いてる内に色々と思い出す&11km走連発、疲れ過ぎで流し気味(2025.02.05)
- 15km走、再び好調だけど伸びが鈍化でビミョー・・&仕事に追われつつ一言つぶやき(2025.02.03)
コメント
今朝(10/3)朝日新聞にも載っていましたが、そもそも『ネット依存』、って何なんでしょうか?無駄な情報、価値のない情報ばかり追いかけて気がついて見れば自身の生活も友人関係もボロボロ・・・という状況をさすものと思われますが、ネット上の情報が新聞やテレビの情報より絶対的に劣るとも思えませんし、逆に高度な予備知識がないと理解できない情報(学術論文、郷土史、ユーロ問題、欧州統合の進展など)も検索すれば数多く見つかり、これらの情報にたまたまアクセスした人がその内容を理解しようと必死に学ぶ、という姿を世の中に作っていけばいいのではないでしょうか?
投稿: pcの妖精 | 2012年10月 3日 (水) 17時37分
> pcの妖精 さん

はじめまして。コメントありがとうございます。
「今朝(10/3)の朝日新聞にも載っていました」というのは、
どの記事のことでしょうかね。見当たりませんが。
一部の地方版のみの記事なのかも知れませんが、
今現在だと、朝日新聞デジタルで検索しても出て来ません。
それはさておき、ネット依存とは、「ネット」の「依存症」でしょう。
ネットのやり過ぎで、日常生活に大きな差し障りが生じてる状況。
他の事が出来ない、我慢するとイライラする、
ぐっすり眠れない、目や肩の疲れがひどい、等々。
世界標準の診断基準みたいなものはありませんが、
わりと有名なものならあるようです。
久里浜医療センターHPに、スクリーニングテストが
紹介されてるので、ご参照ください(米国、韓国)。
もちろん実際の診断は、医師との面接を経て行われるものでしょう。
http://www.kurihama-med.jp/tiar/tiar_07.html
ネットの「活用」はみんなやってる事で、
特にお医者さんなんて世界のHPを飛び回ってるはず。
依存症の多くに言えることですが、要するに
程度とか節度の問題でしょう。
もちろん、禁止されたものは少量でも論外ですけどね。
学ぶことは基本的に良いことだけど、やり過ぎて
仕事や学業がおろそかになったり、健康を害するのは良くない。
また、自分で良くないと思ってるのに止められない人は、
医療の側からも手助けしてあげたい。
ネットやゲームだと特殊な話に感じてしまいますが、
そうゆう普通の話だと思います。。
投稿: テンメイ | 2012年10月 4日 (木) 04時36分
ごめんなさい。朝日ではなく日経でした。
僕が懸念しているのは、もともと口数が少ない人や社交的でない人、軽々しく口を開くよりじっくり物事を考える、系の人がネットを長時間利用して周囲の人が理解できないような話題を持ち出したというだけで『ネット依存』のレッテルを貼られてしまわないかということです。スポーツやペットにはまってしまってはたから見ると対人関係が多少おかしくなっても、そう簡単に非難の対象にはされないのにネットだと人格がおかしくなったかのようにいわれるのは・・・
投稿: pcの妖精 | 2012年10月 4日 (木) 19時12分
> pcの妖精さん

こんばんは。再びコメントどうもです。
なるほど、日経のHPにありました。
「ネット依存、病院で治療の若者ら急増
潜在患者270万人も」
本文は6行しか読めませんが、成城墨岡クリニック
(東京・世田谷)と、アドバイザーの遠藤美季が
取り上げられたわけですね。 (関連キーワードより)
子供向けHP、「angels-eyes」を運営する女性ですか。
そもそもまだ今現在、「ネット依存」のレッテルに、
それほど深刻な効き目はないと思いますよ。
標準的な病名でもないし、ネットを使いまくってる人は
大勢いるわけですしね。
うつ病とかゲームおたくとか、他にいくらでもレッテルはあるし。
もちろん、単なるレッテルではなく、本当に依存症の
場合は、適当な方法を選択して早めに治療すべきでしょう。
確かに、「スポーツ依存」や「ペット依存」という言葉は
あまり使われませんが、ペットにハマり過ぎてる状態を
問題視する議論は昔からあると思います。
ペット飼育をめぐる争いごとは日常茶飯事ですしね。
どうゆう背景をお持ちなのか分かりませんが、
ご自分が「ネット依存」でないのなら、世間の風潮としては、
あまり気にしなくていいことだと思いますよ。
個人的に周囲からレッテルを貼られて困ってるのであれば、
依存症でない姿や、説得力ある結果を、堂々と
持続的に示していけばいいと思います。
ちなみに、ここ1年間の朝日新聞の記事検索だと、
「ネット依存」はたった4件しかヒットしません。
「うつ病」は330件、「発達障害」も306件ヒットするので、
話題性にはまだ大差があるということでしょう。。
投稿: テンメイ | 2012年10月 7日 (日) 02時46分