「15パズル」の攻略法~8パズル、3パズルへの還元
ある程度の予想はついてたけど、どうも世の中にはパズル好きが大勢い
らっしゃるようだ。理屈や脳トレの好きな人が、お遊び気分で楽しめるゲー
ムってことで、私も好きな方だろう。ただ、ゲームをやり出すと、時間とエネ
ルギーを浪費する感じがあるから、大人になってからはなるべくやらないよ
うにしてた。どうせなら、もっと学問的に高度なことで遊ぶ方が、やりがいも
あるし頭も鍛えられる。自分にとっての世界も広がっていくわけだ。
とはいえ、毎日更新するブロガーとして考えると、気楽に書ける理屈系のネ
タとして、なかなか捨てがたい魅力があるのは確か♪ 実際、数独関連の
記事(計4本)へのアクセスはわりと多いし、地雷ゲーム・マインスイーパの
記事にも地味なアクセスが続いてる。
今日これから扱うのは、数独でも地雷でもなく、15パズル(fifteen puzzle)
と呼ばれるものと、その仲間の8パズルだ。1年ちょっと前にPCが故障し
て、Vistaマシンを購入すると、ガジェット(おまけソフト)として「ピクチャパ
ズル」と呼ばれるものが入ってた。15枚の正方形に分割された絵を並べ
替えるのだから、1~15の数字を並べ変えるパズルと本質的に同じこと。
実際、ピクチャパズルの設定を変えると、外観が15パズルに変化する。
4×4=16のマス目のうち、一つだけ空白で、そこを利用して1~15の数
字をスライドさせていくものだ。やったことがある人が少なくないだろう。
で、そのピクチャパズルとか15パズルについて記事を書いた所、しばらく
前、「8パズル」への検索アクセスが時々入ってたのだ。最近は入ってない
けど、15パズルを理論的に考えると、かなりの部分、より簡単な8パズル
の話になるのは分かる。3×3=9のマス目で、1~8の数字をスライドさ
せる8パズルへと、15パズルを「還元」することがかなり可能なのだ。しか
も、単なる学問的研究ではなくて、15パズルの具体的解き方とも関係ある。
そこで今日は、15パズルと8パズルについて考えてみよう。もちろん、半
ば理数系の私としては当然、「3パズル」まで考慮する。2×2=4のマス
目で、1~3の数字をスライドするもので、英語版のウィキペディアでさえ
扱ってないし、検索してもハズレばかりだけど、一般的に考えればそこま
で行き着くのは当たり前だろう。同種のものの中で最小なんだから。。
なお、パズルは厚紙で作ってもいいし、ネットで検索してもすぐ出て来る。
無難なサイトでは、神奈川県酒匂小学校のHPに、8パズルも15パズルも
あるし、マンガの絵を使った15パズルもすぐヒットする(完成図の予想に
やや苦労)。手書きで問題を「解く」のはいいけど、問題を「作る」場合は、
「解けない問題」が多数あるのでご注意あれ(下で例示)。Vistaの方は、
Windowsサイドバーを表示してガジェットで遊ぶのが便利で楽しいと思う。
☆ ☆ ☆
では、まず最も簡単な「3パズル」からスタートしよう。簡単過ぎて、ネット
では相手にされてないようだけど、8パズルや15パズルを射程に入れて
考えるなら、十分意味はある。
左図が、2×2=4のマス
目を使った、3パズルだ。
流石に出来ない人はいな
いだろうが、この記事に
おける説明の書き方を示すためにも、一応解答を掲載しよう。
赤い矢印に沿って
数字をスライドし、
①から⑥の順に進
めて行けば、簡単
に完成する。結局、
3つの数字を右に
回転させた形になっ
てるので、後の議論でも「回転」という言葉を使う。以前のピクチャパズル
の記事と同様だ。
この3パズルの段階で、既に「解けない問題」が色々と存在する。例えば
左のように、完成形の1と2を入れ替え
た問題は解けないし、これを回転させ
たりスライドさせた問題も当然解けない。
似た話は8パズルや15パズルにもあっ
て、要するに、完成形で左右に隣り合った2つの数字を入れ替えただけの
問題は解けないのだ(不可能な配置)。
この入れ替えは、大学レベルの「線形代数」(行列に関わる理論)で「互換」
と呼ばれてる。解けないことの数学的証明には、この線形代数の理解が必
要で、今回はとりあえずパスしとこう。。
P.S. 3年半後、証明記事をアップした。
置換・互換と14-15パスルの不可能性~3パズル、8パズルからの証明
☆ ☆ ☆
続いて、8パズルについて。これは、上側と左側の列(合わせて5マス)を先
に揃えてしまえば、残りは3パズルになる。具体例を見てみよう。
完成形では、上側に
1,2,3、左側に
1,4,7と並んでる
から、先にこれら5
つ(1は重複)を定
位置に移動させればいい。解答例は次の通りだ(やり方は多数存在)。そ
の都度、動かしたい数字を含む適当な長方形(or正方形)のグループに
注目して、左右に回転させればいい。
上側に1,2,3と並んだ状態を目指すと、たまたま左側も1,4,7と並ん
でくれる。もちろん、こんなラッキーがなくても大丈夫だ。最後は、残った
右下の3パズル(2×2=4マス、数字は5,6,8)を揃えて、完成となる。
一方、3パズルの時と同様に、次のような8パズルは解けない問題だ。赤
線部分の入れ替え(互換)はど
うしようもない。私ももちろん、
最初はそんな問題があること
に気付かなかったから、電車
内で適当にノートに問題を書い
て、「解けない・・あとちょっとな
のに・・」とか考え込んだわけだ♪ ま、わりと早めに気付いたけど。。
☆ ☆ ☆
いよいよ最後は、一番標準的な15パズル(4×4=16マス)について。
これは、上側と左側の列(合わせて7マス)を先に揃えてしまえば、残りは
8パズルになる。そして更に、3パズルまで持って行けるのだ。具体例を
見てみよう。
この問題は、実際にVistaのガジェットで最初に出たもので、都合のいい
ものを選択した訳じゃない。ネットの問題も含めて、他に5問ほど実験。全
て簡単に成功している。より良い解法にこだわるのでなければ、「数独」と
違って、ほとんど悩むことのない機械的作業だ。
ちなみに、この15パズルでも、次
のような問題は解けない(赤線部
に注目)。これが解けないことの理
由や証明については、いずれ後続
記事で扱いたいと思ってる。
(☆追記: 上述の通り、既に証明。)
一応、ウィキペディアの外部リンクで、数学的説明のページに飛べるように
なってるけど、かなり省略されたものだし、パズルと線形代数の両方をよく
理解してないと、何となく頷くだけに終わってしまうだろう。これは、学問の世
界(特に数学・論理学)では危険なことだ。ウチではもっと細かく具体的に説
明してみたい。
以上、15パズルを8パズルへ、さらに3パズルへと還元して解く方法につ
いて簡単に説明した。この3種を関連付けて、具体的に解いた点がこの
記事のポイントだ。
それでは、今日はこの辺で。。☆彡
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P.S.15パズルの解けない問題で、11と12の代わりに、14と15を
入れ替えたものは、「14-15パズル」と呼ばれて、100年ほど
前にサム・ロイド(Sam Loyd)が1000ドルの賞金をかけたらし
い。当時としてはかなり高額なんだろう。ま、絶対に解けないこと
は既に分かってたらしいけど。。♪ (英語版ウィキを参照)
Windowsの地雷ゲーム、「マインスイーパ」の簡単な攻略法
スイス職人の遊び心~オイラー生誕300年腕時計の「数独」文字盤
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コメント
はじめまして、こんばんわ。
ガリレオで検索して以来お気に入りにしています。
15パズルにもルービックキューブみたいに
最短手数があるのでしょうね
投稿: けろよん | 2010年9月 5日 (日) 19時19分
> けろよん さん
はじめまして。コメントありがとうございます♪
『ガリレオ』以来のお気に入り登録、嬉しいです。
それにしても珍しいですね☆ この種の記事についた
短いコメントで、挨拶文と改行が入ってるのは。
キッチリした文章なのに、名前はけろよんさん(笑)
すごくイイと思います。
さて、「最短手数」。解ける問題には当然あるはずです。
個々の問題ではなく、一般的な最短手数、つまり、
すべての問題を解くための最短手数については、
ウィキペディアにこう書いてあります。
「8パズルは任意の可能な配置へ31手以内で
変形できる。31手が必要な配置は存在する。
15パズルは任意の可能な配置へ80手以内で
変形できる。80手が必要な配置は存在する」
ただ、証明は、個々の問題についてであっても、
コンピューターを使わないと困難でしょう。
ましてや、一般論だと、先日のルービック・キューブの
最短手数20手みたいに、コンピューターで
しらみつぶしにするしかないと思います。
ちなみにあのルービック・キューブの証明。
まだ検証されてないと思いますが、報道機関も含め、
みんな既に信じてるようですね。
円周率5兆ケタの方は、まだ保留気味なのに♪
僕は、自分が納得するまでは、「参考」程度に
思ってます。少なくとも、自分にとっては。
その意味で、フェルマーの定理もポアンカレ予想も、
解決された「と言われてる」だけのこと。
本当に理解できてるのは専門家のごく一部だろうし。。
ただ、3パズルなら、自分で解いて確信してます。
最初の配置は24通り(4×3×2×1)で、
そのすべては6手以内で解ける。
6手かかるのはただ一つ。
左上0、右上3、左下2、右下1の場合です。
ま、8パズル以上は証明する気がしませんけどネ♪
投稿: テンメイ | 2010年9月 5日 (日) 23時02分
はじめまして、名無しでスイマセン。
わたしは、任意問題の最短手数をPCに解かせ様と、
参考に成る資料が無いかと調べていて、最終的に
takakenさんの
「PDBを使った15パズル自動解答プログラム」
と、言う記事に辿りつたのですが、わたしには、
高度過ぎて、半部程しか内容を理解出来ず、
実装も大変そうだったので「最短手数」は、
あきらめて、簡易解法的な定番手法でどうにか
出来ないものかと、わしもほぼ同じアプローチで
15パズルの解法を考えていたのですが、
なんだか上手く方法論を築けず、再びネットに
頼って見た処、この記事にたどり着きました。
大変参考に成り分りやすかったです。
これで思う物が、作れそうです。
それで、本文にあった後続記事も読みたいと思い
検索してみたのですが、それらしい記事への
ヒットが無かったのですが、書かれていないのでしょうか?
投稿: | 2013年4月18日 (木) 23時17分
> 名無し さん
こんばんは。これまた珍しいコメントですね。
名無しなのに丁寧で、挨拶どころか
「スイマセン」とまで書いてらっしゃる。
そこまで行けば、あと一歩ですよ。
ハンドルネームを書くだけで、印象は全く違います。
で、この2年半前の記事がお役に立てたようで、
光栄です。自分で読んだのも2年半ぶりかも。
後続記事が書けてないのは、色々理由がありますが、
一番問題なのは、線形代数のテキストや問題集が
どこかへ行ってしまったこと。
持ってるのは間違いないから、新たに買うのも
気が引けて、話が進まないわけです。
今現在はもう、ドラマ『ガリレオ』その他で
6月末まであおられるので、当分無理ですね。
3年後くらいなら、書いてるかも知れません。
ウチは総合サイトなもんで、悪しからずご了承を。。
投稿: テンメイ | 2013年4月20日 (土) 01時10分