主役と演出家が再会、『ビーチボーイズ』の変奏～『流れ星』第１話

いやぁ、出だしだけで満足してしまった♪　昨夜のフジ月９『流れ星』第１話。

最初の３０秒くらい間に合わなかったけど、私が見始めると、いきなり健吾

役の竹野内豊が自転車に乗って、輝く海の方に走っていく。その先には水

族館があって、お魚たちと竹野内が仲良く戯れる。時々、妙な理屈を口に

して、周囲を沈黙させたりもする。

これが、９７年の名作月９『ビーチボーイズ』へのオマージュ（敬意を込めた

模倣）だと分かった人は、なぜか今現在、ネット上に一人も見当たらない。

明らかな類似だし、この夏には１３年ぶりに待望のＤＶＤ－ＢＯＸが発売さ

れたばっかなのにね。アマゾンのカスタマー・レビューは、３０人全員が５つ

星（☆☆☆☆☆）。驚異の高評価になってる。

『ビーチボーイズ』は、私も絶賛するドラマで、これまでもウチで時々話題

に出して来た。例えばあの『ラスト・フレンズ』最終回が、『ビーチボーイズ』

へのオマージュだと指摘。誰も気付かなかった事を具体的に列挙して分析

したたわけで、先日も某「関係者」の人気サイトでお褒めの言葉を頂いた♪

（ｃｆ．　共生を選んだビーチボーイズ～『ラスト・フレンズ』最終回　）

『Ｂｅａｃｈｂｏｙｓ』の平均視聴率は２３．７％。当時の月９としてはまずまずの

人気といった程度だ。でも影響力は視聴率以上で、主人公・広海を演じた

反町隆史はいきなりＮＨＫ好感度調査の１位に急上昇。全盛期の明石家さ

んまを２位に追いやったほど。前年『ロングバケーション』が大ヒットしたキ

ムタク＝木村拓哉でさえベスト３にも入ってないのに（山口智子は連続１位）、

反町は翌９８年にも２位を獲得。前後の１０年で、これほどの人気を集めた

男性俳優は一人もいない。「広海」人気は圧倒的だったのだ。

一方の竹野内も、意外な場所で存在感をアピールした。演じた役の「海都」

という名前が、一気に翌年誕生の男の子の名前ランキング２位になったの

だ。漢字は「海斗」だけど、前年まではずっとランク外の名前だったから、

影響は間違いないだろう。他に大きな影響を与える要因も見当たらない。

その後も『ビーチボーイズ』は根強い人気を保ち、度々再放送されて来た

（私が見たのは再々々々放送くらい）。でも、まだまだ評価が足りないと思っ

てる。理由の一つは、これが完全に「男のドラマ」だから。恋愛の要素も少

ないし、ファン以外の女性が感情移入しにくい内容になってる。その辺り

の事情については去年の冬、亀梨和也『神の雫』レビューで考察。その記

事はあちこちでリンクやブックマークを頂いた。

（ｃｆ．　孤高を目指して闘う男たちの絆～『神の雫』第６話　）

評価不足のもう一つの理由は、高度に作り込まれてるから。『ちゅらさん』

岡田惠和の脚本も完璧だし、映像的にも第１話冒頭から最終回までパー

フェクトと言っていい構成になってる。ただ、それを理解できるためには、

ある程度以上の読解力、ドラマ・リテラシーが必要だ。何と何が、どう関係

し合ってるのか、イメージ的に読み取ったり、内容的に解釈したりする能力。

例えば、今回の『流れ星』と『ビーチボーイズ』の類似が見抜けるか。特に、

９８年正月放映『ビーチボーイズＳＰ』へのオマージュだと分かるかどうか。。

　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

では、『流れ星』第１話を改めて見てみよう。冒頭のシーンは、ビーチＳＰ

の冒頭と明らかに似てる（ＳＰは広末涼子の自転車）。新江ノ島水族館は、

ビーチＳＰで竹野内が働いてたイルカの施設を思い出させるものだ。さら

に言うなら、修一（ＳＭＡＰ・稲垣吾郎）が買ったチャラチャラしたスポーツ

車は、ビーチＳＰで反町が乗り回してた車のイメージがある。

あれだけ憎まれ役のはずの修一が、どこかマヌケで憎めない雰囲気を漂

わせてるのは、ピーチボーイズの主役・反町の要素が少し入ってるからか

も知れない。実は反町＝広海も、最初は女のヒモで、追い出された所から

ドラマは始まったのだ。ところがその後も、女は反町とビミョーな関係を継

続する。その点を考え合わせると、今後の『流れ星』梨沙（上戸彩）と修一

の関係も興味深いだろう。広海を２人に分割した形と考えることも可能。

第１話終了後のエンドロールで、私はスタッフの名前に注目したけど、特

にビーチボーイズ関連の名前は見当たらない。おかしいなと思ってたら、

演出家が同じで、苗字だけ変わってたのだ。以前は石坂理江子、今は

宮本理江子。脚本家・山田太一の娘で、９０年代にヒットを連発した現役

のベテラン監督だから、何となく『流れ星』にも昔の雰囲気が漂ってたん

だろう。９０年代のテイストどころか昭和の香りさえ感じたから、平成人間

としては逆に新鮮だった♪　

内容に戻って、『流れ星』では海を漂うクラゲが重要な役割を果たしてる。

海流や波にしたがって浮遊し、死んだ後には溶けてしまう、真っ白なクラ

ゲ。もちろん、梨沙自身の過去の生き方と重なってるし、未来とも重ねよ

うとしてるわけだ。

このクラゲに対応するのが、『ビーチＳＰ』のイルカだ。カタカナ３文字の海

の生きもので、それだけでも明らかな類似。施設の中のイルカは、反町と

竹野内の２人、特に反町＝広海と重なる存在。自分に与えられた狭い世

界の中でそれなりに生きてるけど、自由が無く、本来の自分とは程遠い。

その点を、広末涼子（真琴）と稲森いずみ（春子）に厳しく指摘された２人は、

やがてイルカを広い海（＝広海）へと助け出し、イルカは嬉しそうに遠くへ泳

いでいく。そして２人も、再び広い海へと旅立つことになった。ネタバレかよ！

こう見て来ると、『ビーチＳＰ』を重い恋愛ヴァージョンへと変奏したドラマが

『流れ星』だということが、よく分かるはずだ。元々『ビーチボーイズ』の２人

が知りあったのは、それぞれ全く別の人生で同時期に挫折したのがキッカ

ケ。『流れ星』も、絶望した梨沙＝上戸と、絶望しかけた健吾＝竹野内が出

あう話だ。さらに言うなら、ビーチＳＰでイルカ＝広海を救う際に活躍するの

は、イルカを扱う仕事をしてる竹野内＝海都。『流れ星』だと、クラゲ＝梨

沙を救う際に活躍するのは、クラゲを扱う仕事をしてる竹野内＝健吾だ。。

なお、『流れ星』公式サイトの青空と海の使い方は、『ビーチボーイズ』の

タイトルバックと重なる。青い空から美しい海にもぐって、２人が出会う。

イメージの構造を読み取るとは、例えばこうゆう事だ。。

　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

最後に、ビーチボーイズと関係ないコメントも軽く書いとこう。金にいい加減

な兄のせいで、仕方なく梨沙が働いてるイメクラ・聖マリン学園。馬乗りの

マッサージは、男性視聴者へのサービスにもなってるけど、折角の制服を

活用しないのは勿体ないね♪　単なる細めの美脚なら、「少女時代」にで

も任せとけばいい。ま、フンワリ長い髪型は、如何にもそれっぽくて、ちょっ

と萌えるかも。。

北乃きいよりは、川口春奈の方が可愛いけど、涼太（桐山照史）とマリア

（北乃）のボケ＆突っ込みには思わず笑ってしまった。「オレの自画像、描

いて」、「自分で描くから自画像でしょ！」って感じのやり取り♪　最初の涼

太の台詞だけでプッと吹き出したほど。マリアが突っ込んでなければ、間

違いなくこのレビューで突っ込んでたはず。

医師の神谷（松田翔太）は、まだ何考えてるか分からないけど、裏でこっそ

り看護師＝ナースの北川弘美と楽しんでることだけは間違いない。神谷に

憧れて、身体を「特別に許し」てたマリアも、やがてそこに巻き込まれるはず

だ。バレた時のためにあらかじめ兄の健吾にコーヒーをおごって仲良くして

たんだろう・・・とか書いても、まさか本気にするファンはいないでしょ♪　

真面目な話、提供者が見当たらない肝臓移植なんて、どうするのかね。ホ

ントに梨沙の肝臓を使うはずはないし、終盤で運良く脳死者が見つかるの

かな。個人的には、肝臓は諦めてマリアが死ぬ方が自然だと思うけど、テ

レビドラマ的には、梨沙が肝臓の一部を提供してウエディングドレス姿で死

ぬのかな（新聞の番組欄の宣伝写真）。その辺り、脚本・臼井素子＆秋山

竜平、脚本監修・伴一彦に期待しよう。当然、演出の宮本も加わるはずだ。

ちなみに第１話視聴率は、意外に健闘して１３．６％。ま、初回の数字だか

ら、次が勝負だね。秋は忙しいから、去年と同じくドラマは基本的にお休み

する予定だったけど、とりあえず『流れ星』の第２話は見てみよう。面白け

れば、そのまま見続けてもいいかも。毎週マジメにレビューする余裕はな

いとしても、ランニング記事のオマケ的な感想くらいなら書くかも知れない。

今回の白シャツ＆ジーンズ姿とか見ると、竹野内は大昔の山下真司を小

型にしたようにも見えたけど、私の中では海都のまま。好感度は高い♪

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

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Ｐ．Ｓ．　２０１４年の９月になって、また『ビーチボーイズ』の再放送開始。この

　　　　　　記事その他にアクセスが増えてる♪　ツイッターを見ても好評だった。

ｃｆ．クリオネ女子、クラゲ、大塚愛～『流れ星』第２話

　　水族館から海へ、流星から星座へ～『流れ星』第３話

　　消えない流れ星に願いを～『流れ星』第４話

　　星＝コンパスとしての、死んだ父～『流れ星』第５話

　　竹野内豊主演ドラマ、視聴率の推移＆『流れ星』第６話

　　共に歩むもの、ドッペルゲンガー（分身）～『流れ星』第７話

　　揺らめきながらも前進する自転車～『流れ星』第８話

　　ネガティブなものの直視～『流れ星』第９話

　　クラゲ流星群のウエディングドレス～『流れ星』最終回

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　　「眠れる森の美女」ではなく「いばら姫」～『もう一度君に、プロポーズ』第１話

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　　映像美と俳優の存在感～輪舞曲第１話

　　美しく自然なエンディング～輪舞曲最終回

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