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北方限界線(NLL)と海上軍事境界線~北朝鮮にとっても延坪島は韓国領か

書くか、書かないか、しばらく迷ったが、やっぱり書いとくことにしよう。どう

しても気になるし、「どうしてみんな不思議に思わないのか」という点も不思

議なのだ。思ってるけど、全体の雰囲気的に口に出せない人が多いのか。

ウチは国際政治とはほとんど関係ないサイトだけど、マニアックサイトでは

ある。重要な問題でもあるし、たまには国際政治にこだわってみよう。ただ

し、政治的主張ではなく、単に事実を追求してるにすぎないので、念のため。

       

今回の朝鮮半島の砲撃事件、23日の夜に知った時から今(28日早朝)に

至るまで、かなり重要な事なのに、どうしてもハッキリ分からないことがある。

それは、あの大延坪島(テヨンピョンド)は、どちらの国の領土なのかという

事だ。あるいは、もっと限定してもいい。あそこは、北朝鮮の言い分におい

ても韓国の領土なのだろうか。それとも彼らは、自分達の領土だと言ってる

のか。もちろん、普通に手に入る報道は一通り目を通した上での疑問だ。

                

その前に、北朝鮮も含めて、みんなが認めてる事実をまとめとこう。まず22

日から韓国があの辺りで軍事演習を開始。23日の朝、北朝鮮が中止要請

を通知。韓国が無視して、北朝鮮が14時34分に砲撃開始。韓国も少し遅

れて反撃。韓国人の犠牲者は、兵士2人、民間人2人。北朝鮮は不明。

          

これ以外に、真実ならば重要な情報としては、中国系の新聞「環球時報」が

伝えた韓国軍関係者の話がある。「韓国側は朝鮮側の要求を拒否し、論争

のある海域にむけて砲撃したが、砲弾は同海域に落ち、朝鮮側の海岸線

には到達しなかった」(中国網日本語版、11月25日より孫引き)。わざわ

ざ中国国務院のHP・中国網が伝えた所を見ても、この韓国の砲撃は、北

に向けてでは無かったと言われてる普通の軍事演習ではなく、北朝鮮側の

海岸線に向けて行われた可能性がある。

                 

ただ、どの程度信用できるか分からないし、海岸「向き」に撃ったからと言っ

て、北朝鮮の陸地を狙ったとは限らない。とりあえず、北の警告を無視して

韓国が演習、その後、北が島の陸地を攻撃したと思っとこう。どちらが先か、

どちらが悪いかはともかく民間人を死亡させたことに関しては、北朝鮮で

さえ残念だと語ってる。陸地でなく、島の手前の海に威嚇砲撃しとけば、こ

んな大騒ぎにはならなかっただろう。まあ、北にしてみれば、我慢の限界

だったということなんだろうけど。。

      

          ☆          ☆          ☆

どちらが先に、何らかの「攻撃」をしかけたかという点については、上のま

とめ程度にしとくとして、問題は、あの島がどちらのものかということだ。つ

まり、朝鮮戦争が1953年に休止して一ヶ月後、国連軍(韓国側)が定め

た「北方限界線(NLL=Northern Limit Line)に従うなら、韓国のものだけ

ど、北朝鮮が1999年に主張し始めた「海上軍事境界線」(Maritime Mili-

tary Demarcation Line)では、帰属はどうなのか

    

これについて、少なくとも2つの相反する主張が、現在流通してるのだ。

まず、Wikimediaから頂いた下の図を見てみよう(日本語版ウィキペディ

アだと、「延坪島事件」の項目にある)。

      

101128

    

右上で陸地上を伸びてる黒い点線は、北朝鮮も認めてる「軍事境界線」

だ。左上が北朝鮮、右下が韓国。その線の左端から、左側の海に伸びて

青い点線Aが「北方限界線」で、実質的にはこれが半世紀にわたって国

境として機能して来た。

                  

問題は、10年ほど前から北が主張し始めた赤い点線、「海上軍事境界

」なのだ。上の図では、2ヶ所奇妙な凹みがあって、3つの大きな島が

韓国領のままになっている。この内、右側の島が、ヨンピョン島(大小2つ

の内、砲撃されたのは大きい方)だ。

        

この図は、日本版だけでなく、英語版、韓国語版、中国語版のウィキにも

採用されているし、今現在、ネット上のいくつかのサイトにも引用されてい

る。ただ、決定的に重要な、2ヶ所の奇妙な凹みの根拠は、どこにも見当

たらない。どこで見たか思い出せないが、韓国から島への海上通行路だ

け認めたとかいう話があった気もする。ただ、それなら島自体は別問題だ

し、通行路の所属も別問題だろう。

   

図は、2008年からあった単なる海と島の地図に、2010年11月23日

なって、中国系らしき名前の作者が線を書きこんだものだ。凹みの根拠が

何なのかは説明されてないし、決定的に重要な「北緯」と「東経」の地理情

報の記述も無い(後述)。

      

ちなみに、赤旗のHPにも似た図があったから、何か元ネタか根拠らしき

ものは一応あるんだろう。ただ、砲撃の後、朝日新聞は一貫して、凹みの

ない「海上軍事境界線」を掲載し続けてる(この記事末尾のP.S.2参照)。

ただし、朝日の言い回しだと、「北朝鮮が主張する境界線」。おそらく、陸

地の「軍事境界線」と混同されるのを避ける意味もあるんだろう。他には、

時事通信も凹みのない線を掲載している(時事ドットコム、5月25日)。

     

(☆28日夜の追記: 凹みの根拠が見つかったが、過去の話で、今現在

             では無効のようだ。この記事末尾のP.S.参照)

      

                  

         ☆          ☆          ☆

では、この「ウィキ&赤旗」vs「朝日&時事」の対決。どちらの勝ちなのか。

今現在までに手に入った情報からだと、私は「朝日&時事」が優勢だと判

断している。ただし、凹みを正当化する新しい情報が見つかれば、判断は

変わるだろう。

    

問題は、北朝鮮の主張だから、あちらの報道を見る必要がある。まず重

要なのは、1999年7月21日朝鮮中央通信(Korean Central News

Agency)で発表された宣言文。日本語の朝鮮日報でも、英文で報道され

ている。ポイントの箇所だけ引用してみよう。

     

   The maritime demarcation line is an extension line of the provincial

    boundary line (a-b) between Hwanghae-do and Kyonggi-do

   stipulated in the armistice agreement. The line links the point (37

   degrees 18.5 minutes n, 125 degrees 31 minutes e) equidistant from

    "a" point and Tungsan point, the tip of Kangryong peninsula under

   the DPRK control, and from Kul-Op island under the U.S. military

   control= the point (37 degrees 1.2 minutes n, 124 degrees 55 minutes

    e) equidistant from Ong island under the DPRK control and from

   Sogyokryolbi island and Sohyop island under the U.S. military control

   = and the point (36 degrees 50.75 minutes n, 124 degrees 32.5 minutes

    e) equidistant from the DPRK and China.

       

この英文、ネット上にほとんど情報がないような北朝鮮の地名が幾つか入っ

てることもあって、解読に苦労した。「a」や「b」が何を意味するのか分から

ないが、ひょっとすると元は図があったのかも知れない。ちなみに「n」は北

緯、「e」は東経の意味だ。あと、短い「=」は、おそらくセミコロンのような記

号の文字化けみたいなものだと想像している。

     

とにかく、この分かりにくい英文からでもハッキリしてるのは、陸上の軍事

境界線の延長線だということ(確かにそう見える)。また、北緯と東経の定

まった明確な3地点(point)が挙げられてること。普通に考えれば、この

点を結ぶ直線ということだろう。実際、私はGoogle Mapで北緯と東経を

入力、ほぼ海上軍事境界線に一致するラインが出来ることを確認した。

           

2点でなく、3点ということは、線が途中で折れ曲がってるということだ。実

際、朝日の図をよく見直すと、左側が少し折れ曲がってる。つじつまが合っ

てるのだ。それに対して、ウィキや赤旗の図は、島に向かう2ヶ所の凹み以

外は真っ直ぐ伸びている。これだけでも、疑問が生じるだろう。ほぼ真っ直

ぐだから省略した、というような言い訳は苦しい。元々、3点によって規定さ

れた線なのだから。

    

さらに、最新の北朝鮮の主張を人民日報のHPから引用すると、次のよう

になっている。「朝鮮中央通信が伝えたところによると、朝鮮外務省の報

道官はピョンヤンで24日、談話を発表し、・・・・・・延坪島は朝鮮領海の内

部にある島であり、地理的に見るとどの方向へ発射しても砲弾は朝鮮領

海内に落ちる」(注.韓国の演習の砲弾のこと)。これを普通に読めば、延

坪島は北朝鮮領となるだろう。

(追記: その後、直接、朝鮮中央通信HPの24日の記事で確認した。)

       

以上から、今現在、北朝鮮の主張によると、延坪島は海上軍事境界線の

北側、つまり北朝鮮領ということになる。ということは、日本(の公式見解)

にとっての北方領土と同様、他国に不当に支配されてる形なわけだ。

          

ただしもちろん、その主張が認められるかどうかは別問題で、今現在その

境界線は、ほぼ世界的に全否定されてるわけだ。99年になってようやく主

張したという点は、北の弱みだろう。ワタリガニの好漁場を確保して、外貨

を得たかったということか・・(朝日新聞11月25日・「ニュースがわからん!

 南北朝鮮を隔てるNLLって?」)。

                                  

         ☆          ☆          ☆

いよいよ今日28日から、米韓の合同軍事演習が始まる。今さら止める訳

にもいかないだろうけど、なるべく刺激が少ないやり方にして欲しいもんだ。

あと、北朝鮮と親密な中国には、超大国としての責任を果たして欲しいと

願ってる。日本にとっても決して他人事ではないし、そもそも国境の紛争な

ら、日本も3ヶ所抱えて困ってるわけだ。

       

中国とは尖閣、ロシアとは北方領土、韓国とは竹島。今回の朝鮮半島み

たいな事件にしないためにも、日米関係も含めて、国民一人一人が本気

で考える必要があるだろう。注目の沖縄知事選も、今日が投票日なのだ。

       

なお、新しく重要な情報が手に入って、記事の修正が必要になった場合に

は、なるべく早く手直ししようと思ってる。ではまた。。☆彡

     

     

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

P.S.北朝鮮が主張する海上軍事境界線の2ヶ所の凹みの意味が分かっ

    た。最初の宣言は99年だが、2000年3月23日に、北朝鮮と韓国

    の間で合意が成立。ヨンピョン島など5島の管轄権が韓国に認めら

    れ、そこへの海上交通路の通航が米軍や韓国に認められた。つま

    り、2ヶ所の凹みが出来たのだ。防衛庁の2001年の図にも凹みが

    あり(西から順に第1・第2水路)、例の直線の折れ曲がりもある。

          

    ところが2009年の前半(時事通信を引用したウィキの説明だと1月

    30日)、合意を無効化すると北朝鮮が発表。それを受けて、凹みを

    取り去ったのが、時事通信や朝日新聞が今年掲載している図だろう。

    その後の北の動きとも整合的なので、やはり今現在は、凹みなしの

    海上軍事境界線の方が正しいと思われる。もちろん、北朝鮮の言い

    分によると、という意味において。。

       

P.S.2 12月6日の朝日・朝刊では、ソウルの箱田哲也記者が国際面

      で、最新の軍事情勢(韓国の射撃訓練など)を手短に解説。

      でも延坪島などは韓国領だと北朝鮮も認めてる、という内容の

      ことを書いている。7日にも、同じ記者が同様の内容を執筆。

         

      これは要するに、2009年の合意無効化を考慮してない見方

      ろう。朝鮮中央通信の最近の報道を見る限り、間違ってると思う

      が、引き続き各種の報道はチェックするつもりだ。ちなみに朝日

      の図は相変わらずで、北朝鮮が主張する境界線に凹みは無い

      (7日の図にようやく、凹みを示す濃い部分が登場。海上軍事境

      界線という言葉は、事件後だと6日の夕刊で初登場)。    

         

       

cf.中国の異質性、東アジアの同一性

             ~東浩紀&李鍾元「論壇時評」(朝日新聞・11月)

                                 (計 4974文字)

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

通りがかりの者ですが、過去の防衛白書に出ている図表を見ると、北朝鮮も延坪島への水路を韓国側が自由に航行できると設定しています。

http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2001/zuhyo/frame/az131008.htm

投稿: | 2010年11月28日 (日) 19時43分

> 通りがかりさん
    
こんばんは。貴重なコメントありがとうございます。

元の記事にも書いてた通り、私もどこかでその話を
見た記憶があったのですが、思い出せませんでした。
やはり、最初の宣言の後に新たな動きがあったわけですね。
    
けれど、09年に水路や島の合意は無効化されています。
したがって今現在、北朝鮮にとって、やはり
海上軍事境界線の凹みはないのでしょう。    
早速、関連する情報を入手、記事に追記しておきました。
      
なお、折角の貴重なコメントなのですが、ウチでは
原則として、名無しのコメントは認めていません。
もしまたコメントの機会がありましたら、
今度は名前を記入して頂きたいと思います。
   
とりあえず、今回はどうもでした

投稿: テンメイ | 2010年11月28日 (日) 20時36分

2010/12/20の情報でこんなのがありました。僕も理解しきれてませんが、参考になればと。

投稿: navi-area26-10 | 2010年12月23日 (木) 02時38分

> navi-area26-10 さん
   
はじめまして。情報どうもです。
かなり広い国際的視野をお持ちなんですね。
    
騒動の当初は、あまり情報も無く、世間的な関心も
ほとんど無かった境界線問題。
流石にその後、関心が増してるようで、
マスメディアの情報も明らかに増えてます。
    
ただ、いまだに一番重要な点がハッキリしません。
なぜ、北朝鮮は長年NLLを認めて来たのか。
なぜ、ずいぶん後になって急に態度を変えたのか。
今現在、あそこが自国領土だと本気で思ってるのなら、
どうしてその後の攻撃は自重してるのか。
     
普通に手に入る情報だけでは納得できないので、
自分であれこれ探ってみるつもりです。
やっぱり、日本や韓国の報道ではなく、
北朝鮮や中国の報道を調べる必要があるでしょう。。

投稿: テンメイ | 2010年12月24日 (金) 01時37分

>なぜ、北朝鮮は長年NLLを認めて来たのか。
>なぜ、ずいぶん後になって急に態度を変えたのか。

やはり当初制海権が無く島も占領してなかったことから、仕方なく認めてきたのだと思います。

ただ、こんなブログを書いていますのでどこかでコメントを頂いたのですが、外交には正しさと言うものは実はあまり大切ではないとのことでした。たしかにそうかなと思うこともあります。

リンク先イランの島の領有権の問題ですが、たとえばこの問題を解決するために世界中が、注目すると言うことは無いと思います。やはり当事者がひっそりと抱え込む問題となるのではないでしょうか。

投稿: navi-area26-10 | 2010年12月24日 (金) 02時42分

> navi-area26-10 さん
   
こんばんは。再びどうもです。
   
日本と竹島の関係が微妙な歴史を持ってるように、
北朝鮮とNLLの関係も微妙だと思います。
例えば、大きな冷戦構造を考慮する必要がある。
   
外交には、正しさがあまり大切でないと言ってもいいし、
正しさが変化しやすいとも言えます。
正しさを判断する角度や視点が流動的、という見方も可能。
         
イランの島の問題は、輸送や資源と大きく
関わって来れば、世界も注目すると思います。
あるいは、大規模な戦争になるとか。
人道的にも重要だし、自分たちの国境問題にも
影響しかねませんからね。。

投稿: テンメイ | 2010年12月27日 (月) 01時26分

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