(☆5月13日、8月26日追記: 少し突っ込んだ記事を追加。
実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係
外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA) )
☆ ☆ ☆
(20日) RUN 12km,59分18秒,心拍144
雑用JOG 1km,6分程度
流行語大賞に選ばれるかどうかは微妙な所だが、この1週間ですっかり
一般的になった言葉が「シーベルト」(Sv)だろう。最近、話題になってる範
囲で言うなら、要するに、ある場所が人間に与える放射線の影響を表す
単位だ。場所という話は、文脈を考えて私が補ったもので、外してもいい。
専門的な用語を用いると、様々な放射線の影響を統一的に換算する「線
量当量」や、線量当量による人体全体への影響を合算した「実効線量」を
表す単位という話になるが、これらの用語は普通にニュースを見てる分に
はあまり必要ない。実効線量を縮めた「線量」という言葉と、その単位であ
るシーベルトを知ってるだけで、かなり話が理解できる。
「J/kg」(ジュール・パー・キログラム)と同じだから、体重1kgあたりの放
射線の影響をエネルギーで考えてる。ジュールは仕事量や熱量の単位で、
4.19で割ればおなじみのカロリー(cal)へと変換可能。一方、1時間あた
りの放射線の影響量なら「Sv/時」(シーベルト毎時 or 毎時シーベルト)だ。
環境科学技術研究所の「ベクレルとシーベルト」と題するpdfファイルを
読むと、シーベルトは「実効線量」だと書いてある。つまり、「実」際に人間
に「効」果をもたらす放射「線量」ということだ。元々はスウェーデンの科
学者の名前(Sievert)で、放射線防護で功績があったとのこと。
1シーベルト=1000ミリシーベルト=100万マイクロシーベルト。原発と
環境関連では、マイクロシーベルト(μSv)に統一して考えればいいと思
う。あるいは、毎時マイクロシーベルト(uSv/時)。日付け変わって昨夜、
パソコンをいじりつつNHKの震災番組を流し見してたら、解説者がミリシー
ベルトとマイクロシーベルトを言い間違えて、しばらく後に訂正してた。私
は先日、放射線の年間総量の計算記事を書いたこともあって、聞きなが
らすぐ間違いに気付いたが、解説者がミスするくらい紛らわしい。
すべてマイクロシーベルトで考えればいいのだ。そして、年間総量なら数
千マイクロ、毎時(1時間あたり)なら0.5マイクロくらいまでは健康に問
題ないと考えればいい(屋外の値)。今現在、福島県を除いて、どの都道
府県も毎時0.2~0.03マイクロ程度だから、まったく問題ない。
☆ ☆ ☆
一方、放射線量に関しては、たまに「グレイ」(Gy)という単位も使われて
る。英国の物理学者の名前(Gray)で、「今回の原発事故関連ではグレ
イとシーベルトは同じだと考えていい」、というような記述があちこちに書
かれてる。
あえて説明すると、グレイとは「吸収線量」、つまり物体1kgあたりが吸収
する放射線のエネルギー量を表す単位で、シーベルトと同じく、J/kg と
書き換え可能。一方、吸収した放射線が人体にどの程度の影響を与える
かは、放射線の種類によって違うから、グレイの数値に荷重係数(影響
の大きさを示す数字)を掛けて、シーベルトの数値を求める。
ただ、問題とされる放射線はベータ線とガンマ線で、どちらも係数が1だか
ら、掛けても数値は変わらない。だから、グレイ=シーベルト。結局、シー
ベルトだけで考えればいいのだ。
ちなみに、手元の教科書『改訂版 高等学校 物理ⅠB』(数研出版,平
成13年)をみると、グレイは本編に載ってるけど、シーベルトは末尾の補
足的説明にしか載ってない。これは、物理学が物質一般を扱う学問であっ
て、人間という特別複雑で重要な生物を扱う学問ではないからだろう。
☆ ☆ ☆
最後に、数日前から被災地の農産物に関して話題になり始めたのが、ベ
クレル(Bq)。フランスの物理学者の名前(Becquerel)で、放射線の発
見でノーベル物理学賞を受賞したとのこと(英語版ウィキペディアより)。
グレイと共に、前述の教科書に載ってて、「原子核が毎秒1個の割合で
崩壊するときの放射能の強さを1ベクレル(記号Bq)という」と書かれてい
る(p.280)。「個/秒」、あるいは単に「 /s」と同じこと(個数というの
は物理の基本単位ではない)。
ただしこれは、正確に「放射能」(=放射線を出す能力)を与える数値とは
言いにくい。つまり、2ベクレルの物が1ベクレルの物より2倍の放射線を
出すとは限らないのだ。というのも、原子核の種類によって、1個崩壊する
ごとにどんな放射線をどれだけ出すかが少し異なるから。
ただし、今話題になってる範囲だと、ヨウ素131やセシウム134,137
に限られてるから、ヨウ素2ベクレルのホウレンソウが1ベクレルのホウ
レンソウの2倍の放射線を出すと考えるのなら、問題ない。ベクレルの数
値は、やや大まかな意味では、確かに放射能の強さを表してる。
あるいは、「1kgあたりヨウ素9ベクレル、セシウム(どちらか一方)12ベ
クレル」の飲料水は、「各3ベクレル、4ベクレル」の飲料水と比べて、3倍
の放射線を出す。こう考えるのも正しいわけだ。
ちなみに、今現在の飲食物からの検出量は、規制値を上回ってる物に関
しても大丈夫とのこと(日経HP・20日)。消費者がどう感じるかは別として。
あと、野菜類の暫定規制値は、1kgあたりでヨウ素2000ベクレル、セシウ
ム500ベクレル。飲料水なら、それぞれ300と200(朝日HP・20日)。水
は野菜より基本的なものだから、数値が低めに設定されてるのだろう。。
☆ ☆ ☆
結局、シーベルト(毎時)は場所の危険度、ベクレルは放射性物質の危険
度を表すわけだが、この両者の間に単純な関係式は成り立たない。という
のも、そもそもベクレルの数値と放射線量の関係は単純ではないし、同じ
ベクレル、あるいは同じ放射線量の放射性物質であっても、そこからの距
離や時間、遮蔽物(壁、水など)によって、シーベルトの値(=人体への影
響)は変わって来るからだ。
ただ、何を何ベクレルの量だけ食べると何マイクロシーベルトになるのか
は、大まかに計算可能らしい。理解できたら、また別記事にしたい。
(☆追記: 下のP.S.で少し考察した。)
最後に、私自身も含めて、どうもピンと来ない人のために、簡単な比喩を
思い付いたので、書いてみよう。単なる手助け用の喩え話であって、あく
まで正確な話は上に書いた通りなので、念のため。
ベクレル = (敵の)大砲の発射数
グレイ = (自陣に)当たる砲弾の数
シーベルト = (自陣の)ダメージの度合い
説明すると、ベクレルとは大砲の発射数みたいなもので、大砲の砲台の
種類や砲弾の種類は考えず、ただ何発撃ってるかを表す数。一方、味方
の側では、砲弾を何発浴びるかがポイントの一つになる。当然、敵の大砲
から遠ければ、浴びる弾の数は減るだろう。さらに、相手の砲弾の種類に
よって、味方のダメージは異なってくる。ゴムボールをぶつけられても大し
て痛くないが、石をぶつけられるとケガするだろう。つまり、ゴムボールが
何個、石が何個飛んでくるのか、ダメージの総量を表すのがシーベルトだ。
P.S.ベクレルと、シーベルトやグレイとの関係を求めるアクセスが多数
入ってるが、あたらめて解説しておくと、単純な換算は出来ない。た
とえ、同じベクレル数の飲食物を1kg摂取する単純な仮定でも、放
射線のエネルギーが一定ではないし、人体への吸収率も問題にな
るからだ。
P.S.2 一応、目安となる話では、朝日HP・20日に、茨城県・原子力安
全対策課の談話がある。1キロあたり24000ベクレルのヨウ素
131と、同690ベクレルのセシウムが検出されたホウレンソウ
を、日本人の平均的な年間摂取量で1年間食べ続けても、被曝
(ひばく)量は胸部CTスキャン検査1回分の3分の1程度。「人体
に影響を及ぼす程度ではない」そうだ。つまり、6900掛ける1/3
で、2300マイクロシーベルト以下になるという意味だろう。
農畜産業振興機構の「生鮮野菜の家庭内消費量変化」という
pdfファイルを見ると、2006年のデータで1人あたり1ヶ月120g
ほど消費してるようだ。つまり年間1.44kgくらいだから、35000
ベクレル程度のヨウ素と、10000ベクレル程度のセシウムを摂
取しても、2300マイクロシーベルトに到達しない計算になる。
他には、原子力資料情報室HPに、10000ベクレルのヨウ素
131を経口摂取するとベータ線が220マイクロシーベルトにな
るという説明がある(原文ではミリシーベルト)。期間が書かれ
てないから、トータルの値だろう。これで計算すると、35000
ベクレルなら770マイクロだから、さほど危険ではない数値に
なる。上に引用した朝日の説明と、一応整合的だ。
P.S.3 朝日新聞22日・朝刊には、「ベクレルをシーベルトに換算する
には放射性物質の種類や、飲食や吸入など体内に入るルート
などで異なる係数をかける。水や牛乳の規制値にあたる300
ベクレルの放射性ヨウ素が出た物を1キロ食べると、人体影響
は6.6マイクロシーベルトになり・・・」とある。
よって、上の原子力資料情報室HPと合わせて考えれば、「ヨウ
素の飲食(=経口摂取)」の場合、変換式は
ベクレルの値×0.022 = マイクロシーベルトの値
と考えていいだろう(☆下のP.S.5参照、係数0.016が最新)。
ただし、「 」内の条件が付いてることを忘れてはいけない。他の
場合には、他の係数(例えば0.5とか)をかけるのだ。ベクレル
からグレイへの変換式も当然同じだけど、飲食物の人体への影
響を考えるのだから、シーベルトが自然。
P.S.4 上の変換式で掛けた0.022のような係数を(預託)実効線量係
数と言うようだ。預託とは「deposition」の翻訳のようで、「蓄積」
「沈殿」という意味だろう。気になるのは、この係数の数値がネッ
ト上で必ずしも統一されてないこと。ヨウ素131なら、0.022で
はなく0.016になってる。原子力安全委員会が、ICRP(国際放
射線防護委員会)のデータに基づいてpdfファイルに書いてるも
ので、出典が他のサイトと同じだから、ますます意味不明だ。。
P.S.5 4月5日の朝日新聞・朝刊では、ベクレルからシーベルトへの
変換式の係数(=実効線量係数)が0.016へと変更されてる。
調べてみると、食品安全委員会が原子力安全委員会の説明を
採用したようだ。一応、P.S.3の式に訂正文を挿入しておいた。
なお、セシウム137の経口摂取の係数は0.013。
P.S.6 旧・単位(ラド=rad、レム=rem)と今の単位の間の換算について。
1rad=0.01Gy=10mGy : 1mGy=0.1rad
1rem=0.01Sv=10mSv : 1mSv=0.1rem
cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)
放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)
雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)
体内摂取した物質の放射線量の計算~物理学的・生物学的半減期
原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)
福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)
福島原発によるガン発生の厳しい試算~欧州放射線リスク委員会
実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係
原発事故はみんなが無責任、だけどね・・~東電社員の息子・ゆうだい君への応答
ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算
被曝する全放射線量の計算方法 (自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)
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文科省が10都県で確認、ストロンチウム(Sr)90の実効線量係数など
日本人の自然放射線と医療被ばく線量(『新版 生活環境放射線』2011)
福島第一原発の汚染水、現状の定量的なまとめ(13年・夏)
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テレビ業界に精通するキッドさんによる、ヒネった震災番組レビュー♪
放射能みんなであびればこわくない(キッド)
☆ ☆ ☆
一方、今夜の走りについて。ホントは休む予定で、明日久々に女友達と長
距離を走るはずだったのだ。ところが、夜の時点で全国的に雨の予報が
出てたから、明日の約束をキャンセルして、仕方なしに疲れた身体でちょっ
とだけ走ったわけ。ちなみに、友達は雨でも走りたそうだったけど、私がパ
スした。たまに傘ランとかやってるけど、基本的に雨は嫌いなのだ。ってい
うか、それが当たり前だろう。実際、雨の日の公園を走ってる人間はほと
んどいない。友人が元気良過ぎるのだ♪
単なる積極的休養ランだから、頑張る気はまったく無し。ただ、少しだけス
トライド(歩幅)を大きめにして走った。レースで記録を狙うには、ストライド
が重要なのだ(女性ランナーは別)。トータルでは1km4分56秒ペース。
うん、こんなもんでしょ。以前なら、お休みランだと1km5分を超えてたの
に、最近はあんまし超えなくなって来た。やっぱり、地道な努力が実ってる
のだ、と考えとこう♪
明日は休んで、明後日は長距離を走りたいけど、雨がどうなるか微妙な所。
ダメなら傘ランでお茶を濁して、水曜に長距離としよう。ま、強い余震とか、
激しい放射能漏れとかが無ければね。ではまた。。☆彡
往路(2.45km) 12分57秒 平均心拍129
1周(2.14km) 10分57秒 139
2周 10分39秒 146
3周 10分30秒 150
4周(0.68km) 3分21秒 151
復路 10分53秒 149
計 12km 1時間03分29秒 心拍147(78%) 最大158(ゴール前)
(計 5874文字)
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