『鈴木先生』原作コミック立ち読み(Yahoo!)&第4話
(☆6月28日追記: 最終回の記事をアップ。
ソクラテスの弁明~『鈴木先生』最終回レビュー(by哲学的対話法) )
☆ ☆ ☆
特番を1本半と、第3話の後半を見ただけで、2本の記事を書いてしまった、
テレビ東京のマイナー・ドラマ、『鈴木先生』。公表されてる視聴率(1、2話)
の低さだけから考えると、視聴者がほとんどいないような気もするが、ウチ
の記事には続々とアクセスが入って来る。
その大部分は、単に視聴率を求める検索アクセスだが、3年前の『ラストフ
レンズ』のバブル的人気の3分の1くらいだろうか。昨夜22時~24時の僅
か2時間で、PCだけでも423アクセス入ってるのだ。他の番組との比較はと
もかく、『鈴木先生』にも、意外なほど人気があるのは間違いない。
(視聴率は18日にようやく判明したので、この記事末尾に追記。)
私が本放送を最初から最後まで見たのは、日付け変わって昨夜の第4話
が初めてだが、予想を上回る出来の良さに感心した。正直、第4話の記事
は書かないつもりだったけど、Yahoo!コミックの立ち読みも合わせて、簡
単に感想記事をアップしとこう。マニアック・ブロガーとして、これほどのドラ
マを埋もれさせるわけにはいかない。『仁』の10分の1の視聴率というの
はあまりに不条理。いくら何でも不公平すぎて、見過ごせないのだ。。
☆ ☆ ☆
ではまず、Yahoo!コミックの「立ち読み」から。第1巻は、158ページ中
の78ページも無料で閲覧可能。2~5巻は10ページ、6~8巻は15ペー
ジだ。3巻でドラマに追いついたようなので、そこで立ち読みは止めた。私
は、狭い意味での「ネタバレ」、つまり、ドラマの前に原作・PR番組・TV雑
誌などで情報を得るような行為は、なるべく避けてるのだ。
1巻の目次は、「@げりみそ」(前篇)、「@げりみそ」(後編)、「@酢豚」(前
篇)、「@酢豚」(後編)、「@教育的指導」(前篇)、「教育的指導」(後編)と
なってる。つまり、最初の2つのエピソード(げりみそ&酢豚)を融合させた
のが、ドラマの第2話のようだ。
「教育的指導」の所は立ち読み出来なかったが、2巻冒頭に「岬事件も何
とか決着」と書いてるから、ドラマ第1話の低年齢セックスのエピソードだ
ろうと思う。あの当事者が、岬という男子生徒だった。滑稽でアブナイ「小
川病」(動悸&妄想)も、言葉が2巻冒頭に登場する所を見ると、1巻終
盤の「教育的指導」か、中盤の「酢豚」(後編)で登場するらしい。
☆ ☆ ☆
さて、「げりみそ」と「酢豚」を原作で立ち読みして、すぐ目に留まったのは、
登場人物の外見。原作の鈴木先生とドラマの長谷川博己は良く似てるが、
原作の小川蘇美とドラマの土屋太鳳は似てない。明らかに、土屋の方が
魅力的だ♪ 長谷川も土屋も、キャスティング的には成功だろう。原作の
麻美とドラマの臼田あさ美は、適度に似た外見で、雰囲気的には臼田の
方が上手く翳りを出せてる。その意味で、このキャスティングも成功だ。
一方、内容について。原作では、立ち読み可能な1巻の中盤まで、「小川
病」は現れず、非常にマジメな物語になってる。イチイチ深く理屈を考える
点はドラマと同じだが、原作では各コマに単語が浮かび上がることはない。
あのアイデアは、ドラマ独自のものだろうか。とにかく、ドラマが美少女萌
えや映像の単語で親しみやすさを醸し出してるのに対して、原作はひたす
らマジメで、古風な感じさえある。意図的なものか、原作者・武富健治の特
徴(年代、趣味など)によるものかは分からない。
台詞や筋書きは、ドラマが原作を忠実に反映してるようで、原作を読んで
も既視感が強かった。ただ、「げりみそ」と「酢豚」からスタートする原作の
物語構成は、やはり非常に精神分析的だと思う。と言うのも、精神分析
の「発達段階」論では、人間の最初は口唇期(口に関心が集まる段階)、
次が肛門期(or 肛門サディズム期)だからだ。その次は男根期あるいは
性器期になる。
ドラマでもそうだが、原作の一番最初は、食事のカットで、その後にげり
みそという攻撃が行われる。まさに、口唇期から肛門サディズム期への
移行と重なるわけだ。そして、原作の1巻終盤は、おそらくセックスの話
だから、キレイに口唇期→肛門サディズム期→性器期の流れが出来て
ることになる。
早くから「無意識」という言葉も使われてるし、喫煙室や指導室の使い方
(狭い空間で2人が深く面談)を見ても、原作が精神分析を背景に持って
るのは間違いないだろう。意識的か、無意識的かはともかく。
第2巻の目次は、「@人気投票」(前篇)、「@人気投票」(後編)、「@昼休
み」、「@嵐の前夜」、「@恋の嵐」(その1)、「@恋の嵐」(その2)。10ペー
ジしか読めないが、ドラマ第3話で山崎先生(山口智充)が壊れる話に対
応するようだ。山崎先生は、原作マンガの方が嫌われそうな顔になってて、
納得した。山口智充だと、親しみやすい顔と体型だから、むしろ人気者に
見えてしまうのだ。
第3巻の目次は、「@恋の嵐」(その3~5)、「@恋の終わり」(その1~6)。
最初の10ページは、ドラマ第4話で中村がケガした直後を扱ってる。とい
うことは、この一連の恋のエピソードが、ドラマ第4話と第5話に対応して
るような気がする。実際、ドラマ第4話の終わり方は、明らかに恋の話が
続く感じになってた。ドラマの5話では、小川に対する女子生徒の嫉妬が、
何か問題を引き起こしそうな気配だ。小川が好きな相手が本当に鈴木な
のかどうかは分からないし、引き延ばしてくれた方が楽しめると思う。
以上、ドラマと原作の関係を、立ち読みできる範囲で簡単に見て来たが、
ドラマの最大の工夫は、あの独特のメガネかも知れない♪ 原作では、ご
く普通のメガネで、いかにも型にハマった教師という感じなのだ。青年漫
画ならともかく、ドラマとしては、あのちょっと可愛いメガネと、長谷川の独
特の微笑みがポイントだろう。実際、初めて見たタイトルバックでは、全面
的にメガネの魅力を押し出してた。もちろん、じっくり人間や心を見つめよ
うという意味だろう。やはり、メガネ屋で探すべきかも。。♪
☆ ☆ ☆
一方、ドラマ第4話の感想は、もう時間が無くなってしまったから、ごく簡単
に済ませよう。これまた、精神分析的な内容で、それが分かるためには、
歴史的背景を知る必要がある。
フロイトが20世紀初めに、精神分析を作り出し、それが20世紀以降の
精神医学・カウンセリングほか、様々な領域に影響を与えたわけだが、そ
の直前の段階、19世紀末には、「浄化法」と呼ばれる方法が使われてい
た。英語だと、「catharsis」か「cathartic method」。これをカタカナで表現
すると「カタルシス・メソッド」で、『鈴木先生』の「鈴木式教育メソッド」を思
わせる名前だ。
その方法では、患者はまず、催眠術にかけられるか、寝椅子に横たわっ
て楽な状態になる。その上で、心の中に溜まったネガティブなものを、治
療者に向けて言葉などで吐き出す(=浄化する)と、症状が治まるとされ
ていた。ただしその後、吐き出すだけでは不十分と考えたフロイトは、より
洗練された治療方法&理論として、精神分析を考案することになる。
今回、鈴木式メソッドでは、竹地の心の中の思いをすべて吐き出させるこ
とになった。竹地は、まるで催眠術にでもかかったかのように、夢中で「テ
ンパって」、延々と語り続けたわけだ。その姿を、鈴木先生はじっと見つめ
ていた。まるで、治療者、医師、カウンセラーのように。
では、その結果、竹地がスッキリしたかと言うと、全く逆効果で、「最悪」に
なってしまったのだ。象徴的だったのは、竹地が最後に文字通り吐いてし
まうカット。吐いた物は、やはり本人にとっても周囲にとっても汚いし、吐い
たからと言って本人がスッキリするとも限らない。少し吐いて、その見た目
や悪臭などで、余計に気分悪くなるのはよくあることだ。
ちなみに、竹地の「長ウ○コ」というのも、非常にカタルシス・メソッド的、
あるいはその失敗みたいなものになってた。内部の汚い物を外部に排泄
する行為だからだ。別の観点から見ると、口唇期・肛門サディズム期的反
応であって、発達段階的な幼さを表してる。
☆ ☆ ☆
今回のラストシーンも非常に象徴的なものだった。現実としては、鈴木が
台所の流しで吐く様子が映されてた。あれを鈴木式カタルシス・メソッドと
呼ぶのは、あまりにシニカル=皮肉だが、あの時も、少しもスッキリした
感じはなかったわけだ。
では、鈴木はなぜ吐いたか。それは、二重の意味で、麻美というカウンセ
ラー&患者に「吐かされた」のだ。すぐ分かるのは、鈴木が麻美に強烈な
ダメージを与えられて、吐かせられたこと。でも、その前に、鈴木は秘めた
る思いを麻美に読み取られてしまってる。心の内を、「吐かされた」のだ。
個人的には、超能力とかオカルトのような話は趣味じゃないが、全否定す
るつもりもないし、今の時代、一般ウケしてるのも事実だろう。断トツ人気
の『仁』も、タイムスリップ時代劇なのだ。理論的・心理的で真面目な学園
物語から、あまり脱線しない範囲で、現代的味付けを施して欲しいと思う。
なお、あの女子生徒・中村も、原作よりドラマの未来穂香の方が可愛い♪
これはもう、来週も見るしかなさそうだ。ちなみに昨夜は一応、香取慎吾&
黒木メイサ&藤木直人『幸せになろうよ』第5話も流し見したけど、黒木の
スタイルの良さが目に焼きついた程度。
夜の真っ暗な海でたたずむシーンとか、朝焼けの海岸とか、イメージ=映
像的にはキレイなんだけど、脚本=物語的には魅力を感じない。黒木には、
もっと短い台詞を喋らせた方がいいと思う。
ではまた。。☆彡
P.S. 5月18日の夜、ウィキペディアに第3話視聴率(2.5%)と第4話
視聴率(2.3%)が書き込まれた。今回は履歴を見ても出典が書
かれてないので、やや不安が残るが、まあそんな数字だろう。ちな
みに2話までの出典になってたスポニチHPでは、視聴率の更新
が止まったままだ。
(第5話関連のつぶやき記事)
ソクラテスの弁明~『鈴木先生』最終回レビュー(by哲学的対話法)
(計 4402文字)
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コメント
こんにちは!
数字はこんなものかもしれませんね。
全国版じゃないようですから
いずれ再放送を見ればいいというところが
たくさんありますしね。
でも私なんかは一週間のドラマの中では
月10を最も楽しみにしてます。
>「カタルシス・メソッド」
フロイトの精神分析法だったのね。
浄化するという点でも
ドラマから偶然同じ意味を感じ取ってるところが
びっくりですね。
逆に言えばそういうメッセージを制作側が発していたと
受け止められますね。
そうそう出演陣は皆いい感じでハマってます。
長谷川さんなんかも教壇に立つと
凛とした雰囲気が出ていて舞台俳優は違うと思わせる
何かがあります。
ますます、テンメイさんに似てきたでしょう?(^^)
>脚本=物語的には魅力を感じない
「幸せに」はもう取り上げなくてもいいような気がしますが
藤木さんが出演なので気になるのかしら?
私もストーリーがつまらなくてがっくりです。
でも小林薫さんが覚醒してまたデザイナーか経営か
するかな?と。
それなら楽しみがありますわ。
ともあれ「鈴木先生」は数字の低迷で打ち切りにならないことを祈るばかりです・・
投稿: エリ | 2011年5月20日 (金) 14時08分
> エリさん
おはようございます。暑い日が続きますね
第3話、第4話の視聴率には、みんな驚かないでしょう。
第2話の1.9%はインパクトあったけど。。(^^ゞ
冷静に考えてみると、2010年度・テレビ東京の
プライムタイム(19時-23時)の視聴率は
僅か5.8%。しかも、前年比で-0.9%の不振。
ゴールデンタイム(19時-22時)は6.1%だから、
22時台の番組は4.9%という計算。
その時間帯で、マニアックな内容が裏目に出ると、
2%台になるということでしょう。
2年前、藤木直人主演の深夜ドラマ『イケ麺そば屋探偵』が、
半年間3.1%をキープしました。
深夜とはいえ、日テレだし、有名人もかなり出てたドラマ。
それと比較しても、『鈴木先生』の視聴率は
一応納得できなくもない数字でしょうね。
ま、内容を考えると、5%取ってもいいと思うけど。
話変わって、「カタルシス・メソッド」(英語は
カタルティック)は、精神分析法そのものかと言うと、
ちょっとビミョーなんですよ。
密接に関わってはいるし、フロイトの技法でもあるけど、
精神分析の誕生直前の方法ですね。前史って位置付け。
「カタルシス」という言葉は、芸術などによる精神の浄化を
指すのが普通ですが、英語だと排便も意味します。
しかも、下剤を用いた強制的なものを指したりする。
そう考えると、ますます第4話がよく分かるでしょう。
武地は、吐くことを強制されてたし、排便も繰返してたから。
鈴木先生は、確かに僕に似てます
細かい事まで本気で理屈をこねて考える。
女好きで、筋道立てて場をコントロールする。
ただ、僕は女性に相談したり救いを求めたりすることが
少ないので、その点は違いますね。
逆に言うと、麻美や小川には、女性と言うより、
カウンセラー役や母親役が求められてることになる。
あと、僕は滅多に吐きません♪ 文字通りの意味で。
この10年で1回あるか無いかって感じ。
酒とか人前では、完全にゼロ。
ノロウイルスか何かにやられた時、吐いたかなぁ。。
ただし、小学校時代は、バス旅行が超苦手。
いまでも、長距離バスはなるべく避けてます。
電車や新幹線なら、昔から好きなのに。
で、「幸せに」はもう要らない?
アハハ そりゃ、ウチでは禁句ですよ♪
ウチの一番人気は、『ギャルサー』以来ずっと藤木。
正直、『ギャルサー』、『ホタルノヒカリ1』、
『プロポーズ大作戦』以外は素っ気ないんですが、
それでもずっと藤木目当てのアクセスを続けてくれてる
読者を見てると、なかなか切りにくいんですよ。
藤木の顔と理知的大人キャラは、結構好きだし。
黒木メイサ も、プロポーションと衣装だけなら見る価値あり。
テレビであそこまでサービスするトップモデルは珍しいでしょ。
年代がかなり違うけど、藤原紀香くらいじゃないかな。
落ちぶれたデザイナー・小林薫も好みです。
この先、メイン・ストーリーにどう絡めていくのかも興味深い所。
ま、月9だから復活しそうだけど♪
ともあれ、『鈴木先生』の打ち切りはちょっと心配ですね。
でも、最初から10回と公言されてるようだし、
『喜多善男』も11回キッチリやり通しました。
スタッフと上層部の気合に期待しましょう
投稿: テンメイ | 2011年5月22日 (日) 09時37分